p1   復興庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針   第1 本対応指針の趣旨   1 障害者差別解消法の制定の経緯  我が国は、平成19年に障害者権利条約(以下「権利条約」という。)に署名して以来、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正を始めとする国内法の整備等を進めてきた。  障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年に制定された。   2 法の基本的な考え方  法は、後述する、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し、行政機関等及び事業者に対し、差別の解消に向けた具体的取組を求めるとともに、普及啓発活動等を通じて、障害者も含めた国民一人ひとりが、それぞれの立場において自発的に取り組むことを促している。  法の対象となる障害者は、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者、即ち、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」であり、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれる。また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する。  また、法は、日常生活及び社会生活全般に係る分野を広く対象としている。ただし、事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされている。   3 本対応指針の位置付け   p2 本対応指針は、法第11条第1項の規定に基づき、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定)に即して、復興庁が所管する分野における事業者(以下「事業者」という。)が、法第8条に規定する障害を理由とする差別の禁止及び合理的配慮の提供に関して適切に対応するため、定めるものである。   4 留意点  事業者における障害者差別解消に向けた取組は、障害者基本法の基本的な理念及び法の目的を踏まえながら、対応指針を参考にして、事業者により自主的に取組が行われることが望ましい。しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、法第12 条の規定により、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができることとされている。   第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方   1 障害を理由とする不当な差別的取扱い   (1)障害を理由とする不当な差別的取扱いの基本的な考え方  事業者は、法第8条第1項の規定のとおり、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。  法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。  なお、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 p3    (2)正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。  事業者においては、正当な理由に相当するか否かについて、不当な差別的取扱いを禁止する法の趣旨に十分留意しつつ、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。  なお、「客観的に判断する」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものである。また、「正当な理由」を根拠に、不当な差別的取扱いを禁止する法の趣旨が形骸化されるべきではなく、抽象的に事故の危惧がある、危険が想定されるといった理由によりサービスを提供しないといったことは適切ではない。   2 合理的配慮   (1)合理的配慮の基本的な考え方  事業者は、法第8条第2項の規定のとおり、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)をするように努めなければならない。  権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。  法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、事業者に対し、その事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う p4 負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。  合理的配慮は、事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。  また、合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「(4)過重な負担の基本的な考え方」に掲げた要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。  なお、代替措置の提供は、事業者の業務やビジネスモデル等の内容によっては、例えば、訪問等による能動的なサービスを提供することが、障害者のニーズを満たすこととなり、合理的配慮となる場合もあり得る。  合理的配慮の内容は、技術の進展や社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。また、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、障害の状態等が変化することもあるため、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。   (2)意思の表明  現に社会的障壁の除去を必要としている旨の障害者からの意思の表明は、具体的場面において、言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(手話通訳者、要約筆記者、盲ろう通訳者等を介するものを含む。)により行われる。  また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。  なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。 p5   (3)事前的改善措置との関係  法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援及び障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。このため、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。  なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、事前的改善措置を考慮に入れることにより、中・長期的なコスト削減・効率化につながりうる点は重要である。   (4)過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、事業者において、合理的配慮の提供に努めるべきとする法の趣旨に十分留意しつつ、個別の事案ごとに、次の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。  ○ 事務・事業への影響の程度  (事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)  ○ 実現可能性の程度  (物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)  ○ 費用・負担の程度  ○ 事務・事業規模  ○ 財政・財務状況   第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例  事業者における、障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例は別紙のとおりである。   第4 事業者における相談体制の整備  事業者においては、障害者及びその家族その他の関係者(以下「障害者等」という。)からの相談に的確に対応するため、既存の顧客相談窓口等の活用を含め、相談窓口を整備することが重要である。   p6  ホームページ等を活用し、相談窓口等に関する情報を周知することや、相談時には、性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、FAX、電子メールその他可能な範囲で障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を、障害特性や事業者の業務・事務特性、ビジネスモデル等に応じて用意しておくことが望ましい。    なお、実際の相談事例については、当該事業者において相談者の個人情報やプライバシーに配慮しつつ順次蓄積し、以後の合理的配慮の提供等に活用するものとする。   第5 事業者における研修・啓発  事業者は、障害者に対して適切に対応し、また、障害者等からの相談等に的確に対応するため、従業員に対する継続的な研修の実施や、啓発マニュアルの配付等を通じて、法の趣旨の普及を図るとともに、障害に関する理解の促進を図ることが重要である。     第6 復興庁所管事業分野における相談窓口  事業者からの本対応指針等に関する照会・相談及び障害者等からの事業者の対応等に関する相談については、復興庁においては株式会社東日本大震災事業者再生支援機構に関する事務を担当する参事官を相談窓口とする。 p7   (別 紙)   障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例   1 不当な差別的取扱いに当たり得る具体例  不当な差別的取扱いに当たるか否かについては、第2.1で示したとおり、個別の事案ごとに判断されることとなる。次の具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例に限られるものではないことに留意する必要がある。  ○ 障害があることのみを理由として、窓口対応を拒否する。  ○ 障害があることのみを理由として、資料の送付、パンフレットの提供等を拒否する。  ○ 障害があることのみを理由として、商品の提供を拒否する。  ○ 身体障害者補助犬を連れていることや車いすを利用していることのみを理由として、入店を拒否する。  ○ 障害があることのみを理由として、入店時間や入店場所に条件を付ける。  ○ 事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害があることのみを理由として、来訪の際に付添い者の同行を求めるなどの条件を付ける。   2 合理的配慮の具体例  合理的配慮については、第2.2で示したとおり、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものである。次の具体例については、第2.2(4)で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、事業者に強制する性格のものではないこと、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例に限られるものではないことに留意する必要がある。   〔意思疎通の配慮の具体例〕  ○ 入店時に声をかけ、障害の状態を踏まえ、希望するサポートを聞き、必要に応じて誘導する。  ○ (身体的障害のある顧客に対しては、)書類の開封、受渡し等の対応が困難な場合に、必要なサポートを提供する。  ○ (視覚に障害のある顧客に対しては、)窓口まで誘導し、商品の内容を分かりやすい言葉で丁寧に説明を行う。また、顧客の要請がある場合は、 p8 取引関係書類について代読して確認する。  ○ (聴覚に障害のある顧客に対しては、)パンフレット等の資料を用いて説明し、筆談を交えて要望等の聞き取りや確認を行う。  ○ (盲ろう者に対しては、)本人が希望する場合、障害の程度に応じて、手のひら書き等によりコミュニケーションを行う。  ○ 明確に、分かりやすい言葉で、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対するなど顧客に合わせた配慮をする。また、説明に当たっては、馴染みのない外来語は避ける、時刻は午前・午後といった説明を加える、比喩や暗喩、二重否定表現を用いないなど、分かりやすい表現で説明を行う。  ○ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達したりする。また、書類の内容や取引の性質等に照らして特段の問題が無いと認められる場合に、自筆が困難な障害者からの要望を受けて、本人の意思確認を適切に実施した上で、代筆対応する。   〔物理的環境への配慮の具体例〕  ○ 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。  ○ エレベーターがない施設の上下階の移動の際に、マンパワーにより移動をサポートしたり、上階の職員が下階に下りて手続する等の配慮をする。  ○ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。  ○ 目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、左右・前後・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。  ○ 疲労を感じやすい障害者から休憩の申出があった際には、臨時の休憩スペースを設けるなどする。  ○ 情報提供や取引、相談・質問・苦情受付等の手段を、非対面の手段を含めて複数用意し、障害のある顧客が利用しやすい手段を選択できるようにする。   〔ルール・慣行の柔軟な変更の具体例〕  ○ 順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続順を入れ替える。  ○ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を準備する。  ○ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張により、不随意の発声 p9 等がある場合において、当該障害者が了承した場合には、施設の状況に応じて別室を準備する。