第1章 高齢化の状況(第2節 トピックス3)

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第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向(トピックス3)

トピックス3 地域における多世代共生の取組

高齢者のいる世帯の約半分は、一人暮らし世帯又は夫婦のみの世帯となっており、特に一人暮らし世帯の増加は男女ともに顕著である。他方で、若い世代と交流したいと考えている高齢者は多い。このような背景の中、子供から高齢者までが世代を超えて交流し、支え合うまちづくりに取り組んでいるところがある。政府でも、地方創生の観点から、中高年齢者が希望に応じて地方や「まちなか」に移り住み、地域住民や多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができる「生涯活躍のまち」づくりの推進を行っている。このコラムでは、このような地域における多世代共生に取り組まれている事例を紹介する。

(1)団地の再生と地域社会とのコミュニティづくり(ゆいま~る多摩平の森)

株式会社コミュニティネットでは、子供から高齢者まで様々な価値観を持つ人たちが、世代や立場を超え、お互いに生活を尊重しながら、ともに支え合える仕組のあるまちづくりに取り組んでいる。このような理念を実現するための取組の中で、特に高齢者がそれぞれ積み重ねてきた人生、そのなかで培われた価値観や、個の尊厳を尊重した「住まい」と「住まい方」を大切にしている「ゆいま~るシリーズ」は全国に10か所展開している。

東京都日野市にある「ゆいま~る多摩平の森」では、UR都市機構の既存の団地を「サービス付き高齢者向け住宅、コミュニティハウス」として利用している。現在住んでいる方の8割が女性のひとり暮らしであり、平均年齢は83歳。介護が必要になってから引っ越すのではなく、終末期の過ごし方を考え、個人が判断し、終の棲家として住まう住宅として運営されている。

UR都市機構の既存の団地を利用したサービス付き高齢者向け住宅、コミュニティハウス
UR都市機構の既存の団地を利用したサービス付き高齢者向け住宅、コミュニティハウス

同じ敷地には、近くにある大学の学生などが住むシェアハウス、家族世帯が住む菜園付き賃貸住宅がある。周りには、保育園、病院、スポーツジム、特別養護老人ホーム、医師会事務所、貸出の畑などの機能があり利便性がよく、また建物には小規模多機能型居宅介護と食堂兼集会室を併設している。食堂は地域の誰でもが利用可能であり、近隣の一人暮らし高齢者なども、健康づくりのため利用している。

既存の団地を利用しているため、敷地の境には塀などもなく、近隣の方へのストレスが少なくなるような配慮がされていることから共生しやすい環境になっている。また、既存の団地を利用することのメリットとして、価格が抑えられること、新しい建物が建つという抵抗感・圧迫感が無く近隣の人から親しみを得やすいことが挙げられる。

この団地内には、介護以外で生活をサポートするスタッフが日中2名、夜間1名勤務している。ここに住む高齢者は毎朝、朝5時半~10時にフロント前のカウンターに来て名前を記入することになっている。これは1日1回は外に出るという生活リズムや人と会いコミュニケーションに繋がるなどの効果が大きい。もし、氏名の記載がなければスタッフが安否確認のために住戸に入り安否を確認することもある。また、ちょっとした困りごと(電球の交換、探し物など)にも対応できるように、スタッフが常駐し、見守りも行っている。このように、ちょっとしたことを人に頼むことができる環境のため、家族のサポートを前提とせずに「おひとり様」で暮らすことができる。

また、スタッフだけでなく、「ちょこっと仕事の会」という入居者同士の任意の有償ボランティア活動を行っており、通院、買い物、慶弔の同行や、傾聴散歩などを通じて入居者同士の繋がりができている。現役の時に経理を行っていた方が帳簿管理を行うなど、それぞれの生きがいに繋がっている。

多目的室で、同じ敷地内の団地に住む若者に高齢者が編み物を教えるなどの交流も行っている。更に、近隣の方も自由に参加できる体操教室、太極拳、絵手紙を通して高齢者同士の交流を行っているほか、近隣の店に声かけをして花見イベントを行い、地域に開かれたコミュニケーションをとっている。

ゆいま~る多摩平の森の職員の方は「世代によって異なる価値観をむりやり一緒にして“交流”とするのではなく、多世代が存在している空間“共生”がポイント。過剰な交流はわずらわしさや疲れに繋がるので“緩やかに繋がる”ことを大切にすることが、高齢者と他世代との交流には大切なことだと考えている。」と話していた。

近隣の方も参加しているゆいま~る多摩平の森内で行われた餅つき大会
近隣の方も参加しているゆいま~る多摩平の森内で行われた餅つき大会

(2)生涯健康・活躍を目指す「ごちゃまぜ」のまちづくり(B’s行善寺)

石川県にある社会福祉法人佛子園(以下、佛子園)は、白山市にある行善寺に地域の戦争孤児を預かることから始まり、1960年3月に社会福祉法人として開設した。現在、佛子園では、お年寄りから若者・子供、元気な人・そうでない人も、障害のある人・ない人も、同じ町で「ごちゃまぜ」で暮らせる地域づくりに取り組んでいる。

この「ごちゃまぜ」のまちづくりの原点は、小松市野田町の三草二木西圓寺(2008年~)にある。廃寺を温泉にし、地域コミュニティセンターとして復興。障害がある人もない人も、子供も高齢者も交わるコミュニティとして広がり、野田町地域の世帯数は、9年間で55世帯から71世帯に増加した。

また、金沢市にあるShare金沢は、敷地内にサービス付き高齢者住宅、学生向け住宅、児童入所施設等があり、高齢者や学生、障害のある子供達が同じ空間の中で暮らす「生涯活躍のまち」のモデルの1つとして挙げられている。敷地内には、その他、天然温泉、10のテナント等や、高齢者デイサービス、放課後児童クラブも運営が行われており、住民だけでなく、地域の方々も多く訪れる地域の人の憩いの場となっている。

このように、「ごちゃまぜ」のまちづくりに取り組んでいる佛子園であるが、次に、当法人発祥の地である行善寺のある白山市において、地域のコミュニティ拠点「B’s行善寺」を2016年10月に開設し、新たな「ごちゃまぜ」のまちづくりに取り組んでいる。3キロ圏内のサービス付き高齢者住宅や12軒のグループホーム、医療施設等と連携したタウン型のまちづくりである。

B’s行善寺外観
B’s行善寺外観

拠点内には、温泉、そば屋、住民自治室、保育園、スポーツジム、児童発達支援センター、クリニック等があり、障害者就労支援や通所介護・短期入所サービス等を行っている。スポーツジムの「GOTCHA!WELLNESS」とクリニック「B’s Clinic」が町のかかりつけとして健康をサポートする2本柱が特徴である。

地域のコミュニティ拠点として開設された「B’s行善寺」であるが、B’s行善寺に年々訪れる人口(交流人口)は増加しており、2015年4月に8,721人だった交流人口は2017年3月では29,523人まで拡大した。また、スポーツジム「GOTCHA!WELLNESS」は、1日当たりの利用率が全会員の50%超と高く、多くの人々が足を運ぶ場にもなっている。

B’s行善寺で定期的に行われている「柿乃市」
B’s行善寺で定期的に行われている「柿乃市」

このような背景には、地域の人々が訪れたいと思う拠点作りを地域の人々と模索しながら、佛子園が取り組んでいる結果がある。旧特別支援学校を活用した体育館では地域住民が無料で使用することが可能であり、また、憩いの場になる温泉や足湯、食事処、カフェに加え、住民自治室もある。また、地域の人々による敷地内での朝市が毎月開催され、その収益の一部は、地域住民が町のために使用方法を考える仕組となっている。住民自治室の中には、コーヒーメーカーと住民のマイマグカップが置いてあり、誰でも安価にコーヒーを飲むことができるようになっている。

このような地域の人々が行う拠点作りは、結果として、高齢者が外に出るきっかけを作ったり、スポーツジムの利用率の向上に繋がったりしている。

佛子園は、次の取組として、石川県輪島市で計画中の輪島KABULET®を2018年4月の本格的事業開始に向け急ピッチで準備を進めている。全国どこにでもあるような空き家空き地の有効利用のほか、日本初となる電動カート公道走行による新交通システム、輪島塗の再ブランディングと原料となる漆樹林の再生などを通して、地域に暮らすすべての人々が「ごちゃまぜ」になって関わり合う拠点となることを目指している。

佛子園の理事長の雄谷氏は、「地域がそれぞれの特徴を活かし自律的で持続可能な社会の実現を果たすには、子どもから高齢者に至るすべての住民が何らかの役割を果たしていくことが大切。アルビン・トフラーは人類有史における現代の情報化による変革期を「第三の波」と呼んだが、折しも福祉・医療も戦後の措置、契約に続く第三の波を迎えているのではないか。私たちはそれが地域住民すべての「参加する」社会であると確信し、新しい福祉・医療を通して地域の在り方を提案したいと考えている。」と話していた。

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