平成14年度において実施すべき交通安全施策に関する計画
第1部 陸上交通の安全に関する施策 第1章 道路交通の安全に関する施策
第6節 救助・救急体制等の整備

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第1部 陸上交通の安全に関する施策

第1章 道路交通の安全に関する施策

第6節 救助・救急体制等の整備

1 救助・救急体制の整備
(1)救助体制の整備・拡充
交通事故に起因する救助活動の増大及び事故の種類・内容の複雑多様化に対処するため、救助工作車等救助資機材の整備・拡充を図り、救助活動の円滑な実施を期する。
(2)救急現場及び搬送途上における応急処置等の充実
交通事故等に起因する負傷者の救命効果の向上を図るため、救急救命士の養成・配置等の促進、一般の救急隊員の行なう応急処置等の充実、高規格救急自動車・高度救命処置用資器材等の全国的な整備等の推進を図る。また、医師の指示又は指導助言のもとに救急救命士を含めた救急隊員による応急処置等の質を確保するメディカルコントロール体制の充実を図る。
(3)救急業務実施市町村の拡大
救急需要の実態等に即した救急業務の実施体制の整備を推進するため、救急業務未実施町村については、市町村合併の推進、一部事務組合、広域連合、事務委託等の広域行政制度によるほか、これにより難い町村については消防組織法(昭和22年法226)に基づく隣接市町村からの応援、消防法(昭和23年法186)に基づく他市町村に対する知事の要請による救急業務の実施、消防団等による救急搬送の実施等による補完体制を強化する。
(4)高速自動車国道等における救急業務実施体制の整備
高速自動車国道における救急業務については、日本道路公団(以下「道路公団」という。)が道路交通管理業務と一元的に自主救急として処理するとともに、沿線市町村においても消防法の規定に基づき処理すべきものとして、両者は相協力して適切且つ効率的な人命救護を行なうこととしている。
このため、関係市町村、道路公団が共に通信連絡体制等の充実を図るなど連携を強化するとともに、インターチェンジ所在市町村等に財政措置を講じ、当該市町村においても、救急業務実施体制の整備を促進する。
また、本州四国連絡橋公団が管理する本州四国連絡道路(瀬戸中央自動車道及び神戸淡路鳴戸自動車道)においても、救急業務について同公団が関係市町村に同様の財政措置を講ずるとともに、関係市町村も救急業務に万全を期するようその実施体制の整備を促進する。
さらに、道路公団、本州四国連絡橋公団及び関係市町村は、救急業務に必要な施設の整備、従業員に対する教育訓練の実施等を推進する。
(5)集団救助・救急体制の整備
大規模道路交通事故等の多数の負傷者が発生する大事故に対処するため、相互応援体制、情報連絡体制の整備及び救護訓練の実施等、集団救助・救急対策を推進する。
(6)救助・救急設備等の整備
消防機関の救助体制の整備・拡充を図るため、救助工作車等救助資機材の整備に要する費用の補助として平成14年度は、15団体分9,491万円を計上している。
また、救急隊員の行なう応急処置等の範囲の拡大に対応し、拡大された応急処置が円滑に実施されるようにするため、市町村が整備する高規格救急自動車及び高度救命処置用資器材に対して、救急業務高度化資機材緊急整備事業により、平成14年度は、補助対象団体106団体に9億3,683万円を予算計上している。さらに、救急業務における消防・防災ヘリコプターの積極的活用を図るため、その整備に要する費用に係る補助金を計上している。
加えて、救急医療機関等へのアクセスを改善するため、高速自動車国道における緊急離着陸用ヘリポートの整備をサービスエリア等において実施する。
(7)救助隊員及び救急隊員の教育訓練の充実
交通事故等に起因する救急・救助活動の増大及び事故の種類、内容の複雑多様化に対応するため、救助隊員・救急隊員の資質の向上に努める。
(8)救急救命士の養成
プレホスピタルケアの向上を図るため、全国の消防機関において全ての救急隊に救急救命士が「常時1名搭乗する体制」を目標に、地域的な偏在の是正も考慮しながら救急救命士の早期養成を図るとともに、教育訓練の充実を図る。
(9)応急手当の普及
普通免許、大型二輪免許又は普通二輪免許を受けようとする者には、応急救護処置講習の受講が義務付けられているが、平成13年道路交通法改正により、14年6月から大型第二種免許又は普通第二種免許を受けようとする者にも義務付けられる。指定自動車教習所では応急救護処置に関する教習が盛り込まれていることから、これらが効果的に行われるよう指導者の養成を始めとする体制の整備を図るとともに、講習等が効果的に行われるよう指定自動車教習所等に対して必要な指導、助言を行う。
市町村の消防機関が実施している地域住民及び事業所を対象とした応急手当に関する講習会の開催等の施策については、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平成5年消防救41)及び「事業所における応急手当の普及啓発の推進について」(平成11年消防救175)に基づき、引き続き推進を図るとともに救急要請受信時における応急手当の指導を推進する。
また、心肺そ生訓練用人形などの普及啓発用資器材の整備、応急手当指導員の養成、普及啓発活動の推進など、各消防機関が行う住民に対する応急手当の普及啓発事業に対し一層の支援を行う。
(社)日本交通福祉協会では、交通安全の指導に携わる者、運転業務に従事する者を重点に交通事故救命救急法教育講習会及び高齢者救急法普及講習会を実施する。
学校においては、中学校、高等学校の保健体育科において心肺そ生法等の応急手当について指導することとしており、この指導を効果的に実施するため、心肺そ生法の実習を含む各種講習会を開催する。
(10)緊急通報システムの拡充
交通事故等緊急事態発生時における負傷者の早期救出及び事故処理の迅速化のため、新交通管理システム(UTMS)の構想等に基づき、衛星を利用した位置測定を行なうGPS技術を活用することにより、自動車乗車中の事故発生時に携帯電話等を通じてその発生場所等の情報を即時且つ正確に緊急通報し、救命率の向上等を図る緊急通報システム(HELP)の普及を図る。
また、緊急車両が現場に到着するまでのリスポンスタイムの縮減、及び緊急走行時の交通事故防止のため、経路誘導情報の提供及び緊急車両優先の信号制御を行う現場急行支援システム(FAST)について、大阪市において、警察車両以外の救急車や日本赤十字社の緊急車両も対象としたシステムを導入する。
2 救急医療体制の整備
(1)救急医療機関等の整備
救急医療体制については、従来から体系的な整備を進めており、平成14年度予算には、初期、二次及び三次の救急医療期間と救急医療情報センターの整備・充実を図ることとし、その関連経費を含め、総額240億円を計上している。
救急医療体制の体系的整備の主な内容は、次のとおりである。
救急医療施設の整備
(a)
初期救急医療施設の整備
休日夜間急患センターについて、整備を図るとともに、地域医師会による在宅当番医制の普及・定着化を図る。
(b)
第二次救急医療施設の整備
重症救急患者を受け入れるための、病院群輪番制病院及び共同利用型病院の整備を図るとともに、小児緊急患者を受け入れる小児救急医療支援事業実施病院及び小児救急医療拠点病院の整備を図る。
(c)
第三次救急医療施設の整備
重傷及び複数の診療科領域にわたるすべての重篤救急患者の救命医療を担当する救命救急センターの整備を図るとともに、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病患者に対応する高度救命救急センターの整備を図る。
救急医療情報システムの整備
救急医療施設の応需情報を常時、的確に把握し、医療施設、消防本部等へ必要な情報の提供を行うとともに、災害時には医療機関の稼働状況、医師・看護師等スタッフの状況等災害医療に係る総合的な情報収集を行う救急医療情報センターの整備を図る。
救急医療設備の整備
交通事故の被害者救済の充実強化を図るため、全国の公的医療機関等の救急医療機器の整備に関し、自動車損害賠償保障事業特別会計から5億2,000万円の補助金を交付する。
(2)救急医療担当医師・看護師等の養成等
救急医学に関する教育の充実及び研究の推進
大学における救急医学に関する教育の充実及び研究の促進のため、平成14年度は4国立大学医学部に救急医学講座等を設置する。
救急医療担当医師・看護師等の研修等
医師の卒業前の教育・臨床教育において救急医療に関する教育研修の充実に努めるとともに、救命救急センター等で救急医療を担当している医師に対しても、呼吸・循環管理等の研修を拡充し、救急医療従事者の確保とその資質の向上を図る。
看護師及び救急救命士については、医療機関等において研修を実施すること等によりその資質の向上を図る。また、救急救命士養成所の専任教員の確保を図るための講習会を実施する。
(3)ドクターヘリ事業の推進
交通事故等で負傷した患者の救命率の向上や後遺症を軽減させるため、早期治療の開始と迅速な搬送を行うドクターヘリ(医師が同乗する救急専用ヘリコプター)の配備を推進する。
3 救急関係機関の協力関係の確保等

 救急業務の円滑な実施や救急隊員への教育訓練体制の整備等を図り、消防機関と、医療機関、救急医療関係者等との連携を更に強化するため、関係機関の恒常的な協議の場である協議会の設置を更に推進する。この協議会において救急救命士等の救急隊員の活動に必要な医師の指示・指導・助言体制の確立や臨床実習等の支援体制の確保を推進する。

第7節 損害賠償の適正化と被害者対策の推進

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