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自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行後の適用状況等について
新法施行関係〔制定趣旨及び適用(検挙)状況〕

自動車運転死傷処罰法の制定について

自動車運転による死傷事犯数は減少傾向にあるが,依然として,飲酒運転や無免許運転など悪質・危険な運転行為による死傷事犯が少なからず発生しており,このような悪質・危険な運転行為による死傷事犯であっても,現行の危険運転致死傷罪に該当せず自動車運転過失致死傷罪が適用された事件などを契機として,これらの罰則の見直しを求める意見が見られるようになった。

そのような状況を踏まえ,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平25法86)が,平成25年11月20日に成立し,26年5月20日から施行されている。その概要は,以下のとおりである。

危険運転致死傷罪の規定の整備

  1. <1>通行禁止道路を自動車で進行し,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転して人を死傷させることを,危険運転致死傷罪の類型として追加する。
  2. <2>アルコール又は薬物の影響により,その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で,自動車を運転し,よって,そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り,人を死傷させることを新たな危険運転致死傷罪とし,人を負傷させたときは12年以下の懲役,死亡させたときは15年以下の懲役に処する。
  3. <3>政令で定める一定の病気の影響により,その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で,自動車を運転し,よって,その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り,人を死傷させることを新たな危険運転致死傷罪とし,人を負傷させたときは12年以下の懲役,死亡させたときは15年以下の懲役に処する。
  4. <4>従来の危険運転致死傷罪に係る規定を刑法から移す。

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪の新設

アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が,運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた場合において,その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をすることを,過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪とし,12年以下の懲役刑に処する。

無免許運転による加重の新設

自動車の運転により人を死傷させる罪を犯した時に無免許運転であったときには,以下のとおり加重した法定刑とする。

(人を死傷させる罪)(無免許運転による加重)
15年以下の懲役6月以上20年以下の懲役
12年以下の懲役15年以下の懲役
7年以下の懲役10年以下の懲役

その他

従来の自動者運転過失致死傷罪を,刑法から移す。

交通事故事件の検挙状況(平成26年)
区分 件数(件)
自動車運転死傷処罰法 法2条 危険運転致死 11
危険運転致傷 126
法3条 危険運転致死 9
危険運転致傷 113
法4条 過失運転致死アルコール等影響発覚免脱 5
過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱 60
法5条 過失運転致死 1,050
過失運転致傷 273,088
法6条1項 無免許危険運転致傷 21
法6条2項 無免許危険運転致死 1
無免許危険運転致傷 5
法6条3項 無免許過失運転致死アルコール等影響発覚免脱 0
無免許過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱 7
法6条4項 無免許過失運転致死 11
無免許過失運転致傷 472
刑法 危険運転致死注1 15
危険運転致傷注2 190
自動車運転過失致死等注3 2,278
自動車運転過失傷害等注4 268,597
重過失致死及び過失致死 28
重過失傷害及び過失傷害 4,662
合計 550,749

注 1 「危険運転致死」とは,改正前の刑法208条の2の危険運転致死をいう。
2 「危険運転致傷」とは,改正前の刑法208条の2の危険運転致傷をいう。
3 「自動車運転過失致死等」とは,自動車運転過失致死(改正前の刑法211条2項)及び業務上過失致死(刑法211条1項)をいう。
4 「自動車運転過失傷害等」とは,自動車運転過失傷害(改正前の刑法211条2項)及び業務上過失傷害(刑法211条1項)をいう。

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