平成17年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第3編 航空交通
第2章 航空交通安全施策の現況
第2節 航空機の安全な運航の確保

第3編 航空交通

第2章 航空交通安全施策の現況

第2節 航空機の安全な運航の確保

1 航空従事者の技量の充実等

 航空機操縦士の養成は、独立行政法人航空大学校のほか、国土交通大臣が指定する指定航空従事者養成施設及びその他の民間の養成機関によって行われている。
 操縦士の自社養成を実施している航空運送事業者に対し、操縦士の質を確保するよう指導した。
 航空機乗組員の身体検査を行う国土交通大臣の指定する医師及び医療機関等に対しては、講習会を通じ判定基準の統一的な運用を指導するとともに、航空運送事業者等に対しては、航空機乗組員の日常の健康管理を十分行うよう指導した。また、航空従事者等に安全に関する情報を周知徹底させ、安全意識の高揚を図るよう航空運送事業者を指導した。

2 航空保安職員の教育の充実

 航空保安大学校は、航空保安要員の研修施設として、航空保安大学校本校(東京都大田区)において新規採用職員に対する航空保安業務の基礎教育を行い、岩沼研修センター(宮城県岩沼市)において既に航空保安業務に従事している職員に専門的な知識及び高度な技能を習得させるための研修を行っており、著しく変革を続ける航空技術に対応した研修内容の充実に努めた。
 平成17年度は、老朽化・狭隘化している航空保安大学校の移転整備(PFI事業)に着手した。また、岩沼研修センターの研修教材について、研修効果の向上を図るための性能向上及び機器更新に着手した。

3 航空運送事業者等に対する指導・監督の実施、航空安全確保体制の強化による需給調整規制廃止後の安全確保の推進等

 平成17年1月以降、我が国の航空運送事業者において、ヒューマンエラーや機材不具合に起因する安全上のトラブルが続発した。特に、日本航空グループでは、貨物機の主脚部品の誤使用、新千歳空港や韓国・仁川国際空港における管制指示違反等安全上のトラブルが相次いだことなどから、国土交通省は、3月17日にトラブルの原因の究明の徹底及び一斉安全総点検の実施、安全組織体制の見直し、従業員に対する安全意識の再徹底を内容とする事業改善命令等を発出した。これに対して、4月14日、日本航空グループから、一連のトラブルに共通する要因、背景及びその再発防止策について事業改善命令発出以降にも発生したトラブルも含めた改善措置の報告がなされ、国土交通省では、改善措置の実施状況について確認するため継続的に立入検査を実施した。
 また、他の航空運送事業者においても管制指示違反や誤った高度計の指示に従った飛行が行われるなど、安全上のトラブルが発生していることから、これらの我が国の状況にかんがみ、国土交通省では、抜き打ち立入検査の導入など、航空運送事業者に対する監視・監督の強化を図り、航空輸送の安全対策を推進していくこととした。

4 大型航空機の安全確保に関する対策の強化

 大型航空機を運航する航空運送事業者については、運航規程・整備規程の認可、安全性確認検査等を通じ、運航及び整備体制の充実、安全意識の高揚、関係規程の遵守等運航の安全に万全を期すよう指導した。

5 小型航空機等の事故防止に関する指導等の強化

 小型航空機の事故原因についてみると、操縦操作や判断が不適切なもの、気象状態の把握が不適切なもの、出発前の確認が不適切なもの等人為的な要因によるものが多い。このような小型航空機の事故の防止を図るため、法令及び安全関係諸規程の遵守、無理のない飛行計画による運航、的確な気象情報の把握、操縦士の社内教育訓練の充実等を内容とする事故防止の徹底を指導するとともに、小型航空機の運航者が安全運航のために留意すべき事項等をホームページに掲載した。また、小型航空機を運航することの多い自家用操縦士に対しては、操縦士団体等が開催する安全講習会への参加を呼びかけるとともに、講師の派遣等安全講習会への積極的な支援を行った。

6 外国航空機の安全の確保

 我が国に乗り入れている外国航空機に対する立入検査(ランプ・インスペクション)を実施し、外国航空機の安全性を確認するとともに、問題点が発見された場合には、当該航空機の所属する外国政府に通知する等所要の措置を講じた。なお、平成16年度には、29か国の54社を対象に99機の検査を実施した。

7 航空機の運航安全システムの充実

 国内空域にRVSMを導入したことに伴い、特別な方式による航行に関して許可を要することとし、所要の装置の装備を義務づけた。また、その他の航空機の運航の安全を図るための装備要件等についても、国際民間航空機関(ICAO)に定める標準等の動向を踏まえ必要に応じ法令等の整備などを引続き検討していくこととした。

8 危険物輸送の安全基準の整備

 危険物の輸送量の増加及び輸送物質の多様化に対応すべく、ICAO及び国際原子力機関(IAEA)における危険物輸送に関する安全基準の整備強化についての検討に積極的に参画した。
 また、危険物の安全輸送に関する講習会を通じて知識の普及を図るとともに、航空運送事業者等については、危険物輸送従事者に対する社内教育訓練の指針を示し、実施の徹底を指導した。

9 管制関係のトラブルに関する対策

 管制関係の安全上のトラブルが続発したことを踏まえ、管制官の思い込みによるミスを防ぐための体制を確立することを目的として、管制業務監査等を行い再発防止に努めた。

10 航空事故原因究明体制の強化等

 航空事故及び航空事故の兆候(重大インシデント)の原因究明の調査を迅速かつ適確に行い、航空事故の再発防止に寄与するため、航空事故等が発生した場合には、飛行の状況、航空機の構造・性能、乗組員の知識・技能、気象、航空保安施設の状況等について多角的な事実調査を行うとともに、必要な試験や研究を行い、これらの結果を総合的に解析して原因を究明している。
 また、航空事故調査官の研修、海外機関との情報交換等を充実し、事故等調査能力の向上に資するとともに、調査研究機器の整備を行い、航空事故調査体制の強化を図っている。

11 航空交通に関する気象情報等の充実

(1)気象情報等の充実
 航空交通に影響を及ぼす自然現象を的確に把握し、適時・適切に飛行場予報・警報、空域を対象とする気象情報、航空路火山灰情報等の航空気象情報の適時・適切な発表及び関係機関への迅速な伝達に努めた。
 福岡空港においては、低高度のウインドシヤー(離着陸に影響を及ぼす地上付近の風の急変)の検知能力を持つ空港気象ドップラーレーダーの運用を開始した。
(2)運航情報等の充実
 空港情報(使用滑走路、進入方式、気象情報等)、飛行中の航空機から報告があった情報等を体系的に整理・蓄積したデータベース等を利用して、運航者及び関係機関に対して航空機の運航に必要な情報の提供を行った。

12 スカイレジャーに係る安全対策の推進

 超軽量動力機、パラグライダー、スカイダイビング、滑空機、熱気球等のスカイレジャーの愛好者に対し、(財)日本航空協会、関係スポーツ団体等を通じた安全教育の充実、航空安全に係る情報公開、「スカイ・レジャー・ジャパン」等のイベントの機会等を活用して、スカイレジャーに係る安全対策の充実・強化を図った。

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