栄典制度の在り方に関する懇談会(第3回)議事要旨

1. 日時

平成13年1月15日(月) 9:55~12:00

2. 場所

総理大臣官邸大客間

3. 議事

  1. (1) 開会
  2. (2) 各界からの意見聴取
    • 小池 唯夫  前日本新聞協会会長、前毎日新聞社社長
    • 岩男 寿美子  武蔵工業大学教授
    • 矢口 洪一  元最高裁判所長官
    • 高木 清文  青梅市立第一中学校長、全日本中学校長会会長
    • 大西 隆  大西衣料株式会社代表取締役会長、
              日本商工会議所中小企業委員会委員長、大阪商工会議所副会頭
                                             (敬称略)
  3. (3) 閉会

4. 出席者

吉川弘之座長、今井延子委員、金平輝子委員、小林陽太郎委員、御厨貴委員、山口昇委員

(政府側)
古川内閣官房副長官、坂井内閣府副大臣、西川内閣府大臣政務官、佐藤内閣府賞勲局長、福下内閣府賞勲局総務課長

5. 会議の模様

  1. (1) 坂井内閣府副大臣、西川内閣府大臣政務官が座長から紹介された。
  2. (2) 上記5名の方からの意見聴取が行われた。
    • 意見 I
      • 昭和39年の春に生存者叙勲が再開されてから37年経ち、国民の間にこの栄典制度は定着したと思う。
      • 特に我が国の栄典制度は明治の太政官布告以来125 年経つわけであるが、歴史と伝統があり、日本の文化を守るという意味からも存続すべきであると考える。
      • 国民からも大方の支持を得ており、地方へ行けば行くほど栄典制度に対して期待が高まっているという面もあり、現代的な意義も失われていないと考える。
      • 官と民の格差の問題については、我が国の叙勲制度は明治以来国家に対する功労という考え方から、官がどうしても中心、民に薄いという面があることも事実だと思う。
      • 特に勲一等から勲三等までの上位勲等叙勲者を見ると、政治家、高級官僚、裁判官、検察官それから国立大学の教授、こういう人が大半を占めており、全国版の新聞記事になる、ということで特に目立つ。そういう点で官中心ではないか、という批判があるのではないか。そういう意味で、もう少し民を増やすということも今回の見直しの一つのポイントになって良いのではないか。
      • 明治以来国家に対する功労ということであるので、どうしても官中心的なものにならざるを得ないという面はあると思うが、時代の変遷を考えると、国際社会に対して貢献した人であるとか、社会福祉というか社会的な貢献をした人、あるいは経済の発展に貢献した人、地域の発展に尽くした人、こういう人を積極的に評価すべきであると考える。
      • 叙勲を行う以上は、功労の度合いによって格付けはあっても良いのではないか。皆同じ等級というのでは、これもまた何のための叙勲か、ということにもなりかねず、格付けはあっても良いのではないか。
      • 今8ある等級をもう少し大括りしてまとめても良いのではないか。
      • 数は減らす必要はなく、1割か2割くらい増やしても良いのではないか。
      • 受章年齢については、現在の叙勲は70歳以上、褒章は55歳以上、という原則はそのままで良いのではないか。
      • 褒章については大いに活用すべきである。こういう時代、大変すさんだ世相においては、特に緑綬褒章をもっと活用すべきである。新しい時代に沿った活用の仕方を考えてはどうか。また、紺綬褒章に多額納税者も加えるべきだと思う。
      • 栄典制度であるので、内規に従って、恣意的にならない基準を設けるということは当然必要である。基準なしに決めるということになると、恣意的になって、逆の弊害が出てくる。
    • 意見 II
      • 栄典制度というものは性に中立であるべきであると思う。宝冠章があるという制度そのものが性に中立的なものとなっていない。
      • 宝冠章は女性の皇族のみに限ることとし、一般の女性を対象とするものとしては廃止した方が良いのではないか。
      • 国公立大学と私立大学の格差の問題について、次代の日本人を育成するという公共に資する仕事の7割を私学が担い、また、私学の場合は、教育研究に加えて、経営とか教育環境なども国公立に比べれば劣悪であることが多く、そういうことから言えば、私学に対して、質の面でより努力、苦労に報いるということが反映されるべきではないか。
      • 警察官の増員、定年の延長さらに寿命が延びることにより生存者叙勲の対象者が急増しており、警察官の受章者の平均年齢が非常に高くなってきている。昨年秋の受章者の平均年齢を見ると、一類(所属長経験者以上)が77.9歳、二類が75.4歳となっている。大体退職後20年くらいあるいはそれ以上経っていただいており、このままでいくとますます高くなる。これからの社会というのは、警察関係者に限らず、元気な高齢者にはそれなりに働いていただかなければいけないことを考えると、過去の功労をたたえるというこれまでの考え方に加えて、叙勲を励みとしてもうひとがんばりしていただく、という意味が加わるのではないか。そのような意味で、受章年齢をできるだけ70歳に近づけることが望ましいと思う。
      • 誰にでもわかる、皆が納得をするような単純な基準を、しかもオープンにすべきだと思う。
      • 等級はもっと大括りにして、数字は使わないでいただきたいと思う。
      • 過去との整合性を重視するよりも、今後うまく機能する制度を作っていただきたいと思う。
    • 意見 III
      • 結論としては、今の栄典の制度というものは、そのまま続けていって良いのではないか、むしろ続けていくべきではないか。
      • およそ社会、人の集まるところ、あるいはそれが大きくなって国家というものには、それぞれの社会、国に対する貢献というものがあり、特段に功績のあった方を評価して何らかの形で表彰するということはどこの組織でもあること。
      • 勲章の制度をどういうふうに今後決めるのが良いのか。今のままの太政官布告などでやっていって良いのか、改めて現代の法律で決めた方が良いのかということについては、理屈では法律できちんと決めることに越したことはないが、どうしても法律に変えないといけないかどうかということになるとそうでもなく、今の運用でできるならばそれでも結構だと思う。
      • 宝冠章について、性別の勲章というのは理屈には合わないような気がする。出来るだけ男女の性別というものはやめた方が良いのではないか。
      • 6等級くらいで運用し、その場合に7、8については6のところに集約してはどうか。それは下に厚くするということになるのではないか。
      • 数字はやめた方が良い。
      • 社会功労章といったものを単一勲章として特段に社会に功労のあったようなわずかな数の人に贈ることはどうか、という案が出ていると承知しているが、どの範囲で、どのように選んで良いのか。選ぶのがとても大変で、無理ではないか。
      • 叙勲のための意見を集約するに当たって、民間の意見を委員会等で入れていかなければならないのではないか、という意見が出ているが、現在の、組織から主務官庁を通じて賞勲局、内閣に来る、そこで全体を考慮して叙勲者を決めるというシステムは、今でも正当に機能しており、今後もそのシステムをとるのが良いのではないかと思う。
      • 叙勲年齢については、70歳というのは適当なのではないか。身体に危険のあるような仕事をしている人は55歳で良く、それを特に変える必要はないのではないか。
      • 官民格差の問題について、今のシステムは歴史的なものがあるので現在官民の格差がある程度あるということは、そうかと思うが、警察官とか消防、自衛隊等は官であるから、この人たちを除くとそんなに格差はないと思う。これまでの勲章というものが、本来国の仕事をしている人に与えられるものであるという歴史的なものから見て、官にある程度厚かったことは間違いないが、今後そういうものはなくなると思う。
      • 男女差も問題にすることはないと思う。今後はどんどん女性の受章者が増えてくるのではないか。
      • 司法の裁判官、検察官は個人的色彩の強い職業であり、そういう意味では大学教授も同様で、叙勲の発表になると多数出るが、組織でやってないのでしようがないのではないか。
      • 弁護士については、本来は無冠の大夫であることが誇りであるが、弁護士の公的活動というものも広がっていくであろう。弁護士にも公的責任を持たせるという意味で、叙勲の問題が起こってくるのではないか。
    • 意見 IV
      • 21世紀を迎え、これからの時代、特に国民に求められる資質として、非常に重要なものは「公」の精神、共に生きるものへの幸福をも視野に入れた精神、資質を培うことが必要なのではないか。そのような資質を国民に浸透させるためにも、国家社会あるいは公共への貢献を相応に評価するということは非常に意義のあることであると考える。
      • 栄典制度については、ある種の社会の価値判断の反映であるというとらえ方もできるのではないか。そのような意味で、現行の栄典制度については維持し、継続していくべきである、というのが基本的な考え方である。
      • 社会の変化、時代の変化、そういうものに即応して見直すべき点があるとするならば、それを見直していくということも非常に意味のあることではないか。例えば、地方分権の理念といったようなものも踏まえていくことも一方では必要ではないか。
      • 官民格差については、国家あるいは公共、社会への貢献を功績として評価することが本制度の趣旨であるということからすれば、官と民の比率を同じにするとかどうこうするということを問題にすることは、趣旨にそぐわないのではないか。功績がそれなりに認められ、等しければ同等に扱うということが、本制度を健全に維持していくために必要なのではないか。
      • 等級の簡素化については、現行の等級はそれぞれに相応の意義と価値が付与されてきているが、やや煩瑣、細分化されているきらいがあるのではないか。許容できる範囲の中で簡素化を図るということも検討してはどうか。
      • 勲章の名称が分かりにくい、理解されにくいというきらいがあるのではないか。名称についても、国民の理解と納得という面から検討できないか。
      • 選考基準の運用等について、選考基準の透明性の確保、あるいは事務手続の簡素化、あるいは迅速性というような観点から、中立機関が取り扱うということも検討してみる必要があるのではないか。
      • 栄典制度そのものについては国家的な1つの権威あるものとして行われているわけであるが、栄典制度の在り方、つまり勲章の種類、内容、選考手続等のシステム等も含めて、国民へのより広い理解を得るための何らかの手立てを考えていくことも必要なのではないか。
      • 現在では非常に多様な教育課題が低年齢化しているということもあり、職務の同一性というような観点からしても、初等・中等教育と高等教育を一体化していくという方向が妥当なのではないか。
    • 意見 V
      • 栄典制度は国への功績があった方を国が顕彰するということであり、受章者は自分の功績が国から評価された、また、受章者に選ばれたということを素直に受け止め、大変喜んでいる、というのが中小企業の経営者の実態である。また、商工会議所や中小企業団体の役員として、無償かつ相当の労力と時間を割いて地域経済、社会の発展、地域住民の福祉向上などに高い志を持って活動している人々の大きな励みになっている。
      • 在職年数を推薦基準の第一としているため、限られた役員が長期間にわたってその職に就き、役員の新陳代謝が進まなかったり、また、人事の硬直化、団体の活力の低下、後継者育成等について弊害が出ているケースもある。このため、在職年数を第一とした栄典評価ではなく、社会に貢献した実績を評価基準とした見直しを行えないか。
      • 長年にわたって地域の社会に貢献してきた商工会議所の会頭、副会頭の勲等よりも自治体の幹部の勲等の方が高いというのは、官民のバランスがとれていないのではないか。
      • 受章者の数について、官と民の比率が6対4あるいは7対3というのは、官民格差があるのではないか。
      • 教育職または警察官、自衛官、海上保安官、刑務官、消防士等の人々は本来社会公共のために身命を賭して奉仕することが本務であるため、他の公務員と民間人と同じカテゴリーで叙勲をせずに、別枠を設けて顕彰すべきではないか。
      • 中小企業の団体役員の評価については、大手、中堅企業の団体役員と比較して、勲等の評価が低いのではないか。
      • 政府においても、中小企業政策の理念を大きく転換し、意欲ある中小企業の新規創造や、ハイテク、ベンチャー企業の育成発展に向けて、具体的な施策を強力に推進している現状であることから、栄典制度においても、新規創業や、経営革新、ベンチャー企業の創設などに果敢にチャレンジし、多様な雇用の場を供給するとともに、我が国経済の発展に貢献する人々の励みになるような制度も必要ではないか。
      • 同程度の貢献度であっても、都市と地方では勲等に格差があるのではないか。
      • 勲等が細分化し過ぎているのではないか。もう少し大括りにした方が良いのではないか。
  3. (3) 賞勲局から、「与党栄典制度に関するP・T申し合わせ」等について説明がなされた。
  4. (4) 第4回目の会合は、3月19日(月)に開催し、意見交換を行うことを予定。

[文責:内閣府賞勲局総務課]

(注)本議事要旨の内容については、今後変更の可能性があります。