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大雪に伴う交通対策について

平成26年2月に関東甲信地方で発生した記録的大雪により,各地で立ち往生が発生した。これらの立ち往生車両は除雪作業の障害となり,道路の除雪が滞るうちに別の場所で立ち往生が発生し,結果的に数日間に亘って通行止めとなる大規模な立ち往生が発生した。

大規模な立ち往生は,大型車のスリップ等の立ち往生がきっかけとなり発生する場合が多く,その原因の多くは,夏タイヤやチェーン等の未装着によるものとなっている。

国土交通省では,除雪体制を強化するとともに,道路利用者への情報提供の充実を図り,冬期の道路交通を確保している。

1.異例の降雪に対する国土交通省対策本部の設置

近年,雪の降り方も変わってきていることから,異例の降雪における被害を最小化するため,平成26年12月9日に「異例の降雪に対する国土交通省対策本部」(本部長:太田国土交通大臣)を常設組織として設けた。本部では,雪害時の防災行動を時系列で整理した防災行動計画(タイムライン)を初めて策定し,本省・地方整備局や交通関係事業者等は,気象庁の気象情報等をもとに,被害最小化のため一体となって行動することとしている。

2.早めの通行止めによる除排雪作業の集中的な実施

一度,立ち往生が発生すると,立ち往生した車両が除雪車両の障害になるとともに,車両の排除にも時間を要するため,長時間の通行止めとなってしまう。

こうしたことを踏まえ,立ち往生の発生が想定される区間においては,あらかじめ,除雪車の待機位置や,人員等の配置計画を定めておき,大雪による交通障害発生時に,迅速に初動対応をとれるように準備を行っている。

また,今冬からは,立ち往生が発生してからの対応ではなく,立ち往生のおそれがあるような異常降雪時においては,立ち往生の発生前であっても,早い段階で通行止めを行い,効率的に除雪を行うことにより,トータルとしての通行止めの時間を短くする取組を行っている。

3.災害対策基本法の改正を踏まえた道路管理者による車両の移動の実施

平成26年2月の関東甲信地方の大雪を踏まえ,同年11月に改正された「災害対策基本法」(以下,「改正災対法」という。)では,大雪等の災害時において,緊急車両の通行を確保する必要がある場合,区間を指定し,車両等の運転者等に対し,車両等を道路外へ移動する等の措置を命じることができることとし,さらに運転者が移動の命令に応じない場合や不在の場合などには,道路管理者自らが,車両等を移動することができることとした。

今冬の大雪に対して,「改正災対法」を積極的に適用し,立ち往生車両の迅速な排除に努め,除雪作業の効率化,通行止め時間の短縮を図っている。今冬のみでも,高速道路や国道の48区間で指定を行い,8台の車両について,道路管理者による強制撤去を行っている。(平成27年3月31日現在)

立ち往生状況(平成27年1月1日~2日;国道25号) 車両の移動(平成26年12月5日;国道192号) 〈国道での事例〉 立ち往生状況 車両の移動 (平成26年12月17日~21日;東海北陸自動車道)〈高速道路での事例〉

4.ドライバー等への呼びかけ

冬期の道路交通の確保には,冬装備の装着等,ドライバーの方々の協力が不可欠である。こうしたことから,平素より,道の駅やSA・PA等において,気象情報や交通情報に注意してもらうとともに,冬用タイヤやチェーン等の装着を万全にしてもらうようお願いしている。

また,各地方整備局や高速道路会社では,異常降雪時に早めの通行止めを行う可能性がある区間を事前に公表し,冬装備が万全ではない車等については,こうした区間の通行を避けてもらう等の呼びかけを行っている。

全国の通行止め予定区間(国土交通省)別ウィンドウで開きます

また,異常降雪が予想されるときには,「異例の降雪に対する国土交通省対策本部」から緊急発表を行うこととしており,今冬においても年末年始に大雪が予想されたことから平成26年12月31日に,過去の類似の気象条件の際に発生した被害や影響を示し,ドライバー等に不要不急の外出を控える等,注意の呼びかけを行った。

(参考)災害対策基本法の改正について

(1)災害対策基本法改正の背景について

平成26年2月14日の関東甲信地方での大雪や,平成25年12月に中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループがとりまとめた「首都直下地震の被害想定と対策について」において,道路そのものの被災,鉄道の運行停止による道路交通への負荷の増大などが相まって,深刻な交通渋滞,放置車両が発生する可能性が示された。

改正前の制度では,被災地へアクセスするための直接被災していない周辺道路については,車両の移動や破損ができない等の限界があったことから,以下の内容を含む「災害対策基本法の一部を改正する法律案」が平成26年11月14日に成立し,同21日に公布・施行された。

(2)災害対策基本法改正の概要について

  1. <1>災害時における車両の移動等
    • 道路管理者は,災害が発生し,緊急通行車両の通行を確保するため必要な場合には,その管理する道路の区間を指定して,緊急通行車両の通行の妨害となっている車両や車両から落下した積載物等の物件(以下「車両等」という。)の所有者等に対し,車両等の道路外への移動,車間を詰めて空いたスペースへの車両等の移動等の措置をとることを命ずることができること
    • 次に掲げる場合には,道路管理者は,自ら車両等の移動等の措置ができるとともに,当該措置をとるためやむを得ない限度において,車両等を破損することができること
      1. ア 措置をとるよう命じられた所有者等が措置をとらない場合
      2. イ 所有者等が不在の場合
      3. ウ 道路の状況等により所有者等に措置をとらせることができないため,道路管理者が命令をしないこととした場合
      こととした場合
    • 道路管理者は,措置をとるためやむを得ない限度において,他人の土地を一時使用し,障害物を処分することができること
  2. <2>国土交通大臣及び都道府県知事による指示
    • 被災現場までのルート全体を広域的に俯瞰して,ネットワークで緊急通行車両の通行を確保するため特に必要があるときは,国から都道府県及び市町村に,都道府県から市町村に対し,必要な措置をとるよう指示することができること
  3. <3>都道府県公安委員会の要請
    • 都道府県公安委員会は,通行禁止等を行うため必要があるときには,道路管理者に対し,道路の区間を指定して必要な措置をとるよう要請することができること
  4. <4>損失補償
    • 道路管理者,機構又は地方道路公社は,やむを得ない限度において車両等を損失した場合に,その所有者等へ補償しなければならないこと
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