平成19年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第2編 海上交通
第1章 海難等の動向

第2編 海上交通

第1章 海難等の動向

1 近年の海難等の状況

 我が国の周辺海域において、海難に遭遇した船舶(以下「海難船舶」という。)の隻数の推移をみると、第2次交通安全基本計画期間(昭和51~55年度)の年平均隻数では3,232隻であったものが、平成19年では、2,579隻となっており、約2割減少した(第2-1図)。
 これを用途別にみると、漁船の海難は1,382隻(全体の43%)であったものが、795隻(31%)まで減少し、貨物船の海難は864隻(27%)であったものが357隻(14%)まで減少した。
 一方、モーターボート、ヨット等のプレジャーボート及び遊漁船(以下「プレジャーボート等」という。)の海難は376隻(12%)であったものが、1,033隻まで増加し、全体の40%を占めるに至った。
 このほか、タンカーの海難は、199隻だったものが122隻に減少し、旅客船の海難については75隻だったものが83隻に増加した(第2-2図)。
 このような海難船舶の状況から、ふくそう海域における情報提供・航行管制システムの整備を始め、海難防止思想の普及、民間団体の海難防止活動の展開、気象・海象情報の提供の充実等の各種安全対策を計画的に推進してきた成果が認められる反面、プレジャーボート等の海難の増加については、近年の国民の余暇志向の高まりに伴い、マリンレジャーが急速かつ広範に国民に普及し、運航のための初歩的な知識・技能の不足した運航者の増加が、その背景にあるものと考えられる。
 また、船舶からの海中転落者数の推移をみると、第2次交通安全基本計画期間の年平均人数では313人であったものが、平成19年では197人となっており、約4割減少した(第2-3図)。
 海難による死者・行方不明者の数は、第2次交通安全基本計画期間の年平均で426人であったものが、平成19年では117人となっており、約7割減少した(第2-1図)。
 また、船舶からの海中転落による死者・行方不明者の数は、第2次交通安全基本計画期間の年平均で268人であったものが、平成19年では108人となっており、約6割減少した。
 平成20年2月、千葉県野島崎の南方海上で、漁船「清徳丸」と海上自衛隊の護衛艦「あたご」の衝突事故が発生した。清徳丸の乗組員2名が行方不明となり、海上保安庁等が事故発生時から捜索救助活動等を実施した。
 当該衝突事故については、海難審判庁が重大海難事件に指定しており、衝突の原因について調査を進めている。

■第2-1図 海難船舶隻数及びそれに伴う死者・行方不明者数の推移

第2-1図 海難船舶隻数及びそれに伴う死者・行方不明者数の推移の図

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■第2-2図 海難船舶の用途別隻数の推移

第2-2図 海難船舶の用途別隻数の推移の図

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■第2-3図 船舶からの海中転落者数及び死者・行方不明者数の推移

第2-3図 船舶からの海中転落者数及び死者・行方不明者数の推移の図

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※プレジャーボート

モーターボート、ヨット、水上オートバイ等個人がレジャーに用いる小型船舶。スポーツ又はレクリエーションに用いられるヨット、モーターボート等の船舶の総称。

2 平成19年中の海難等及び海難救助の状況

(1)海難等の状況
海難船舶等の状況
平成19年の海難船舶は、2,579隻、334万総トンであり、次のような特徴がみられる。
(ア)
用途別状況
船舶の用途別では、プレジャーボート等が1,033隻(40%)、漁船が795隻(31%)、貨物船が357隻(14%)、タンカーが122隻(5%)、旅客船が83隻(3%)、その他が189隻(7%)である。
(イ)
海難種類別状況
海難種類別では、衝突が892隻(35%)、乗揚が357隻(14%)、機関故障が337隻(13%)等である。
(ウ)
距岸別状況
距岸別では、港内が971隻(38%)、港内を除く3海里未満が1,074隻(42%)、3海里以上12海里未満で発生した海難が358隻(14%)となっており、12海里未満で発生した海難が全体の93%と大半を占めた。
(エ)
海難原因別状況
海難原因別では、見張不十分が636隻(25%)、操船不適切が352隻(14%)、気象・海象不注意が172隻(7%)等運航の過誤によるものが全体の68%を占め、これに機関取扱不良231隻等を加えた人為的要因に起因するものが全体の79%を占めた。
また、海難による船舶からの海中転落者数は197人で、これを船舶の用途別にみると、漁船が103人(52%)で最も多く、次いでプレジャーボート等が46人(23%)、貨物船が16人(8%)である。
死者・行方不明者の発生状況
平成19年における海難による死者・行方不明者数は117人(前年より4人減少)であり、このうち68%が漁船、22%がプレジャーボートによるものである。
また、船舶からの海中転落による死者・行方不明者数は、108人(前年より45人減少)であり、このうち59%が漁船、23%がプレジャーボート等によるものである。
なお、第8次交通安全基本計画においては、年間の海難及び船舶からの海中転落による死者・行方不明者数を平成22年までに220人以下とすることを目指しているが、平成19年は225人(18年は274人)であった。
(2)海難救助の状況
海難船舶等の救助状況
平成19年は、海難船舶2,579隻の中で自力入港した922隻を除いた1,657隻のうち、1,451隻が救助され、救助率(自力入港を除く海難船舶隻数に対する救助された隻数の割合)は88%であった。海上保安庁は、巡視船艇延べ913隻、航空機延べ229機及び特殊救難隊員延べ77人を出動させ、海難船舶555隻を救助した。また、それ以外の海難船舶についても、巡視船艇・航空機による捜索、救助手配等を行っており、合わせると1,451隻の海難船舶(全体の56%)に対して救助活動を行った(第2-4図)。
人命の救助状況
平成19年は、海難船舶の乗船者1万7,104人の中で自力救助の1万1,763人を除いた5,341人のうち5,254人が救助され、救助率(自力救助を除く海難船舶の乗船者に対する救助された人数の割合)は98%であった。
また、船舶からの海中転落者197人の中で自力救助の19人を除いた178人のうち70人が救助され、救助率(自力救助を除く海中転落者に対する救助された人数の割合)は39%であった。海上保安庁は、巡視船艇延べ330隻、航空機延べ209機及び特殊救難隊員延べ42人を出動させ、海中転落者(自力救助を除く。)8人を救助した。
■第2-4図 海難船舶の救助状況の推移
第2-4図 海難船舶の救助状況の推移の図
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3 平成19年中のプレジャーボート等の海難等及び海難救助の状況

(1)海難等の状況
 平成19年のプレジャーボート等の海難船舶隻数は1,033隻であり、前年より88隻増加した。これに伴う死者・行方不明者数は22人であり、前年より1人増加した。
 この1,033隻についてみると、次のような特徴がみられる。
船型別状況
船型別では、モーターボートが659隻(64%)、ヨットが133隻(13%)、水上オートバイが92隻(9%)、遊漁船が80隻(8%)、手漕ぎボートが69隻(7%)である(第2-5図)。
海難種類別状況
海難種類別では、機関故障が204隻(20%)、衝突が203隻(20%)、運航阻害が163隻(16%)、乗揚が137隻(13%)、推進器障害が87隻(8%)、転覆が60隻(6%)、浸水が51隻(5%)等である(第2-6図)。
海難原因別状況
海難原因別では見張り不十分が192隻(19%)、機関取扱不良が153隻(15%)、船体機器整備不良137隻(13%)、操船不適切が107隻(10%)、気象・海象不注意が103隻(10%)等の人為的要因に起因するものが82%を占めた(第2-7図)。
また、プレジャーボート等からの海中転落者数は52人で前年より3人増加した。このうち、死者・行方不明者数は25人で前年より3人減少した。
■第2-5図 プレジャーボート等の船型別海難船舶隻数の推移
第2-5図 プレジャーボート等の船型別海難船舶隻数の推移の図
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■第2-6図 プレジャーボート等の船型別・海難種類別海難発生状況(平成19年)
第2-6図 プレジャーボート等の船型別・海難種類別海難発生状況(平成19年)の図
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■第2-7図 プレジャーボート等の船型別・原因別海難発生状況(平成19年)
第2-7図 プレジャーボート等の船型別・原因別海難発生状況(平成19年)の図
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(2)海難救助の状況
 平成19年は、プレジャーボート等の海難船舶1,033隻の中で自力入港した174隻を除いた859隻のうち788隻が救助され、救助率は92%であった。海上保安庁は、巡視船艇延べ539隻、航空機延べ114機及び特殊救難隊員延べ28人を出動させ、401隻を救助した。また、それ以外の海難船舶についても、巡視船艇・航空機による捜索、救助手配等を行っており、合わせると788隻の海難船舶(プレジャーボート等の海難船舶全体の76%)に対して救助活動を行った。

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