第1編 陸上交通 第2部 鉄道交通 第1章 鉄道交通事故の動向
※踏切道における交通安全対策の今後の方向性 第10次交通安全基本計画より

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第1編 陸上交通

第2部 鉄道交通

踏切道における交通安全対策の今後の方向性
第10次交通安全基本計画より

1 基本的な考え方

踏切事故は,長期的には減少傾向にある。しかし,一方では,踏切事故は鉄道運転事故の約3割を占め,また,改良をすべき踏切道がなお残されている現状である。こうした現状を踏まえ,引き続き,踏切事故防止対策を総合的かつ積極的に推進することにより踏切事故のない社会を目指す。

2 踏切道における交通の安全についての目標
(1)踏切事故の状況

踏切事故(鉄道の運転事故のうち,踏切障害及びこれに起因する列車事故をいう。)は,長期的には減少傾向にあり,平成27年の発生件数は242件,死傷者数は206人となっている。

踏切事故は長期的には減少しており,これは踏切道の改良等の安全対策の積極的な推進によるところが大きいと考えられる。しかし,依然,踏切事故は鉄道の運転事故の約3割を占めている状況にあり,また,改良するべき踏切道がなお残されている現状にある。

(2)交通安全基本計画における目標

平成32年までに踏切事故件数を平成27年と比較して約1割削減することを目指す。

3 踏切道における交通の安全についての対策
(1)視点

踏切道における交通安全対策について,踏切事故件数,踏切事故による死傷者ともに減少傾向にあることを考えると,第9次交通安全基本計画に基づき推進してきた施策には一定の効果が認められる。

しかし,踏切事故は,一たび発生すると多数の死傷者を生ずるなど重大な結果をもたらすものであること,立体交差化,構造の改良,歩行者等立体横断施設の整備,踏切保安設備の整備,交通規制,統廃合等の対策を実施すべき踏切道がなお残されている現状にあること,これらの対策が,同時に渋滞の軽減による交通の円滑化や環境保全にも寄与することを考慮し,開かずの踏切への対策や高齢者の歩行者対策等,それぞれの踏切の状況等を勘案しつつ,より効果的な対策を総合的かつ積極的に推進することとする。

(2)講じようとする主な施策 【重点施策及び新規施策】
  • 踏切道の立体交差化,構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備の促進
  • 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施(高齢者等の歩行者対策の推進)
  • 踏切道の統廃合の促進
  • その他踏切道の交通の安全及び円滑化等を図るための措置

<1> 踏切道の立体交差化,構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備の促進

遮断時間が特に長い踏切道(開かずの踏切)や,主要な道路で交通量の多い踏切道等については,抜本的な交通安全対策である連続立体交差化等により,除却を促進するとともに,道路の新設・改築及び鉄道の新線建設に当たっては,極力立体交差化を図る。

加えて,立体交差化までに時間の掛かる「開かずの踏切」等については,効果の早期発現を図るため各踏切道の状況を踏まえ,歩道拡幅等の構造の改良や歩行者立体横断施設の設置等を促進する。

<2> 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施

踏切遮断機の整備された踏切道は,踏切遮断機の整備されていない踏切道に比べて事故発生率が低いことから,踏切道の利用状況,踏切道の幅員,交通規制の実施状況等を勘案し,着実に踏切遮断機の整備を行う。

また,高齢者等の歩行者対策としても効果が期待できる,全方位型警報装置,非常押ボタンの整備,障害物検知装置の高規格化を推進する。

<3> 踏切道の統廃合の促進

踏切道の立体交差化,構造の改良等の事業の実施に併せて,近接踏切道のうち,その利用状況,う回路の状況等を勘案して,第3,4種踏切道など地域住民の通行に特に支障を及ぼさないと認められるものについて,統廃合を進めるとともに,これら近接踏切道以外の踏切道についても同様に統廃合を促進する。

<4> その他踏切道の交通の安全及び円滑化等を図るための措置

緊急に対策が必要な踏切道は,「踏切安全通行カルテ」を作成・公表し,透明性を保ちながら各踏切の状況を踏まえた対策を重点的に推進する。

また,自動車運転者や歩行者等の踏切道通行者に対し,交通安全意識の向上及び踏切支障時における非常押ボタンの操作等の緊急措置の周知徹底を図るため,踏切事故防止キャンペーンを推進する。


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