平成25年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況

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第3編 航空交通

第2章 航空交通安全施策の現況

第3節 航空機の安全な運航の確保

1 運輸安全マネジメント制度の充実・強化

平成18年10月より導入した「運輸安全マネジメント制度」により,事業者が経営トップの主体的な関与の下,現場を含む組織が一丸となって安全管理体制を構築し,国がその実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価を25年12月末までに延べ126社に対して実施し,昨年に比べ19回増加した。


2 航空運送事業者等に対する監督体制の強化

航空会社の事業形態が複雑化・多様化する状況を踏まえ,抜き打ちを含む厳正な立入検査を行うことにより航空会社における安全性の現状や将来のリスクを把握するなど体系的な監査を実施している。また,専門的かつ的確な監査の実現を図るため,監査担当職員等の研修の充実等を図っている。


3 航空安全情報を通じた予防的安全対策の推進

事故や重大なトラブル等の発生を未然に防止するため,事故,重大インシデントや機材不具合・ヒューマンエラー等の航空安全に係る情報の収集及び分析を通じた安全性向上のために必要な対策の策定等を行うとともに,安全上のトラブル情報等を関係者間で共有することにより,予防的安全対策を推進している。


4 航空従事者の技量の充実等

安全を確保しつつ航空ネットワークの充実等を図るためには,操縦士の安定的な供給を確保することが必要である。このため,航空大学校における操縦士の養成とともに,航空会社の自社養成や私立大学等の民間養成機関における養成の促進を行っている。平成25年12月に交通政策審議会 航空分科会 基本政策部会及び技術・安全部会の下に設置された「乗員政策等検討合同小委員会」において操縦士等の養成・確保に関する検討を進めているところ。

また,航空機乗組員の身体検査を行う医師(指定医)及び医療機関等に対する講習会の内容の充実,立入検査の強化等により,さらなる能力水準の向上・平準化を図るとともに,航空会社の健康管理部門への立入検査の強化等により航空会社の健康管理体制の強化を図っている。

さらに,航空運送事業者に対し,航空従事者に安全に関する情報を周知徹底させ,安全意識の高揚を図るよう指導している。


5 外国航空機の安全の確保

我が国に乗り入れている外国航空機に対する立入検査(ランプ・インスペクション)の充実・強化を図るとともに,事故や重大インシデント等が発生した際には,必要に応じて,外国航空会社に対する指導を行っている。また,諸外国の航空当局との連携を図るために航空安全に係る情報交換を実施した。なお,平成25年は,38か国の90社を対象に678回のランプ・インスペクションを実施した。


6 小型航空機等に係る安全対策の推進

近年の小型航空機の航空事故における原因としては,操縦操作や判断が不適切なもの,気象状態の把握や判断が不適切なもの,出発前の確認が不適切なもの等人為的な要因によるものが多い。このような小型航空機の事故の防止を図るため,法令及び安全関係諸規程の遵守,無理のない飛行計画による運航,的確な気象情報の把握,操縦士の社内教育訓練の充実等を内容とする事故防止の徹底を指導するとともに,平成24年度から,操縦者に対して,操縦等を行う日前の2年間のうちに,離着陸時の操縦や非常時の操作等の操縦技能及び知識が維持されているかどうかの審査を義務付ける特定操縦技能の審査制度を開始している。また,小型航空機を運航することの多い自家用操縦士に対しては,操縦士団体等が開催する安全講習会への参加を呼びかけるとともに,講師の派遣等小型航空機操縦士を対象とした講習会への積極的な支援を行っている。また,超軽量動力機,パラグライダー,スカイダイビング,滑空機,熱気球等のスカイレジャーの愛好者に対し,一般財団法人日本航空協会,関係スポーツ団体等を通じた安全教育の充実,航空安全に係る情報提供など,スカイレジャーに係る安全対策を行っている。


7 危険物輸送の安全対策の推進

医療技術等の発展等に伴う放射性物質等の航空輸送の増加及び需要の高まり等による危険物の航空輸送の増加及び輸送物質の多様化に対応するため,国際民間航空機関(ICAO)及び国際原子力機関(IAEA)における国際的な危険物輸送に関する安全基準の整備に基づき,所要の国内基準の整備を図った。

また,危険物の安全輸送に関する講習会等を通じて知識の普及を図るとともに,航空運送事業者等については危険物輸送従事者に対する社内教育訓練の実施及び危険物の適切な取扱いの徹底を図るよう指導した。


8 航空交通に関する気象情報等の充実

ア 気象情報等の充実

悪天による航空交通への影響を軽減し,航空機の運航・航空交通流管理を支援する航空気象情報の高度化を図るため,平成24年6月5日にスーパーコンピュータの更新を行い,飛行場予報に適した緻密な数値予報モデルの運用を開始するとともに,羽田周辺の予測資料の運航関係者への提供を開始した。また,静止気象衛星ひまわり6号による高頻度の衛星雲観測を夏期日中に実施し,当該観測を基に積乱雲を早期検知した結果を情報として運航関係者へ提供した。

イ 運航情報等の充実

空港情報(使用滑走路,進入方式,気象情報等),飛行中の航空機から報告があった情報等を体系的に整理・蓄積したデータベース等を利用して,運航者及び関係機関に対して航空機の運航に必要な情報の提供を行っている。


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