平成27年度 高齢社会対策

[目次]  [戻る]  [次へ]

第2 分野別の高齢社会対策

5 高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進のための基本的施策

(1)高齢者向け市場の開拓と活性化

ア 医療・介護・健康関連産業の強化

地域における公的保険外の予防・健康管理サービスの創出に向け、医療分野等のグレーゾーン解消による新ビジネスの創出や、「地域版ヘルスケア産業協議会(仮称)」の全国展開等の推進を図る。また、企業等の健康投資・健康経営を促すため、健康づくりを担当する役員(CHO:Chief Health Officer)の設置や様々な媒体による情報開示等を推進していく。

イ 不安の解消、生涯を楽しむための医療・介護サービスの基盤強化

医療・介護従事者不足や医師の診療科偏在・地域偏在の課題等の解決のための取組として、平成27年度も引き続き、地域医療支援センターの拡充、チーム医療の推進等を行っていく。医学部入学定員については、20年度から段階的に増員を行ってきているが、27年度も65人の増員を行う(20年度からの増員は累計1,509人)。病床に応じた医療資源の投入を行い、効率的・効果的な質の高い医療サービスを安定的に提供できる体制の構築に向けた取組を進める。

さらに、地域包括ケアの推進等により住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるような体制整備を目指して、引き続き在宅での医療と介護の連携の推進など、制度、報酬及び予算面から包括的に取組を行う。

ウ 地域における高齢者の安心な暮らしの実現

平成27年度においても、地域主導による地域医療の再生や在宅介護の充実を引き続き図っていく。そのため、介護関係者のみならず、医療関係者や地域住民などの多職種で高齢者の支援方針や地域課題の解決に向けた検討を行う「地域ケア会議」の取組や、情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備などを進め、地域に暮らす高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会を構築していく。

新たなシニア向けサービスの需要の創造、高齢者の起業や雇用の促進、高齢者が有する技術・知識等の次世代への継承等の好循環を可能とする環境を整備していく。

(2)超高齢社会に対応するための調査研究等の推進と基盤整備

ア 健康・医療関連分野におけるイノベーションの推進

平成26年7月に閣議決定した「健康・医療戦略」及び健康・医療戦略推進本部決定した「医療分野研究開発計画」に掲げる諸施策を効率的・効果的に推進していく。また、平成27年4月に「国立研究開発法人日本医療研究開発機構」を設立する。

「国立研究開発法人日本医療研究開発機構」は、これまで各省それぞれで実施されていた医療分野の研究開発関連予算を集約し、「医療分野研究開発推進計画」に基づき、医療分野の研究開発に関し、基礎から実用化まで切れ目ない研究支援を一体的に行う。

イ 高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等

高齢者の介護予防や健康保持等に向けた取組を一層推進するため、要介護状態になる大きな要因である認知症、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)等に着目し、それらの予防、早期診断及び治療技術等の確立に向けた研究を行う。

がん対策については、「がん対策推進基本計画」(平成24年6月閣議決定。以下「基本計画」という。)に掲げられた3つの全体目標(「がんによる死亡者の減少」、「全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」)の達成のため、「放射線療法、化学療法、手術療法の更なる充実とこれらを専門的に行う医療従事者の育成」、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」、「がん登録の推進」、「働く世代や小児へのがん対策の充実」等の課題について総合的かつ計画的に取り組んでいく。がん研究についても、基本計画に基づき策定された「がん研究10か年戦略」を踏まえ実施する。基本計画に明記されている政策課題の解決に向けた政策提言に資することを目的とした調査研究等に加えて、がんの新たな予防法・早期発見手法の実用化、新規薬剤・医療機器開発、標準治療の開発等を目指した研究を強力に推進する。特に、小児がんや高齢者のがん、難治性がん、希少がん等、ライフステージや個々の特性に着目したがん研究を強力に推進することによりライフステージ別のニーズに応じたがん医療の提供を目指す。

また、次世代のがん医療の確立に向けて、基礎研究の有望な成果を厳選し、日本発の革新的な診断・治療薬に資する新規化合物等の「有望シーズ」の開発を戦略的に推進する。さらに、こうした成果も活用しつつ、個人に最適な医療の実現に向けた取組を引き続き推進する。

ロボット技術、再生医療、IT等を応用して、低侵襲の治療装置や早期に疾患を発見する診断装置など、日本発の、国際競争力の高い革新的医療機器・システムの開発・実用化を図る。また、関係各省や関連機関、企業、地域支援機関が連携し、開発初期段階から事業化に至るまで、切れ目なく支援する「医療機器開発支援ネットワーク」を実施するとともに、ものづくり中小企業と医療機関等との医工連携により、医療現場の課題に応える医療機器の開発・実用化を進める。こうした事業を国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」を通じて実施する。

ウ 高齢者の自立・支援等のための医療・リハビリ・介護関連機器等に関する研究開発

高齢者等の自立や社会参加の促進及び介護者の負担の軽減を図るためには、高齢者等の特性を踏まえた福祉用具や医療機器等の研究開発を行う。

福祉や医療に対するニーズの高い研究開発を効率的に実施するためのプロジェクトの推進、短期間で開発可能な福祉用具・医療機器の民間による開発の支援等を行う。

「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」(平成5年法律第38号)に基づき、福祉用具の実用化開発を行う事業者に対する助成や、研究開発及び普及のために必要な情報の収集・分析及び提供を実施する。

また、民間企業等が行う高齢者や介護従事者等の現場のニーズに応えるロボット技術の研究開発を引き続き支援する。

さらに、開発の早い段階から介護現場のニーズを伝達し、試作機器について介護現場での実証(モニター調査・評価)等を行い、介護ロボットの実用化を支援する。

エ 情報通信の活用等に関する研究開発

高齢者等が情報通信の利便を享受できる情報バリアフリー環境の整備を図るため、引き続き、高齢者等向けの通信・放送サービスに関する技術の研究開発を行う者に対する助成等を行う。

また、高齢者等が安全で快適に移動できるよう、最先端の情報通信技術等を用いて、運転者に周辺の交通状況等を視覚・聴覚情報により提供することで危険要因に対する注意を促し、ゆとりをもった運転ができる環境を作り出すことにより、交通事故を防止する安全運転支援システム(DSSS)やETC2.0サービス等のITS(高度道路交通システム)に関する研究開発及びサービス展開を実施する。

オ 高齢社会対策の総合的な推進のための政策研究
(ア)国際比較調査

高齢社会対策を的確に推進し、高齢者が健やかで充実した生活を営むことができる豊かな社会を構築していくことを目的として、日本のみならず海外の高齢者の生活や意識に係る現状を把握するため、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」を実施する。

(イ)高齢社会対策総合調査・研究等

また、高齢者等の安全・安心な生活の実現のために、独立行政法人科学技術振興機構が実施する戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)において、研究者と関与者との協働による社会実験を含んだ、高齢社会の問題解決に資する研究開発を推進する。

[目次]  [戻る]  [次へ]