II.-3.自立した生活を可能とする基盤整備

(1)生活環境のバリアフリー化

障害者が自立して生活し、積極的に参加していく上で、まち全体を障害者にとって利用しやすいものへと変えていくことの重要性が広く認識されている。このため、障害者等すべての人が安全に安心して生活し、社会参加できるよう、住宅・建築物のバリアフリー化や、公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化等を推進し、自宅から交通機関、まちなかまで連続したバリアフリー環境の整備を行っている。
 また、バリアフリーのまちづくりの基盤を進めるため、当事者自らが実施に点検・調査を行い、これを反映させたバリアフリーのまちづくりに関する基本計画を策定するとともに、これに基づく必要な既存公共施設の環境改善を実施している。

(a)住宅、建築物

住宅のバリアフリー化については、公共賃貸住宅においては、設計、設備の面で障害者等に配慮し、加齢等による身体機能の低下等に対応した住宅を標準仕様として供給するとともに、民間住宅においては、住宅金融公庫融資の活用等によるバリアフリー化の誘導を図っている。また、障害者の生活に関連したサービスを備えた住宅の整備を行うため、公営住宅等を建設する際に社会福祉施設等の併設・合築などを推進している。
 建築物のバリアフリー化については、1994年に施行された「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」に基づき、劇場、百貨店等の不特定多数の者が利用する建築物について、身体障害者等が円滑に利用できるよう廊下、階段等に関する基準を定め、建築物の建築主への指導・助言を行っている。さらに、2002年には、建築物におけるバリアフリー化をより一層推進するため、特定建築物のうち一定の用途及び規模のものについてバリアフリー化を義務付けるなどの法改正を行った。また、本法に基づき認定された優良な建築物については、身体障害者の利用に配慮したエレベーター、幅の広い廊下等の施設整備に対する補助制度、税制上の特例、融資制度により、バリアフリー化を推進している。なお、官庁施設についても本法を受けて、1997年に建築設計基準を改定し、更にきめ細かいバリアフリー化を推進している。

(b)公共交通機関、歩行空間等

公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化については、2000年に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」に基づき、新設の鉄道駅等の旅客施設、車両等のバリアフリー化の義務付けや、鉄道駅等の旅客施設を中心とした一定の地区における旅客施設、道路、駅前広場等のバリアフリー化を重点的・一体的に推進している。また、障害者等に配慮した各種ガイドラインとして、鉄道駅・軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル施設を対象とした「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」(2001年)、公共交通機関の車両を対象とした「公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン」(2001年)、道路を対象とした「道路の移動円滑化整備ガイドライン」(2001年)等を策定し、公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化を促進している。

(c)公園等

公園、水辺空間等のバリアフリー化として、公園については「みんなのための公園づくり~ユニバーサルデザイン手法による設計指針~」を1999年に取りまとめ、障害者の利用に配慮した公園施設の整備を推進している。また、河川、渓流、海岸等の水辺空間、港湾緑地、マリーナにおけるバリアフリー化も推進している。

(2) 自立した生活への支援

(a)相談、生活支援

障害者の自立と社会参加を促進するためには、公的サービス等の社会資源を充実するとともに、これらを障害者自身が有効に活用できる相談支援体制を整備することが重要である。このため、1997年から試行的に実施した障害者ケアマネジメント体制の整備について、2003年から本格的に実施し、障害者の地域生活を支える相談支援体制を強化することとしている。
 また、2002年には、自閉症児・者等が地域で自立した生活を送れるよう支援する拠点として、自閉症・発達障害支援センターの整備を開始した。
 さらに、同年、精神障害者の自立と社会参加を促進するため、精神障害者の家庭等にホームヘルパーを派遣する精神障害者居宅介護等事業を創設した。

(b)情報支援

情報機器を活用することにより、障害者の情報バリアフリー化を促進するため、2001年に障害者情報バリアフリー化支援事業を創設した。
 また、2002年には、パソコンの使用に関し、障害者が身近なところで相談できるパソコン・ボランティアの養成・派遣事業を創設した。

(c)福祉用具の研究開発

福祉用具の研究開発については、1993年に「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」が制定され、福祉用具に関する実用化開発への助成及び情報提供を行っている。
 新エネルギー・産業技術総合開発機構において、福祉用具の研究開発及び企業への開発助成を行うとともに、研究開発に必要な情報の収集・分析・提供を実施し、福祉用具の開発及び普及促進を図っている。
 国立身体障害者リハビリテーションセンターの、研究所において、高齢障害者福祉機器研究室及び第二福祉機器試験評価室を設置する等、福祉用具の研究開発を推進している。また、同研究所において、義肢装具及び歩行補助用具に係る強度評価の標準化に関する研究及び開発を進めている。
 また、テクノエイド協会において、福祉用具に関する調査研究、規格化及び標準化に関する研究並びに開発を行っている。

(d)障害者スポーツ

我が国における障害者スポーツは、東京パラリンピックの後、1965年から毎年開催している全国身体障害者スポーツ大会や、「国連障害者十年」の最終年を契機に1992年から毎年開催している全国知的障害者スポーツ大会を中心に発展してきた。2001年からは両大会を統合し、全国障害者スポーツ大会として開催し、障害者全体のスポーツ振興を図る象徴的な全国規模のイベントとなっている。これにより、障害者の自立と社会参加の促進のみならず、国民の障害者に対する理解の増進に大きく貢献している。
 さらに、1998年3月には、長野においてアジア地域では初めてのパラリンピック冬季大会となる長野パラリンピック冬季大会、2002年8月には東京都及び横浜市でINAS-FIDサッカー世界選手権、2002年8月に北九州市で世界車椅子バスケット選手権をそれぞれ開催した。これにより、障害者福祉の向上はもとより、障害者福祉に関する各国の相互理解と国際協力の推進が図られた。
 なお、障害者の特性に応じたスポーツの指導体制の確立及び指導員の資質と指導力の向上を目的として指導員の養成研修を行い、障害者スポーツに対する理解と関心の高揚を図っている。

(e)所得保障

1994年度において障害年金額の実質改善を実施するとともに、自動物価スライド制により、1995年度、1998年度及び1999年度においては前年の物価指数に応じて完全物価スライドを実施した。
 また、前年の物価が下落した1998年度、2000年度、2001年度及び2002年度においては、社会経済情勢に鑑み、特例法により障害年金額を据え置くこととした。
 20歳前に発した障害に係る障害基礎年金の本人所得限度額については、受給権者の所得の伸び等を勘案して毎年8月に引き上げ、また、1997年8月から所得制限に2段階制を導入し、一部支給停止が追加された。

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