p表紙 平成27年度 さいたま市障害者の権利の擁護に関する委員会 (地方障害者差別解消支援地域協議会在り方検討会) 報告書 平成28年3月 さいたま市保健福祉局福祉部障害福祉課 p1 目次 1.さいたま市の概況 p2 2.誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例 p2 (1)条例の概要とこれまでの取組内容 p2 (2)さいたま市における障害者差別の解消に関する現状と課題 p2 3.平成26年度のモデル事業における取組の概要 p3 4.平成27年度のモデル事業における取組について p6 (1)平成27年度の検討体制 p6 (2)構成メンバー p7 5.モデル会議の実施状況 p8 (1)モデル会議等の開催経過 p8 (2)モデル会議における障害者差別や課題に関する意見 p9 (3)障害者差別及び相談体制に関するヒアリング等 p10 (4)今後の取組に関する意見 p11 6.障害者差別解消に関する今後の取組について p12 (1)周知・啓発に関する取組 p13 (2)今後検討すべき課題について p13 (3)機関連携について p13 7.資料 p15 p2 【さいたま市】 1.さいたま市の概況 人口:1,270,476人(H28.1現在推計人口) 面積:217.49平方キロメートル 障害者手帳所持者数(H27.3末現在):身体障害者手帳 33,367人、療育手帳 6,650人、精神障害者保健福祉手帳 8,581人 2. 誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例 (1)条例の概要とこれまでの取組内容 さいたま市では、障害の有無に関らず誰もが共に地域で安心して暮らせる社会の実現を目指して、平成21年11月に障害者施策推進協議会(当時)に対し障害者差別を禁止する「障害者も健常者も共に地域で暮らせるノーマライゼーション条例(仮称)」について諮問しました。 その後、学識経験者、医療、法律、福祉分野の専門家、教育委員会及び市民からの公募委員などで構成される「条例検討専門委員会」及び当事者を含む公募の市民が集まり、意見を出し合う「条例について話し合う100人委員会」における議論を経て答申された最終報告を基に条例案が作成され、平成23年3月に市議会において成立し、平成23年4月から施行されました。 この条例に基づき、市内10区の各区役所支援課や各区障害者生活支援センターを障害者差別が生じた際の身近な相談窓口・対応機関として位置付けるとともに、職員に対する研修等に取り組んできました。また、障害者差別に対する申立て(ノーマライゼーション条例第10条)があった場合に助言やあっせんを行う仕組みとして「障害者の権利の擁護に関する委員会(以下、障害者権利擁護委員会という。)」を設置するとともに、医師や弁護士などが専門的な見地から相談機関に助言等を行う「さいたま市高齢・障害者権利擁護センター」を整備するなど、これまで障害者差別解消に関する取組を進めてきたところです。 (2)さいたま市における障害者差別の解消に関する現状と課題 こうした取組の一方で、ノーマライゼーション条例の制定過程において市民から収集した「障害者差別と思われる事例」が521件であったにも関わらず、相談窓口に寄せられる障害者差別の相談件数は年間数件という極めて少ない数字となっています。 現実に障害者差別と思われる事案に接している障害当事者やその家族などの感覚とは乖離しており、障害者差別を取り巻く課題や解決に向けた今後の取組について改めて検討を行うことが求められています。 p3 ●条例に基づく相談の流れ (フロー図)条例に基づく相談の流れをフロー図で説明。 事案発生 @ 差別を受けた障害のある市民は、障害者生活支援センター又は各区支援課に相談。 A 障害者生活支援センター又は各区支援課は、事例によっては高齢・障害者権利擁護センターの助言等をうけ、差別を受けた障害のある市民及び差別を行った主体に、調査又はあっせんを行う。 B 差別を受けた障害のある市民は、必要がある時は、障害福祉課又は福祉事務所に申立てを行うことができる。 C 申立てがあった場合、障害福祉課又は福祉事務所はその事案について状況確認調査、差別を受けた障害のある市民及び差別を行った主体にあっせんを行う。 D 障害福祉課又は福祉事務所は、必要がある時は、障害者の権利の養護に関する委員会に、助言・あっせんを請求することができる。 E 障害者の権利の養護に関する委員会は、その事案について調査、差別を受けた障害のある市民及び差別を行った主体に助言・あっせんを行う。 F 障害者の権利の養護に関する委員会は、差別を行った主体が助言・あっせんに従わない時は、市長に是正勧告請求を行う。 G 市長は、勧告請求があった場合は差別を行った主体に勧告することができる。 H 市長は、差別を行った主体から意見聴取を行う。 I 改善が認められない場合は、市長名により、事例及び主体の公表を行うことができる。   フロー図は以上です。 ●さいたま市(支援課・障害者生活支援センター)の障害者差別相談件数 平成23年 生活0件、教育2件、雇用0件、医療0件、福祉1件、商品・サービス0件、交通1件、施設0件、その他1件、合計5件 平成24年 生活0件、教育0件、雇用2件、医療2件、福祉1件、商品・サービス2件、交通0件、施設0件、その他0件、合計7件 平成25年 生活0件、教育2件、雇用1件、医療0件、福祉0件、商品・サービス0件、交通0件、施設0件、その他1件、合計4件 平成26年 生活2件、教育1件、雇用0件、医療1件、福祉1件、商品・サービス0件、交通3件、施設1件、その他0件、合計9件 3. 平成26年度のモデル事業における取組の概要 平成26年度から、ノーマライゼーション条例に基づき設置している障害者権利擁護委員会に「障害者差別解消部会」を設置し、当部会において障害者差別解消法の施行に先立って行われる内閣府の障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業の取組と併せて、障害者差別解消に関する課題や今後の取組等に関する検討を開始しました。 (1)部会の設置  障害者差別解消支援地域協議会に関する設置・運営暫定指針を踏まえ、本市における地域協議会の在り方を検討するとともに、今後の取組の方向性について協議するため障害者の権利の擁護に関する委員会の部会として設置しました。 p4 ●平成26年度における地方障害者差別解消支援地域協議会在り方検討会の位置付け (フロー図)フロー図で説明 障害者の権利の擁護に関する委員会 ※条例設置による附属機関 のもと 障害者差別解消部会(モデル会議) ※条例規則に基づく臨時委員で構成 を設置。 内閣府政策統括官のもと設置される地方障害者差別解消支援地域協議会あり方検討会(内閣府)と連携。   フロー図は以上です。 ●平成26年度検討会委員の構成(13名) 大学教員/宗澤 忠雄(埼玉大学教育学部准教授)  弁護士/増田 悠作(埼玉弁護士会) 障害者又はその家族(身体)/平林 彰(障害者(児)の生活と権利を守るさいたま市民の会) 障害者又はその家族(知的)/宮部 幸子(さいたま市手をつなぐ育成会) 障害者又はその家族(精神)/石井 透(さいたま市精神障害者当事者会ウィーズ) 関係団体/小澤 正信(さいたま商工会議所事務局長) 医療機関/大塚 智秋(自治医科大学附属さいたま医療センター総合相談室・病診連携室室長) 相談支援事業者/長岡 明美(岩槻区障害者生活支援センターささぼしセンター長) 国の機関/加藤 秋雄(埼玉労働局職業安定部職業対策課長)、鈴木 英嗣(さいたま地方法務局人権擁護課長) 市職員/小池 亮太郎(さいたま市消費生活総合センター所長)、松井 聡(教育委員会事務局指導2課長)、水野 清彦(さいたま市北区役所健康福祉部長) (2)調査の実施  さいたま市における障害者差別の実態等を改めて把握することを目的に調査を実施しました。 @部会構成員の所属する機関における調査 ・障害者差別解消の推進に関する取組状況の把握 ・障害者差別相談事例の収集 A障害者生活支援センターによる調査 ・障害者生活支援センター利用者に対する差別事例に関するヒアリング B市民に対するアンケート調査 ・障害のある方への配慮 ・障害のある方の差別体験 (3)部会開催状況  平成26年度は障害者差別解消部会(障害者差別解消支援地域協議会)を3回開催し、 p5 さいたま市における障害者差別を取り巻く現状や障害者差別解消に向けた取組等について協議を進めました。 ○第1回部会(協議会準備会) 平成26年7月29日 市役所議会棟 第7委員会室 1.障害者差別解消部会及び障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業について 2.障害者差別解消の推進に関する取組状況の調査結果について 3.障害者差別事例の収集について ○第2回部会(第1回協議会)平成26年9月30日 ときわ会館5階 502会議室 ・障害者差別相談事例等の報告について (1)障害者差別相談事例収集の調査結果 (2)障害者生活支援センター利用者に対するヒアリング結果 (3)障害のある方への配慮及び差別に関する調査結果 ○第3回部会(第2回協議会) 平成26年11月25日 ときわ会館5階 中ホール 1.障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針について 2.障害者差別解消に関する検討状況と今後の取組について 障害者差別解消部会における主な意見 @ 障害者差別の特徴に関する意見 ・障害に対する理解不足等や障害者差別の認識や状況把握が困難な障害者の存在があるのではないか。 ・障害者差別に関する相談が相談機関に結び付いていないのではないか。 A障害者差別の相談への対応及び合理的配慮の提供の課題に関する意見 ・障害者が相談しやすい窓口づくりが求められているのではないか。 ・合理的配慮の提供に関しては、ICTに関する技術者や建築士各分野の専門家による助言も必要なのではないか。 ・パワハラやセクハラ等のハラスメントに関する問題解決と同様に、事後的な救済措置が必要なのではないか。 ・障害者差別等の相談事案について一定の蓄積が必要ではないか。 B地域における相談体制の課題に関する意見 ・相談を受けた機関での対応が困難な事案については、その事案を適切な相談機関に結び付けるために各相談機関相互の連携の仕組みが必要ではないか。 ・関係機関の権限や機能等について必要な情報を集約し、その情報を各機関において共有する必要があるのではないか。 (3)平成27年度の取組の方向性について  @障害者差別に関する周知・啓発や相談窓口に関する取組 障害に対する理解不足等に関する周知・啓発や障害者差別の認識や状況把握が困難な障害者の存在、障害者差別に関する相談が相談機関に結び付かないなどの課題について検討する。 p6 A機関連携に関する取組 適切な相談機関に繋げるための仕組みや、困難事案について各機関が連携して支援するための仕組みの検討を始め、地域において有効に機能するネットワークを構築するため、未参加の機関を部会に招請する。 4.平成27年度のモデル事業における取組について 平成27年度における取組においては、平成28年度以降の委員会の在り方も含めた検討に資するため、国の機関を始めとする関係機関や障害当事者で構成された昨年度の部会構成員を加えた拡大委員会を開催して議論を行うこととしました。 また、平成26年度のモデル事業において明らかとなった課題については部会において議論を深めることとしました。 (1)平成27年度の検討体制 (フロー図)平成26年度から27年度における会議の位置付けの変更をフロー図で説明 ◎平成26年度における会議の位置付け 障害者の権利の擁護に関する委員会 ※条例設置による附属機関 のもと 障害者差別解消部会(モデル会議) ※条例規則に基づく臨時委員で構成 を設置。 内閣府政策統括官のもと設置される地方障害者差別解消支援地域協議会あり方検討会(内閣府)と連携。 ◎平成27年度における会議の位置付け 障害者の権利の擁護に関する委員会 のもと 障害者差別解消支援地域協議会モデル会議 ※臨時委員参加 を設置、 さらに、障害者差別解消部会(地域協議会モデル会議部会)を設置。 助言及びあっせんについては、モデル会議とは別に随時に開催。 ※臨時委員不参加 ※臨時委員は「助言・あっせん」には関与しない 内閣府政策統括官のもと設置される障害者差別解消支援地域協議会あり方検討会(内閣府)と連携。   フロー図は以上です。 ●設置根拠 ○さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例(平成23年3月9日条例第6号)(抄) (委員会の設置等) p7 第15条 市長の諮問に応じ、差別に係る事項を調査審議するため、さいたま市障害者の権利の擁護に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。 2〜5 〔略〕 6 前各項に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、規則で定める。 ○さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例施行規則(平成23年3月31日規則第35号) (委員会の臨時委員) 第18条 委員会に、特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、臨時委員を置くことができる。 2 臨時委員は、学識経験を有する者、委員会の推薦を受けた者その他市長が適当と認める者のうちから、市長が委嘱し、又は任命する。 3 臨時委員の任期は、条例第15条第4項の規定にかかわらず、特別の事項に関する調査審議が終了するまでとする。 (2)構成メンバー(委員10名、臨時委員12名) 大学教員/◎宗澤 忠雄(埼玉大学教育学部准教授)、○平野 方紹(立教大学コミュニティ福祉学部教授) 医師/峯 眞人(峯小児科院長)、鈴木 仁史(こうぬまクリニック院長) 弁護士/中山 福二(埼玉弁護士会)、○増田 悠作(埼玉中央法律事務所)※ 障害者又はその家族(肢体)/○平林 彰(障害者(児)の生活と権利を守るさいたま市民の会)※ 障害者又はその家族(聴覚)/速水 千穂(特別養護老人ホームななふく苑施設長) 障害者又はその家族(知的)/○宮部 幸子(さいたま市手をつなぐ育成会)※ 障害者又はその家族(精神)/○石井 透(さいたま市精神障害者当事者会ウィーズ)※ 障害者又はその家族(視覚)/嶋垣 謹哉(公募委員) 関係団体/松岳 みわ(人権擁護委員)、森 満夫(埼玉県社会保険労務士会理事)、○金井 久男(さいたま商工会議所事務局長)※ 医療機関/○大塚 智秋(自治医科大学附属さいたま医療センター総合相談室室長)※ 相談支援事業者/○長岡 明美(岩槻区障害者生活支援センターささぼしセンター長)※ 行政機関/○森田 哲也(埼玉労働局職業安定部職業対策課長)※、○須藤 哲(さいたま地方法務局人権擁護課長)※ 市職員/○小池 亮太郎(さいたま市消費生活総合センター所長)※、○水野 清彦(さいたま市北区役所健康福祉部長)※、○渡邉 祐子(教育委員会事務局指導2課長)※、大友 光洋(大宮西中学校教頭) オブザーバー/○田中 正史(国土交通省関東運輸局消費者行政・情報課課長補佐)、○石川 浩行(国土交通省関東運輸局埼玉運輸支局首席運輸企画専門官) ※は臨時委員 ◎は部会長、○は部会員 p8 5.モデル会議の実施状況 (1)モデル会議等の開催経過  これまで、障害者の権利の擁護に関する委員会を2回、障害者差別解消部会を1回開催し、さいたま市における障害者差別を取り巻く現状や障害者差別解消に向けた取組等について協議を進めました。 第1回モデル会議(障害者の権利の擁護に関する委員会)では、委員会及び部会の体制や各機関の取組内容及びについて確認を行うとともに、障害者差別解消法の施行準備状況や障害者差別に関する事例の報告と本年度の課題に関する協議を行いました。 第2回モデル会議(障害者差別解消部会)では、新たな国の機関のオブザーバー参加を得るとともに、障害者差別の事例、収集した合理的配慮の事例に関する意見交換をはじめ、発達障害者の親の会や就労支援機関からさいたま市における障害者差別及び相談体制に関するヒアリングを行いました。 第3回モデル会議(障害者の権利の擁護に関する委員会)では、これまでの協議やヒアリング結果を踏まえ、さいたま市における障害者差別に関する周知の取組や相談体制関して次年度以降に継続して取り組む課題について協議を行いました。また、障害者差別に関する事例について意見交換を行いました。 また、さいたま市では、条例制定に大きな役割を果たした障害当事者を始めとする一般の市民が参加して意見を述べ合う「条例について話し合う100人委員会」の取組を踏まえ、条例施行後に同趣旨の「誰もが共に暮らすための市民会議」を設置し、障害者を取り巻く状況や障害者総合支援計画の策定について意見交換を行っています。 そこで、モデル会議とは別にさいたま市の課題の一つである「障害者差別について相談しやすい環境づくりについて」をテーマに意見交換を行いました。 ○第1回モデル会議 第1回障害者の権利の擁護に関する委員会 平成27年7月21日(火) ときわ会館5階大ホール 1.障害者の権利の擁護に関する委員会の概要及び障害者差別解消法の施行に関する準備状況等について 2.障害者差別に関する状況及び今後の取組について ○第2回モデル会議 第1回障害者の権利の擁護に関する委員会 障害者差別解消部会 平成27年11月10日(火) ときわ会館5階中ホール 1.障害者差別解消法の施行に関する準備状況等について @障害者差別解消法について Aさいたま市における合理的配慮の提供状況について 2.障害者差別及び相談体制に関するヒアリング 3.障害者差別の事例について ○第3回モデル会議 第2回障害者の権利の擁護に関する委員会  平成28年1月19日(火) 武蔵浦和コミュニティセンター 多目的ホール 1.障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の施行に関する準備状況等について ・対応要領案について ・パンフレットについて 2.障害者差別解消部会における審議事項等について ・相談体制について ・障害者差別事案について 3.障害者差別解消支援地域協議会の設置について p9 ○誰もが共に暮らすための市民会議(第2回) 平成27年10月30日(金) 与野本町コミュニティセンター 多目的ルーム ・誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例について ・障害者差別について相談しやすい環境づくりについて (2)モデル会議における障害者差別や課題に関する意見 第1回モデル会議においては、昨年度指摘された課題である、周知・啓発を始め、相談が相談機関に結びつかないことや、各機関の連携に関する課題について議論を行いました。 また、実際に相談された事例について、市の対応に対する検討や事例から導き出された課題の抽出などを行いました。 @周知・啓発について 【一般の方向けの周知・啓発について】 ・保護者の方は学校から配られたものについてはほとんど目を通していることを考えれば、啓発冊子についても現行の6年生だけではなく、中学生にも配布するべきではないか。 ・子供達に対し、障害のある人に対する必要な配慮のみではなく、もう少し障害について深く堀下げた内容を学校で伝えてもいいのではないか。 ・差別の基準というのがまず一つ分からない。差別の基準というものがあれば、理解も進み、相談件数も増加して、差別もなくなるのではないか。 【障害者向けの周知啓発について】 ・知的に障害がある人たちにとっては、関係機関等のフォロー体制のほかに、本人へ  のエンパワーメントということも必要なのではないか。相談しようにも相談できないのが、障害のある人たちの特徴であるので、そこを補うことも必要ではないか。 A 障害者差別に関する相談が相談機関に結びつかない課題について ・差別を受けている状況が日常的であるため、差別を受けているということ自体を認識できない。 ・障害当事者の中で、もっと自分のことを大事にするという考え方がもう少し深まらないと、余程のことでなければ相談窓口に差別を受けたことを相談しようと思わないのではないか。 ・精神障害の場合、家庭内で、とりわけ親の理解がないために受けるべき医療を受けることができずに病気が改善しないことや、医療を受けても家族が協力的でないために治療の効果が上がらないといったようなことが起きている。 ・差別を受けた側にとっては、昨日、今日のことを直接相談窓口に言うというのはとても勇気のいる話である。 ・会社の中で差別があった際に、市に相談するよりも、就労の場面であれば、社内で苦情処理の申立ての機関があればそういう所に行くことになるのではないか。 p10 ・差別を申立てるということ自体が、かなり負担である。それに、例えば民事損害賠償であれば、賠償金という話になるが、そうでないとすれば、市に申立てたとして何になるのかと考えてしまい、相談を躊躇することになるのではないか。 B 地域における相談体制や各機関の連携等の課題に関する意見 ・障害の困難さがゆえにその声を発することができない人たちのことに気づく方、例えば、本人ではなくて福祉関係者だったり、相談支援員だったり、他の地域の方々からの相談があってもいいのではないか。 ・人権相談でも生活がどうなるかという心配がある場合、名前を出したくないのではないか。お名前を聞かせていただけますかと聞くと、そこでストップしてしまう。そうした場合などに人権相談から市の相談の流れに乗せられるものやその逆など、関係機関の連携というのは必要であり、国と地方という部分も含めて役割を分担していく必要がある。 ・ハローワークの職員も必ずしも人員体制が充実しているわけではないので、市の障害者総合支援センター、地域の雇用サポートセンターと連携していく必要があると考えている。また、就労支援についても、自治体等の各機関との連携が大事である。 ・労働局の中でも基準監督署、あるいはハローワークで若干スタンスが違うが、例えば企業で障害者の方に対する虐待があった場合には、監督署とハローワークが合同で事業所に行って、確認して処遇ということもあるが、まだ数字的には少ない。 C 相談された障害者差別に関する事例から見えてくる課題について ・最も身近な家族が、大ごとにしたくないなどの理由により問題解決を阻む方向に動いてしまう。御本人の意思決定支援の課題というのがこれから問われるのではないか。 ・本来、問題の解決を図るためのシステムが、物事を大ごとにしたくないという理由により機能していない課題がある。単純に責任を追及するものではなく、それぞれの人たちが、よりよい関係を築ける。よりよい気持ちのいい関わりをつくるためのシステムを構築するための多元的な連携を考えていく必要がある。 ・福祉から一般就労に移行すると、制度上は計画相談やモニタリングの継続ができないことがある。そのため、就職ができるような力がある方ほど情報提供がなされず適切な窓口につながらないという課題がある。 ・本人からすれば差別とも取れるが、周囲からすれば迷惑したと取られる事案について対応に苦慮しており、周囲との関係づくりを調整していくことが難しい。 (3)障害者差別及び相談体制に関するヒアリング等 部会(第2回モデル会議)においては、第1回モデル会議で出された意見をもとに、相談しやすい環境づくりに資するためのヒアリングや、最新の相談事例をもとに市の対応や事例から導かれる課題について議論しました。 また、モデル会議の枠組みとは別に、障害当事者を始めとする一般の市民が参加して意見を述べ合う「誰もが共に暮らすための市民会議」においても、障害者を取り巻く状 p11 況をはじめ、相談しやすい環境づくりについて意見交換を行いました。 ●障害者差別解消部会におけるヒアリング結果及び市民会議における主な意見 @相談しやすい環境づくりに関する課題 ○障害者差別等に関する周知に関する意見 ・差別とは何かということが、知られていない。 ・本来なら差別であることも、差別と感じなくなっている。 ・差別を受けて相談した後の解決に至る流れが見えない。 ・相談した後に、かえって相談した側の立場が地域の中で悪くなるのではないかということを懸念してしまうため、なかなか言い出せない。 ○相談に関する意見 ・現在の障害の相談窓口は、普段関わっているところが全てであり、狭い世界でもありなかなか言えない。 ・自身で障害を持っているということに気付く機会がなかったという方にとっては、そもそも障害者差別の相談窓口にはつながらないのではないか。 A障害者差別事案への対応に関する課題 ・親の意向がなぜこの40〜50代の本人の不利益に関与して、問題解決システムに乗ることを阻むのか、意思決定支援の課題、意思をここでどのように尊重できるのかが問われているのではないか。 ・事後的な問題解決のシステムとして連携を作っていくだけではなくて、地域とのつながりを作るための連携が必要ではないか。 (4)今後の取組に関する意見 部会や誰もが共に暮らすための市民会議における意見から、既存の受動的な相談体制の仕組みで対応できていないことや障害者差別を防止する地域の取組について、どのようなものが考えられるかなどの課題が明らかとなりました。 また、障害者差別に関する相談事例から、保護者などの周囲の意思についてどのように尊重するべきかという新たな課題が明らかとなりました。 これらの課題について、今後の取組をどのように進めるべきか、モデル会議において意見を出し合いました。 @ 相談しやすい環境づくりに関する課題に対する意見 ○障害者差別の周知に関する意見 ・窓口対応における経験不足も考えられることから、職員の対応の仕方等について点検チームみたいなものを組織して各窓口を点検してはどうか。 ・合理的配慮についても、社会的障壁の除去をしてほしいと意思の表明がないということを理由に何もしないということがないように運用していただきたい。 ・施設内の話であるが、知的に障害のある人に対する研修も、試みが進むと障害の p12 軽い方が自分のことだけではなく、障害が重くて何も言えない方を代弁して、支援者でも気づかないようなことを言えるようになってくる。まずは、時間をかけてでも、そうした機会を作ることで力を育くむべきではないか。 ・同じ立場の当事者や家族同士の話し合いなどの関わり合いの中で、気付きが出てくる可能性もあるのではないか。例えば、障害者相談員などのピアカウンセリング的な要素から、差別への気づきや障害の受容などに取り組んでいく仕組みが必要なのではないか。 ・精神障害について若い頃から学べるとしたら、授業を活用して教えるということしかあり得ない。授業の中で精神障害についても取り上げるべき。 ・医師会は市内の個人病院も含めて情報を発信できる場であるので、個々の医療機関に伝えるためにも、ぜひ文章をお寄せいただければと考えている。 ○相談に関する意見 (既存の受動的な相談体制の仕組みで対応できていない課題や障害者差別を防止する地域の取組について、どのようなものが考えられるか) ・差別事案になる前の防止的取組が重要なのではないか。例えば、市の就労支援を経て就職したという場合にも、相談機関等とつながりを途切れないような連携を可能とすることやちょっとしたことが相談できる社会資源を活用しきれるようなことを考えるべきではないか。 ・親も本人も、発達障害があるとしても否認し続けてくる。障害者差別解消の問題解決システムに乗せていく前段階で、本人が障害の受容をしてもらうという取組を避けて通ることはできないのではないか。 A 障害者差別事案への対応に関する課題に対する意見 (保護者などの周囲の意思について、どのように尊重するべきか) ・本人の意見表明を議論の出発点にするという文化がとても脆弱なところで、周囲の人の意見が優先されるということを、今回の障害者差別解消法は文化的に刷新していくという課題を突きつけているのではないか。 ・児童虐待の場合のように、本人の意見を聞いて個々に対応するために、必ず子供本人とだけ会う時間、親と会う時間、それと2人と会う時間、三つのパターンを必ず決めて、整合性があるかどうかを確認することが必要ではないか。また、話を聞くときには、その本人が言えるような環境をまず作らなければ、本当の話を聞けないので、形だけを作るのではなく、言いやすい環境、あるいは発信しやすい場、そういうものまで含めて決めていくことが重要ではないか。 6.障害者差別解消に関する今後の取組について 以下については、これまで2年間にわたり障害者差別の解消に関して議論を進めた結果、明らかとなった、障害者差別の解消を推進する上で必要な取組や検討すべき課題を示したものです。 法律の施行前ということもあり、モデル会議においては特に各機関との情報共有に p13 して踏み込めない部分があったものの、さいたま市においては、今後、これらの取組を進めるとともに、課題については新たに設置する障害者差別解消支援地域協議会において引き続き検討を行うこととします。 (1)周知・啓発に関する取組 @一般市民や事業者等に対する障害者差別に当たる行為等の周知 ・従前より作成していた啓発冊子について教育現場での活用を更に進める。 ・事業者向けの新たな冊子を作成し、地域協議会に参加している関係機関に関連する事業者等へ配布する。 A当事者に対する相談窓口や障害者差別に当たる行為等の周知 ・障害者本人に対する研修等の働きかけなど、本人が相談するための力を育むための取組を行う。 ・障害者差別の相談事例や解決事例などを紹介するための取組を進める。 (2)今後検討すべき課題について 障害者差別の相談に関しては、本人や周囲が障害者と認識していないことから相談に結びつかないこと、相談しても保護者など周囲の理解が得られずに解決が阻まれること、そのため既存の受動的な相談体制の仕組みで対応できていないことなどにより障害者差別の解消が阻害されている可能性があるという課題が明らかとなったことから、引き続き、これらの課題について議論していくこととします。 @相談しやすい環境づくりについて ・設置された相談窓口以外の機関等、例えば、障害者相談員、ピアサポーターや当事者団体等の社会資源の開発・活用について検討する。 ・障害の受容に課題がある場合において、必ずしも障害者のみを対象としない相談窓口との連携について検討する。 ・就職などライフステージの変化が生じた後においても、地域の相談機関との連携を 継続する仕組みを検討する。 A本人の意思の尊重について ・本人の意見表明を議論の出発点にするという相談機関における認識を醸成する。 ・本人が話しやすい環境を作るための手法を検討する。 ・本人の意思を尊重することに関する周囲への働きかけ方について検討する。 (3)機関連携について ノーマライゼーション条例第15条に規定する障害者の権利の擁護に関する委員会における助言・あっせん機能を有しない部会として地域協議会を設置。これまで参加していた機関等のほか、オブザーバー参加いただいた機関等についても参加を呼び掛け、上記の取組や課題に対し、地域で一体となって取組むこととします。 p13 ●想定される構成員 1障害当事者(身体障害者関係) 2障害当事者(知的障害者関係) 3障害当事者(精神障害者関係) 4障害当事者(発達障害者関係) 5国の機関(厚生労働省労働局) 6国の機関(法務省法務局) 7国の機関(国土交通省地方運輸局) 8学識経験者(大学教員) 9学識経験者(弁護士) 10事業者(商工会議所) 11事業者(相談支援事業者) 12事業者(医療機関) 13市職員(福祉事務所) 14市職員(消費生活総合センター) 15市職員(教育委員会事務局) また、市や関係機関に寄せられた事案を、以下の図のとおり地域協議会に集約し情報の共有を進め、事案の解決を後押しする仕組み作りを併せて進めます。 こうした、ネットワークを構築することにより、さいたま市内における障害者差別の解消を図ることとします。 ●法施行後における障害者差別事案の解決までの流れ (フロー図)法施行後における障害者差別事案の解決までの流れをフロー図で説明 障害者差別に関する相談があった時 1.初期対応(初期対応はノーマライゼーション条例の枠組みを利用) ・各区障害者生活支援センター(各区支援課)において、事案の性質に応じ、当該職員が所属する課、障害福祉課等を紹介。 ・市役所(障害福祉課) 報告された事案について、必要に応じ他の所管に照会・助言等を実施。 2.各所管において、事業者に関する事案について対応。行政機関等の職員に関する事案について対応。所管外については障害福祉課に照会。 3.対応した事案等を障害者の権利の擁護に関する委員会に報告。 4.障害者の権利の擁護に関する委員会は、申立てのあった事案について助言又はあっせんを実施するとともに、報告された事案について市の対応を検証。 障害者の権利の擁護に関する委員会は、障害者差別解消部会(障害者差別解消部会は法第17条の障害者差別解消支援地域協議会に位置付けられる)に、事案及び委員会における検証内容について情報を提供。 5.障害者差別解消部会で市の所管外の事案やその他連携が求められる取組について協議。 (国の機関の職員においては臨時委員等として参加。注:部会において助言及びあっせんは実施しない) 【部会への参加が想定される機関】 国の機関:法務局、労働局、運輸支局 等 その他:商工会議所、医療機関 等 6.必要に応じて主務大臣の権限を有する各所管が権限行使。 7.主務大臣の権限を有する機関等との連携により障害者差別事案の解決を図る。   フロー図は以上です。 p15 7.資料 ●障害者差別解消部会におけるヒアリング結果及び市民会議における意見等 @障害者差別解消部会におけるヒアリングにおける意見等 ○相談窓口について ・周囲にまだ障害告知をしていない場合などは、相談窓口によって本人に想定外のダメージを与えてしまう可能性があるため、慎重に取扱っていただきたい。 ・分かりやすい説明、こちらが分かりやすい工夫をしていただく、事前にメールか何かで概要を連絡していただけると、事前に準備ができるので、相談しやすくなるのではないか。 ・相談しやすい場、時には自宅に訪問していただくとか、あと本人が行けそうな場所、公民館などとか、ファミレスの個室だとか、本人が相談しやすい場に出張していただくことも必要ではないか。 ○申立てへのためらい ・個人が特定されるのは嫌だという場合、当事者団体であるとか、誰か仲立ちをする人たちが少し、間に立って相談に乗ってくれると助かる。 ・成功事例を挙げるということもとても大切であり、相談して良かったという気持ちの方もとても大切なのではないか。 ・差別的な扱いについて相談を受けたときに、しかるべき機関に相談をしていこうと促しても疲弊しきってしまって、相談にまで行く気力がない、訴えていく気力が残っていない。 ○差別への気づき ・それまでに受けた差別的な扱いみたいなものが、そもそも自分が障害者ということに気付いていなかった、もしくは、障害を受け入れていないという場合もある。 ・自身に障害があるということに気付く機会がなかったという方にとっては、そもそも前提が障害というところにないので、差別の窓口につながりづらかったのではないか。 A 誰もが共に暮らすための市民会議における参加者の意見等 ○窓口対応について ・支援者側が当事者の気づきを促すような対応をすることが大切なのではないか。 ・差別を受けた時に相談ができる窓口ができたのは良いことであるが、残念なのは、相談後の対応が見えないことである。 ・本当に手助けが必要な人は、「困っている」「大変」と声を出さない人で、多少のお節介が必要である。 ○差別に関する周知について ・差別の原因となるものを皆がわかるようにしていくことが大事なのではないか。 ・差別とはどういったことを指すのか理解している人が少ないため、差別の定義付けについて広く市民に周知する必要がある。 ・差別の事例を広報のコラムの欄に掲載するなど、市民が日々の生活の中で「気づき」を重ねていけるような環境を作る必要がある。 ・差別を受けたかどうかに気付くかどうかも重要な問題である ・相談件数は全国的に少ない。「諦めない」ことや「我慢しない」ことを呼びかけていく必要がある。 ・知的障害がある人にどのように情報を伝えるのかというのも取組が必要。 ○相談窓口の周知について ・相談するにもどこに相談して良いのかわからない。相談窓口の存在をさらに周知する必要があるのではないか。 ・精神の当事者は病院から診療を拒否されることが多い。知的の場合も断られることがあるが、民間病院の差別についてはどこに相談すれば良いのかわからない。 ・相談窓口は、どこに行ったら良いか分からない。日々の生活の中で、ついつい後回しにしてしまう。本人が相談しようと強く自覚する必要がある。 ・例えば、知的・精神の方が年金に関して相談したいと考えても、社労士に相談す p16 るというところまではなかなか及ばない。差別だけではなく、相談できる環境全般を整える必要があるのではないか。 ○申立てへのためらいについて ・当事者の方も諦めがあると思う。差別の相談をためらう方もいる。 ・現在の障害の相談窓口は、普段から関わっているところが全てであり、狭い世界なのでなかなか言えない。 ・差別は虐待に比べて件数が少ない。差別をキャッチするアンテナを磨いていかなければならない。当事者には言いづらいという現状がある。 ・プライバシーの問題で、普段関わっていない別の相談窓口に行くことがある。 ・合理的配慮を求めたくても、自分の子供がいわば人質になっている状態であり、じゃあ出て行ってください、となるのが怖い。 ・町内会などでも合理的配慮を求めるとモンスター扱いされるのが怖いが、具体例を挙げてもらえば言い出しやすい。 ・余程のことがないと言い出しにくい。村八分になってしまうのが怖い。 ・相談した後に、かえって相談した側の立場が地域の中で悪くなるのではないかということを懸念してしまうため、なかなか言い出せない。 ・例えば、職場で声をあげたら、その後の居場所がなくなってしまう懸念がある。大ごとにすると今後に差支えがあると思うと行動できない。 ○差別への気づきについて ・「この障害は、こういうものだから」といった先入観を持ちすぎてしまうと、差別的な対応になってしまうことがあると思う。 ・障害者生活支援センターで相談業務に携わっているが、差別はほとんどない。普段の会話の中で聞くこともあるが、当たり前と感じてしまって聞き流してしまうことがある。 ・昔から差別的な扱いを受けていたためか、差別とはどんなものかという具体的なイメージがわかない。差別を考える上で指針となる事例集を作成してほしい。 ・差別的な取り扱いを受け続けてきたためか、その状態に慣れてしまい、声をあげるエネルギーがない。 ・聴覚障害者のいる施設職員をしているが、聴覚障害の利用者に困っていること、不便に感じていることを聞いても、「特にない」という返事が返ってくる。障害があることで不便なことがある筈なのに、障害者本人にとっては、現状が当たり前の環境だと思っている。 ○その他 ・さいたま市の職員自身が差別とは何かということを学んでほしい。その為にも、障害者差別をテーマとした職員向けの研修を増やすべきではないか。 ・地域の中での勉強会など、当事者間で障害者差別について意見交換が行えるような場が欲しい。 ・合理的配慮について、「過重な負担」の程度がわからないので意見を出せない。具体例を示してもらわないとわからない。 ・差別事例が事例の出しっぱなしで終わっているが、改善事例があっても良いのではないか。