第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節3(1))

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第3節 分野別の施策の実施の状況

3 学習・社会参加

「学習・社会参加」分野については、高齢社会対策大綱において、次のような方針を明らかにしている。

高齢社会においては、価値観が多様化する中で、学習を通じての心の豊かさや生きがいの充足の機会が求められ、経済社会の変化に対応して絶えず新たな知識や技術を習得する機会が必要とされることから、生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される生涯学習社会の形成を目指す。
また、高齢者が年齢にとらわれることなく、他の世代とともに社会の重要な一員として、生きがいを持って活躍できるよう、ボランティア活動を始めとする高齢者の社会参加活動を促進するとともに、高齢者が自由時間を有効に活用し、充実して過ごせる条件の整備を図る。
さらに、ボランティア活動を始めとするNPO等やシルバー人材センターにおいて行う活動は、自己実現への欲求及び地域社会への参加意欲を充足させるとともに、福祉に厚みを加えるなど地域社会に貢献し、世代間、世代内の人々の交流を深めて世代間連帯や相互扶助の意識を醸成するものであることから、誰もが、いつでも、どこでも、気軽に活動に参加できるよう、自発性を尊重しつつ、基盤の整備を図る。

(1)生涯学習社会の形成

ア 生涯学習の推進体制と基盤の整備

(ア)生涯学習の推進体制の整備

「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」(平成2年法律第71号)や中央教育審議会の答申等に基づき、生涯学習社会の実現に向けた取組を促進するとともに、新たな地域づくりのための施策の企画の提案や、相談対応、地域づくりの取組の全国への普及などを促進している(図2-3-14)。

図2-3-14 生涯学習の推進体制の整備

(イ)生涯学習の基盤の整備

生涯学習の一層の振興を図るため、開催都道府県との共催により、民間の企業、団体、個人等の参加を得て、生涯学習に関する各種イベント、学習成果の発表、講演会等を集中的に実施する全国生涯学習フェスティバルを平成元年から毎年開催している。平成21年度には、10月30日から11月3日までの5日間にわたり、埼玉県で第21回全国生涯学習フェスティバル「まなびピア埼玉2009」が開催された。また、都道府県及び市町村における社会教育指導体制の充実を図るため、優れた資質と専門的能力を有する社会教育指導者の養成等を図った。

(ウ)学習成果の適切な評価の促進

様々な学習活動の成果が適切に評価される社会の実現に向けた取組の一つとして、各個人の学習成果を測る検定試験の質を確保すべく、民間事業者等が行う評価の主体的な取組を支援する方策について検討を行った。
また、高等教育レベルの学習成果を適切に評価するため、独立行政法人大学評価・学位授与機構において、大学等で一定の学習を行った短期大学、高等専門学校及び専修学校専門課程(専門学校)卒業者等に対して学士の学位授与を行ってきた。

イ 学校における多様な学習機会の確保

(ア)初等中等教育機関における多様な学習機会の確保

平成20年3月に改訂され、21年4月から一部先行実施されている新学習指導要領では、引き続き、児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため、小・中・高等学校において、ボランティアなど社会奉仕に関わる体験活動や、高齢者との交流活動等を含む体験活動の充実を図ることとしている。
さらに、他校のモデルとなる様々な体験活動を推進する「豊かな体験活動推進事業」において、小・中学校等を指定し、世代間交流など命の大切さを学ばせる体験活動を行う「児童生徒の輝く心育成事業~ふれあい応援プロジェクト~」を実施するとともに、「高校生の社会奉仕活動推進校」を指定し、社会奉仕活動のプログラムについて調査研究を行った。

(イ)高等教育機関における社会人の学習機会の提供

生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、社会人入試の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、科目等履修生制度の実施、長期履修学生制度の実施などを引き続き行い、履修形態の柔軟化等を図って、社会人の受入れを促進してきた(図2-3-15)。

また、大学等の学術研究・教育の成果を直接社会に開放し、履修証明プログラムや公開講座を実施するなど高度な学習機会を提供している。
さらに、大学・短期大学・高等専門学校における教育研究資源を活用した、社会人の再就職やキャリアアップ等に資する短期間の実践的教育プログラムの開発・普及を支援することによって、社会人の学び直しの機会の充実を図った。
放送大学においては、テレビ・ラジオ放送(衛星放送)を利用して、幅広く国民に大学教育の機会を提供した(図2-3-16)。

(ウ)学校機能・施設の地域への開放

児童生徒が一日の大半を過ごす活動の場であり、地域コミュニティの拠点でもある公立学校施設の整備に対し国庫補助を行うとともに、学校施設整備指針を示すこと等により、学校開放に向けて、地域住民の積極的な利用を促進するような施設づくりを進めている。
また、小・中学校の余裕教室について、地方公共団体が社会教育施設やスポーツ・文化施設などへの転用を図れるよう、取組を支援している。

ウ 多様な学習機会の提供

(ア)社会教育の振興

地域住民の身近な学習拠点である公民館を始めとする社会教育施設においては、幅広い年齢層を対象とした多様な学習機会の充実を促進してきた。
また、インターネットを活用した「エル・ネット」教育情報通信ネットワークにより、多様な学習機会の提供を図るとともに、地域における学び・交流の場の拡大に努めた。

(イ)文化活動の推進

地域の文化活動の振興を図るため、以下の取組を通じて文化活動の活性化と定着化を図った。

<1>
地域の文化活動の振興を図るため、地域文化リーダーや地域の顔となる文化芸術団体の育成と地域の文化芸術活動の発信・交流、大学と地域の交流・連携の促進事業を行った。
<2>
国民文化祭の開催等による文化活動への参加機会を提供した。
<3>
国立の博物館等における高齢者に対する優遇措置や、バリアフリー化等による芸術鑑賞機会の充実などを行った。

(ウ)スポーツ活動の振興

総合型地域スポーツクラブの全国展開の推進、全国スポーツ・レクリエーション大会(宮崎県)の開催等各種施設を通じて多様なスポーツ活動の振興を図った。

(エ)自然とのふれあい

自然公園等の利用者等をはじめ、国民だれもが自然とのふれあい活動や自然体験が行えるよう、自然ふれあい施設や体験活動のイベント等の情報をインターネット等を通じて提供した。

エ 勤労者の学習活動の支援

生涯学習社会を形成するためには、時間的余裕に乏しく、学習歴や学習目的も多様な勤労者が、学習活動に参加しやすい条件を整備することが必要である。
このため、有給教育訓練休暇制度等の普及促進などを図るとともに、教育訓練給付制度の活用により、勤労者の自発的な能力開発を支援している。

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