産業再生機構関連法の概要
        
 I. 株式会社産業再生機構法 

 1.総括規定
(1) 目的
雇用の安定等に配慮しつつ、我が国産業の再生を図るとともに、金融機関等の不良債権処理の促進による信用秩序の維持を図る。
 
(2) 金融機関の範囲
預金取扱金融機関(農水系統を含む)
保険会社、貸金業者、政策金融機関
その他金融に関する業務を行う事業者
 
(3) 主務大臣
内閣総理大臣(内閣府及び金融庁)、財務大臣、経済産業大臣
(実務上は内閣府を主管省庁とし、効率的運営を確保)
 
(4) 設立・監督
機構は、一を限り、主務大臣認可により設立する株式会社
定款変更、役員選任、予算、資金調達(政府保証)などの主務大臣認可(同じく実務上は、効率的運営を確保)
主務大臣による監督上の必要に応じた業務命令、報告徴求、検査権限

2.産業再生委員会
(1) 権限
支援(関与)の決定
債権買取りの決定
債権処分の決定
 
(2) 主務大臣・事業所管大臣との関係
上記(1)の決定に際して主務大臣の意見を聴かなければならない。
支援決定に際しては、主務大臣は事業所管大臣にその内容を通知し、通知を受けた事業所管大臣は、意見を述べることができる。
 
(3) 組織
委員3人以上7人以内
委員には代表取締役及び社外取締役を含む
互選による委員長、委員長代理の選任
3分の2以上の定足数及び過半数による意思決定

3.機構の業務
(1) 支援基準
主務大臣は、事業所管大臣の意見を聴いて、事業再生の支援や債権買取決定に当たり従うべき基準(産業再生法の数値基準を含む)を設定。
 
(2) 事業者(債務者企業)との関係
事業者は、一以上の金融機関(メインバンク)と連名で、機構に対し、債権買取りその他事業の再生に向けた支援(関与)を申込み。
機構は、支援基準に従い、事業再生の支援を行うか否かを決定。
再生支援を行うか否かの決定に当たっては、労働者との協議の状況等に配慮し、また、企業規模を理由とした不利益な取扱いはしない。
債権買取り後、必要に応じ、貸付、債務保証、出資(DES)等を行う。
 
(3) 他の債権者(非メインバンク)との関係
機構が支援決定を行った旨を通知し、債権買取りの申込みをするか、対象事業者の再生計画に同意するか、いずれかの回答を一定期間内(最長3ヶ月)に行うよう求める。
必要に応じ、回答期限までの間、対象事業者から債権を回収しないこと(一時停止)を求める。
再生に必要な債権額に達するだけの回答が集まったときは、一括して委員会による買取決定を行う。
一方、回答が集まらなかったり、一時停止の要請に反した回収により再生に必要な債権額に達しないときは、支援決定を撤回する。
 
(4) 買取価格
債権の買取価格は、再生計画を勘案した適正な時価。
 
(5) 債権の処分
機構による債権の買取期間は2年。また、債権買取決定から3年以内に債権の処分を行うよう努める。
再生を図れなかったときは、RCC等への売却、法的整理へ移行。
 
(6) 倒産法制の特例
支援決定から買取決定までの間に行われる「つなぎ融資」で事業の継続に不可欠なものについては、機構が確認を行えば、当該債権については、会社更生手続き等に移行した場合に、「衡平を害しない場合」として他の債権より有利な取扱いを受けるための根拠とすることができる。
 
(7) 課税の特例
機構が債権の買取りにより不動産に関する権利を取得した場合には、その不動産に関する権利の移転の登記について、登録免許税を課さない。

4.その他
(1) 政府保証・損失補助
機構の資金調達に対する政府保証
機構解散時に債務超過となった場合の政府による損失補助
 
(2) 預金保険機構の業務特例等
預金保険機構による機構への出資とそのための特別勘定、資金調達に対する政府保証
特別勘定への関係者の拠出
 
(3) 関係機関との連携
預金保険機構及びRCCとの協力体制の充実
関係省庁(金融行政、産業再生法の運用等)及び日銀による協力
政策金融機関による債権放棄などの協力
 
(4) 情報公開
委員会が決定を行った場合には、その旨を速やかに公表


      
 II. 株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 

RCC並びで対象事業者の保証協会保証を可能とする中小企業信用保険法の改正
機構の買取期限(不良債権集中処理期限)に合わせてRCCの買取期限を延長する金融再生法改正
内閣府設置法の改正


産業再生機構の業務フロー
産業再生機構の業務フロー