第1章 高齢化の状況(第2節 コラム2)

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第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向

コラム2

高齢者の雇用促進
~60才以上の高齢者が全従業員の3割以上。
幅広い年齢で構成された、いわば"3世代同居企業"~
(静岡県磐田市、機械器具製造会社)


静岡県磐田市にある機械器具製造会社は、農業機械、建設機械及び自動車関連の燃料噴射管、高圧・低圧用油圧配管パイプ、加熱冷却用配管のほか、パイプに関する各種二次加工品を多品種少量生産に特化して製造販売を行うことを事業内容として、昭和46年12月に設立された。

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現在、全従業員237人の平均年齢は45.8歳で、うち60歳以上の従業員は79人であり、全従業員の3割を超える。そのうち27人は70歳以上で、最高齢は89歳。一方、いちばん若い社員は16歳であり、10代から80代までの幅広い年齢で構成された、いわば“3世代同居企業”であることが同社の誇りである。
同社は、製造工程が多数あるために多様な業務があり、その中から高齢者に向いている仕事、あるいは高齢者にもできる仕事を選択できることから、多くの高齢者の雇用が可能となっている。

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そもそも高齢者雇用を始めたきっかけは、人材難による苦肉の策であったという。1990年代前半のバブル期に若者が採用できなかったため、「募集 健康なおじいちゃん!おばあちゃん!」と題したチラシを配布し、90歳までの元気な方を募集したのが始まりだった。
「高齢者を雇用して感じたことは、高齢者は簡単に仕事を辞めないし、根気強いし、あてになること。また、高齢者にとっても、働くことによって家族や職場から頼りにされていると実感できるのが何よりの喜びだということ」と社長は語る。
実際に同社で働く最高齢の女性の方は「家にいても退屈だが、ここで働いていると楽しい」と話し、最高齢の男性の方は「ここに来て、世間話をしながら笑うことで、ボケ防止にもなる。元気なうちはずっと働きたい」と生き生きとした表情で話す。
作業所内で、高齢者への特別な配慮はしていないとのこと。「高齢者を特別扱いしないことがいいのだ。若いとか年をとっているとか、男とか女とか、経験年数とかは関係ない。高齢者だからという意識はそもそも間違っていて、条件はみんな一緒。」と社長は語る。
若い世代・中高年・高齢者がなんの違和感もなく、互いに刺激しあい、会話をしながら働いている姿は実に新鮮であり、"3世代同居企業"の魅力が感じられた。

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