障害者施策に関する高市大臣との懇談会 議事要旨等

障害者施策に関する高市大臣との懇談会出席者

安藤 豊喜(あんどう とよき) 財団法人全日本ろうあ連盟理事長
石川 准(いしかわ じゅん) 静岡県立大学国際関係学部教授
岩城 節子(いわき せつこ) 東京都重症心身障害児(者)を守る会会長
君塚 葵(きみづか まもり) 心身障害児総合医療療育センター所長
小金澤 政治(こがねざわ まさじ) 特定非営利活動法人全国精神障害者団体連合会副理事長
笹川 吉彦(ささがわ よしひこ) 社会福祉法人日本盲人会連合会長
副島 宏克(そえじま ひろかつ) 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会理事長
竹中 ナミ(たけなか なみ) 社会福祉法人プロップ・ステーション理事長
舘森 久秋(たてもり ひさあき) 社会福祉法人東京都知的障害者育成会本人部会副代表
妻屋 明(つまや あきら) 社団法人全国脊髄損傷者連合会理事長
ニキ リンコ() 翻訳家
福島 智(ふくしま さとし) 東京大学先端科学技術研究センター准教授
藤井 克徳(ふじい かつのり) 日本障害者協議会常務理事
山本 征雄(やまもと ゆきお) 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会副会長
米田 幸司(よねだ こうじ) 全国心臓病者友の会会員
(敬称略 五十音順)

日時:
平成19年7月24日(火)13:00~15:04
場所:
4号館共用第2特別会議室(4階)
議事:
(1)新たな「重点施策実施5か年計画」の策定について
(2)その他
要旨:
各障害当事者等から出された意見の要旨は以下のとおりである。

○安藤豊喜氏(全日本ろうあ連盟理事長)
 障害者の権利条約について、その理念と方向性を我が国の障害者福祉にどう位置付けていくかということが非常に大切ではないかと思う。戦後の我が国の障害者福祉施策も非常に発展はしているけれども、まだ障害者の人間的な尊厳とか基本的な人権をきちんと保障していくというような施策が弱い感じがする。したがって、障害者の権利条約の障害者の権利性を尊重する理念というものをきちんと我が国の障害者福祉に生かしてほしい。今後の計画の中の中心的な課題はそれになるのではないかと思う。
 権利条約の中に手話を言語とすることが定義付られた。それをどう我が国の法律の中に定義付けていくか非常に難しい問題があるとは思うが、先日参議院内閣委員会の決議の中に、障害者差別の禁止に関する法制度の在り方について早急に検討を行うことを強く政府に要望するとあり、この障害者差別の禁止に関する法制度の中で、きちんと手話を言語として位置付けていくというような施策をお願いしたい。
 聴覚障害者の場合は、単に情報だけではなくて、コミュニケーションのバリアが多いことから、手話とか文字情報によるコミュニケーションのバリアというものを計画の中に位置付けていただきたい。

○石川准氏(静岡県立大学国際関係学部教授)
 バリアフリーを実現するためには様々な努力を結集させるというか、共同作業、チームプレーというのが非常に重要で、例えば端的にいえば、ユニバーサルデザインを一方で推進しつつ、支援技術、個々のいろんな身体的な特性を持った人々を直接支えるような支援技術、両方頑張っていかないとバリアフリーとかアクセシビリティというのは達成することができない。
 障害者福祉政策というのも全体の政策がどういう方向に向いているのかということと無関係にはなくて、やはり全体の政策が多用な人々の生活を支える方向で十分機能している場合には、個別具体的な障害者施策が担わなければいけない負担というのが、それだけ軽減されたり、より投入するリソースが効果的に活用できるという、そういう関係にあると思う。
 新計画については、障害者福祉を推進するための5か年計画であるということはもちろんのこと、同時に社会全体の方向性というか、多様な人たちが一緒に暮らしていく社会を実現していく、そのための政策を一方できちんと進めていくということとが、両方相まってようやく実現するものである。
 現行の計画については、バリアフリーの分野では、交通と建築は確かにかなりの成果が上がったというふうに評価しているが、総理も指摘されているが、情報分野に関して言うと、数値目標が今まで設定されてなかったという、全くそのとおりで、なおかつJISの8341の制定ですとか、幾つか成果はあったが、実感としてほかの交通等の分野に比べますとまだ十分な成果が上がっているとは感じられない。具体的には放送とか、通信とか、出版とか、こういった分野での情報・バリアフリー化というのは、新しい計画の中でぜひ重点施策として取り上げていっていただきたい。

○岩城節子氏(東京都重症心身障害児(者)を守る会会長)
 障害者自立支援法等が施行されて、まだ2年目であるが、今年になって弊害が出てきていることを日々の生活の中で感じられる。
 現在、診療費報酬の改定とか、病院・施設等の経営上の原因からか、例えば病院改築に伴って運営上、60床にしないとむずかしいという理由から、入院中の者でも60床にあわせて、余る人は他所の病院や同じ病院内の他の病棟へ移されるということが現実に起こっている。単に、障害程度区分の判定によって移される場合があるが、昨年の12月に参議院において附帯決議がせっかくなされたのであるが、そのあたりどうなっているのか。
 超重症児、準超重症児という医療的なケアなくしては日々の生活が成り立たない者たちもたくさんおり、そういう者たちが、在宅生活の支えであるショートステイや短期入所が、施設等の事情から受入れを断られて困っている。看護師さんの不足も大変大きな問題になっている。
 福祉の窓口が国から都道府県、さらには区市町村に移行していくのはいい部分もあるが、その地域の財政や考え方の違いから、全国的にはかなり地域格差がある。
 重症心身障害児・者は一般の人から見ると、ものの知識やものごとの理解がどの程度かと理解されにくい子どもたちであるが、必ず個々の内に持っている可能性が、そして遅々とした中に進歩・発達を示しており、そういうことが抹殺されない、そういう計画になってほしい。

○君塚葵氏(心身障害児総合医療療育センター所長)
 障害児の頻度について、国際的には10%位と言われているが、我が国では6%、中華人民共和国は5%という形で、障害児の国による定義によってかなり頻度が異なっている。そういう中で国際的な基準に障害児(者)の定義というものの見直しをすべきではないか。
 先天性の脊髄損傷である二分脊椎という生まれながらの下肢の運動知覚障害の方たちが、先進国ではどんどん減っているが、我が国だけは増えている。その予防に取り組み始めているが、浸透はまだ進んでいない。
 また、若い妊婦たちの喫煙、飲酒などがとても多いということがあって、これに対するキャンペーンも必要ではないかと感じている。
 医療モデルの上に生活モデルを組み重ねていく新たな方策というものがバランスをとりながら進められるべきと考えている。
 早期発見、早期療育ということで、例えばオオカミ少年、10歳以上過ぎて人間の社会に来ても一生言葉が話せなくなるし、生まれたばかりの赤ちゃんのネズミ、3か月間目隠しをしていると一生目が見えないというように、早期の療育なり、人の社会での乳幼児期よりの刺激が必要であることは明白で、早期の対応を重視していただきたい。
 遺伝子診断ではプラスマイナス両面あるが、必要な遺伝子診断について保険が使えなくてなかなか有効に働いていないことを懸念している。
 肢体不自由児施設においては、肢体不自由児以外もどのようなお子さんでも私たちが対応している。ただ、重度でない中等度・軽度の知的障害なり精神障害の方については受け入れるけれども、重度の精神障害、あるいは知的障害の方たちは専門の医療機関にお任せして、ある程度の地域性と専門性のバランスを求めていきたいと考えている。
 家族サポートはとても大切で、特に心理的な側面で心理士の重視をさらに進めていただきたい。
 国内法に優先する子どもの権利条約を日本は批准しているが、その後のフォロー・チェック機能が不十分になっていると感じている。そして、障害児に振り分けられている福祉・医療のお金はとても少ないと感じている。

○小金澤正治氏(全国精神障害者団体連合会副理事長)
 権利条約の中にもあるが、精神障害者に対する偏見・差別の解消を何十年来言い続けてきているが、具体的なところにまだ手が届いていない。精神障害者のすべての問題にわたって偏見・差別というこの2つのキーワード、これをきちんと考えていかないとならない。それぐらいこの偏見・差別が強い。偏見・差別という問題を今が100だとしたら、100を50に、50を10に、10を1にしてもらいたい。そういう取組の中から見えてくるものが一番大事ということを当事者運動を通して感じている。
 障害者自立支援法について、現状としては自立支援になっていないという声が多い。就職率は全障害者の1%と言われており、その1%を2%にするような効果はあると思うが、残された98%の方は、特に精神の場合は病状が安定しないゆえに、決まった就労がしづらく、また、継続していかない。今までは作業所、授産施設がほとんどが無料で通所できたが、自立支援法では、移行した場合には利用料が取られる。例えば1か月5,000円の工賃をもらうために1万円の利用料を払いなさいと、極端にいえばそのような方式になっているので、この点は改めていただきたい。自立支援医療では家族の収入によって上限が決められるということで、私自身も0円だったものが年間で1万円ちょっと取られるようになった。この点もう一度見直してもいいのではないか。
 障害基礎年金、これは三障害でそれぞれ違い、特に精神の場合は、就労不能もしくは就労困難という医師の診断書がないと、年金がおりない。身体、知的の障害の場合は、例えば車いすでもパソコンは打てる、一般事務はできるということで障害を持ちながら仕事ができる人たちは障害年金がもらえる。精神障害の場合は働けるようになると、障害年金がもらえなくなる。精神障害については、例えば通院中は障害と認めるというようなことにしないと、本当の支援ができない。精神も同じにしてもらいたいと思う。私ども当事者団体としては、この年金を糧にしないとみんな生活保護に入ってしまう。それではせっかくの自立支援法の意味がないと思う。自立支援法をうまく運用していかないと生活保護に開き直って入って行く人が一杯いる。そうすると病状の悪化にもつながるし、結局また閉じこもりになってしまう、悪循環です。
 当事者運動は運営していくお金がなくて困っており、国や地方自治体がバックアップして当事者運動の流れを強めていってほしいと思っている。

○笹川吉彦氏(日本盲人会連合会長)
 国連障害者権利条約の署名を早くしていただきたい。それから、この権利条約の中で統合教育・インクルージョンということがうたわれているが、我が国の場合は大変これが遅れている。それぞれの自治体の教育委員会が認めた段階で統合教育が受けられるということであるが、やはり文科省が先頭に立ってインクルージョンを進めていただきたい。国連の討議の場でもこのことが非常に大きな問題で、日本の統合教育に対する対応が遅れているということを指摘されている。
 毎年厚労省から雇用率が発表され、ここ2年ほどは年々雇用率も上がってきており、このことは大変ありがたいが、その中で視覚障害者がどれだけ就労しているか、雇用されているか、この数字が全くわからない。というのは、身体障害者全体の雇用率は出ているが、視覚障害者の雇用率が出ていない。したがって、視覚障害者の雇用状況が把握できない。それから重度障害者の場合はなかなか雇用につながることが難しいため、自営業に従事することになるが、今の制度では自営業に対するフォローはほとんどない。働きたいけれども、働く場がないというのが視覚障害者の実態である。もう少しきめ細かく視覚障害者の働ける場が確保できるような、例えば、厚労省がチャレンジ雇用をされるとのことであるが、こういった形ででも道を開いていただきたい。
 生活支援の問題については、大変障害者の生活実態が厳しくなった。特に大きな問題は、地域格差が非常に大きくなってきたということである。そもそも障害者自立支援法の目的は、全国どこにいても同じサービスが受けられるようにするというのが基本であるが、実態は全く逆の現象が出ている。障害程度区分の問題にしても同じであり、見直しして、充実を図っていただきたい。
 視覚障害者の場合、地域生活を営む上で一番重要な問題は移動支援の問題であるが、リハビリテーションを受けたからひとり歩きができる、盲導犬が使えるということにはならず、ほとんどの場合、介助者があって初めて外出ができる。そのための対応が大変遅れている。多くの視覚障害者は読み書きに大変苦慮しているが、それを誰がするか、このことはまだ決められていない。日常的に必要な読み書きへの対応を考えていただきたい。
 視覚障害者の場合は、情報バリアが大変大きいが、この部分は大変遅れている。
 視覚障害者が、テレビから得る情報というのは極めて多く、解説がないと十分内容が理解できない。視覚障害者が一般国民、ほかの障害者と同じように情報を同じタイミングで得られるように図っていただきたい。

○副島宏克氏(全日本手をつなぐ育成会理事長)
 現行計画について、数値目標に対し進捗状況はすごい勢いで実現しているが、数値目標のセットの仕方のところに問題がないだろうかと思っている。というのは、14年度の実績を使っての数値目標ということになると、その後の法整備や、予測できなかった社会状況とかがあったのではないかと思うので、その点しっかりと見ていただきたい。
 生活支援のところで、今市町村において障害者計画は進んでいるが、その中の1つである相談支援の窓口である地域自立支援協議会の設置が遅れている。協議会ができたところとできてないところの地域間格差が出ている状況であり、できたところにしても、何か形骸化しているような状況が見受けられるので中身のあるものにしていく必要がある。
 在宅サービスの目標値はおおむね順調だといっても、その目標の設定の仕方のところに問題があると思うし、地域間格差が大きく出ています。どの地方でもサービスが利用できる状態ではないし、地域移行という受け皿であっても、それが地域の中では十分にできてないという現状である。施設から地域へという移行も地域によっては十分に進んでない実情があることを知っていただきたい。
 共生社会に対する国民理解の向上のところでは、物理的なバリアフリーは確かに進んでいるが、心のバリアフリーがなかなか進まない。考えるには、長い間障害者差別の時代が続いたということで、健常者の心の奥底に障害者への差別が今でも残っているということを思っている。ぜひ国連の権利条約への国としての対応の中で、障害者の人権の保障を具体的なところで示していただきたい。
 発達障害児という今まで表面に出ていなかった問題が地域ではたくさん出ており、教育現場の中で混乱している状況がよく見られ、教師の力量不足もあると思うし、医療と福祉、そういう他事業との連携が十分にされてないところにも問題があるのではないかと思う。現行計画では教育については数値目標がなかなか出てないので、しっかりと現場の目標値、これを出していただきたいと思う。
 働きたい障害者の働く場が少ないことは地方に行けば行くだけその状況は顕著であり、所得保障として稼得収入は大切であるけれどもその稼得収入を十分に得られない人のための対策というのがどうしても必要であり、それは私どもがいう所得保障の問題である。特に自立支援法で利用者負担が課せられたが、負担できない人は福祉サービスが利用できないという実態があり、そういうことで福祉サービスの利用が後退している。そのためにも負担があるのであれば、所得保障は最優先に行うべきではないかと思う。
 就労に対しては、障害の程度に関係なく、働く時間とか仕事の内容を工夫して、全障害者が全員就労ということを我々は考えたいと思っている。福祉施設関係の福祉就労での雇用もある程度は改善することによってほぼ就労に近いところが出てくると思う。
 障害の子どもを抱えるために、本来あるべき家族機能が不全になっているというところが見受けられ、そういうところから幼児虐待につながってしまっている。地域の中の支援が浅いため、地域の中の支え、家族の支え、そういうことももう一度考え直す必要がないかと思っている。特に子どもの存在の意識の仕方、子どもは夫婦の子どもという考えから、社会の子ども、国の子どもという考え方へ変えるべきだと思っている。

○竹中ナミ氏(プロップ・ステーション理事長)
 政府が一体となって、「福祉から就労へ」というふうに大きくかじを切ったということは私たちにとっては大変うれしいことである。
 多くの企業等の支援もいただき、重度なチャレンジドが在宅で仕事をする、あるいはベッドの上でも稼ぐ、アーチストとして、あるいはプログラマーとして働くというような状況が生まれてきているが、本当の意味で就労に転換していく法制度のバックアップがなければ難しい。プロップ・ステーションとしても、これまでの活動の実践を生かし、チャレンジドの就労促進に向け、政府と連携して努力をして行く。

○館森久秋氏(東京都知的障害者育成会本人部会副代表)
 わかりやすい障害者基本計画は文章だけでなくて、絵を見て、誰でもわかるような形に、わかりやすいものに、必要なものだけ載せていただくようなものをつくっていただけるとすごくわかりやすいと思う。私たちが、会議に出たくても、なかなか難しい書類が出てくると、これを理解するのはすごく大変なことで、苦労してしまう。
 本人活動について、知らない人が多い、誤解している人もいる。自分は何もできないのではないかと思う人がいるが、いろんなところへ出て、仲間とお話しをすると自分のことがわかってくると思う。本人が活動する機会を与えていただきたい。
 パソコンはものすごく使いにくく、タッチパネルみたいなもの、もっと誰でも使えるようなものが必要だと思う。
 社会の中でどういう仕事をしたらいいのか、また、本人はどういうことに向いているのか、なかなかわからないことが多く、東京都にある「スキップ」という就労支援センターを全国に作っていただきたい。その中で自分が何に向いているのか、どういう仕事ができるのかわかってくる、そうするとすごく仕事がしやすくなっていく。

○妻屋明氏(全国脊髄損傷者連合会理事長)
 外国で多くの国が差別禁止法をつくっているが、日本ではまだであり、差別禁止法をつくっていただきたい。そのためにも国連の障害者権利条約を早く署名して批准して国内法の整備をしてほしい。
 自立支援法はいろいろきれいごとで括られておりまして、地域で生活することを目的にしている「施設から地域へ」というキャッチフレーズがあるけれども、単価が引下げられたことによって軽度の障害者が施設に入っており、なるべく出て行ってくださいというような圧力がかかっている。しかし、出て行ったらちゃんとした受け皿はない。なぜかというと、軽度の人のサービスをする事業所というのはあまりもうからないからである。
 重度の障害者がサービスを受ける事業所が少なく困っている。地域に行くと1か所しかないところも多く、その事業所しか頼めず、事業所の言いなりになるような状況になる。基盤整備ができてないのにどんどん単価が下げられる。基盤整備がきちんとできていると、単価が引下げられても事業所をいろいろ選択できるからそのサービスを受けられるということがあるけれども、事業所がなかったらどうしようもない。結局単価の高い仕事しかしないというようになると、その狭間に置かれた人は大変な生活状況になってくると思う。
 バリアフリーを、特にノンステップバスを進展させるような施策を、今回新バリアフリー法では目標が30%になったけれども、より一層促進するような手だてを考えていただきたい。
 運転免許を取るときに、車いすで教習を受けたいということになると、なかなかその設備が地方の教習所は整っていない。自動車教習所のバリアフリー計画をどこかに入れていただきたい。

○ニキリンコ氏(翻訳家)
 私の場合は広範性発達障害、広い意味での自閉症であるが、自閉症というのは、頭や気持ちの切り替え、要らなくなった情報を排除する力の障害であるから、入った情報の受け皿になる、自分の頭をきれいにして準備して待つ力が非常に弱い、そういう種類の障害であるので、切り替えに弱い。ということは新しいもの、見なれないもの、種類の多いものへの対応が非常に弱い。
 電車が時間どおりに来るというのは、自閉症の人にとっては非常に役に立っている。また、社会全体の資源とか、健常者も含めた暮らしやすさとか、そういうのが一番響いてくるところに私の仲間たちはたくさんいる。だから社会全体の底上げもとても大事である。
 情報の単純化ということを社会全体で頑張っていただきたい。

○福島智氏(東京大学先端科学技術研究センター准教授)
 国際的にはdeafblindというのは1つの単語として独立した障害として認められているが、日本では法的には位置付けられてないので、いつの日か、きちんと盲ろう者も法制度上位置付けていただければうれしい。
 例えば雇用率が進んでいるというふうに言うと、何か進展したように思えるが、絶対数が非常に少ないので、一般の人の就業率・雇用率などと比べると、障害者の働いている率は決定的に少ないことを忘れてはいけないと思う。雇用されやすい、相対的に軽度な人が優先されて雇用が難しい重度の障害者が後回しにされがちだという、いわばある種の格差が障害者の雇用の内部にも生じている、そういう側面がある。
 本人の利用者負担の算定の際に、本人の所得だけではなくて、同一生計者の所得が勘案されるというのが自立支援というロジックとは反する側面がある。当事者の感覚から言うと、トイレに行くとか、外を歩くとかという基本的な行為まで利用料を払いなさいと言われるのは非常に違和感がある。このあたりは多くの人が素朴なところで感じていると思うので、検討いただきたい。
 高等教育について、将来の人材養成という意味で大学に進む障害者を増やす必要があるのではないか。アメリカでは大学に障害のある学生はおよそ200万人いると言われている。一方、日本は5,000人ぐらいしかいない。私の職場の東大も学生は3万人弱であるが、重い障害を持っている学生は20人いるかどうかである。こういう状況を改善していくことが、今後の広い意味での社会参加を進める上でも重要と思うので、大学への障害学生受入れに向けての支援なども検討いただきたい。
 権利条約に伴う国内法制度の整備において、理念法に終わらずに予算の裏付けのある実体法にしていくことが重要である。

○藤井克徳氏(日本障害者協議会常務理事)
 自立支援法に関しては、生命を維持する支援行為そのものを益とみなすことを基本にしているわけであるが、こうした政策思想そのものが国際的な水準に照らしても後退と言わざるを得ない。したがって、中間見直しはきちんとすべきだと思う。後期重点計画のポイントの一つになるのでは。
 本論に先立って、二つばかり述べたいことがある。その第一は、以前にも言ったが、「障害」という言葉の問題である。「障害」という言葉がもたらすネガティブイメージというのは少なくない。戦前の資料を見ると、全部石へんの「碍」となっていた。昨今の様子を見ると、個人や団体ごとに、また自体体のレベルで、いわば個々の判断で「害」の文字をひらがなにするなど工夫を凝らしているようだ。そろそろ国政段階でも「障害」という言葉のあり方について、正面から光を当てる必要がある。
 第二に、障害分野の基礎データの不備についてである。自立支援法の審議過程でもその不備が露呈し、例えば知的障害者の数だけ見ても、五十数万というのは少なすぎる。障害者の所得の実態や家族負担の実態等を含めて、もう少し基礎データの集積をしないと、まともな予算の見積りができにくいのではないか。基礎的なデータの集積に、特別な体制をとるべきである。
 本論に入るが、向こう5年間で展望を出すべき立法上の主要課題について、七点にわたって略述したい。第一に、仮称であるが、包括的な意味での「障害者差別禁止法」を制定することである。第二に、これも仮称であるが、「障害者総合福祉法」の制定に筋道をつけることである。三障害統合と言いながら、現行は障害種別ごとの実体法が分立したままである。身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法の3つの福祉法を統合すると共に、これには難病や高次脳機能障害などすべての障害が含まれなければならない。第三は、保護雇用制度の創設を含む就労に関する新たな立法体系を打ち立てることである。
 現行の障害者雇用促進法を大幅に修正するという意味でもある。ILO159号条約(障害者の雇用及び職業リハビリテーションに関する条約)は、我が国も批准しているが、そこでは保護雇用制度の重要性が明記されている。具体的には、賃金補填、就労場面での人的な支援、さらには有給での通院などの医療保障などを含め、福祉施策と雇用施策の強力な連携が問われ、障害の重い人びとについても、ぎりぎりまで雇用施策の関与を求めている。現状は、「福祉か雇用か」であり、また単純に「福祉から雇用へ」というのも正しくはない。「雇用も福祉も」という観点が重要で、これを具体化するような立法体系が求められる。ちなみに、現行の福祉工場制度を保護雇用制度と同一視する見方があるが、これは正しくない。
 第四は、扶養義務にかかわる法律の見直しである。具体的には民法の扶養義務関連条項に焦点を当てることであり、精神保健福祉法の保護者規定についても改正が急がれなければならない。例えば、障害のある人びとの収入認定について、二十歳を超えた場合には本人のみの収入に着目するなど、さまざまな視点から扶養義務制度の点検が必要である。第五は、障害のある人びとに関する社会資源を拡充していくための特別な立法措置が図られなければならないということである。具体的には、働く場や活動の場など日中(デイタイム)の社会資源、住まいなど夜間の社会資源、これに加えて人的支援に関する資源、これらの基盤整備が絶対量と適正設置(配置)という観点から進められなければならない。私は、こうした社会資源整備を「ヒューマン公共事業」と言っているが、市町村計画に頼るだけでは進展は難しい。一気に解消していく必要があり、時限立法的な立法措置を求めたい。第六は、精神障害者施策の遅れは甚だしいものがあるが、これについても法的な手段が求められるのではなかろうか。聞くところによると、社会的入院問題の解消は予定通りに進展していないとのことである。一般的な施策だけでは難しいように思う。
 最後になるが、第七として、予算の問題に触れておきたい。厚労省の発言で気になる言い回しの一つに、予算について「前年度比で、二桁の伸び率になった」というのがある。率直に言って、心に響かない。伸び率をいくら言われようが事態の好転が図られないから響かないのである。元々のベースが低過ぎるということを、しっかりと認識すべきである。今問われているのは、伸び率ではなく、そもそもわが国における、障害分野の予算の分配率がどうあるべきか、海外との比較を含め、この点を明らかにすることである。分配率をはっきりさせるためには、正確な「見積り作業」が必要であり、そのためには冒頭に言ったような信頼できる基礎データの集積も必要になるのである。

○山本征雄氏(日本身体障害者団体連合会副会長)
 自立した地域生活と社会参加の保障という中にあっては、利用者負担の上限基準の軽減をお願いしたい。個人として財布は1つしかないのに、障害福祉サービス、自立支援医療、補装具というものを複合的に利用する場合においてはそれぞれに利用者負担がかかるが、その合計負担額とせずに、福祉サービスの月掛け上限とするような軽減策を講じていただきたい。精神障害者の方の通院医療対象については従来の形に戻していただきたい。
 就労支援策でいろいろと支援が予定されているが、利用するには、就労という中で、5,000円ちょうだいするのに1万円の利用料を払うと、そのような仕組みは改めていただきたい。
 施設においては、日払いで精算するという今の制度においては、計画的な事業計画も立てられないことから、月払いという基本線へ戻していただきたい。今の障害者一般の障害年金を含めて、ある程度の生活は保障されているものの、この応益負担という制度がある中にあっては、あと5万円ぐらいは手当てとかいろんな形でお願いしていきたい。
 身体障害者の福祉ホームは、地域生活支援事業の中に入り、まさしく地方の財源状態は国と同じように厳しい中で、この部分については具体的な施策が打ち出せない。身体障害者のグループホームも検討いただきたい。
 所得保障については、障害者が地域で自立した生活をしていく上においては、年金制度の改善であって、住宅手当は、まだまだ現実が伴っていない。住宅手当の創設をはじめ制度の構築をお願いしたい。
 就労であるが、障害者団体として指定管理者制度の中で障害者の体育館のメンテナンスをやったり、自動販売機等のメンテナンスをやったり、自分たちからも社会に働きかけて就労の場を求めていこうという取組をしているが、その中で中央省庁からの具体的な指示がないと現場はなかなか動けないという実態もある。一例ですが私どもは、自動販売機の二つの業者から自動販売機の飲料の詰め替えと缶の回収などについて2年ほどの実績があり、就労と社会参加をめざして進めていますが、身体障害者福祉法第22から24条までの規定が徹底されていないことから、身体障害者の職業機会を提供し、職業更生を図ることを目的とする『総合施策』を推進する同法の趣旨から、国及び地方公共団体等に周知徹底できるまでしていただきたい。
 扶養義務制度の見直しと、国会の附帯決議事項の予算確保の下に速やかな施行をお願いしたい。
 アジア太平洋障害者の10年の今後の10年における基本課題という中にあって半ば国際的にも約束したような形であったかと思うが、三障害を包括するような総合福祉法を検討いただきたい。
 災害時の学校での生活状態等を見ていると、学校が地域のコミュニティの場となるはずであるが、バリアフリー新法の中にあっても学校はバリアフリーは義務化されていない。
 権利条約について、日本も早く署名し批准し、国内法の整備に向けて取り組んでいただきたい。

○米田幸司氏(全国心臓病者友の会会員)
 自分の体力・体調を正直に話せる、そういった職場づくりのために、完全なフレックスタイム制の導入が求められる。フレックスタイム制を完全導入し、自分の体調に合った時間帯に来られることは、健常者の方にも当然いいし、今、政府が進めているワーク・ライフ・バランスにも寄与するのではないかと考えている。また、私たち自身も働く能力を高めるということを進めなければいけないが、子どものときから、自分にとって何が一番適した職業なのかということを考える場をつくる教育、これが大切ではないかと思っている。
 医療とか福祉とか雇用とかいろんな言葉があるが、それが今まで施策の中で分断されてきたのではないかと思っている。今後は教育とか就労とか、医療とか福祉とか、そういったものを「障害者」というキーワードで1つにまとめていく、そういったことが大切ではないかと思っている。そして障害者施策自身を障害者自身がつくっていく、こういった場でもいいし、障害者自身が計画をつくっていく、そういったことがQOLの向上であり、ワーク・ライフ・バランスの向上になると考えている。