平成14年度において実施すべき交通安全施策に関する計画
第1部 陸上交通の安全に関する施策 第1章 道路交通の安全に関する施策
第3節 安全運転の確保

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第1部 陸上交通の安全に関する施策

第1章 道路交通の安全に関する施策

1 運転者教育等の充実

 運転者の自覚と責任ある行動を促し、安全に運転しようとする意識及び態度の育成を図るため、その行動特性を踏まえつつ実効ある運転者教育を推進する。

(1)運転免許を取得しようとする者に対する教育の充実
自動車教習所における教習の充実
安全運転に必要な知識及び技能を身に付けた上で安全運転を実践できる運転者を養成するため、指定自動車教習所における教習や、技能検定が適切に行われるよう必要な指導監督を行うとともに、指定自動車教習所職員に対する研修等を充実し、指導員等の資質の向上を図る。
また、平成14年6月1日より、大型第二種免許及び普通第二種免許の指定自動車教習所における教習及び技能検定制度が導入されることから、その適切な運用に努める。
さらに、指定自動車教習所以外の届出自動車教習所等に対して、必要な助言等を行い、教習水準の向上に努めることとするほか、特定届出自動車教習所に対しては、教習の課程の指定を受けた教習が適切に行われるよう指導する。
このほか、教習水準に関する情報の国民への提供に努める。
取得時講習の充実
普通免許、大型二輪免許、普通二輪免許又は原付免許を取得しようとする者に対する取得時講習を効果的に実施するため、必要な施設、体制の整備及び内容の充実に努める。
また、平成14年6月1日から大型第二種免許及び普通第二種免許を取得しようとする者に対しても取得時講習が義務付けられるため、必要な施設等の充実に努める。
(2)運転者に対する再教育等の充実
高齢者講習、違反者講習、取消処分者講習及び停止処分者講習の指導員の養成、資器材の整備その他講習実施体制を整備し、効果的な講習の推進に努めることとする。また、、初心運転者講習及び更新時講習の効果的な実施に努める。
このほか、運転免許を取得した者に対する再教育を実施している自動車教習所等に対し、必要な助言指導を行い、その水準の向上を図るとともに、新設された運転免許取得者教育の認定制度の活用により、運転免許取得者教育の普及を図る。
(3)二輪車安全運転対策の推進
取得時講習の円滑且つ効果的な運用に努めるとともに、更新時講習等における二輪車学級、普通二輪・大型二輪免許証交付時講習の実施に努める。また、二輪車安全運転講習及び原付等安全講習の開催や指定自動車教習所における二輪車運転者に対する実践的・効果的な教習の実施を積極的に支援する。
(4)高齢運転者対策の充実
高齢運転者の交通事故防止を図るため、高齢者講習、更新時講習等の機会を通じて、高齢運転者の交通事故の実態、高齢運転者にみられる身体機能の特性等を理解させることを内容とする交通安全教育を推進するほか、運転適性検査器材や運転シミュレーターを活用した個別安全運転指導を推進するとともに、臨時適性検査制度等の積極的な活用に努める。また、実車を用いた参加・体験・実践型の交通安全教育の積極的な開催に努める。
さらに、平成14年6月1日から高齢者講習の受講を要する者の範囲が70歳以上の者に拡大されることから、その適切な運用に努める。
(5)シートベルト及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底
シートベルト及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底を図るため、関係機関・団体と連携し、各種講習・交通安全運動等あらゆる機会を通じて、着用効果の啓発等着用推進キャンペーンを積極的に行うとともに、シートベルト着用義務違反及びヘルメット着用義務違反に対する街頭での指導取締りの充実を図る。
(6)自動車安全運転センターの業務の充実
自動車安全運転センターの行なう通知、証明、調査研究業務等の一層の充実強化を図るとともに、安全運転中央研修所における各種の訓練施設を活用し、高度の運転技能と専門的知識を必要とする安全運転指導者、職業運転者、青少年運転者等に対する参加・体験・実践型の交通安全教育の充実を図る。
(7)事業用自動車の運転者教育の充実
事業用自動車の運転者に対する交通安全教育の充実を図るため、自動車運送事業者及び運行管理者に対し運転者の指導監督、中でも初任、高齢及び重大事故惹起運転者に対し、特別の指導を行なうよう徹底を図る。
(8)自動車事故対策センターによる自動車運送事業等に従事する運転者に対する適性診断の充実
事業用自動車の運転者の運転適性に対する自覚を促すため、初任、高齢及び重大事故惹起運転者に対し、適性診断の受診の徹底を図る。また、適性診断指定実施機関である自動車事故対策センターに対し、適性診断の一層の充実を目指すよう指導する。
(9)交通事犯被収容者に対する教育活動等の充実
交通事犯受刑者及び交通事犯少年に対しては、平成14年度も引き続き人命尊重の精神と遵法精神のかん養及び被害者の視点を取り入れた指導等に重点を置き、再犯、再非行の絶無を期して、積極的な教育活動を実施する。
交通事犯受刑者に対する教育活動
交通事犯受刑者を収容する施設においては、規律ある生活の下に、生活指導、職業の指導その他必要な教育の一層の充実を図るとともに、出所後自動車運転に関する業務に従事する予定である者に対しては、体系的な交通安全教育の実施に努める。
交通事犯少年に対する教育活動
交通事犯少年を収容する少年院においては、対象者の個別的な問題性に応じた適切な安全運転教育を中心とする教育及び指導を行うとともに、その将来の生活設計を確立させるため、資質鑑別、適性検査等の結果に基づき、家庭裁判所、学校、保護機関等関係機関の協力を得て、進路指導、職業指導等の充実を図る。
交通事犯少年に対する資質鑑別
少年鑑別所においては、交通事犯少年の特性の的確な把握、より適切な交通鑑別方式の在り方等について、専門的立場からの研究を更に活発化するとともに、CRT運転適性検査や法務省式運転態度検査等の活用により、交通事犯少年に対する資質鑑別の一層の適正・充実化を図る。
(10)交通事犯者に対する保護観察の充実
交通事犯者に対する保護観察の実施に当たっては、遵法精神のかん養、安全運転態度の形成等を目的とした個別処遇及び集団処遇を行い、その充実を図るとともに、指導に当たる保護観察官及び保護司の処遇能力を向上させるための研修を実施する。また、交通短期保護観察については、違反や事故の態様等の問題性に対応した集団処遇を実施し、処遇効果の向上に努める。
(11)悪質危険な運転者の早期排除等
行政処分制度の適切且つ効果的な運用を行なうほか、適性試験及び運転免許証の更新時における適性検査の適正な実施を行い悪質で危険な運転者の早期排除を図る。

2 運転免許制度の改善

 運転免許試験及び各種講習の在り方について、運転者の資質向上が図られるように、その内容、実施方法等に検討を加えるとともに、これらの業務に従事する者の資質や能力の向上に努める。
 運転免許証の偽変造防止等を図る観点から、高度なセキュリティ機能を有する電子技術を応用した運転免許証のICカード化について、その導入に向けて、運転免許証及び周辺機器について、技術的な規格の在り方の検討を行なう。
 また、運転免許試験場における身体障害者等のための設備・資器材の整備及び運転適性相談活動の充実を図る。

3 安全運転管理の推進

 安全運転管理者及び副安全運転管理者に対する講習を充実するなどにより、これらの者の資質及び安全意識の向上を図るとともに、事業所内で交通安全教育指針に基づいた交通安全教育が適切に行われるよう安全運転管理者等を指導する。
 また、安全運転管理者等の未選任事業所の一掃を図り、企業内の安全運転管理体制を充実強化し、安全運転管理業務の徹底を図る。
 さらに、事業活動に関してなされた道路交通法違反等についての使用者等への通報制度を十分活用するとともに、使用者、安全運転管理者等による下命、容認違反等については、使用者等の責任追求を徹底し適正な運転管理を図る。

4 自動車運送事業者等の行う運行管理の充実

(1)運行管理者制度の充実
運行管理者の確実な業務遂行を徹底するとともに、運行管理者の資質の向上を図るため、運行管理者資格試験の指定実施機関である運行管理者試験センターに対し、試験業務のより一層の充実を目指すよう指導する。
(2)自動車運送事業者等に対する指導監督の充実
自動車運送事業者が休憩又は睡眠のための時間及び休息のための時間が十分確保されるよう勤務時間及び乗務時間の判断基準を有効に活用するとともに、より一層、法令遵守に励むよう指導及び国の事後チェック機能の充実を図る。
(3)事故情報の多角的分析の実施
陸運支局を活用した自動車運送事業者に係る事故やニアミス情報の収集を充実強化する。
 また、これら事故情報のデータベース化を図ることにより、様々な観点からの事故情報の集計・分析・検索を行なうとともに、その結果の有効活用を図る。
(4)運行管理者等に対する指導講習の充実
運行管理業務の充実を図るため、運行管理者講習の指定実施機関である自動車事故対策センターに対し、運行管理者業務の基礎知識、一般知識及び事故再発防止に関し必要な知識を充足するために運行管理者が受講すべき講習や資質ある者が経験年数に足る知識を得るための講習の充実を目指すよう指導する。

5 交通労働災害の防止等

(1)交通労働災害の防止
交通労働災害防止のためのガイドライン(平成6年労働省通達)を事業場に周知徹底するとともに、ガイドラインに基づく対策が効果的に実施されるよう、陸上貨物運送事業労働災害防止協会等と連携して、交通労働災害防止指導員により、引き続き事業場に対する個別指導等を実施し、事業場における交通労働災害防止のための管理体制の確立、無理のない走行計画の策定など自動車等の適正な走行管理等の推進を図る。
また、交通労働災害防止担当管理者及び自動車運転業務従事者に対する教育の推進を図る。
(2)運転者の労働条件の適正化
自動車運転者の労働条件確保のための監督指導等
自動車運転者の労働時間等の労働条件の向上を図り、もって交通事故の防止に資するため、労働基準法(昭和22年法49)等の関係法令及び自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示7)の遵守を図る。
相互通報制度等の活用
交通関係行政機関が、引き続き相互通報制度等を活用し、連携を密にすることにより、各機関が協力して自動車運送事業者等の労務管理及び運行管理の適正化を図っていくこととする。
自主的労務改善の推進
事業主自らが労務管理の改善意欲を高めることにより、業界及び各事業場の自主的な労務改善が行われるよう自動車労務改善推進員(民間有識者に委嘱)を中心として指導を行う。

6 道路交通に関する情報の充実

(1)道路交通情報の充実
多様化する道路利用者のニーズにこたえるため、道路利用者に対し必要な道路交通情報を提供することにより、安全且つ円滑な道路交通を確保するとともに、光ファイバーネットワーク、マイクロエレクトロニクス等の新たな情報技術を活用しつつ、車両監視用テレビ(ITV)、路側通信システム、車両感知器、道路標識、交通情報板等の既存の情報収集・提供体制の充実を図る。
また、民間事業者が、警察や道路管理者により収集された道路交通情報を一層活用できるよう措置し、正確な道路交通情報の適切な提供を促進する。
さらに、高度道路交通システム(I.T.S)の一環として、運転者に渋滞状況等の道路交通情報を提供する道路交通情報通信システム(VICS)の整備・拡充を積極的に図ることにより、交通の分散を図り、交通渋滞を解消し、交通の安全と円滑化を推進する。
都道府県公安委員会においては、車両感知機等の情報収集装置、各種情報提供装置の整備等交通管制センターの高度化により、交通情報収集・提供機能の充実を図る。また、交通管制センターを中心として、各種警察活動や他機関との情報交換を通じて広範な交通情報を収集するとともに、フリーパターン式交通情報板等の効果的運用、(財)日本道路交通情報センター及び報道機関との連携強化等を図ることによって、積極的に一般道路利用者のニーズに応じた情報を提供し、交通流の適切な配分・誘導に努める。さらに、行楽期における大渋滞、台風、地震等による大規模な交通障害に際しては、交通実態を把握し、適切な交通規制及びう回路の設定を行なうほか、広報活動、交通情報の提供等の措置を講ずる。加えて新交通管理システム(UTMS)の構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図る。
道路管理者においては、道路標識の整備に努めるとともに、道路パトロールの強化、道路モニター制度の活用、車両監視用テレビ(ITV)、車両感知器、気象観測装置等の情報収集装置の効果的整備及び路上工事等の情報を収集するシステムの開発を図る。また、他機関との情報交換等により、道路の危険箇所、交通状況等の道路情報を迅速且つ的確に収集し、これらの情報を道路情報板、路側通信、トンネル内ラジオ再放送施設、テレビ、ラジオ、新聞等により広く一般に提供するとともに、一般からの電話照会への対応やファクシミリ等による情報提供サービスを行なうほか、道路管理者相互の連絡体制を強化して、道路情報の効果的利用が図られるよう努める。
また、一般の道路利用者に必要な道路交通情報をより一元的且つ広域的に提供するため、(財)日本道路交通情報センターの情報提供サービスの向上を図るよう指導育成する。
(2)危険物輸送に関する情報提供の充実等
危険物の輸送時の事故による大規模な災害を未然に防止し、災害が発生した場合の被害の軽減に資する情報提供の充実等を図るため、イエローカードの携行、関係法令の遵守、乗務員教育の実施等について危険物運送事業者の指導を強化する。
また、危険物運搬車両の交通事故による危険物の漏えい等が発生した場合に、安全且つ迅速に事故処理等を行うため、危険物に対応することの可能な装備資機材の整備を図る。
さらに、危険有害物質運搬車両に関しては、国連勧告に基づく危険有害物質の表示・特定の仕組みも含め、その表示の在り方について検討する。
(3)気象情報等の充実
道路交通に影響を及ぼす台風、大雨、大雪、強風、霧、地震、津波、火山噴火等の自然現象について、的確に実況監視を行い、適時適切に予報、警報等を発表・伝達して、事故の防止及び被害の軽減に努めるとともに、これらの情報の内容の充実と効果的利用を図るため、火山に関する関係機関の観測データ及び情報の共有化並びに火山活動の診断体制の強化等を行なう。また、より地域を限定して情報を発表するため、地元防災機関との協議の上で、近年の観測・予報技術の進展を背景として、防災関係機関の管轄範囲及び災害特性から発表区域の設定・見直しを全国的に進める。さらに、講習会等により気象等に関する知識の普及に努める。
(4)災害発生時における情報提供の充実
災害発生時において、道路の被災状況や道路交通状況を迅速且つ的確に収集・分析・提供し、復旧対策の早期立案や緊急交通路、緊急輸送路等の確保及び道路利用者等への道路交通情報の提供等に資するため、地震計、車両監視用テレビ、車両感知器、道路交通に関する情報提供装置・通信施設、道路管理情報システム等の整備を推進するとともに、大規模な地震や火山噴火、豪雨・豪雪等の災害に関し、インターネット等情報通信技術(IT)を活用した道路の点検結果や被災状況等の災害情報等の提供を推進する。

第4節 車両の安全性の確保

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