第2章 高齢社会対策の実施の状況

(2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進
  平成20年3月には、「バリアフリーに関する関係閣僚会議」において、「バリアフリー化推進要綱」を改定し、「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」を決定した。バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進に関する政府の基本的な方針である新しい要綱においては、「バリアフリー」と併せて新しい施設の整備等に際しては「ユニバーサルデザイン」を推進することの重要性を明確に位置付け、名称を「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」に変更した。さらに、今後の取組方針として、生活者・利用者の視点に立った施策の展開を明記するとともに、各分野において、施策を効果的に推進しその進捗状況を明らかにするため、おおむね5年間を対象とした目標を設定している。

ア 高齢者に配慮したまちづくりの総合的推進
  高齢者等すべての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、自宅から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を推進する必要がある。このため、高齢者に配慮したまちづくりを総合的に推進し、地域全体を面的に整備している(表2−3−33)。

表2−3−33 高齢者に配慮したまちづくりの総合的な推進
事業の名称 事業の概要
バリアフリー環境整備促進事業  高齢者に配慮したまちづくりの推進を図り、高齢者の社会参加を促進するため、市街地における高齢者等の快適かつ安全な移動を確保するための施設の整備、高齢者等の利用に配慮した建築物の整備等を行う。
共生のまちづくり推進  地方公共団体が行う、高齢者、障害者、児童などすべての人が自立していきいきと生活し、人と人との交流が深まる共生型の地域社会を実現するための取組に対し、支援を行う。
資料:国土交通省、総務省

イ 公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備
(ア)バリアフリー新法に基づく公共交通機関のバリアフリー化の推進
  公共交通機関のバリアフリー化については、平成12年11月に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号。以下「交通バリアフリー法」という。)に基づく取組みが行われてきたが、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー新法」という。)においても、公共交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設、大改良及び車両等の新規導入に際しての移動等円滑化基準への適合を義務付けている。既設の旅客施設・車両等についても移動等円滑化基準に適合することに努めなければならないこととしている。

(イ)ガイドライン等の策定
  公共交通機関の旅客施設、車両等について、バリアフリー化の望ましい内容を示し、交通事業者等がバリアフリー化を進める際の目安としてもらうことにより、利用者にとってより望ましい公共交通機関のバリアフリー化が進むことが期待される。旅客施設については、平成13年8月に策定された「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」について、バリアフリー新法及び公共交通移動等円滑化基準の施行を契機に必要な見直しを行い、19年7月に「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」を策定し、これに基づきバリアフリー化を実施してきた。
  車両等については、平成12年12月に策定した「旅客船バリアフリー〜設計マニュアル〜」(19年8月には、必要な見直しを行った「旅客船バリアフリーガイドライン」を策定)、13年3月に策定した「公共交通機関の車両に関するモデルデザイン」(19年7月には、必要な見直しを行った「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」を策定)、15年3月に策定した「次世代普及型ノンステップバスの標準仕様」に基づきそれぞれバリアフリー化を進めてきた。このうちノンステップバスについては、16年1月に標準仕様ノンステップバスの認定制度を創設した。
  さらに、歩行空間について、バリアフリー新法に基づく道路の移動等円滑化基準の具体的な考え方等を解説した「道路の移動等円滑化整備ガイドライン(平成14年12月策定、20年2月改訂)」を踏まえ、バリアフリー化を推進している。また、重点整備地区以外の歩道においても、バリアフリーの観点を踏まえた整備を行うため、「歩道の一般的構造に関する基準」(国土交通省都市・地域整備局長、道路局長通達)を17年2月に改正した。

(ウ)公共交通機関のバリアフリー化に対する支援
  高齢者の移動等円滑化を図るため、駅・空港等の公共交通ターミナルのエレベーターの設置等の高齢者の利用に配慮した施設の整備、ノンステップバス等の車両の導入などを推進している(表2−3−34)。

表2−3−34 高齢者等のための公共交通機関施設整備等の状況
(1) 旅客施設のバリアフリー化の状況(注1)
  1日当たりの平均利用者数5,000人以上の旅客施設数 平成18年度末 1日当たりの平均利用者数5,000人以上かつトイレを設置している旅客施設数 平成18年度末
段差の解消 視覚障害者
誘導用ブロック
身体障害者用
トイレ
鉄軌道駅 2,801 1,758 (62.8%) 2,483 (88.6%) 2,678 1,408 (52.6%)
バスターミナル 42 32 (76.2%) 28 (66.7%) 33 9 (27.3%)
旅客船ターミナル 9 8 (88.9%) 7 (77.8%) 9 5 (55.6%)
航空旅客ターミナル 23 15 (65.2%) 21 (91.3%) 23 22 (95.7%)
  (100% 注2)          
(注1)バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に基づく移動等円滑化基準に適合するものの数字。
なお、1日当たりの平均利用者数が5,000人以上であり高低差5メートル以上の鉄軌道駅において、エレベーターが1基以上設置されている駅の割合は75.2%、エスカレーターが1基以上設置されている駅の割合は72.4%となっている。
(注2)航空旅客ターミナルについてのエレベーター・エスカレーター等の設置は、平成13年3月末までに100%達成されている。
 
(2) 車両等のバリアフリー化の状況
  車両等の総数 平成18年度末
移動円滑化基準に適合している車両等
 
鉄軌道車両 51,618 10,309 (20.0%)
【21,560(41.8%)】
低床バス 58,735 19,434 (33.1%)
 うちノンステップバス   10,389 (17.7%)
旅客船 939 108 (11.5%)
航空機 496 270 (54.4%)
(注1)「移動等円滑化基準に適合している車両等」は、各車両等に関する移動等円滑化基準への適合をもって算定。
(注2)【 】内は、旧交通バリアフリー法に基づく移動等円滑化基準(基準強化前)に照らした場合の数値である。
 
(3)福祉タクシーの導入状況
    平成18年度末 9,651両
    (タクシー車両総数 273,740両)
資料:国土交通省

  鉄道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナルにおけるエレベーター等バリアフリー施設の整備については、補助や日本政策投資銀行等による低利融資による支援を行うとともに、鉄道駅におけるエレベーター等の設置について、税制上の特例措置を講じている。
  また、ノンステップバス、低床型路面電車等の車両の導入に対しては、補助及び日本政策投資銀行等による融資を行っているほか、ノンステップバス、リフト付バス・タクシー、スロープ付タクシー、低床型路面電車、移動等円滑化基準に適合する客席数60席以上の航空機の導入について、税制上の特例措置を講じている。
  そのほか、狭軌の路面電車の超低床を実現するため、低床型路面電車(LRT)の狭軌超低床化に関する技術開発を支援している。

(エ)歩行空間の形成
  「社会資本整備重点計画」(平成15年10月閣議決定。計画期間:15〜19年度)に基づき、交通事故が多発している住居系地区や商業系地区で、面的かつ総合的な事故対策を実施することにより歩行者等の安全通行を確保するあんしん歩行エリア等において、<1>幅の広い歩道等の整備、<2>歩道の段差解消・勾配等の改善、<3>上下移動の負担を軽減するためのスロープや昇降装置付きの立体横断施設の設置、<4>歩行者用案内標識の設置、<5>歩行者等を優先する道路構造の整備、<6>自転車道等の設置による歩行者と自転車交通の分離、<7>生活道路における通過交通の進入及び速度の抑制並びに幹線道路における交通流の円滑化を図るための信号機、道路標識、道路構造等の重点的整備、<8>バリアフリー対応型信号機の整備、<9>歩車分離式信号の運用、<10>携帯端末を用いて安全な通行に必要な情報提供及び信号機の青時間の延長を行う歩行者等支援情報通信システム(PICS)の整備、<11>信号灯器のLED(発光ダイオード)化を推進し、高齢歩行者等の安全の確保を図っている。
  また、「生活道路事故抑止対策マニュアル」を活用するなどして、路側帯の拡幅による歩行者通行環境の整備と車道の中央線抹消による車両の走行速度の抑制対策を実施している。
  また、外周道路を幹線道路に囲まれている等のまとまりのある住区や中心市街地の街区などにおいて、一般車両の地区内への流入を制限して身近な道路を歩行者・自転車優先とし、併せて無電柱化や緑化等の環境整備を行って、交通安全の確保と生活環境の質の向上を図ろうとする「くらしのみちゾーン」を形成するため、平成20年1月までに意欲の高い55地区を登録し、合意形成支援等ソフト面を含めた支援を実施している。
  さらに、積雪や凍結に対し、鉄道駅周辺や中心市街地等、特に安全で快適な歩行空間の確保が必要なところにおいて、歩道除雪の充実、消融雪施設等の冬期バリアフリー対策を実施している。

(オ)道路交通環境の整備
  高齢者が安心して自動車を運転し外出できるよう、ゆとりある道路構造の確保や視環境の向上、疲労運転の防止等を図るため、生活道路における交通規制の見直し、付加車線「ゆずりあい車線」の整備、道路照明の増設、道路標識の高輝度化・大型化、道路標示の高輝度化、信号灯器のLED化、「道の駅」等の簡易パーキングエリアの整備等、道路交通環境の整備を行っている。

(カ)バリアフリーのためのソフト面の取組
  国民一人一人がバリアフリーについての理解を深めるとともに、ボランティアに関する意識を醸成し、だれもが高齢者等に対し、自然に快くサポートできるよう、高齢者等の介助体験・疑似体験等を内容とする「バリアフリー教室」の開催等ソフト面での取組を推進している。

ウ 建築物・公共施設等の改善
  バリアフリー新法に基づき、高齢者等が円滑に移動等できる建築物の建築を促進するため、不特定多数の者又は主に高齢者等が利用する建築物の一定の新築・増改築・用途変更の際に建築主に基準への適合義務を課すことにより、建築物のバリアフリー化を推進している(図2−3−35)。また、優良な建築計画については所管行政庁が認定をすることができ、これにより認定を受けた一定の建築物については、補助制度、融資制度、税制上の特例等の支援措置を講じ、整備の促進を図っている(図2−3−36)。

図2−3−35 バリアフリー化された建築物のイメージ
図2−3−35 バリアフリー化された建築物のイメージ

図2−3−36 バリアフリー新法に基づく認定実績
図2−3−36 バリアフリー新法に基づく認定実績
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  さらに、ユニバーサルデザイン等の観点から配慮が望ましい事項の紹介(乳幼児連れの人への対応、災害時の避難安全確保の在り方、便所におけるオストメイト(人工肛門保持者等)対応の在り方、ホテル客室内のきめ細やかな対応の在り方等)や優れたバリアフリー対応建築物の具体例の紹介を加えた建築設計標準の普及を推進している。
  窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、高齢者等すべての人が円滑かつ快適に施設を利用できるよう、窓口業務を行う事務室の出入口の自動ドア化、多機能トイレの設置等による高度なバリアフリー化を目指した整備を推進している。
  また、既存施設について、自動ドア、エレベーター等の改修を積極的に実施している。
  都市公園については、バリアフリー新法に基づき、高齢者や障害者を含むすべての人々が快適に活動できるよう、主要な園路の段差の解消、車いすでも利用可能な駐車場やトイレの設置など、公園施設のバリアフリー化を推進した。また、平成20年1月に「都市公園の移動等円滑化整備ガイドライン」を公園管理者がバリアフリー化のための整備を行う際の具体的な指針として策定し、周知を行った。

エ 福祉施策との連携
  高齢者に配慮したまちづくりを一層効果的に推進していくため、福祉施策との連携を図りつつ、施策を展開している。
  大規模な公共賃貸住宅の建て替えに際して、社会福祉施設等の併設を原則化しているほか、高齢者等が利用する社会福祉施設を中心市街地等の利用しやすい場所に適正に配置するため、市街地再開発事業等において社会福祉施設等を一体的に整備する場合、補助の上乗せを行っている。
  農山漁村においては、ほ場整備等による福祉施設の用地の創出と農園等との整備を一体的に行った。

オ ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進
  高齢者、障害者のみならず可能な限りすべての人を対象として想定し、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づき、今後の社会資本整備、交通分野における取組方針を「ユニバーサルデザイン政策大綱」として平成17年7月に公表している。今後、本大綱に基づき、すべての人々が安心して生活できるよう、公共施設等のバリアフリー環境の整備を一層推進していくこととしている。
  その一環として、公共交通機関等のバリアフリー化を推進する「交通バリアフリー法」と建築物のバリアフリー化を推進する「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(平成6年法律第44号。以下「ハートビル法」という。)を統合・拡充した「バリアフリー新法」が平成18年6月に成立し、同年12月に施行された。
  同法では、<1>主務大臣による「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(平成18年国家公安委員会、総務省、国土交通省告示第1号)の策定(表2−3−37)、<2>対象施設等の新設時等におけるバリアフリー義務化及び既設施設についてのバリアフリー努力義務化(バリアフリー化を求める対象施設に一定の路外駐車場、都市公園を追加、車両等に福祉タクシーを追加)、<3>市町村が作成する基本構想に位置づける重点整備地区におけるバリアフリー化の重点的・一体的な推進(基本構想の作成対象エリアを拡大、特定事業の範囲として新たに建築物、路外駐車場、都市公園を法定化、バリアフリー化された経路を整備・管理する場合の協定制度を創設)、<4>基本構想の作成に係る協議会制度及び住民等による作成提案制度の創設等が規定されており、同法に基づき、公共施設等のバリアフリー環境の整備を推進している。

表2−3−37 バリアフリー新法基本方針における目標設定

1 旅客施設
  2010年までに、1日当たりの平均的な利用者の数が5,000人以上の原則としてすべての鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル及び航空旅客ターミナルについて、
  (1)段差の解消
  (2)視覚障害者誘導用ブロックの整備
  (3)障害者用トイレの設置
  等のバリアフリー化を実施する。

2 車両等
  2010年までに、以下のバリアフリー化を実施する。

車両等の種類 車両等の総数 バリアフリー化される車両等の数
鉄軌道車両 約52,000 約26,000(約50%)
乗合バス車両 約60,000 2015年までに原則として低床化された車両に代替
(うちノンステップバス)約18,000(約30%)
タクシー車両 (約18,000台の福祉タクシーを導入)
旅客船 約1,000 約500(約50%)
航空機 約530 約340(約65%)

3 道路
  2010年までに、原則として重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成するすべての道路について、バリアフリー化を実施する。

4 都市公園
  2010年までに、以下のバリアフリー化を実施する。
  (1) 園路及び広場  園路及び広場の設置された都市公園のうち、約45%
  (2) 駐車場  駐車場の設置された都市公園のうち、約35%
  (3) 便所  便所の設置された都市公園のうち、約30%

5 路外駐車場
  2010年までに、特定路外駐車場の約40%についてバリアフリー化を実施する。

6 建築物
  2010年までに、2,000m2以上の特別特定建築物の総ストックの約50%についてバリアフリー化を実施する。

7 信号機等
  2010年までに、音響信号機、高齢者等感応信号機等の信号機の設置、歩行者用道路であることを表示する道路標識の設置、横断歩道であることを表示する道路標示の設置等のバリアフリー化を原則としてすべての特定経路を構成する道路において実施する。

資料:国家公安委員会、総務省、国土交通省


  バリアフリー新法に基づく基本構想については、1日の利用者数が5,000人以上である旅客施設が所在する市町村のうち、72%(515市町村中、373市町村)が作成ないしは作成を予定しており(平成19年9月末日現在)、これまでに235市町村(基本構想数は291)において作成されたものを受理した(20年3月末日現在)。

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