第2章 高齢社会対策の実施の状況(第2節 1)

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第2節 分野別の施策の実施の状況(1)

主な取組

1 就業・所得

○多様な働き方を選択できる環境の整備

定年退職後等において、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する者に対して、意欲や能力に応じた就業機会、社会参加の場を総合的に提供するシルバー人材センター事業について、各シルバー人材センターにおける就業機会の拡大・会員拡大などの取組への支援を行い、特に現役世代の活躍推進のため、育児支援分野等における就業機会確保のための取組を支援する高齢者活用・現役世代雇用サポート事業を実施した。また、シルバー人材センターが地方公共団体や地域の経済団体等の関係機関と連携して、地域企業の雇用問題の解決等につながる新たな就業機会を創造する地域就業機会創出・拡大事業を創設するなど、各シルバー人材センターの会員が身近な地域で安心して働くことができるよう、多様な就業機会を提供するとともに適切な運営の確保を図った。併せて、多様化する高年齢者のニーズに対応するため、平成28年より都道府県知事が業種・職種及び地域を指定した場合に限り、派遣及び職業紹介の働き方において就業時間の要件緩和が可能となり、平成29年度までに134地域で要件緩和がなされた。

○情報通信を活用した遠隔型勤務形態の開発・普及

テレワークが高齢者等の遠隔型勤務形態に資するものとして、テレワークの一層の普及拡大に向けた環境整備、普及啓発等を関係省庁が連携して推進している。これに基づき仕事と子育て・介護等の両立など柔軟な働き方が可能となるテレワークモデルを構築するなど、引き続き適正な労働条件下における良質なテレワークの普及を図った。

さらに、平成29年から、関係府省・団体が連携し、2020年東京オリンピックの開会式が予定されている7月24日を「テレワーク・デイ」と位置付け、全国一斉のテレワークを実施した。この日は、全国各地から様々な分野の企業、自治体など約950団体、6.3万人がテレワークを行った。

○高齢期の起業の支援

日本政策金融公庫(国民生活事業・中小企業事業)において、高齢者等を対象に優遇金利を適用する融資制度(女性、若者/シニア起業家支援資金)により開業・創業の支援を行った。

また、中高年齢者等の雇用機会の創出を図るため、中高年齢者等が起業(いわゆるベンチャー企業の創業)する際に必要となる、雇用の創出に要する経費の一部を助成する措置を実施するとともに、助成金の支給要件となっている雇い入れる従業員の年齢等に係る要件緩和を行った。

日本政策金融公庫(国民生活事業・中小企業事業)の融資制度(地域活性化・雇用促進資金)において、エイジフリーな勤労環境の整備を促進するため、高齢者(60歳以上)等の雇用等を行う事業者に対しては当該制度の利用に必要な雇用創出効果の要件を緩和(2名以上の雇用創出から1名以上の雇用創出に緩和)する措置を継続した。

○誰もが安心できる公的年金制度の構築

高齢者の7割近くが、65歳を超えて働きたいと希望している状況を踏まえ、65歳より後に受給を開始する繰下げ制度について、積極的に制度の周知に取り組むとともに、70歳以降の受給開始を選択可能とするなど、年金受給者にとってより柔軟で使いやすいものとなるよう制度の改善に向けた検討を行うこととした。

繰下げ制度の周知に関しては、日本年金機構において、①年金請求書を事前に送付する際に同封しているパンフレットや、②特別支給の老齢厚生年金受給者に65歳時にハガキ形式の年金請求書を送付する際に同封しているパンフレットについて、繰下げ制度に関する記載を増やし、また図を挿入するなどの工夫により、周知方法の改善を行った。

また、働きやすい人が働きやすい環境を整えるとともに、短時間労働者に対する年金などの保障を厚くする観点から、平成28年に成立した「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第114号。以下「年金改革法」という。)に基づき、平成28年10月からの大企業で働く短時間労働者を対象とした被用者保険の適用拡大の施行に加えて、平成29年4月から中小企業等で働く短時間労働者に対して、労使合意に基づき、企業単位で被用者保険の適用を可能とした。また、全ての適用事業所に対するリーフレットの送付や事業主向け説明会の実施等、周知・広報に取り組んだ。

○資産形成等の促進のための環境整備

勤労者財産形成貯蓄制度の普及等を図ることにより、高齢期に備えた勤労者の自助努力による計画的な財産形成を促進した。

確定拠出年金については、平成29年1月より加入可能範囲が拡大したiDeCo(個人型確定拠出年金)につき、普及・拡大を図るための周知・広報を引き続き行ったほか、掛金拠出規制の年単位への見直しを行い、平成30年1月より柔軟な掛金拠出を可能とした。退職金制度については、中小企業における退職金制度の導入を支援するため、中小企業退職金共済制度の普及促進のための施策を実施した。

さらに、国民の安定的な資産形成の実現に向けて、少額からの長期・積立・分散投資の定着を促していくため、つみたてNISA(非課税累積投資契約に係る非課税措置)を創設した。同制度は平成30年1月から開始されたが、制度の普及を図るため、広報活動等を通じて制度の周知に努めると共に、きっかけがない等の理由から、投資を通じて資産形成に取り組むには至っていない勤労者の存在も踏まえ、身近な場でつみたてNISAを開始するきっかけが得られるよう、職場を活用し、つみたてNISAの利用促進を図る取組みである「職場つみたてNISA」を開始した。

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