第1章 高齢化の状況

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第3節 一人暮らし高齢者に関する意識

コラム3 自治体と民間業者による高齢者の見守り体制の強化~見守りネットワークの充実~

高齢者の一人暮らしが増えることによる孤独死は深刻な問題となっており、異常を伝える・受け取る仕組みづくりや、地域の見守りネットワークの整備が急務となっている。

ここでは、地域の助けに加え、地域で事業を行う民間事業者等の協力を得ながら見守り体制の強化を図る、東京都練馬区の取組みを紹介する。

東京都練馬区は東京23区の北西部に位置し、面積は23区内で5番目の広さを有し、人口は2番目の多さとなっている。昭和61年に光が丘地区等の開発に伴い、1万人以上の際立って大きい伸びを示した。その後も逓増を続け、平成20年に人口70万人を突破し現在でも増え続けている。練馬区は、東京都全体と比べた場合、平均的な高齢化率であるが、年齢構成上50歳代の比率が高いことが特徴である。昭和60年代に流入した世代が高齢化していることがうかがわれ、今後、高齢化が急速に進展することが懸念されている。

こうした状況を背景として、平成26年9月、練馬区は郵便、ガス等の17団体(平成27年3月現在)(約6,000事業者等)と、高齢者見守りネットワーク協定を締結し、地域で事業を行うNPOやボランティア団体なども含めた民間事業者等の協力を得ることで見守りを充実・強化した。地域の助け合いに加え、見守り協定団体によるゆるやかな見守り体制を構築することにより、孤独死が発生しないように地域全体を網羅する重層的な見守りを実施、さらなるネットワーク作りを目指している。また、万が一孤独死が発生した場合でもあっても、尊厳が保たれるよう速やかに発見できる街づくりが進められている。

ネットワーク協定の締結事業者の一つである郵便局では、配達員が各戸を訪問した際、異変に気が付いた場合に、行政による保護の必要性があるかどうか等を総合的に勘案して、高齢者相談センターへ通報することとしている。また、郵便局内の社員を中心に認知症サポーターの講習の受講を推奨し、地域の身近な見守り手の育成を進めている。今後、更に多くの社員が認知症についての知識を深め、地域の見守り活動を充実させることとしている。

また、東京ガスグループの東京ガスライフバルでは、地域にお住まいのお客様に安心して暮らしてもらうために、毎月の検針で訪問する「ハローメイトさん」を中心に、郵便物がたまっているなどの異変を感じた時には通報することとしている。ガス使用量が「0」のお客様に対しても、事業所に戻ってから架電するなど状況の把握に努めている。

さらに、日頃から顔が見える関係の構築に努め、高齢者のお宅を訪問した際には検針票をなるべく手渡しするようにして、安否確認に併せて「お元気ですか?」の一声をかけている。高齢者のみならず、子どもが泣き叫んでいたときなど虐待の疑いがあれば通報するなど、一歩踏み込んだ見守りを心掛けている。

練馬区の社会福祉協議会では、こうした事業者による取組の推進に加え、光が丘地域をモデル地域に定め、見守りを希望する人の登録を推奨してきた。光が丘地区の自治会や団地の管理組合などで構成された「光が丘地区連合協議会」会長の高橋司郎さんが中心となり、見守りを希望する人が朝起床後、予め渡しているマグネット式ステッカー(「無事です。」と記載されたもの)をドアの外側に張り、見守る立場のボランティアがそのマグネットを確認後ポストに返却するという、見守りの仕組みを立ち上げている。

また、自治会も、引きこもり高齢者への支援を通じてネットワーク作りに役立てようと、認知症高齢者の予防のために誰でも気軽に立ち寄れるサロンを立ち上げた。

今後、一人暮らしで、普段、行政機関と情報を共有できる機会がなく、「自分は誰のやっかいにもならない」と言っている人たちとの接触をどう図っていくかということが、個人情報保護との兼ね合いもあり課題である。そのため、「塵も積もれば山となる」「継続は力なり」と、最初は小さな活動でも声かけを継続することでやがて目に見える成果となることを、支援を行う側全員が認識することが、非常に重要である。

こうした事例に即して、平成26年3月に、光が丘地区連絡協議会が社会福祉協議会の全面的な支援のもとで「おせっかいなまち光が丘~孤立死ゼロをめざして~」と題する冊子を作成した。この冊子では、「異臭」、「家の中で物音はするけれど返事がない」、「郵便・新聞がたまった」、「連絡がとれない」ときなどを緊急事態としてためらわないで110番することを勧めている。

高齢者の見守り体制の強化の写真1
高齢者の見守り体制の強化の写真2
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