p1 資料4   失語症者に対する、差別的現状  はじめに  2015年(平成27年)に実施した、みずほ総研「意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方に関する研究」によりますと 失語症者の発症後の外出頻度は、64.4%減少、他者との交流は71.9%減少、孤独感を持つ者44.1%、意思疎通の困難さ76.5%等々の報告が出ている。多くの市町村での意思疎通支援事業で、聴覚、視覚障害者以外の障害者を対象とした意思疎通支援の実施状況は20.6%にとどまり、行ってない市区町村では今後も行う予定がないと答えた割合が73.4%、その理由は、ニーズがあまりない69.3%、事業を実施するノウハウがない40.9%となっている。又、視聴覚以外の障害者を対象とした意思疎通支援の実施している市区町村の中で、失語症を対象としているところは44.3%で114件。調査に回答のあった全市区町村の9.1%に当たる。 以上のような報告があり、失語症者に対する情報保障・意思疎通支援の在り方が、進んでいない現状が現れています。  1)失語症者には、基本的人権を守るべき、意思疎通支援者がいません。失語症者の司法、行政、立法に関わる時には、障害者サービスによる確固たる意思疎通が可能な支援者が必要です。その方々が存在しない現状は、大きな差別といえます。一日も早く、基本的人権にかかわる案件に関して、支援のできる支援者の養成派遣を望みます。   ・裁判時の、意思疎通支援者  ・選挙権、被選挙権の行使の際の意思疎通支援者  ・警察などでの、証言の支援等をする意思疎通支援者  ・成年後見制度の行使や、遺言作成時等の意思疎通支援者  ・必要・緊急時の支援が必要な折に、支援してくれる意思疎通支援者  2)現在は、地域生活支援事業の意思疎通支援者がいますが、いまだ十分な人数の確保、具体的な支援の実態もなく、さらに、全国での派遣はほとんどありません。日常生活での派遣に限られ、その役割を十分に果たせず、能力・資質向上が望まれます。意思疎通支援者の派遣は失語症ある人にとり、当たり前の生活を維持するためには、必要不可欠な人材です。   ・役所や銀行、病院などに付き添い意思疎通支援をする   ・日常生活の中で、支援が必要な時に、支援をしてくれる (コロナ自粛期間以外で、家族の同行ができなくなり、支援を頼んだころ、コロナ禍なのでと断られた事例あり)⇒厚労省に問い合わせたところ、「地域支援事業は位置づけがボランティアベースなので、要請があっても断ることができる」とのこと。 ・会や会議の折に、会議の進行内容を失語症者に知らせ、また失語症当事者の意見を詳しく聞いて代弁する p2 ・独居者への支援 ・災害時の情報保障 ・地域生活での支援(回覧板の理解、宅配便の再配達の依頼、押し売りとの問答等) ・買い物(コンビニ、スーパー、デパート等) ・娯楽等楽しむことが困難 例)映画、カラオケ、美術館、老人クラブ、旅行、スポーツ等を自由に楽しめない。ネットでのチケットの購入、座席の予約等も、都度窓口に購入に赴くわずらわしさも重なる。) 失語症意思疎通支援者にも、手話通訳の方々と同じような養成・派遣を望みます。 ・手話通訳士 (厚労省認定技能検定試験) ⇒失語症意思疎通支援士 ・手話通訳者 民間資格(全国統一試験) ⇒失語症意思疎通支援者 ・手話奉仕員 ボランティア(全国手話検定試験)⇒失語症会話パートナー 3)失語症は、現在、回復期病院での180日のリハビリテーションが終了すると地域に戻されますが、失語症の回復は2,3年〜5年以上の長期に及ぶというエビデンスがあるにも関わらず、病院退院後の機能回復事業所がほとんどありません。これは、失語症のある方の、回復する権利、当たり前に生きる権利を奪っていると同じです。 4)大学等の入学試験、検定試験などの際に、失語症者には特別な配慮がありません。入学後の授業を受ける際にも、支援者がいない現状で、教育を受ける権利も阻害されています。(聴覚、視覚等の障害のある方には、配慮があると聞いています) 5)失語症があるにも関わらず、身体障害者手帳の所持がないと障害者就労ができません。全失語でも3級、家族に理解できることを話せば4級、中・軽度の失語症者は身体障害者手帳を所持できないので、日常生活の維持にも大きな困難を生じています。 6)失語症はコミュニケーション能力全体に障害(話す、聞く、書く、読む、計算する等)があるので、一面だけの支援では、失語症者が当たり前の生活を送ることは困難であり、総合的な支援策が必要です。単に、言語支援、筆談支援、ジェスチャーによる支援等では支援が及びません。 7)情報弱者である失語症者は、社会の情報から取り残される現状にあります。失語症者自身が使用可能なタブレットやアプリなどの開発を早急に行い、一人で、安全に日常生活が送ることが可能な状態が望ましく、また、それらの機器に使用に関しては、十分な支援体制を確保することが必要といえます。 8)失語症に関しての相談窓口は全国にほとんどありません。ある日突然、医師からご家 p3 族は失語症ですと言われて動転している家族にとって、失語症に特化した相談窓口の設置が必要です。 9)昨今、スーパーマーケット等にあるセルフレジ、駅の券売機の使用やチャージなども、到底一人で、使えるものではありません。誰かに尋ねようとも聞くこと(会話)が難しくなっている上、現在は駅員や店員の削減で、近くに、係がいないことが多いです。。 10)社会の理解が不足しています ・赤ちゃん言葉で話しかけられる(介護施設などに多く見られる) ・たどたどしく話していると、あからさまに嫌な顔をされる ・聞こえの問題かと思われて、耳の傍で大声で話しかけられる 等々、日常生活の中での、差別的な状況があります。 11)コロナ禍での現状 ・外出制限などのニュースが理解できないことや、三蜜、クラスター、パンデミック、オーバーシュート、ロックダウンなど、新しく聞く言葉や、カタカナも多く、ニュースの内容が理解できません。 ・ファミリーレストランなどでは、店員の数が減少や接客時間の縮小で、タッチパネルや、メモ用紙に書くなどの注文形式が増えて、全ての行動に制限が出てきています。 ・人との対話が減ることで、関係が希薄になり、親身になって言葉を理解してくれる機会が減っています。わからないときに人に尋ねることがしにくい、足を止めてくれる方が少なくなりました。 ・マスク越しの対話で、相手の声が聞き取りずらく、表情が読み取りずらい、感情がつたわりずらいことも多いです。リモートでのやり取りが多くなり、(使い方がわかっても)伝わりずらいことがあります。 現在の介護や障害福祉サービスは、日常生活では、家族が支援することが大前提でそれのプラスする公共サービスとなっています。この事は、障害を持つものの家族の大きな負担となっている現状があります。その中で、日常生活は家族の支援があればどうにか送ることが出来ても、社会生活や公に活動することに対しては、多くの社会的障壁を抱えることになります。