栄典制度の在り方に関する懇談会(第1回)議事要旨

1. 日時

平成12年10月5日(木) 10:30~12:05

2. 場所

総理大臣官邸大客間

3. 議事

  1. (1) 開会
  2. (2) 出席者紹介
  3. (3) 内閣総理大臣あいさつ
  4. (4) 座長あいさつ
  5. (5) 懇談会の運営について
  6. (6) 栄典制度の概要について
  7. (7) 意見交換
  8. (8) 閉会

4. 出席者

今井延子委員、金平輝子委員、工藤敦夫委員、平山郁夫委員、藤森昭一委員、御厨貴委員、柳谷謙介委員、吉川弘之委員

(政府側)
森内閣総理大臣、中川内閣官房長官、安倍内閣官房副長官、上野内閣官房副長官、古川内閣官房副長官、中原総理府総括政務次官、安藤総理府次長、佐藤総理府賞勲局長

5. 会議の模様

  1. (1) 安藤総理府次長から、出席者の紹介が行われた。(小林陽太郎委員と山口昇委員は所用のため欠席)
  2. (2) 森内閣総理大臣からのあいさつが行われた。
    森総理からの指名により、吉川委員が座長に就任することとなった。
  3. (3) 吉川座長からあいさつが行われ、指名により、工藤委員が座長代理に就任することとなった。
  4. (4) 今後のスケジュール、本懇談会の運営要領など、懇談会の運営について説明が行われ、了承された。
    • 今後は、おおむね2か月に一回程度懇談会を開催して、一年程度議論をし、来年秋を目途に最終報告をとりまとめる。
    • なお、来年春を目途に中間的なとりまとめを行う。
  5. (5) 栄典制度の概要・見直しの経緯等について、佐藤賞勲局長から説明が行われた。
  6. (6) 各委員から意見、感想等の発言が行われ、その後、自由に意見交換が行われた。
    <主な意見、感想の概要>
    • あまり70歳という年齢にこだわらず、功績のある者にその都度、授与する方が良いのではないか。また、推薦については、もっと現実にいろいろなところで御苦労されている方を選べる体制、方法が考えられないか。
    • 栄典制度は日本の文化の一つになっているという感じがする。長い間培われてきた制度であるとともに、文化とも言える人々の思いみたいなものがつくり上げられている。
    • 地方分権という観点から言うと、国家に対する貢献だけでなく、もう少し地方に対する貢献というものを考えていいのではないか。
    • 栄典制度それ自体は残すべきである。それは、金銭では評価されないような国家、社会に対する貢献というものを評価するということが一つ。もう一つは、外国との交際儀礼といった観点もある。ただ、官民格差など是正すべき点もあるのではないかと感じている。
    • 社会に対する貢献ということを考えると、団体に対しても何らかのものがあっても良いのではないか。
    • 等級や呼称については、外国との比較や、あるいは言葉で置き換えられる適当なものがあれば、考えても良いのではないか。
    • 栄典制度は、日本の文化の一つであり、伝統のあるものであるから、名称や制度そのものは維持して良いと考えている。ただし、官民格差については、もう少し民の方も考えて良いのではないか。
    • いろいろな表彰制度を勲章に繰り込んだらということについては、国民栄誉賞なども現状のままで良いのではないかと思う。
    • 勲一等から勲八等までというのはちょっと多すぎるのではないかという指摘があるが、今までに受章された方々のことを考えると、変えない方が良いのではないかと思う。
    • 栄典制度というのは国が国民の国家公共に対する功績というものを評価して、これに名誉を与えるという制度であって、これは各国を見てもどこにも広く存在しており、日本においても明治以来定着しているので、これは維持すべきものであると考える。
    • 人を評価しているわけではなく、その人の功績を評価しているものであり、功績の大きさの評価である以上そこに差が生じるのは当然と思う。ただ、その差を、勲一等、二等と言うか、あるいは等級の数をどうするのかについては、国民の考え方を判断しながら動かしても良いのではないか。
    • 文化勲章は無等級であるが、これは文化の発達に関し勲績卓絶なる者ということで、最高であって順位のつけようがないわけであって、他の分野で新しい勲章をつくろうという議論がある場合は、その点を考慮しなければならない。
    • 官民格差や男女格差の問題は、もともと勲章は官中心に創設されてきた経緯及びその発展の歴史を考えてみると、ある程度過去の実態を反映していることであり、ある意味でやむを得ないことと思うが、その差をこの際是正していこうというのは当然のことであり、新しい時代における栄典制度が健全に発展していくためには必要なことと思う。ただ、その方法として、官対民の発令数を1:1、また、等級ごとにも1:1にするというような考えはとるべきではない。官民を問わず、功績の大きさが等しければ同等の勲章が授与されるという制度とすべきであり、それを直ちに数字の上で1:1とするというのは、かえって、栄典という制度の健全な発展を妨げるものではないかと思う。
    • 各種褒章や国民栄誉賞、内閣総理大臣表彰などには、勲章に取り入れられるものもあると思うが、ただ、国民栄誉賞は、国民になじみのある分野において前人未踏のような業績に対して総理が機動的、弾力的に表彰するものとして創設されたものであり、これは、勲章、国家による評価とは違う。勲章と同一にすることは制度としておかしいのではないか。
    • 国というのは人を誉めるものだろうと思う。栄誉の体系というのは国家があれば必ずあるものであるから、廃止という問題ではなく、どのように誉め方を変えていくのかということにポイントがあるのだろうと思う。とりわけ、象徴天皇制の下では、栄典の授与は天皇の国事行為として、一番天皇を意識し、国家を意識できる、というところでもあるから、全体としてこのシステムを維持していくべきだろうと思う。
    • 成熟社会となり、普通の賞や表彰制度など、たくさんの誉め方ができてきている。同時に、現代社会はスピードが速いので、国の認める価値観というのは一体何なのかがよく分からなくなってきているところがある。だから、人生の長い功績を、その最後の一点で評価するということと、短期的に、ポイント、ポイントで評価するということの両方をどこかで見ていく必要があるのだろうと思う。
    • 勲章を若い人がどう思うかということが、これからおそらく議論になると思う。若い人にとっては、勲章と言われてもピンとこないし、無くても良いという意見が多いが、ただ、勲章をもらえる年になると考えが変わるようであり、団塊の世代が適齢期に達する2018年頃が、この制度の次の曲がり角かなという感じがしている。
    • 勲章を着用する機会がほとんどないというのが現状である。略綬の活用も含めて、検討すべき一つの課題と思う。
    • 叙勲制度は、公務員であるか民間であるかを問わず、国家、社会、公共等のためにひたすら尽くした人たちに対し国家がその労を評価し、報い、栄誉を称えるもの。これは日本だけでなく、先進民主主義国家においては基本的にそういうものと考えている。官であるか民であるかを問わず、生涯の中心部分において、私益の追及ではなく公益のために尽くしたことを評価するものである。
    • この懇談会は時宜に適したものである。それは、時代が変わってきている。つまり、民間でも国家社会に尽くす人も増えてきており、今後ますます増えるだろう。そういう人が漏れないように、公正な選考が行われるよう、この時期に一度点検し、きちんと制度を整備することが必要ではないか。
    • 公務員は給料をもらって公務に就いているのだから勲章の対象からはずすべきという意見は、非常に無責任な議論だと思う。国家制度、行政制度というものがきちんと整備され、そこで働く人が本当に生きがいを感じ、それを名誉とし、私的な利益ではなくて、公益のために一生働くという体制が整っている国でなければ、国家の百年の計というのは難しい。栄典制度の中において、公に尽くした人は官であれ、民であれ、きちんと評価されるという、勇気、元気を与えるような中身になることを願う。
    • 栄典制度がどういう意味で文化なのかを再認識する必要がこの懇談会として必要ではないか。栄典制度の中で国家がどういう働きをするのかということも考えなければならないのではないか。
    • 栄典制度は、ある種の社会の価値判断を提供しているという面があり、そこを大事に考えなければならない。それが、日本が成熟国家に向かっていく中での一つの重要なポイントであり、栄典制度の意味について共通理解を社会に作っておくことが必要と思う。そのような考え方に基づいて誰もが納得するような改革をするということを目標にしたらいいのではないか。
    • 公務員が長年務めてきた国家に対する貢献という評価で栄典を受ける立場と、学問、芸術の分野で大変な発明、発見、業績を上げたという場合とでは質が違うのではないか。学問、芸術の分野では年齢に関係なく認め、それを刺激にして、ますます国家社会で活躍するということでありたい。また、文化、芸術の面では、本当の文化というのは文化遺産になって全人類に貢献していくものであるが、人気というのは時代が過ぎると消え去るものであるので、質が違うのではないか。
    • 功績の見方には質の違うものがあり、それに対応する知恵として褒章、国民栄誉賞、総理顕彰が周辺にあり、それなりの意味をもって存在し、しかも、それなりに国民の間に定着し、尊重されているということを考えなければならないと思う。
    • 誉め方には多様性があり、その中で勲章では大体この範囲という輪郭を設けて、それ以外の誉め方を無くす必要はないのではないか。
    • 基準を考える場合も、絶対的な基準はおそらくないだろうから、現段階ではこんなところかというところに集約すれば良いのではないか。
    各委員の意見、感想を聞いた上で、吉川座長から、この懇談会としては、栄典制度が日本の長い歴史の中のひとつの文化として存在することを認めた上で、時代の変化に対応するという意味で、中身自身については、全て一応議論を行うという方向で行いたい旨の発言があった。
  7. (7) 第2回目の開催日については、各委員の日程を調整の上、決定することとされた。

[文責:内閣府賞勲局総務課]

(注)本議事要旨の内容については、今後変更の可能性があります。