【中学生部門】 ◆優秀賞 山本 彩佳(やまもと あやか)

最高の仲間と共に山本 彩佳(桜美林中学校2年 横浜市)

「勝つことよりも、みんなが参加して楽しめる方が大切じゃない?」

中学生になり、体育祭に向けての話し合いが行われた日のことだった。生まれつき筋肉の少ない病気で、転びやすく、ゆっくり歩くことはできるが走ることも行進することもできない私は、小学校の運動会はほとんどテントの中での見学だった。今回も私は応援だけをしようと思い、皆の輪に加わらず後ろの方でぼーっと空を眺めていた。私にはこの時間は苦痛でしかない。「彩佳も並んで、ペアを決めようよ。」と突然言われた。それは全学年の全クラス対抗の「二人三脚」のペア決めだった。私が転んだらペアの子も転んでしまう。私の番で絶対に遅れてしまう。皆の足を引っ張ってしまう。大きな不安が心を覆った。私は自分の気持ちを話した。「みんなの気持ちは、すごく嬉しいけど…。」と言うと、「私達はみんなで一生の思い出に残る体育祭にしたいの。もちろん勝ちたいよ。でもね、勝つ事より大切な事があると思う。」と一人が言った。他の子は「歩くのが不安なら、彩佳は車椅子に乗って、ペアの子が押せばいいよ。」と言ってくれた。友達の言葉を聞いて、私の中ではもうこの体育祭は一生の思い出になっていた。

体育祭当日。結局、私はみんなと同じ距離を車椅子を使わず参加した。バトンがどんどん近づいてくる。それも一位で。胸がドキドキした。バトンを受け取った瞬間、みんなの視線、歓声、責任感。これまで体験したことのない時間に、自然と涙が溢れてきた。精一杯足を前に出した。他の人から見ると、ゆっくり歩くような速さだったかもしれない。後ろから来た人達に何組も抜かされ、どんどん差が広がった。焦った私は転んでしまったが、なんとか次にバトンを渡すことができた。「凄かったよ。」「頑張ったね。」「お疲れ様。」友達が次々と声をかけてくれた。私の後ろのペアの子達が差を縮めてくれたが、結果は最下位から2番目だった。私が出なければ一位だったのに、誰も私を責めなかった。それどころか、「競走は負けたけれど、クラスの団結では一番だね。」と言ってくれた友達もいた。

中学に入学し、素敵な仲間と出会い、私は何事も最初から諦めず、とにかくやってみようと思えるようになった。困った時には手を貸してくれる友達がいる。これからは積極的に取り組もう。体育祭が少し好きになってきた。