平成18年度交通安全施策に関する計画
第3部 航空交通の安全についての対策
第1節 航空交通環境の整備

第3部 航空交通の安全についての対策

第1節 航空交通環境の整備

 平成18年度も、航空輸送需要の増大に対応しつつ、航空交通の安全確保を図るため、空港及び航空保安施設の整備を進める。
平成18年度の空港及び航空保安施設の整備事業費は、2,978億円である。

1 航空保安システムの整備と提供サービスの充実

 航空交通の安全確保を最優先としつつ、交通量の増大やユーザーニーズの多様化に適切に対応した航空交通システムの構築を図るため、運輸多目的衛星(MTSAT)を始めとする「次世代航空保安システム」の整備を着実に推進する。
 また、引き続き整備あるいは更新が必要となる現行航空保安システムについては、その有効利用を図るとともに、次世代航空保安システムへの移行の進捗状況等に応じ、縮退可能な地上航法施設等については漸次廃止を進めていく。
 さらに、既存ストックを有効活用し、運航者に提供する航空交通サービス(ATS)の質的充実を図る。

(1)次世代航空保安システム
次期管制システムの整備
ヒューマンエラーを防止するための一元的なインターフェースの導入等により管制処理能力の向上とより一層の安全性の向上を図る次期管制システムの整備を推進する。
航空交通管理(ATM)システムの整備
ATS、航空交通流管理(ATFM)及び空域管理(ASM)を総合的に機能させることにより、航空交通の安全と効率性を向上させるATMシステムの整備を推進する。また、運航者と管制機関間等の協調的意志決定(CDM)の強化等により、そのシステムの高度化を図る。
航空灯火・無線施設の整備
空港において、交通の高密度空域における航空機の監視機能の強化等を図るため「改良型二次監視レーダー(SSRモードS)」の整備を推進する。
飛行検査の充実
老朽化の著しい現用の飛行検査用航空機を更新するとともに、広域航法(RNAV)の導入等に対応させるため、新しい飛行検査体制の整備及び強化を推進する。
(2)現行航空保安システム
空港において、就航率や定時性の改善による利便性向上を図るため、費用対効果を勘案した上で、新空港の整備にあわせた航空保安施設の新設及び既存空港における離着陸性能向上のための高カテゴリー化整備等を推進する。
(3)航空交通サービスの充実
RNAV運航環境の整備
柔軟に飛行ルートを設定できるRNAVルートを順次全国に導入展開し、飛行ルートの直線化による運航効率の向上及びルート数拡大による上空の受入容量(空域容量)の拡大、更に一方通行化等の安全対策を図る。
また、離島空港等においても、RNAVによる運航便益を享受できるよう、運航環境を順次整備する。
航空情報(AIS)センターの設置
今後主流となるRNAVは、機上で衛星測位や電子演算処理が行われ飛行することから、これらの航空技術等に適切に対応し、かつ国際的な品質基準に適合した航空情報の電子化を進めるとともに、これら情報の品質管理体制、情報提供体制の強化を図るため、AISセンターを設置し、円滑な運用を図る。
小型航空機の安全対策
既存ストックの利活用による積極的な情報提供やヘリコプターの特性を活かした計器飛行方式による運航の実現に向けた環境整備を図る。
また、海上部及び山間部における送電線への接触事故等を未然に防止するため、特定された地区の航空障害物件への航空障害標識(航空障害灯及び昼間障害標識の総称)の適切な設置を促すとともに運航者に対して物件情報の提供を行う。

2 空域の整備等

(1)空域の容量拡大
洋上空域
現在、特に混雑している北太平洋路線において、MTSATを活用することにより管制間隔の短縮を図り、上空の受入容量を拡大し、安全かつ効率的な運航が実現する環境を確保する。
国内航空路
RNAVルートを全国的に展開するとともに、これに伴って生じる既存の飛行ルート(VOR/DME等地上航法施設間を直線で結んだルート)との併設による交通集中を避けるため、RNAVルートと既存ルートを運用的に高度分離する航空路再編(スカイハイウェイ計画)を行う。
空港周辺空域
衛星を利用したRNAV(GNSS)に対応した出発経路、到着経路、進入方式等のRNAVルートの拡大を図る。
また、特に、東京国際空港及び成田国際空港を含む関東の上空空域では交通混雑が顕著となっており、交通量は更に増加していくとみられることから、羽田再拡張事業に併せて、RNAV及び新システム等を導入することにより、関東空域の再編を行う。
(2)空域の有効活用
基本的考え方
空域の効率的な運用を実施するため、以下の考え方の下、所要の措置を図る。
(ア)
航空機運航者が飛行経路、高度等をより少ない制限で選択し飛行することを可能とする運航上の新しい概念等を導入し、運用を行う。
(イ)
諸外国及び米軍等の空域管理機関との連携を強化し、空域の有効活用を行う。
ATMセンターの機能活用
自衛隊訓練試験空域を自衛隊が使用しない場合に、民間航空機が飛行するための調整や航空機の遅延削減のための航空会社との調整等を実施し、安全かつ効率的な空域の利用を図る。

3 空港の整備

 成田国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開の推進を図るとともに、関西国際空港の二期事業、東京国際空港再拡張及び首都圏第3空港調査を進めていくほか、一般空港等については、滑走路の延長等は継続事業を着実に推進するとともに、既存空港の機能の保持等を行う。
 成田国際空港については、北伸による2,500メートルの平行滑走路の早期整備、旅客ターミナルビルの改修等空港施設の能力増強を推進する。
 東京国際空港の機能向上事業としては、第2旅客ターミナル南側部のエプロン整備等を実施する。
 また、同空港に4本目の新たな滑走路等を整備する再拡張事業については、平成21年末の完成及び国際定期便の就航に向けて、新設滑走路等の工事、PFI手法を活用した国際線地区の整備等を推進する。
 関西国際空港の二期事業については、施設整備を二本目の滑走路を供用するために必要不可欠なものだけに限定し、2007年限定供用に向けて整備を着実に推進する。平成18年度については、17年度に引き続き、限定供用に必要な施設整備を行う。
 首都圏第3空港については、長期的な視野に立って、検討を行う。
 一般空港等については、滑走路の延長等として、継続事業7空港の整備を行うとともに、各空港において、空港機能を保持するための維持・更新等を行う。
 また、航空輸送サービスの質の向上を図り、国際競争力の強化、観光立国の実現等に資するため、「航空サービス高度化推進事業」を実施し、就航率の向上等既存空港の機能の高度化や空域・航空路の抜本的な再編等運航効率の向上を推進するとともに、重点戦略の展開、物流機能の高度化、ユニバーサルデザインの推進、空港を核とした観光交流の促進に取り組む。

4 空港・航空保安施設の災害対策の強化

 空港については、既存施設の耐震補強を継続するとともに、最近の耐震技術の動向や地震動、津波に関する研究成果等を考慮しつつ、更に空港の耐震設計基準等の検討及び整備を進める。また、一部の空港に緊急地震速報を導入し航空機の運航、施設管理への活用を推進する。
 航空保安施設については、緊急輸送及び代替輸送を確保するために、空港における航空保安施設や航空路管制施設のバックアップ機能等をその必要性に応じて適宜強化し、災害時における航空保安業務の継続的提供を図る。

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