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第33回障がい者制度改革推進会議(2011年6月27日)
議事要録


議事 合同作業チームの報告について


障害者基本法等のこの間の改正に関する動きついて(報告)

  • (東室長)政府が取りまとめた障害者基本法改正案が衆議院内閣委員会で6月15日に確認答弁を含む2時間以上の審議を経て全会一致で通過し、翌日、本会議を通過した。参議院でいつ審議入りするかはまだ確定していない。「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」が議員立法として6月17日に成立した。
  • (発言)基本法改正案第4章にある障害者政策委員会は重要だ。これの役割として、省庁間を超えた問題について議論ができると理解してよいか。
  • (東室長)政策委員会での議論の対象は障害者基本法に基づく基本計画であり、基本計画は省庁横断的にあらゆる問題が入るので、省庁ごとに議論が制約されることはない。
  • (発言)作業チームからの報告に対する厚労省からのコメントによると、雇用と労働に関しては労働政策審議会を通らないと議論ができないというようなことが書かれている。しかし、政策委員会ではそういう制約なしに議論できると考えてよいか。
  • (東室長)推進会議は閣議決定で設置されているが、政策委員会は基本法に基づく委員会となる。他の省庁には関連する審議会等もあるのでここだけで完結しないが、法律に従って審議をすることになる。
  • (発言)障害者基本法の修正案を配布してほしい。衆議院内閣委員会で採択された附帯決議はこの制度改革推進会議で検討するという理解でよいか。
  • (東室長)修正案は成立後に推進会議で配布する。附帯決議は、政策委員会で議論するということになれば議論の対象になる。

就労合同作業チームについて

  • (報告書の説明)就労合同作業チームは6回の会合を行い、基本法に関連する内容、総合福祉法に関連する内容、雇用促進法に関連する内容について検討をした。障害者基本法に盛り込むべき内容として「労働の権利の保障と苦情に対する救済制度の整備」「労働施策と福祉施策が一体的に展開できる障害者就労制度の整備と労働保護法の適用」「多様な就業の場の創出及び必要な仕事の確保」等、6点を提案している。
    総合福祉法の関連では、自立支援法に基づく就労関係事業を、就労を中心とした「就労系事業」と、作業活動や社会参加活動を中心とした「作業・活動系事業」に再編するとしている。前者を障害者雇用促進法と総合福祉法のどちらに位置づけるべきかについては、従事する障害者の労働者性を確保するという目標からすると障害者雇用促進法に位置付けるのが望ましいが、当面は総合福祉法に位置付け、期限を定めて見直しをすると提案している。就労系事業に関する試行事業を提案しており、その検証結果を踏まえてこの事業の見直しをすべきである。作業・活動系事業は総合福祉法に位置付けるとしている。
    就労系事業については委員の中に次のような意見がある。即ち、箕面市が実施しておりそこで働く人たちに最低賃金を保障し労働者性を確保する社会的雇用、滋賀県や札幌市が実施しておりそこで働く障害者等に労働法を適用するという社会的事業所、セルプ協や日本障害者協議会が提案しており賃金補てんの下で労働法を適用する社会支援雇用の3つだ。社会的雇用と社会支援雇用は似ている所がある。社会的事業所は障害者だけではなく就労に困難を抱えるあらゆる人たちを対象にし、賃金補てんではなく適切な仕事の確保により労働者性や賃金を保障するとしている。これらについて試行事業で検証することとしている。就労系事業については、基本的に労働法を適用するべきであると提案している。
    就労系事業で就労する障害者の賃金を妥当な水準に引き上げるために、適切な仕事を安定確保することは大事である。賃金補てんをすれば済むということではなく、仕事を確保し仕事を通して収入を増やしていくために、官公需の優先発注制度、総合入札制度、民間企業からの仕事確保のため雇用率制度とリンクしたみなし雇用制度の導入、発注促進のための税制上の優遇措置、共同受注窓口の整備や共同での生産性向上の取組み等が必要だろう。
    自立支援法の下でも、事業所に所属しながら企業や公的機関で就労する施設外就労という仕組みがある。これは職業準備性を高めるという意味で有効なので、受け入れる企業等でもみなし雇用としてカウントできるようにする必要がある。ただ、今の1.8%という法定雇用率のままでは、施設外就労によって本来雇用につなげるべきものがつながらないことが想定されるので、雇用率の引き上げも併せて検討する必要がある。
    就労系事業で就労する障害者に対する利用料負担について、自立支援法の下では就労継続支援A型や就労移行支援事業等でも利用料があるが、これは無しにすべきと提案している。
    雇用促進法に関して、雇用率制度は雇用の量を規制しているが、雇用の質を高めるために合理的配慮や職場における差別の禁止等が取り上げられるべきだ。また雇用促進法の対象範囲はあらゆる種類の障害者に広げるとともに、就業上必要な支援を明らかにするための総合的なアセスメントの仕組みをつくる必要があると提案している。
    雇用率制度及び納付金制度の在り方については、対象を障害者権利条約に基づきあらゆる障害を持つ人たちに広げると同時に、納付金の額や助成金の給付手続等も見直しが必要だ。
    職場における合理的配慮の提供については、企業等の取組みの経済的・技術的支援を制度化すると同時に、苦情申立等の救済措置等についても併せて検討すべきだ。
    今後の検討課題として、現在の福祉的就労の場で働く人たちの労働者性を確保し、最低賃金以上を支払えるようにするために、試行事業を提案している。これについては先述のように3つの考え方があり、これらの有効性を検証することで、制度化に当たっての課題を整理すると提案している。今のこの機会を逃しては、何十年も続いてきた福祉的就労制度を見直すことはできないので、見直しにつなげるための取組みが是非とも必要である。
    賃金補てんと現在の所得保障制度との調整について議論しなければならない。6月の閣議決定でも、公的年金制度の抜本的見直しと併せて障害者の所得保障について見直すとされている。
    実態調査に関して、全国民の中での障害者の経済的活動や生活実態を明らかにする基礎資料の整備を提案している。これまでの実態調査等では、手帳を持っている人や雇用されている人のみが対象だった。制度の谷間にある人たちも含め、障害を持つ人たち全体の生活や経済活動の実態を把握するために、全国消費実態調査や国民生活基礎調査等の国の基幹統計調査に障害に関する項目を入れるべきである。これにより国民の中での障害者の位置づけが明確になる。
    障害者に関する労働施策と福祉施策を一体的に展開するための体制整備や、地方自治体での雇用・就労・福祉・年金などに係るワンストップの相談窓口の設置も提案している。最近幾つかの市が独自でワンストップサービスを実践しているとのことなので、注目していきたい。
    以上の提案を実現するための検討体制づくりについて、推進会議の下に就労部会または就労検討チームを設置し、試行事業の検証等検討課題について議論を深めて結論を得ることを提案している。障害者基本法に基づく障害者政策委員会が設置されれば、その中で検討するべきだ。
    就労系事業について3つの考え方があり、総合福祉法の中にどう位置付けるかが問題になる。この点については、早急に作業チームの中で検討したい。
    総合福祉部会への第2期作業チームからの報告書に対して、厚生労働省からのコメントが出ている。この就労合同チームが提案していることについて、難しい問題があることはわかるが、お互いに知恵を出し合い、いかに問題を解決するのかという視点のコメントが欲しかった。
  • (発言)苦情の処理について、知的障害のある人の場合は相手に伝えるのが難しいので、合理的配慮が必要だ。仕事でいやなことがあっても伝えることができない。自分たちがよく知っている支援者が周りにいれば、話すことができると思う。また、雇用されても雇用保険に入っていなかったために、不利益になることがある。精神障害のある人は、障害のことを話すだけで就職を断られることがある。障害が理解されていないと思う。
  • (発言)就労系事業は当面は総合福祉法に位置付けるとある。小規模作業所や就労継続支援事業B型等で工賃が発生している場合には利用料が無料であることはもちろん、労働者性が担保されなくてはならないと考えるが、給付に関わる総合福祉法との折り合いはつくのか。この点も試行事業で検証するということか。
  • (発言)苦情処理については、本人のことをよく知っているサポーターや企業の中で日常的に接触している人が代弁する等の仕組みが必要だ。ドイツでは重度障害者代表という人が職場にいて代弁をする仕組みがある。新しい制度づくりには時間がかかると思うが、非正規と正規雇用との格差や、福祉的就労と一般就労との格差などを解決するために議論をしてきた。
    総合福祉法との関連について、障害者自立支援法に基づく就労継続支援A型は雇用関係があるので、総合福祉法の中でも労働法が適用できる仕組みをつくることはできる。工賃があれば労働者性があるとの意見だが、現在、就労継続支援B型は平均工賃が月額1万2,000円ぐらいしかなく、労働契約もない。この点を整理して、総合福祉法の中で労働性と最低賃金を保障できるようにしたい。
  • (発言)就労支援事業での労働者性について、これを賃金に関して持ち込むのか、全面的に持ち込むのか等の議論があった。賃金については最低賃金や所得保障との関係で様々な議論があり報告の中で突っ込んだ記述はできなかったが、それでも厚生労働省は労働者性の問題は労働政策審議会で検討するとのことだ。だとすると、この提案が総合福祉法にどの程度反映されるのか、不安を感じる。総合福祉法は総合福祉部会で検討するが、一般就労の部分はどこで議論するのか。合同作業チームの意見は推進会議の下に議論の場を作り、労働政策審議会の議論とかみ合わせながら進める必要があるとなっている。閣議決定では、福祉的就労への労働法規の適用の在り方は23年内に、職場における合理的配慮の提供の確保等については24年度内を目途に結論を得るとなっており、これらを検討する場を決めないと作業チーム報告の行き場がなくなる。
    教育の場合は施策の対象者や、普通学校・特別支援学校に在籍する子どもの人数等を把握できているが、労働について把握しているのは障害者手帳を持つ人に限られており、本来働ける人が何人で、その内、福祉的就労が何人で一般就労が何人か、それ以外の人の実態はどうなのか等については議論できなかった。実態調査も提案されているが、身体障害手帳を持つ約360万人のうち就労しているのは約35万人しかおらず、就労していない人の生活実態を一緒に問題にしないと、雇用の問題は浮かび上がってこない。
  • (東室長)昭和26年の労働者の要件についての通知では授産施設で働いている人を労働者から一律に除外するとしていたが、最近これが実質的な判断ができるような規定に変わった。
    新しい通知では指揮命令があり実態が労働と呼べるかどうかが問題になっていて、労働能力は問題になっていない。他方、訓練という要素が明示されていれば労働者ではないなどとなっている。そうした基準自体の妥当性について議論があったのか。
  • (発言)希望すればすべて労働法を適用するのは現実的ではないので、一定のレベル以上の仕事ができる人たちについて、労働者に準じた形で適用することを議論した。現在の制度では就労継続支援B型はずっと訓練で労働法は適応除外となっている。2年なり3年なり年限があれば訓練として妥当性があるが、ずっと訓練という形はおかしい。その場合は就労として位置づけるべきだ。B型でも何時までに仕事をこういう形でやる等、実質的に指揮命令関係があるので、その実態を踏まえるべきとの議論があった。
  • (発言)作業所や就労継続支援B型等で工賃倍増計画が言われたが、簡単に効率のよい仕事を導入できるわけではない。職員より利用者の方が仕事の能率がよい場合もあるが給料は全然違う。今は行った日の分だけ利用料を払うことになっているが、精神障害の場合は調子の波があり、行けない日がある。行ける日に働いてその分の工賃を受け取る。働く内容は職員と同等かそれ以上のスキルがあるのに利用料を取るのはおかしいし、労働者性はあると思う。
  • (発言)社会的事業所では職員、利用者の別なく、働く人たちを同じ労働者として処遇すべきであるという考え方もある。その在り方も含めて、試行事業で検証することでより妥当な在り方を明らかにすると提案している。
  • (藤井議長代理)福祉的就労という言葉はいつごろから誰が使ったか。これは政策用語ではなく1970年代半ば以降、誰かが使い始めた言葉だが、矛盾がたまってしまった。合同作業チームの報告によると政策のあるべき方向ははっきりとしているが、実現のための論理構成が甘い。経済界や社会を相手にした時に、労働法規適用や福祉と労働の一体化などを実現するにはかなりの理論武装が必要になる。
  • (発言)働く者の権利を等しく保障できていない。会社の方が、面倒だけれども障害者を置いてやっているという関係がつくられてしまっているところもある。
  • (藤井議長代理)今の発言を補足する。知的障害者は正規雇用よりも非正規が圧倒的に多く、形式上は労働権保障と言うが労働の質を見ると非正規が多い。さらに知的障害者の多くが自分の権利を主張できないので、政策を実行するための仕組みが大事とのことだった。また、差別・偏見の現れとして「雇ってあげている」という雰囲気を感じる、あるいはそういう状況に置かれている仲間が多いとのことだった。以上の点で、より深い政策論議が必要だ。
  • (発言)労働の対価として賃金を得ていれば、スト権、団結権、交渉権等すべて保障される。雇用主の態度がひどい、あるいは賃金が安過ぎる場合に団結してストライキを打てるのか打てないのかは重要なことだ。しかし、給付の法律である総合福祉法にはなじまないか。

医療合同作業チームについて

  • (報告書の説明)第1期は精神医療に関して議論し、第2期は重度心身障害、難病、精神障害の中で総合福祉法に反映すべきことについて議論した。
    まず1期の報告をする。障害者権利条約の批准を念頭に置いた場合に、最もこれに抵触するのが精神障害だ。憲法では自由が担保されているにもかかわらず、精神障害の場合は罪を犯したわけでもなく裁判で拘束が決まってもいない段階から、身体拘束や行動制限、希望する期間以上の入院等を余儀なくされる。このように自由を剥奪されることは憲法と障害者権利条約に違反する。
    社会的入院の解消について、社会でのインクルーシブな生活を担保するために精神病床削減を前提として、必要最小限の病床確保のため国の責務として施策の実施の根拠となる規定を設けるべきとした。半世紀前に国策として収容と保護を行った際、本来は公がするべき仕事を民間病院に担わせたため病院の経営という問題が入ってしまい、問題が複雑化した。
    次に、今の法律では精神障害者の場合、本人の自己決定だけではなく保護者が責任を負うことになっている。保護者がすべての責任を負うのではなく、司法機関や地方公共団体といった公の機関が責任を負うべきであるとした。
    強制的な入院については適正な手続の保障を求めている。
    精神医療の質の向上については、一般医療と違いインフォームドコンセントがないので、その原則を確立するべきだとしている。また、往診・外来受診を含む地域医療体制の強化を図り、医師、看護師、コメディカル等の連携により入院だけではなく地域生活を支えることが重要だ。
    人権という視点から精神障害者への一般医療の確保も必要だ。精神障害者が癌や糖尿病等になった場合に適正手続が保障されておらず、入院できないことがあるので、この点も解消すべきだとしている。
    作業チームでは病院関係者もメンバーとなって議論し、福祉の充実や地域移行等には意見の一致をみた。しかし、推進会議では精神保健福祉法をなくして正当な適正手続法に変えるべきとしているのに対し、病院サイドとしてはその立場は取れないとのことだった。また、推進会議の議論としては認知症の方を精神病院に入れるべきではないとしたのに対し、病院の方は認知症の人には精神科医療が必要との意見だった。
    地域移行支援システムの構築については、地域での生活を定着させるための生活支援・福祉サービスを重視する必要がある。そのために必要なのが住居の整備だ。次に地域移行のための財源と支援する人材の確保。そして、地域生活や就労につなげるドロップインセンターの整備も必要だ。人権の視点から適切な支援をするには、ピアサポートは重要な方法の一つだ。
    厚生労働省のコメントで、以上のような提案に対して「厚生労働省で検討委員会が進んでいるのでそちらの方で決める」と一刀両断に切られてしまっていたことを残念に思う。
    次に第2期の報告に移る。重症心身障害児については医療と福祉の連携によりサービスが展開してきたが、難病についてはその概念すらもまだ確立していない。全体を通じて重要なことは自己決定権のための相談支援が大事だということだ。また、地域移行のためには、住まいの確保と居住のサポートが必要で、公的保障人の制度をつくり市町村が賃貸物件を借り上げること等も検討すべきではないか。
    全体的に、総合福祉法以外の法律、例えば医療法、精神保健福祉法、地域保健法などに関わる問題が多かったので、総合福祉部会の三役等には、総合福祉法に反映すべき内容と他の法律に反映すべき内容を振り分けて受け取っていただきたい。目次によると、総合福祉法の骨格提言のほかに、関連する他の法律との関係という項目があるので、歓迎したい。
  • (発言)1期2期を通して医療と福祉をどのようにつなげるかがテーマだった。医療と保健と福祉の連携したサービスがないと地域生活はできないということが作業チームの大方の意見だった。そのために重要なのが相談支援体制だ。多職種チームによる相談支援体制を総合福祉法の相談体制の中に組み込んでいただきたい。
  • (発言)精神医療における拘束、電気ショックなどの医療の内容に踏み込んだ人権確保の観点から適正手続の確保、保護者制度の見直し等について精神保健福祉法の抜本的な改正が必要だ。拘束は増え続けている。また、依存性の強い薬物を処方されて、やめるときに苦しいという問題もある。こうした問題を人権の観点から検討しなくてはいけない。拘束をして治す方法も、拘束しないで治す方法もあるとしたら、しないで治す方がよい。医師が医療行為だから依存性の高い薬を使いますと言ったら使われてしまう。それに対して、それは困ると言うのは人権の観点から医療の内容に踏み込んでおり、今までにはなかった論点だ。
  • (発言)難病に関する厚労省のコメントは「医療を初めとする難病そのものの議論については、障害者総合福祉法とは別に検討される必要があると考えます」「医療と福祉の在り方及び医療費の支援の在り方等については、現在、厚生労働省の設置された新たな難治性疾患対策の在り方検討チームにおいて制度横断的な検討を行っている」となっている。なぜ、上記の「新たな難治性疾患対策の在り方検討チーム」において「今回の報告を参考にする」と書かないで、一刀両断に排除するのだろう。これでは、何のための議論だったのか分からない。
  • (発言)「サービス体系の在り方について」の「働きたいと望む人への就労支援の強化」に「就労を希望する障害者には、施設の中ではなく、企業や働く場での支援の強化を盛り込むことが必要」とあるが、これについての議論を紹介していただきたい。
  • (発言)精神障害や知的障害のある人が職場に定着するには、ジョブコーチによる支援が有効だという議論だった。精神障害の場合は適切な労働条件の下で働ける場が少ないので、福祉的就労から脱却できない。能力はあっても合理的配慮がなされないために働くことができないという人も多い。
  • (発言)精神障害者は身体拘束等により自由権が侵害されており、また地域移行するということは社会権がどの程度確保できるかという人権の根本的な提起だ。加えて、これらについて適正手続の確保が必要との貴重な提言もある。次に、今回は総合福祉部会と推進会議との関わりで報告を受けているが、人権侵害等について何らかの規律が必要だということになれば差別禁止部会にも関わることになり、両部会の連携が必要になる。3点目に、推進会議が当事者の知見を踏まえたあるべき姿を提言しても、厚労省の下にある労働政策審議会その他の審議会との相互の乗り入れができない状況がある。従って推進会議が検討する事柄について、他の省庁の審議会とのすり合わせを、ある段階では政治的に動かすことも想定して、進めるべきだ。
  • (発言)今までの厚生労働省のいろいろな審議会では、当事者の意見が反映されていない。この推進会議や総合福祉部会では、当事者の意見により何十年もの間気付かなかったことに気付かされた。そうして取りまとめたものが国に取り入れられないのは残念だ。この報告は、実現されるべき筋道だと確認し合いたい。

障害児合同作業チームについて

  • (報告についての説明)障害児支援は障害者権利条約でも子どもの権利条約でも重要に位置づけられている。報告書では、障害児支援を一般の児童施策に位置付けた上で、障害児固有の支援を保障するという重層的な関係を提案している。
    まずは障害児の基本的権利を明記し、これを具体的にするためにオンブズパーソンを制度化することを提案している。早期支援については、乳幼児健診の後で療育や医療のみにつながるのではなく、地域における子育て支援や保育所入所等早期の地域での支援につながるように制度設計するべきである。次に、障害者自立支援法のつなぎ法(以下、つなぎ法)における保育所等訪問支援事業の訪問対象に家庭を加えること。
    内閣府で現在検討中の子ども園において、障害を理由に入園が拒否されることのないよう制度設計すべきだとしている。子ども園や放課後児童クラブ等の一般児童施策の中で障害のある子どもが支援されるということは、そこで放置されるということではなく、必要な支援と合理的配慮を受けるということだ。また、虐待を受けている要保護児童としての障害児は、どうすれば家庭に戻れるのかという問題については、家庭での虐待の場合は親・家族へのカウンセリングや育児支援を家族全体が受ける必要がある。家庭復帰が困難な場合には、専門里親制度やファミリーホーム等の家庭に近い環境での養育が保障されるべきである。ということで、そこでの養育を保障すべきである。
    次に障害児固有の施策について説明する。まず療育については改正障害者基本法でも明記されたので、地域社会の身近な場所でこれが保障されるような制度設計が問題になる。訪問系サービスについては通学を含む移動サービスの保障等、障害児の自立を支援するために拡充するべきである。通所支援に関してはつなぎ法で大きく変わったことを踏まえ、児童デイサービスや児童発達支援センターの在り方等提案している。障害児入所施設については、まず入所に当たっての契約等において保護者ではなく障害児の最善の利益が確保されなければならず、そのためにはオンブズパーソンによるチェック機能が必要である。次に、自立支援計画については児童養護施設同様、障害児入所施設にも策定を義務付けることで、地域での自立生活のイメージがわくような内容とするべきである。その他、家庭に近い養育施設の整備と地域生活支援、家族支援も重要だ。
    入所施設は地域の社会資源として在宅支援等、地域生活を支援する方向にかじを切るべきではないか。入所決定に関して、現在は都道府県がこれを行っているが、身近な行政である市町村が何らかの形で関与できるように制度設計できないか。養護学校の寄宿舎については、文科省管轄なので大きくは触れないが、入所型のような利用がされているとしたら、通学を保障するためという趣旨を踏まえて自宅のある地域社会からは分離されないよう運用されなければならない。必要であれば実態を調査し、地域生活移行に向けた施策を検討しなければならない。
    そして、一般児童施策と障害児施策をつなぐものとして相談支援がある。乳幼児から就学前、就学時、卒後と、年齢と共に必要な支援に基づき個別支援計画を立て、ワンストップ型の相談体制を保障するべきだと提案している。人材育成については、障害児固有の相談や個別支援計画等々を担う人材が不足していることを踏まえ提言している。
    以上、全体を通じて多くの項目が児童福祉法に関するものだった。「報告書は児童福祉法だから総合福祉法では引き取れません」とならないよう、引き続きの検討をお願いしたい。
  • (発言)障害者権利条約と子どもの権利条約の両方を今回の提言の中で実現したいという基本的な話し合いはあったのか。総合福祉法に関する部分と児童福祉法に関する部分、学校基本法等に関する部分等があるが、これらの整理はどこかでするだろうということか。それとも報告書の中で、この部分は総合福祉法、この部分は児童福祉法などと整理するのか。
  • (発言)障害児が意見表明をできない場合に親が福祉や医療サービスを選択することになるが、その内容を決めるプロセスにオンブズパーソン制度を組み込むと理解してよいか。
  • (発言)相談支援の際には子どもの意見表明権を踏まえて子どもの意見も聞くという点を確認をしたい。また精神障害者の場合、本人だけでは事業所が契約してくれない、つまり契約能力を認めてくれないことがある。子どもには契約能力がないことになっているからオンブズパーソンが必要だと提案されているが、オンブズパーソンを認めると契約無能力を自ら認めることにもなりかねない。オンブズパーソンの守備範囲を明確にする必要がある。
  • (東室長)基本的な考え方として「他の子どもとの平等の確保」「子どもの最善の利益」「意見表明権」が挙げられているが、「自己決定権」というテーマもある。子どもの最善の利益は誰がどういう立場で判断するかによって中身が異なる。保護者が言うことが最善の利益なのか、本人の意見表明と違う場合にどう考えるのか、保護者と行政の意見が違う場合はどうなのか、事業者や医者、裁判所はどうか等、非常に抽象的で多義的で内容も利害対立を含んでいる。そういう言葉であるにもかかわらず、意見表明権の前に最善の利益を置くことについての議論があったのか。また自己決定権との関係はどうか。知的障害のある人たちは大人になって自己決定権があるにもかかわらず、子ども扱いされて最善の利益という形で処遇されてきたということがある。こうした点についての問題意識はあったか。
  • (発言)最善の利益は子どもの意見表明権を踏まえたものであって、動作、しぐさ等々も踏まえて、最大限にくみ取られるべきものという前提には立っており、優劣をつけたわけではない。オンブズパーソンが設置されている市町村の状況を見ると、子どもに寄り添い、子どもの利益を尊重しているので、その方向性のものがつくられるべきだ。確かに最善の利益に関しては、保護者や専門家等が積極的に関与すればするほど子どもの意見が損なわれる実態があるので、これらに代わって同じ障害のある仲間がサポートして子どもをエンパワーメントするようなオンブズパーソン制度が求められている。年齢に応じた意見表明は重要だが、一律に何歳以上はこうするということは決め難いのではないか。子どもの権利は生活に密接なので、保護者でもなく医療等の専門家でもない人が、子どもの立場でこの子がどう生きていくのかを考え、サポートするような制度設計が必要だ。 障害者基本法に盛り込むべき内容として、オンブズパーソンや子どもの権利に関して議論した大枠を報告書に書いた。オンブズパーソンは障害児だけでなく子ども一般においても必要で、これをどう実現するか十分議論できなかったが、全体の枠組みとして位置付けることに異論はなかった。
    今後、厚生労働省が児童福祉法を改正する時に、今回の報告書を反映させるような方法を追求するべきだ。
  • (発言)自己選択、自己決定の前に、障害者本人に説明をすべきだ。説明のないまま特殊学級や養護学校に入れられることがある。ゆっくりと説明をし、自分たちがどう生きるのかを選択できるようにしてくれる人が誰もいなかった。自分たちで選択して、どう生きるのかを考えたい。
  • (発言)「安定的なサービスの提供」のところで、福祉サービスの利用料の滞納によってサービス提供に支障が生じることのないよう、子どもの最善の利益を侵害する場合の対応について行政の関与を検討することが必要であるとあるが、これはどういう意味か。
  • (発言)保育料等の滞納児に対しては、行政等の関与でその子の利益が保障されるべきだということだ。学校は義務教育の間は原則無償だが、保育料等は保護者の負担能力に応じて払うことになっているので、払えない場合の救済策が必要だ。
  • (発言)基本的には児童福祉法で支援をカバーするとのことだが、家族支援という視点で重要なショートステイ、レスパイトケア、ホームヘルプ等や相談支援についてはどこに位置付けるのがふさわしいと考えるか。児童に対するこれらの支援について、現在は自立支援法で対応している。
  • (発言)それらは訪問系サービスと共に総合福祉法で制度化していただくことになる。
  • (藤井議長代理)就労も医療も児童も、基本的な問題は総合福祉法だけでは解消できず、それぞれ他省庁の関係部局との連携や調整が必要だ。既存の審議会との関係等、今後の審議形態をどうするかは難しい課題だ。

その他の作業チーム報告と今後のスケジュールについて

  • (作業チーム報告について説明)去年の10月から12月が第1期作業チームで1月に総合福祉部会でそれぞれのチームから報告をいただいた。更に2月から5が第2期作業チームで6月に報告をいただいた。
    「法の理念・目的作業チーム」は、地域で自立した生活を営む基本的権利を法の目的で掲げるべきと提案している。その前提に保護の対象から権利の主体への転換を確認する理念規定も必要とのことだ。推進会議の第一次意見、第二次意見を踏まえた提案となっている。
    「障害の範囲作業チーム」は、推進会議が社会モデルで制度の谷間を生まない定義を提案していることを踏まえ、総合福祉法における定義を「障害者とは身体的または精神的な機能障害(慢性疾患に伴う機能障害を含む)を有する者と、これらの者に対する環境に起因する障壁との間の相互作用により、日常生活または社会生活に制限を受けるものをいう」と提案している。
    「相談支援・支給決定作業チーム」は、現行の障害程度区分に代わる新しい支給決定の仕組みとツールが必要と提案している。相談支援の充実により当事者のエンパワーメントを徹底し、協議・調整に基づいた形で支給決定ができるようにとの提言だ。
    「訪問系作業チーム」「日中活動とグループホーム・ケアホーム、住まい方支援」「地域生活支援事業の見直しと自治体の役割」の各作業チームは支援体系について提言している。続いて「地域移行」「地域生活の資源整備」「利用者負担」「報酬と人材確保」の各作業チーム報告となっている。
    「利用者負担」作業チームは、自立支援法並びに応益負担廃止後の負担の在り方として、障害に伴う必要な支援は無料とすべきだと提言している。ただし、食材費や水光熱費等、誰もが支払う費用は、一定の所得保障を前提として負担をすべきだとしている。
    「報酬や人材確保」作業チームは、障害分野の人材確保の仕組みをどのようにして作るのかについて提言している。
    新法は、障害者自立支援法を少し化粧直しした程度のものにとどまるのではなく、作業チームの報告を受け止めた形で方向性を整理してほしいというのが、委員、部会メンバーの要望だ。
  • (今後のスケジュール等について報告)部会メンバーの意見を作業チーム報告の末尾に補足版という形で掲載する等して、7月8日には最終的な作業チーム報告を合本としてまとめたい。そして、これに基づいて8月中に骨格提言を取りまとめる予定だ。骨格提言のイメージは、障害者総合福祉法(仮称)の基本的なコンセプトを示すものになるが、障害者の定義や法律の目的等については、できる限り法案に近いものを盛り込みたい。作業チームの検討をベースにして、部会三役の責任で座長・副座長からの意見を聞いた上で取りまとめる。
  • (発言)各作業チームでの検討内容を相互に反映させる必要がある場合の調整はどうしてきたのか。障害者自立支援法の問題点を指摘した上で作業チーム報告をまとめているのか。
  • (発言)作業チームでの議事要旨は毎月、全員で共有されているので必要な調整はされているが、異なる意見を両論併記とするのか等、なお調整が必要な点もある。骨格提言では結論を明確に書きつつ、自立支援法の問題点を踏まえ改正がなぜ必要なのかを丁寧に説明する必要がある。
  • (発言)自立支援法では、事業体系が自立支援給付と地域生活支援事業に二分化しているが、これがどうなるのか。障害者の自己決定権と合理的配慮の要請という問題について、作業チームの報告は自立支援法とどういう形で結び付いているのか。不服申立は作業チームごとに検討した場合、分野ごとにばらばらにならないか。
  • (発言)不服申立や苦情解決については権利擁護として章を設けることにしている。 自立支援給付と地域生活支援事業という分け方について、報告では、地方の裁量で取組む地域生活支援事業のような仕組みは必要だとしています。ただ、移動やコミュニケーション等、基礎的な支援については義務的経費にしようという方向だ。相談支援事業に関しても財政的にしっかりしたものにしようという方向だ。

報告事項

◆「災害時要援護者及び県外避難者の情報共有に関する意見書(日弁連)」について
  • (発言)日弁連の被災対策委員会で個人情報の扱いについてまとめたもの。まず、「生命・身体・財産の安全確保のため、緊急かつやむをえないとき」又は、「公益上特に必要があり、かつ、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められるとき」、さらに「住民の利益になることが明らかな場合」は個人情報を開示できるとの解釈を提案している。個人情報共有の方式については内閣府・総務省・厚労省がガイドラインを平成18年に出しており、これを周知させるべきだ。全国避難者情報システムについて、県外避難者の登録は地方公共団体が本人の同意なしでできるように改善すべき。こうして網羅的に登録された避難者情報について避難者同士の相互連絡を促すことは国、都道府県の責務なので、国と都道府県が関与して開示すべきとの提案をしている。被災者支援システムについては、義援金の配分が滞っているのも情報が共有されていないことが一因なので、被災者の情報を管理するシステムを整備すべきとの提案だ。災害時における個人情報の関係機関共有方式の明記については、条例や災害救助法に根拠規定を書くべきだ。個人情報の提供先に対するガイドライン等も重要で、これを事前に関係団体等に周知する必要がある。要援護者情報をもつ市町村が被災により情報を喪失したことから、都道府県による情報共有が必要であると提案している。
◆わかりやすい障害者基本法の作成について
  • (発言)わかりやすい基本法を作るためのチームを8月8日に立ち上げたい。やりたい人は手を挙げてほしい。(メンバー決定)
◆「障害者の権利委員会のチュニジアへの総括所見の概要」について
  • (発言)4月の障害者の権利委員会に関して報告する。障害者の権利委員会は最初の国際的モニタリングの対象としてチュニジアを対象に審査し、見解を示した。チュニジアと日本では社会的にも経済的にも違いがあるが、将来、日本が条約を実施する際の参考になる。
    積極的な評価点は、チュニジアからの報告が障害者組織を含む国内における幅広い協議を経てまとめられた点だ。条約実施を妨げる要因と困難として今年1月の民主革命に伴う不確実な社会状況が挙げられたが、同時にこうした変革は新たな国づくりに障害のある人たちが参画する貴重な機会ともなると指摘されています。日本の場合だと今回の震災について同じことが言えるかもしれない。懸念事項・勧告としては、第5条の平等と非差別については合理的配慮の欠如が障害に基づく差別であると法的に規定すべきという意見や障害児施設でも障害児自身による苦情申立の仕組みや定期的モニタリングが必要との意見、第17条の個人のインデグリティの保護については患者の完全なインフォームドコンセント抜きにした手術や治療をなくすべきとの意見や法律によって女性の権利擁護をすべきとの意見、第24条の教育については障害児を対象にすべての学校でインクルーシブな教育を実施すべとの意見、第29条の政治的及び公的活動への参加について後見制度を利用している障害者の投票権を確保する法的な措置を緊急に実施すべきとの意見などがある。最後の指摘は、日本でも後見制度を利用する人の投票権の剥奪が問題になっている。次回は、スペインが対象となる。

その他

  • (東室長)推進会議や部会での議論と各省庁に置かれている審議会等の議論がどう連携していくかという問題が出された。当面は、3つの合同作業チーム報告の中の、第一次意見に基づく閣議決定で検討の期限が明記された部分について、事務局から議論の進捗状況を聞くことも考えている。他方、障害者基本法が成立すると、障害者政策委員会から関係大臣に意見を述べて審議会での見直しを求めるという流れも想定される。
  • (発言)推進会議として厚労省のコメントに対する見解を示す必要があるのではないか。
  • (東室長)次回は骨格提言案について議論するが、その際、厚労省のコメントなども議論の対象になる。
  • (発言)総合福祉法の骨格案は推進会議で決定をして、それを推進本部で承認した後、閣議決定をするべきだ。また、法案を作成する段階でも総合福祉部会で検討した上で、推進会議としても法案について意見を出すのが望ましい。
  • (東室長)総合福祉法骨格提言の扱いについては、総合福祉部会が決めたものを推進会議としてはそのまま受け取ることが基本となる。厚生労働省で法案づくりが始まると、いつの段階かは分からないが、事務方から説明を受けて総合福祉部会としての意見を述べることが必要になる。
  • (発言)部会の設置は推進会議で確認することになっている。総合福祉法と差別禁止法をつくることは既に閣議決定されているから、私たち推進会議が部会の意見を推進本部、閣僚に報告する必要がある。こうした原則を確認しておきたい。 
  • (東室長)骨格提言は推進会議ではなく、総合福祉部会がつくる。その報告について推進会議で議論をして新たに意見を入れ込むかという議論は確かにある。その後に推進会議、総合福祉部会の全体の意思として推進本部に上げることが求められている。ただ、いつ頃どういう形で上げるかはまだ見えない。

[以上]

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