「平成15年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」及び
「平成16年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」(概要)
2 現況編の概要
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第3章 平成15年度の主な道路交通安全施策

2 現況編の概要

第1編 陸上交通

第1部 道路交通

第3章 平成15年度の主な道路交通安全施策

1 道路交通環境の整備

  • 道路交通環境の整備の新しい仕組み
  • 交通安全施設等整備事業の推進
  • 高度道路交通システムの整備

2 交通安全思想の普及徹底

  • 高齢者に対する交通安全教育
  • シートベルト及びチャイルドシートの正しい着用の徹底等

3 安全運転の確保

  • 運転者教育等の充実

4 車両の安全性の確保

  • 自動車アセスメント情報の提供等
  • リコール制度の充実

5 救助・救急体制等の整備

  • 救急救命士の養成
  • 緊急通報システムの拡充

6 損害賠償の適正化と被害者対策の推進

  • 交通事故被害者等の心情に配慮した対策の推進

1 道路交通環境の整備

  • 道路交通環境の整備の新しい仕組み
     社会資本整備について、事業を一層重点的、効果的かつ効率的に推進する等の観点から、平成14~15年度を期限とする9本の長期計画を一本化して「社会資本整備重点計画」を作成すること等を内容とする社会資本整備重点計画法が、15年4月に施行され、交通安全施設等整備事業の長期計画についても、他の分野の長期計画と合わせて重点計画に一本化されることとなった。
     また、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法についても所要の改正を行い、法律の名称も「交通安全施設等整備事業の推進に関する法律」に変更した。
     社会資本整備重点計画法に基づき、平成15年10月、15~19年度を計画期間とする社会資本整備重点計画が閣議決定された。計画においては、計画の重点を従前の「事業の量」から、達成される「成果(アウトカム)」に転換し、道路交通安全については、死傷事故率を14年の118件/億台キロから約1割削減する(19年に108件/億台キロ)ことが目標に位置付けられた。
     交通安全施設等整備事業については、(1)歩行者等の安全通行の確保、(2)幹線道路等における交通の安全と円滑の確保、(3)IT化の推進による安全で快適な道路交通環境の実現を重点的に実施することとした。
  • 交通安全施設等整備事業の推進
     平成15年度は、社会資本整備重点計画に基づく特定交通安全施設等整備事業の初年度として、次のような事業を実施した。
    (1)
    平成15年7月、歩行者及び自転車利用者の安全な通行を確保するため緊急に対策が必要な住居系地区又は商業系地区796箇所を「あんしん歩行エリア」として指定し、15年度から19年度までの5箇年でエリア内の死傷事故を約2割抑止、うち歩行者・自転車事故は約3割抑止することを目指し、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して、面的かつ総合的な事故抑止対策を実施した。
    (2)
    死傷事故発生率が高く、又は死傷事故が多発している交差点・単路を「事故危険箇所」として3,956箇所指定し、平成15年度から19年度までの5箇年で対策実施個所の死傷事故を約3割抑止することを目指し、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して集中的な事故防止対策を推進した。
    (3)
    高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、駅、公共施設等の周辺を中心に平坦性が確保された幅の広い歩道、バリアフリー対応型信号機等を整備するとともに、交通結節点におけるエレベーターの設置等を推進した。
     また、高齢運転者の増加に対応するため、信号灯器のLED化、高齢運転者に見やすい道路標識・道路標示の整備を図った。
  • 高度道路交通システムの整備
     最先端の情報通信技術(IT)等を用いて、人と道路と車とを一体のシステムとして構築し、安全性、輸送効率等の向上を実現するため、平成8年に策定されたITS全体構想に基づき、研究開発、フィールドテスト、インフラの整備等を推進している。
    (1)
    道路交通情報通信システム(VICS)の整備を推進し、平成15年2月までに、全国においてサービスを開始している。また、ノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)について、平成16年3月末現在、全国の高速自動車国道等における基本的にすべての料金所にサービスを拡大している。
    (2)
    交通流・量を積極的かつ総合的に管理することにより、交通の安全及び快適性を確保しようとする新交通管理システム(UTMS)の構想に基づき、システムの充実、光ビーコンの整備等の施策の推進を図った。
    ※フィールドテスト
    実地試験、屋外試験などのこと
    ※インフラ
    交通、通信、公共施設など、社会等の基盤として整備される施設のこと
    ※光ビーコン
    通過車両を感知して交通量等を測定するとともにカーナビゲーション装置等と交通管制センターとの情報のやり取りをする路上設置型の赤外線通信装置
    (3)
    ITS仕様の次世代の道路(スマートウェイ)、自動車と道路側システムの間を結ぶ高度な情報通信(スマートゲートウェイ:知能通信)及び高速走行する自動車(スマートカー)に関する技術の三位一体となった研究開発を行い、早期実現・普及を促進している。

2 交通安全思想の普及徹底

  • 高齢者に対する交通安全教育
     運転免許証を持たない、老人クラブに加入していない等の交通安全教育を受ける機会のなかった高齢者に対し、地方公共団体等と連携して、事故多発路線に居住する高齢者の家庭訪問による個別指導、医師等と連携した交通事故防止のワンポイントアドバイス等地域ぐるみで高齢者の交通安全指導が行われるように努めた。
     また、高齢者同士の相互啓発等により交通安全意識の高揚を図るため、老人クラブ、老人ホーム等における交通安全部会の設置、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成等を積極的に促進し、老人クラブ等が関係団体と連携して「ヒヤリ地図」の作成、高齢運転者の実技講習及び最近普及している電動車いすの安全利用に係るモデル事業等自主的な交通安全活動を展開できるよう指導・援助を行った。
     シルバーリーダーについては、参加・体験・実践型の高齢者交通安全教育の継続的な推進役の養成を目的とする「市民参加型の高齢者交通安全学習普及事業」を実施した。また、交通安全をテーマに世代間が交流する等を内容とする「高齢者交通安全意識高揚啓発事業」を実施した。
     さらに、家庭において適切な助言等が行われるよう、交通安全母親活動等、交通安全普及啓発活動等の促進に努めた。
  • シートベルト及びチャイルドシートの正しい着用の徹底
     各種交通安全教室、交通安全運動等の機会をとらえ、シートベルトの着用効果、正しい利用方法について広報啓発・指導に努めた。
     また、チャイルドシートについては、しっかり取り付けられていないものも多く見受けられることから、春・秋の全国交通安全運動等の機会に普及促進キャンペーンや産婦人科、幼稚園、保育園等における取付講習会を開催した。

3 安全運転の確保

  • 運転者教育等の充実
     平成14年6月から、更新時講習は、受講対象者の違反状況等に応じ、優良運転者、一般運転者、違反運転者又は初回更新者の区分により実施しており、受講者の態様に応じた特別学級の編成等により、その充実を図っている。
     また、大型第二種免許又は普通第二種免許を受けようとする者に対しても、応急救護処置講習及び大型旅客車講習又は普通旅客車講習が義務付けられており、第二種免許取得者の水準の向上が図られている。
     そのほか、特に平成15年は、事業用自動車の運転者による飲酒運転等悪質・危険な運転の防止を図るため、自動車運送事業者及び運行管理者に対し、運転者に対する指導・監督を徹底するよう指導を行った。

4 車両の安全性の確保

  • 自動車アセスメント情報の提供等
     自動車の衝突安全性能等の比較試験の結果、エアバッグ等安全装置の装備状況等の情報、チャイルドシートの安全性比較試験の結果等の情報を提供している。
     平成15年度は、新たに自動車の歩行者頭部保護性能試験を追加し、衝突安全性能の総合評価の公表を行った。
  • リコール制度の充実
     後付けされたタイヤ及びチャイルドシートに対する後付け装置リコール制度が創設され、平成16年1月1日から施行されている。
     また、自動車不具合情報ホットラインを活用し、ユーザーからの自動車の不具合情報を幅広く収集し、得られた多数の情報を分析してリコール該当車の早期発見に努める等リコール制度の適正な運用を図るとともに、ユーザーからの不具合情報について国土交通省のホームページで公開し、情報収集の強化に努めている。

5 救助・救急体制等の整備

  • 救急救命士の養成
     医師の指示の下に、搬送途上において心肺機能停止状態の患者に対して行う静脈路確保及び気道確保等の救急救命処置を行う救急救命士は、平成15年12月末現在で、2万5,125人が資格を取得しており、搬送途上の医療の確保が図られている。
  • 緊急通報システムの拡充
     交通事故等緊急事態発生時における負傷者の早期救出及び事故処理の迅速化のため、新交通管理システム(UTMS)の構想等に基づき、GPS技術を活用することにより、自動車乗車中の事故発生時等に携帯電話等を通じてその発生場所等の情報を即時かつ正確に緊急通報し、救命率の向上等を図る緊急通報システム(HELP)の普及を図った。
     また、緊急車両が現場に到着するまでのリスポンスタイムの縮減及び緊急走行時の交通事故防止のため、経路誘導情報の提供及び緊急車両優先の信号制御を行う現場急行支援システム(FAST)の整備を図った。

6 損害賠償の適正化と被害者対策の推進

  • 交通事故被害者等の心情に配慮した対策の推進
     国民が互いに支え合う、安全で安心できる交通社会を形成することを目的として、(1)支援担当者用のテキストの作成、(2)被害者の精神的回復を目的とした自助グループの立ち上げ支援及びネットワークの検討、(3)海外の先進的研修への専門家の派遣等を内容とする交通事故被害者支援事業を実施した。

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