第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節2(3))

[目次]  [前へ]  [次へ]

第3節 分野別の施策の実施の状況

2 健康・福祉

(3)介護サービスの充実

ア 必要な介護サービスの確保

身近な日常生活圏域で介護予防から介護サービスの利用に至るまでの必要なサービス基盤を整備していくため、「地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金」により、市町村が地域の実情に合わせて裁量や自主性・創意工夫をいかせるような介護・福祉サービスの基盤整備を図っているところであるが、平成21年度第一次補正予算において、介護基盤の緊急整備として、各都道府県において第4期計画で既に計画されている特別養護老人ホーム、老人保健施設、認知症高齢者グループホーム等の整備量の合計が約12万人分であるところ、さらに約4万人分の上乗せを行い、23年度までの3年間で合計16万人分を目標として整備を推進するため、介護基盤緊急整備等臨時特例基金(各都道府県に設置)を創設し、助成等の拡充を3年間行うこととしている。
喫緊の課題である質の高い福祉・介護人材の安定的確保については、平成21年4月のプラス3.0%の介護報酬改定や介護関係業務未経験者を雇い入れた場合の助成など雇用管理改善に取り組む事業主への支援、潜在的有資格者の再就業支援等の各般の施策を講じている。また、全国の主要なハローワークに「福祉人材コーナー」を設置し、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人者への助言・指導等を行うとともに、他産業からの離職を余儀なくされた非正規労働者等が多数利用するハローワークにおいて、介護に関する情報提供や「福祉人材コーナー」への誘導等も行っており、これらの取組を通じて、人材確保を進めていくこととしている。
また、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けていくことができるよう、<1>総合相談支援、<2>虐待の早期発見・防止などの権利擁護、<3>包括的・継続的ケアマネジメント支援、<4>介護予防ケアマネジメントといった機能を担う地域の中核機関として、平成18年4月以降、地域包括支援センターの設置を進めており、21年4月末時点で4,056カ所と、全ての市町村において設置されている。
福祉用具、住宅改修については、利用者の心身状況等を踏まえた相談援助、指導・助言、情報提供等を行うことにより、適切で安全なサービス提供を行っており、また、福祉用具の選択・活用に関する情報を広く提供するため、福祉用具・住宅改修の利用事例、車いすや特殊寝台の選び方、介護保険給付対象福祉用具の寸法や機能等を示した商品情報をデータベース化し、これらの情報を利用者や介護支援専門員等がインターネットで検索できるシステムを、平成16年4月から運用している。

イ 介護サービスの質の向上

ユニットケアを行う施設において、その整備の促進及び施設の特徴をいかした適切なサービスの提供を確保するため、施設管理者及びユニットリーダー(平成18年度より配置することが義務付けられた)を対象とした研修を実施している。
また、特別養護老人ホーム等の現場の意識改革や、ケアの向上などを目指して「身体拘束の廃止」の取組を推進するとともに、平成21年度においては、介護サービスにおける事故の防止や感染症の予防のため、同一施設内に勤務する看護職員及び介護職員を対象に2人1組で同時に行う研修を実施し、両職種間のケアの連携強化及び介護における事故防止及び感染症対策の推進を図った。
介護保険制度の運営の要である介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質の向上を図るため、実務研修及び現任者に対する研修を体系的に実施している。また、地域包括支援センターにおいて、介護支援専門員に対する指導助言や関係機関との連絡調整等を行い、地域のケアマネジメント機能の向上を図っている。
さらに、利用者の介護サービスの選択に資するため、「介護サービス情報の公表」制度を平成18年4月より施行した。都道府県知事は、事業者から介護サービスの内容、事業所の運営状況等に関する情報等の報告を受けて調査を行い、その結果をインターネットで公表するものであり、21年度は、訪問介護等の居宅サービスや介護老人福祉施設等の施設サービス等の50サービスについて公表している。

ウ 認知症高齢者支援対策の推進

今後の認知症施策をさらに効果的に推進し、「たとえ認知症になっても安心して生活できる社会を早急に構築することが必要」との認識のもと、「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」を設置し、平成20年7月に提言を取りまとめた。その提言を踏まえ、<1>認知症に関する実態の把握、<2>診断技術の向上と治療方法の開発など認知症に関する研究開発の促進、<3>主治医等を中心とした地域医療体制の充実などによる早期診断の推進と適切な医療の提供、<4>認知症介護の専門職員に対する研修や本人・家族等の支援ネットワークの構築などによる適切なケアの普及及び本人・家族支援、<5>若年性認知症施策を推進するために必要な取組を行ったところである。
また、平成21年度の介護報酬改定においても、同プロジェクトの提言に基づき、認知症行動・心理症状への対応や、専門的な認知症ケアの普及に向けた取組など、認知症ケアの推進を図るための評価を行った。
なお、平成17年度から開始した、認知症の正しい知識の普及を図り、認知症の人が尊厳をもって地域で暮らし続けることを支える「地域づくり」を推進していくための広報キャンペーンについては、21年度においても引き続きこれを実施したところであり、同キャンペーンの中心である「認知症サポーター100万人キャラバン」については、21年12月末時点でサポーター養成講座の講師役であるキャラバンメイトを28,514名、サポーターについては、1,426,266名養成した。

エ 介護に関する普及啓発

介護についての理解と認識を深め、介護サービス利用者及びその家族、介護従事者等を支援するとともに、これらの人たちを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進する観点から、平成20年7月に、介護に関する啓発を重点的に実施する日として、「11月11日」を「介護の日」と設定した(図2-3-10)。

図2-3-10 介護の日ポスター

「介護の日」に合わせ、「介護の日」フォーラムを開催したほか、政府広報や厚生労働省ホームページ等を活用した普及啓発、「介護の日」ポスターの配付等を行うとともに、都道府県・市区町村、関係機関・団体等による広報・啓発活動やイベント等が行われた。

[目次]  [前へ]  [次へ]