林野庁訓令第6号 庁中一般   林野庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を次のように定める。  平成27年11月26日 林野庁長官 今井 敏     林野庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領  (目的) 第1条 この要領(以下「対応要領」という。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第9条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)に即して、法第7条に規定する事項に関し、林野庁の職員(以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。  (不当な差別的取扱いの禁止) 第2条 職員は、法第7条第1項の規定に基づき、その事務又は事業を行うに当たり、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。以下同じ。)を理由として、障害者(障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう。以下同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。なお、職員は、別紙第1から第3までに定める留意事項に留意するものとする。  なお、別紙中「望ましい」と記載している内容は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(次条において同じ。)。  (合理的配慮の提供) 第3条 職員は、法第7条第2項の規定に基づき、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。なお、職員は、別紙第4から第6までに定める留意事項に留意するものとする。  (監督者の責務) 第4条 職員のうち、課長以上の職(林野庁長官がこれに準ずると認める職を含む。)の地位にある者(以下「監督者」という。)は、前二条に定める事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。 一 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その監督する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 二 障害者等から不当な差別的取扱い又は合理的配慮の不提供に対する相談若しくは苦情の申出等があった場合には、迅速に状況を確認すること。 三 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 2 監督者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。  (懲戒処分等) 第5条 職員が障害者に対し、不当な差別的取扱いをし又は過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮の不提供を繰り返す場合には、その態様等によっては、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当し、懲戒処分等に付されることがある。  (相談体制の整備) 第6条 その職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、次に掲げる相談窓口を置く。 一 林政部林政課長 二 林政部林政課管理官(人事担当) 三 林政部林政課課長補佐(人事第一班及び人事管理班担当) 四 前各号に掲げる者のほか、林政部林政課長が指名する者 2 相談等を受ける場合には、性別、年齢、障害の状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファックス及び電子メールに加え、障害者がコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。 3 第1項の規定により設置された相談窓口に寄せられた相談等は、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図ることとする。 4 第1項の規定により設置する相談窓口は、必要に応じ、相談体制の充実を図るよう努めるものとする。  (研修・啓発) 第7条 林政部林政課は、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修・啓発を行うものとする。 2 新たに職員となった者に対しては、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに監督者となった職員に対しては、障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、研修を行うものとする。 3 前項の研修の内容、回数等の詳細は、林政部林政課長が定める。 4 職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、障害者へ適切に対応するために必要なマニュアルの活用等により、意識の啓発を図るものとする。    附 則  この訓令は、平成28年4月1日から施行する。 別紙(第2条及び第3条関係) 林野庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方   法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービス若しくは各種機会の提供を拒否する、提供に当たって場所・時間帯等を制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けること等により、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。  ただし、障害者の事実上の平等を促進し又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱い及び合理的配慮を提供等するために必要な範囲でプライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。  このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を問題となる事務・事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 第2 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ない場合である。林野庁においては、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び林野庁の事務・事業の目的、内容及び機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 第3 不当な差別的取扱いの具体例  不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としており、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 (不当な差別的取扱いに当たり得る具体例) ○ 障害があることを理由に窓口対応を拒否する。 ○ 障害を理由に対応の順序を後回しにする。 ○ 障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 ○ 障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 ○ 事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付き添いを行う者の同行を求める等の条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添いを行う者の同行を拒んだりする。 第4 合理的配慮の基本的な考え方 1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。 法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるもの(いわゆる「社会モデル」)との考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものとする。  合理的配慮は、林野庁の事務・事業の目的、内容及び機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること並びに事務・事業の目的、内容及び機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様で個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展及び社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢及び状態等に配慮するものとする。 なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 3 意思の表明とは、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示、身振りサイン等による合図又は触覚による意思伝達等、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられるものをいう。 また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者、法定代理人等のコミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含むものとする。   なお、意思の表明が困難な障害者が、その家族、介助者、法定代理人等を伴っていない場合など意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかける等、自主的な取組に努めることが望ましい。 4 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援又は障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することも考慮し、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。 5 林野庁がその事務・事業の一環として実施する業務を事業者に委託等をする場合には、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。 第5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  職員は、過重な負担に当たると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。 ○ 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的、内容又は機能を損なうか否か) ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的又は体制上の制約) ○ 費用・負担の程度 第6 合理的配慮の具体例  第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。  なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としており、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 (合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例) ○ 段差がある場合には、車いす利用者のために携帯スロープの提供等を行う。なお、農林水産省本省庁舎(中央合同庁舎第1号館をいう。以下同じ。)本館と北別館とを結ぶ渡り廊下部分の段差は構造上車いす利用を想定したスロープ設置は困難なことから、必要に応じ1階玄関へ誘導する。 ○ 車いす利用者のために可能な限り配架棚の低い所にパンフレットを配架し又は配架棚の高い所に配架されたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置をわかりやすく教える。 ○ 目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩く又は前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞く。 ○ 障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合には、会場の座席位置を扉付近にする。 ○ 農林水産省本省庁舎の玄関に配置している車いすの利用を必要に応じて案内する。 ○ 農林水産省本省庁舎内に設置されている多目的トイレを必要に応じて案内する。 ○ 疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。 ○ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえる、バインダー等の固定器具を提供する等を行う。 ○ 農林水産省本省庁舎内で災害や事故が発生した際には、避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、手書きのボード類等を用いて、分かりやすく案内し、誘導を図る。 (合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例) ○ 筆談、読上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。 ○ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。 ○ 視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際に、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 ○ 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 ○ 駐車場等で通常、口頭で行う案内を紙にメモをして渡す。 ○ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示す又は、分かりやすい記述で伝達する。本人の依頼がある場合には、代読、代筆等の配慮を行う。 ○ 比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩、暗喩又は二重否定表現等を用いずに具体的に説明する。 ○ 障害者から申出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語はさける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記する等の配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。 ○ 林野庁ホームページにおいて、各コンテンツを一般的な音声読み上げに対応する措置を行う等の視覚障害者に配慮した情報発信を行う。 ○ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害のある委員や知的障害を持つ委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。 ○ 会議の進行に当たり、職員が委員の障害の特性に合ったサポートを行うなど、可能な範囲での配慮を行う。 (ルール・慣行の柔軟な変更の具体例) ○ 順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続順を入れ替える。 ○ 立って列に並んで順番を待っている場合には、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。 ○ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 ○ 農林水産省本省庁舎の敷地内において、車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 ○ 農林水産省本省庁舎の敷地内の駐車場等において、障害者の来庁が多数見込まれる場合には、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。 ○ 入館時にICカードゲートを通過することが困難な場合には、別ルートからの入館を認める。 ○ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合には、当該障害者に説明の上、施設の状況に応じて別室を準備する。 ○ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。