【中学生部門】 ◆佳作 及川 華那(おいかわ はるな)

「聴く」ことの大切さ及川 華那(宮城県古川黎明中学校3年 宮城県)

私は水泳の大会で召集所の近くにいた時、顔も名前も知らない女の子に話しかけられた。
「せ…ま…ですか。」
私は心の中で首をかしげた。どこか日本語にしては不自然な感じで聞き取ることはできなかった。
「あっ。もう一回言ってもらえますか。」
と聞くと、彼女は頷いて
「背泳ぎの召集はまだですか。」
と言った。注意して聞いていたので今度は聞き取れた。その後、レースまで時間があったので会話していた。すると、
「私、耳が聴こえないから。」
と彼女は言った。それはあまりにも唐突で、衝撃的だった。「障がい」というものには、テレビでしか触れたことが無かった。そのため、どう行動するべきか、どう反応するべきか戸惑った。ただ、外国人でも無さそうなのに、どこか違和感を覚えるような日本語を話す理由が分かった。その時、私はふと疑問になった。競泳のスタートは音で知らされる。どうやっているのか気になった。伝わるか自信は無かったが勇気を出して彼女に質問してみた。すると、
「補聴器をつけてはいるけれどあまり聞こえないから、一応周りの人を見ている時もあるんだ。」 と言っていた。その話を聞いて私は、今は回復したが以前、突発性難聴を患っていた時の事を想起していた。片側があまり聞こえないだけでも近づく車に気づくのが遅れたり、コソコソと耳打ちされた言葉が聞こえなかったりと相当苦労した。これが両方になるなんて想像がつかない。彼女が速く泳げて、会話もここまでうまくできるようになるのには相当な努力があった事が彼女の言動一つ一つから伝わってきた。

私と彼女はその後の大会でも会う度に話している。私は分かりやすいように話したり、身ぶり手ぶりをつけたりするなどの工夫をしている。そのおかげか、最初に会った時よりも会話がはずむようになった。私は最近あることに気づいた。最初はただ耳を傾けて話を「聞いていた」のだ。しかし、彼女と出会って最近は「聴いている」のである。漢字の中に「心」という文字が入っているように、相手の心に寄りそって耳をかたむけている。

相手の事を考え、心に寄りそって聴くこと。何か行動すること。この世界の多くの人がそれに気付けば、知っていればどんな障がいという壁も越えられると思う。そして、私はこれからも障害の有無に関わらず、相手の心に寄りそった行動をしていこうと思っている。