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第2章 第3節 1 主な取組

第3節 高齢社会対策の動き

1 主な取組

(1)就業・所得

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案」の提出

平成23年9月から労働政策審議会において、雇用と年金が確実に接続されるよう、希望者全員の65歳までの雇用確保措置等について検討が行われ、平成24年1月、厚生労働大臣に対して建議が行われた。この建議に基づき法律案要綱を同審議会に諮問し、同年2月に答申された。本答申を受け、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止などを内容とする「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案」を平成24年通常国会へ提出した。

シルバー人材センターの支援等

シルバー人材センター事業(平成23年3月末現在、シルバー人材センターの団体数は1,298団体、会員数は約79万人)について、「教育、子育て、介護、環境」等の分野においてシルバー人材センターと地方公共団体が共同して企画提案した事業を支援し、また、各シルバー人材センターにおいて会員が身近な地域で安心して働くことができるよう多様な就業機会を提供するとともに、適切な運営の確保を図っている。

高年齢者職域拡大等助成金の創設

新たに高年齢者職域拡大等助成金を創設し、希望者全員が65歳まで働ける制度や70歳まで働ける制度の導入にあわせて、高年齢者の職域の拡大や雇用管理制度の構築に取り組む事業主を支援し、高年齢者がいきいきと働き続けることができる職場の創出を図っている。

持続可能で安定的な公的年金制度の確立

持続可能で安定的な公的年金制度を確立するため、基礎年金国庫負担割合の2分の1の維持が不可欠となっている。

平成23年度については、「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律」(平成23年法律第121号)が成立し、復興債の発行による収入金を活用して、基礎年金国庫負担割合2分の1を維持した。

24年度については、交付国債により基礎年金国庫負担割合2分の1とするとともに、年金額の特例水準を解消することを内容とする「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案」を24年2月10日に提出した。

個人のライフスタイルの選択に中立的な公的年金制度の構築

働き方やライフコースの選択に影響を与えない中立的な公的年金制度とするという観点から、「短時間労働者への社会保険の適用拡大」や「産休期間中の社会保険料免除」等を盛り込んだ「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案」を平成24年3月30日に提出した。

(2)健康・福祉

生涯にわたる健康づくりの推進

平成12年に策定した「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を推進するため、「適度な運動」、「適切な食生活」、「禁煙」に焦点を当てた「すこやか生活習慣国民運動」(平成20年から実施)を更に普及、発展させた「Smart Life Project」を23年から開始し、民間企業と連携した職域における取組や、企業の経済活動等を通じて、生活習慣病対策の一層の推進を図った。

地域包括ケアシステムの推進

平成24年度から始まる第5期介護保険事業計画に向けて、「地域包括ケアシステム」の実現のためのさらなる取組を図ることを内容とした「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が第177回通常国会において成立した。また、平成24年の医療と介護の同時報酬改定に向けて、社会保障審議会介護給付費分科会において検討を行った。

必要な介護サービスの確保

単身・重度の要介護者などが、できる限り在宅生活を継続できるよう、訪問介護と訪問看護の連携の下で、適切なアセスメントとマネジメントに基づき、日中・夜間を通じて、定期巡回訪問と随時の対応等を適宜・適切に組み合わせて提供する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を創設した。

さらに、福祉・介護人材の確保については、介護労働者の労働環境の整備に資する介護福祉機器の導入に対する助成や雇用管理責任者に対する介護労働者の雇用管理全般についての講習など、雇用管理改善に取り組む事業主への支援に取り組んだ。

認知症高齢者支援施策の推進

平成23年度においては、20年7月に取りまとめられた「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」の提言に基づき、①認知症に関する実態の把握、②診断技術の向上と治療方法の開発など認知症に関する研究開発の促進、③主治医等を中心とした地域医療体制の充実などによる早期診断の推進と適切な医療の提供、④認知症介護の専門職員に対する研修や本人・家族等の支援ネットワークの構築などによる適切なケアの普及及び本人・家族支援、⑤若年性認知症施策を積極的に推進するために必要な取組を実施したところ。また、23年度においては、認知症になっても住み慣れた地域での生活が継続できるよう、認知症地域支援推進員の配置や市民後見活動の推進等を行った。

地域の支え合いによる生活支援の推進

平成23年1月、新たな社会的リスクとしての「孤立化」、「無縁社会」、「孤族」などの問題について、セーフティネットの強化を含めた社会的包摂政策を戦略的に推進するため、「一人ひとりを包摂する社会」特命チームを設置した。

同特命チームにおいては、同年5月に「社会的包摂政策を進めるための基本的考え方」を、8月に「社会的包摂に関する緊急政策提言」をとりまとめた。

これを受けて、社会的包摂政策の一環として、「社会的包摂ワンストップ相談支援事業」を平成23年度第3次補正予算に計上し、一般社団法人社会的包摂サポートセンターにより、ワンストップで電話相談を受け具体的な解決につなげるための面接相談、同行支援を行う事業が実施された。

また、いわゆる「孤立死」の防止対策については、平成24年2月に地方自治体に対して、電気、ガス会社等の事業者との連携強化の徹底や、地方自治体の福祉担当部局に情報を一元的に受け止める体制の構築を要請した。

(3)学習・社会参加

初等中等教育機関における多様な学習機会の確保

新学習指導要領では、児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため、小・中・高等学校において、ボランティアなど社会奉仕に関わる体験活動や、高齢者との交流活動等を含む体験活動の充実を図ることとしている。

さらに、自治体における体験活動の推進を支援する「豊かな体験活動推進事業」において、「自然宿泊体験事業~子ども農山漁村交流プロジェクト~」の中で、小学校が実施する自然体験や集団宿泊体験のほか、ボランティアや高齢者との世代間交流などの体験活動に必要な経費の一部を補助した。

寄附税制の拡充

平成23年6月、認証制度の見直しや財政基盤確立のための措置等を内容とする特定非営利活動促進法を改正するとともに、認定NPO法人の要件緩和や認定NPO法人等及びこれと同様の基準を満たした公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人への寄附金に係る所得税の税額控除の導入等を内容とする寄附税制を拡充した。

新しい公共支援事業

平成22年度補正予算(87.5億円)により、各都道府県に交付金を配分し、各都道府県に設置する基金を用いて、NPO等の活動基盤整備や寄附募集の支援等を行うとともに、NPO、地方公共団体、企業等が協働する取組の支援を実施している。

また、平成23年度第3次補正予算(8.8億円)により、東日本大震災被災地域等において、「新しい公共」の担い手による支援拠点の整備、地域づくりなどを支援するため、被災3県の基金の積み増しを行った。

「新しい公共」推進会議

平成22年10月から開催している「新しい公共」推進会議において、「新しい公共」円卓会議からの提案に対する政府の対応をフォローアップするとともに、政府と市民セクターとの関係のあり方、情報開示・発信基盤のあり方、「新しい公共」による被災者支援活動のあり方に関する3つの報告をとりまとめ、平成23年7月にこれらの報告を受けた「政府の対応」をとりまとめた。

(4)生活環境

良質な民間賃貸住宅の供給促進

高齢者が安心して暮らすことができる住まいの確保に向け、平成23年10月に「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律」が施行され、介護・医療と連携した、「サービス付き高齢者向け住宅」の登録制度が創設された。このサービス付き高齢者向け住宅の供給促進のため、整備費に対する補助、税制の特例、住宅金融支援機構による融資を合わせて支援を実施している。

高齢者の高齢期に適した住宅への住み替え支援

平成23年度より、高齢者が住み替える先のサービス付き高齢者向け住宅に係る入居一時金について、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関のリバースモーゲージの推進を支援している。

さらに、旧住宅金融公庫の融資について、返済期間中に自ら居住する要件を緩和し、高齢者等が所有する戸建て住宅等を子育て世帯等へ賃貸することを可能とした。

公共交通機関のバリアフリー化に対する支援

高齢者の移動等円滑化を図るため、駅・空港等の公共交通ターミナルのエレベーターの設置等の高齢者の利用に配慮した施設の整備、ノンステップバス等の車両の導入などを推進している(表2-1-1)。

表2-1-1 高齢者等のための公共交通機関施設整備等の状況

(1)旅客施設のバリアフリー化の状況(注1)

  1日当たりの平均利用者数5,000人以上の旅客施設数 平成22年度末 1日当たりの平均利用者数5,000人以上かつトイレを設置している旅客施設数 平成22年度末
段差の解消 視覚障害者誘導用ブロック 障害者用トイレ
鉄軌道駅 2,813 2,401(85.4%) 2,736(97.3%) 2,695 2,245(83.3%)
バスターミナル 37 34(91.9%) 32(86.5%) 27 15(55.6%)
旅客船ターミナル 6 6(100.0%) 5(83.3%) 5 5(100.0%)
航空旅客ターミナル 20 19(95.0%)
(100.0% 注2)
20(100.0%) 20 20(100.0%)
(注1)バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に基づく公共交通移動等円滑化基準に適合するものの数字。なお、1日当たりの平均利用者数が5,000人以上であり高低差5メートル以上の鉄軌道駅において、エレベーターが1基以上設置されている駅の割合は88.0%、エスカレーターが1基以上設置されている駅の割合は74.0%となっている。
(注2)航空旅客ターミナルについては、障害者等が利用できるエレベーター・エスカレーター・スロープの設置はすでに平成13年3月末までに100%達成されている。

(2)車両等のバリアフリー化の状況

  車両等の総数 平成22年度末移動等円滑化基準に
適合している車両等
鉄軌道車両 52,871 26,180(49.5%)
低床バス 59,195 29,216(49.4%)
 うちノンステップバス   16,534(27.9%)
旅客船 753 136(18.1%)
航空機 499 406(81.4%)
(注1)「移動等円滑化基準に適合している車両等」は、各車両等に関する公共交通移動等円滑化基準への適合をもって算定。

(3)福祉タクシーの導入状況

平成22年度末 12,256両
(タクシー車両総数 265,431両)

資料:国土交通省

このための推進方策として、鉄道駅、旅客ターミナルのバリアフリー化、ノンステップバス、福祉タクシーの導入等に対する支援措置を実施している。

公共施設等の改善

窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、高齢者等すべての人が円滑かつ快適に施設を利用できるよう、窓口業務を行う事務室の出入口の自動ドア化、多機能トイレの設置等による高度なバリアフリー化を目指した整備を推進している。

都市公園については、バリアフリー法に基づく基準等により、高齢者や障害者を含むすべての人々が快適に利用できるよう、主要な園路の段差の解消、車いすでも利用可能な駐車場やトイレの設置など、公園施設のバリアフリー化を推進している。また、社会資本整備総合交付金等の活用によって、誰もが安全で安心して利用できる都市公園の整備を推進している。

住宅用火災警報器の普及促進等

高齢者を中心に増加する住宅火災による死者数の大幅な低減を図るため、春・秋の全国火災予防運動を通じて「高齢者等の災害時要援護者の把握とその安全対策に重点を置いた死者発生防止対策の推進」等を重点に地域が一体となって、住宅用火災警報器等の設置対策や防炎品の普及促進を含めた総合的な住宅防火対策を推進した。

東日本大震災への対応

平成23年度第1次補正予算においては、被災した介護施設等の復旧に対する国庫補助率を引き上げる等、所要の国庫補助を行った。

さらに、平成23年度第3次補正予算において、「介護基盤緊急整備等臨時特例基金」を積み増し、日常生活圏で医療・介護等のサービスを一体的・継続的に提供する「地域包括ケア」の体制を整備するため、被災市町村が策定する復興支援計画に基づく地域包括ケアの拠点整備等に対して財政支援を行った。社会福祉施設の空きスペースなどを福祉避難所として提供するよう関係各団体に依頼をしている。

あわせて、応急仮設住宅地域において、高齢者等の安心した日常生活を支えるため、総合相談、居宅サービス、生活支援サービス、地域交流などの総合的な機能を有する拠点として「介護等のサポート拠点」の設置・運営を推進した。

高齢者を始め、震災により多くの被災者が震災に便乗した詐欺等の法的トラブルを抱え、経済的・精神的に不安定な状況に陥ることが予想されたところ、日本司法支援センター(法テラス)では、そのような被災者を支援するため、弁護士会や司法書士会との共催による電話相談(平成23年10月までに全て終了)や新たに開設した「震災 法テラスダイヤル」(いずれもフリーダイヤル)などにおいて、生活再建に役立つ法制度などの情報提供を行った。また、高齢者を始め、弁護士のいる都市部への移動が困難な被災者に対する法的支援の拠点として、被災地の沿岸部に出張所を設置して弁護士や各種専門家による無料相談を行ったほか、車内で相談対応可能な自動車を利用した仮設住宅での巡回相談などを実施した。

(5)調査研究等の推進

高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等

悪性新生物(がん)・生活習慣病等に関する有望な基礎研究の成果を実用化するための支援拠点の整備や、これらの疾患の早期診断・治療薬開発に資する分子イメージング技術の実証に向けた研究等を行った。さらに、こうした成果も活用しつつ、個人に最適な医療の実現に向けた取組を引き続き推進した。

さらに、平成23年度から、次世代のがん医療の実現に向けて、革新的な基礎研究成果を戦略的に育成し、臨床応用を目指した研究を加速する「次世代がん研究戦略推進プロジェクト」を推進している。

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