第2章 平成29年度高齢社会対策の実施の状況(第1節 3)

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第1節 高齢社会対策の基本的枠組み(3)

3 高齢社会対策大綱

(1)高齢社会対策大綱の策定

高齢社会対策大綱は、高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務付けられているものであり、政府が推進する高齢社会対策の中長期にわたる基本的かつ総合的な指針となるものである。

平成8年7月に最初の高齢社会対策大綱が策定されてから5年が経過し、経済社会情勢も変化したことから、13年5月、高齢社会対策会議(第8回)において、大綱の見直し・新たな大綱の策定を行うことが決定され、同年12月28日、高齢社会対策会議(第9回)における案の作成を経て、2度目となる高齢社会対策大綱が閣議決定された。それから10年が経過したことから、23年10月、高齢社会対策会議(第20回)において大綱の見直しを行うことが決定され、平成24年9月7日、高齢社会対策会議(第22回)における案の作成を経て、3度目となる高齢社会対策大綱が閣議決定された。

(2)大綱の改定

3度目となる高齢社会対策大綱が取りまとめられた平成24年以降、我が国の高齢化率(65歳以上人口割合)には一層の上昇が見られ、また、今後も上昇傾向が続くことが見込まれていた。人口の高齢化を受けて、経済・社会面では、就業、社会保障、生活、経済活動など、様々な分野で変化が生じていることから、平成29年6月、高齢社会対策会議(第27回)において、大綱の見直しを行うことが決定された。同年同月から、内閣府において「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」(座長:清家篤慶應義塾大学商学部教授(肩書きは開催当時))が開催され、同年10月に検討会報告書が取りまとめられた。その後、本報告書等を踏まえ、政府内で高齢社会対策大綱の案の策定が進められ、平成30年2月16日、高齢社会対策会議(第29回)における案の決定を経て、4度目となる高齢社会対策大綱(以下、「新大綱」という。)が閣議決定された。

新大綱では、「高齢者の体力的年齢は若くなっている。また、就業・地域活動など何らかの形で社会との関わりを持つことについての意欲も高い」、「65歳以上を一律に『高齢者』と見る一般的な傾向は、現状に照らせばもはや、現実的なものでなくなりつつある」と示し、「意欲ある高齢者の能力発揮を可能にする社会環境を整えること」とともに、全ての人が安心して高齢期を迎えられるような社会を作る観点から「十全な支援やセーフティネットの整備を図る必要がある」としている。また、人口の高齢化に伴って生ずる様々な社会的課題に対応することは、高齢層のみならず、若年層も含めた全ての世代が満ち足りた人生を送ることのできる環境を作ることを意味するとしている。

(3)基本的考え方

新大綱では、高齢社会対策基本法第2条に掲げる社会が構築されることを基本理念とし、以下の3つの基本的考え方にのっとり、高齢社会対策を推進することとしている。

  • ① 年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指す。
    • 年齢区分でライフステージを画一化することの見直し
    • 誰もが安心できる「全世代型の社会保障」も見据える
  • ② 地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る。
    • 多世代間の協力拡大や社会的孤立を防止
    • 高齢者が安全・安心かつ豊かに暮らせるコミュニティづくり
  • ③ 技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する。
    • 高齢期の能力発揮に向けて、新技術が新たな視点で、支障となる問題(身体・認知能力等)への解決策をもたらす可能性に留意

(4)分野別の基本的施策

高齢社会対策の推進の基本的考え方を踏まえ、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、研究開発・国際社会への貢献等、全ての世代の活躍推進の6つの分野で、基本的施策に関する中期にわたる指針を次のとおり定めている。

  • ① 「就業・所得」

    エイジレスに働ける社会の実現に向けた環境整備、公的年金制度の安定的運営、資産形成等の支援などを図ることとしている。

  • ② 「健康・福祉」

    健康づくりの総合的推進、持続可能な介護保険制度の運営、介護サービスの充実(介護離職ゼロの実現)、持続可能な高齢者医療制度の運営、認知症高齢者支援施策の推進、人生の最終段階における医療の在り方、住民等を中心とした地域の支え合いの仕組み作りの促進などを図ることとしている。

  • ③ 「学習・社会参加」

    学習活動の促進、社会参加活動の促進などを図ることとしている。

  • ④ 「生活環境」

    豊かで安定した住生活の確保、高齢社会に適したまちづくりの総合的推進、交通安全の確保と犯罪、災害等からの保護、成年後見制度の利用促進などを図ることとしている。

  • ⑤ 「研究開発・国際社会への貢献等」

    先進技術の活用及び高齢者向け市場の活性化、研究開発等の推進と基盤整備、諸外国との知見や課題の共有などを図ることとしている。

  • ⑥ 「全ての世代の活躍推進」

    全ての世代の人々が高齢社会での役割を担いながら、積極的に参画する社会を構築するための施策の推進を図ることとしており、各分野でニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)、働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)、新しい経済政策パッケージ(平成29年12月8日閣議決定)等との連携も進めていく。

(5)推進体制等

高齢社会対策を総合的に推進するため、高齢社会対策会議において、本大綱のフォローアップ等重要事項の審議等を行うこととしている。

また、高齢社会対策の推進に当たっては、65歳以上を一律に「高齢者」と見る一般的な傾向が現実的なものでなくなりつつあることを踏まえ、70歳やそれ以降でも個々人の意欲・能力に応じた力を発揮できる社会環境づくりを推進するとの基本方針に立って、以下の点に留意することとしている。

  • ① 内閣府、厚生労働省その他の地方公共団体を含む関係行政機関の間に緊密な連携・協力を図るとともに、施策相互間の十分な調整を図ること。
  • ② 本大綱を実効性のあるものとするため、各分野において「数値目標」及び「参照指標」を示すこと。また、政策評価、情報公開等の推進により、効率的かつ国民に信頼される施策を推進すること。
  • ③ 「数値目標」とは、高齢社会対策として分野別の各施策を計画的かつ効果的に進めていくに当たっての目標として示すものであること。短期的な中間目標として示すものについては、その時点の達成状況を踏まえ、一層の進捗を図ること。「参照指標」とは、我が国の高齢社会の状況や政策の進捗を把握し、課題の抽出、政策への反映により、状況の改善、展開を図るためのものであること。
  • ④ エビデンスに基づく政策形成の推進を図ること。このため、高齢化の状況及び高齢社会対策に係る情報の収集・分析・評価を行うとともに、これらの情報を国民に提供するために必要な体制の整備を図ること。
  • ⑤ 高齢社会対策の推進について広く国民の意見の反映に努めるとともに、国民の理解と協力を得るため、効果的な広報、啓発及び教育を実施すること。

なお、本大綱については、政府の高齢社会対策の中長期的な指針としての性格に鑑み、経済社会情勢の変化等を踏まえておおむね5年を目途に必要があると認めるときに、見直しを行うこととしている。

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