資料11 第77回障害者政策委員会への事前意見 (一財)全日本ろうあ連盟 副理事長 石橋 大吾 p1 <各省提出資料について> <警察庁> [○警察職員に対する教養 ・警察学校や警察署等の職場において、採用時教育の段階から、障害者施設への訪問実習、有識者による講話等、障害のある人の特性や障害に配慮したコミュニケーション等への理解を深めるための研修を実施した。 ○その他 ・手話ができる警察官の交番等への配置や「コミュニケーション支援ボード」の全都道府県警察の交番等における配備・活用により、障害者からの各種届出、相談等に適切に対応した。] 手話ができる警察官の拡大は嬉しいことですが、まだ「警察職員は「きこえないこと」に対する理解がなく、きこえない人の対応を知らない」という声が多く寄せられています。公安委員会の所轄になるかもしれませんが、免許更新の講習時に手話通訳を拒否されたという事例や手話言語でコミュニケーションが必要な盲ろう者への対応方法が適切でなく拘置所に入れさせられた事例もあります。 全警察職員に対して、心のバリアフリー講座等の研修を充実し、ろう当事者団体等による正しい接し方など学習できる場を増やすようにしてください。また、研修実施状況について見える化(数値化)をお願いします。 p2 <こども家庭庁> [○障害のあるこどもに対する支援の充実 ○最近の動き ・子育て世帯に対する包括的な支援のための体制や事業を強化・拡充し、障害児入所施設の入所児童等に対する自立支援を強化する等の観点から、児童福祉法を令和4年に改正。(令和6年4月施行) 障害児支援関係について、具体的に以下の改正を行った。 ・児童発達支援センターが地域における障害児支援の中核的役割を担うことを明確化し、障害種別にかかわらず障害児を支援できるよう児童発達支援の類型(福祉型、医療型)を一元化する] ・施策全般において、こどもの言語権の保障に関する記載が全くないので追記してください。「こどもの言語権を保障すること」は、先住民や在日外国人のこどもだけでなく、きこえない・きこえにくいこどもに、自分にとって必要である手話言語の獲得、学習を保障することも意味しますので、こどもの言語権を保障すべきことと、そのための方針、施策について記載してください。 ・障害児支援・医療ケア児などへの支援において、きこえない・きこえにくいこども及び保護者に対し、その特性をふまえた手話言語を含んだ、あらゆるコミュニケーション方法で情報提供できる体制を整えるべきです。新生児聴覚スクリーニング検査後の早期支援に必要な体制や方策を盛り込んでください。 ・最近、一側性難聴を持つこどもが増加していますが、軽度難聴及び一側性難聴を持つこどもに対する支援を検討し、盛り込むようにしてください。 ・人材の確保・育成・支援や地域における包括的な支援体制の構築・強化において、聴覚障害者情報提供施設職員、ろうあ者相談員、手話通訳担当職員も入れてください。また、施策検討において、障害児・障害のある若者、ろう学校・特別支援学校や障害当事者団体が参画できるよう進めてください。 ・難聴児を含む児童発達支援の類型(福祉型、医療型)の一元化や、「インクルージョン」の考えがだされていますが、各障害に対応できる人材やコミュニケーション手段、環境等の整備が先決です。 現在、聴覚障害児支援中核機能を整備している都道府県は全国で17自治体に留まっており、この整備が先決であり、一元化は時期尚早です。今のままで一元化すると、情報アクセスや手話言語等のコミュニケーション保障が必要なこどもが取り残されてしまう可能性があり、新たな分離、格差を生み出すだけです。 聴覚障害児支援中核機能強化事業も含めた一元化を行うためには、まず、きこえない・きこえにくいこどもに対する的確な支援が出来る環境、具体的には新生児聴覚スクリーニング検査からリファーしたこども・保護者に対し、手話言語習得を含む支援体制の構築が急務です。そのために、早期発見・早期支援に関わる法制化が必要です。 p3 <デジタル庁> 特になし <総務省> [○情報通信における情報アクセシビリティの向上 2-(1)-2 研究開発やニーズ、ICTの発展等を踏まえつつ、情報アクセシビリティの確保及び向上を促すよう、適切な標準化を進めるとともに、必要に応じて国際規格提案を行う。また、各府省における情報通信機器等の調達は、情報アクセシビリティの観点に配慮し、国際規格、日本工業規格への準拠・配慮に関する関係法令に基づいて実施する。特に、WTO政府調達協定の適用を受ける調達等を行うに当たっては、WTO政府調達協定等の定めるところにより、適当な場合には、アクセシビリティに関する国際規格が存在するときは当該国際規格に基づいて技術仕様を定める。 2-(4)-2 各府省において、障害者を含む全ての人の利用しやすさに配慮した行政情報の電子的提供の充実に取り組むとともに、ウェブサイト等で情報提供を行うに当たっては、キーボードのみで操作可能な仕様の採用、動画への字幕や音声解説の付与など、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に即した必要な対応を行う。また、地方公共団体等の公的機関におけるウェブアクセシビリティの向上等に向けた取組を促進する。 (令和4(2022)年度実施状況) ・総務省ホームページについては、音声読み上げ・文字拡大などアクセシビリティ支援ツールを導入し、目や耳の不自由な方にも内容を理解していただけるよう努めるとともに、平成24年度から総務省ウェブアクセシビリティ方針を策定し、高齢者や障害者を含む誰もが利用できるものとなるよう努めている。平成25年度からは、みんなの公共サイト運用ガイドラインで定められているとおり、適合レベル「AA」に設定し、ウェブアクセシビリティの推進に努めている。] 制定当時のウェブアクセシビリティ環境から相当の年月がたっており、国内の情報アクセシビリティ法や合理的配慮と一致しないので見直しが必要です。例えば、手話言語を使う人には手話動画(AAA)の提供が合理的配慮であり、字幕(AA)では代替にはなりません。 ※他省庁も同様です。 p4 [2-(1)-5 聴覚障害者が電話を一人でかけられるよう支援する電話リレーサービスの実施体制を構築する。] 電話リレーサービスの利用ですが、きこえない人のみ登録必須となっていて、きこえる人は登録不要で利用できます。きこえない人もきこえる人と同様に、登録不要で利用できるように改善してください。 また、現時点の状況だと050番号が迷惑電話だと思われ、なかなか電話が通じないといった事例が多く、改善の方法や、課金される050番以外(自分が使っている090番など)での利用についての検討状況についてご教示ください。 [○情報提供の充実等 2-(2)-1 (項目の内容) 身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律(平成5年法律第54号)に基づく放送事業者への制作費助成、「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」に基づく取組等の実施・強化により、字幕放送、解説放送、手話放送等の普及を通じた障害者の円滑な放送の利用を図る。] 地方の放送に関する字幕放送状況や手話番組放送の現況が分かる、具体的な数値を示してください。 [○防災対策の推進 2-(4)-4・3-(1)-3(再掲) (項目の内容) 災害発生時、又は災害が発生するおそれがある場合に障害者に対して適切に情報を伝達できるよう、民間事業者、消防機関、都道府県警察等の協力を得つつ、障害特性に配慮した情報伝達の体制の整備を促進する。 3-(1)-4 (項目の内容) 災害発生時、又は災害が発生するおそれがある場合に避難行動要支援者名簿等を活用した障害者に対する適切な避難支援や、その後の安否確認を行うことができるよう、地方公共団体における必要な体制整備を支援する。] p5 平成25年に義務化された「避難行動要支援者名簿の作成」及び令和3年に努力義務化された「個別避難計画の作成」において、支援者が訪問や窓口応対の際に対象者(きこえない人)にあったコミュニケーション手段による対話を行えるよう、十分な情報保障体制を整える必要があることを指針・手引き・ガイドラインに盛り込んでください。 個別避難計画の対象は「要介護度3〜5の高齢者や身体障害者手帳1級・2級等を所持している者等の自ら避難することが困難な者のうち、ハザードマップで危険な区域に住む者や、独居または夫婦二人暮らしの者など、計画作成の優先度が高いと地方公共団体が判断する者」となっていますが、音での情報が入らないきこえない人は、災害の発生を感知しにくく、逃げ遅れてしまうことがあるので、きこえない人はすべからく個別避難計画の対象にしてください。また、計画作成にあたって要支援方法が事前にわかるような設問を入れる等工夫してください。(例えば、必要となる支援内容:手話通訳、筆談など) 平成25年に改訂された「災害対策基本法」において、避難行動要支援者名簿を活用するために、福祉専門職やかかりつけ医などの医療職等の連携が挙げられていますが、当事者団体の連携においては、個人情報の取り扱いが大きなネックになっています。例えば、当事者団体が個人情報を適切に管理出来る体制及び規程等を整備していることを示す一定の基準を明確にし、この基準をクリアしていれば開示対象とする等、当事者団体との連携を促進するような仕組みを整備してください。 福祉避難所が全国に約82,000ヶ所有り、さらに特別支援学校を福祉避難所として指定することも想定されており、きこえない人の情報アクセシビリティ対応機器「アイ・ドラゴン4」の設置が急務です。各自治体の公的機関や災害時の一般避難所における備品のガイドラインに、手話・字幕付き放送「目で聴くテレビ」が視聴できる聴覚障害者専用情報受信装置(アイ・ドラゴン)を入れてください。また、災害時に福祉避難所となる施設全てに聴覚障害者専用情報受信装置(アイ・ドラゴン)を設置し、それに係る受信料等の補助の予算化を図ってください。 ※「アイ・ドラゴン」について IPTV受信機「アイ・ドラゴン」は、聴覚障害者等のために手話・字幕を挿入したテレビ放送の補完放送を行うだけでなく、緊急災害時にいち早く情報を伝える役割を担っています。全国の一般避難所及び福祉避難所に「アイドラゴン」を設置することで、きこえない人に災害情報も的確に情報を伝えることができます。 p6 <文部科学省> [1.教育の振興について] 1の「教育の振興」では手話や聴覚障害児のことに一言も触れず、「障害のある児童生徒等」に終始しています。 2の「文化芸術活動・スポーツ等の振興」は、「聴覚障がい者への情報提供」、「植物と手話を同時に学べるイベント」、「手話のできるボランティアによる館内案内」、「聴覚障害のある児童・生徒、視覚障害のある児童・生徒、手話通訳士の入館免除」、「聴覚障害者を対象とした手話通訳つき」、「視覚障害者や地域の盲学校と協働して、点字付きや点字と音声コード、手話を主要言語とする体験型プログラム」、「補聴器等への磁気誘導無線、盲導犬、介助犬の同伴」・・・など、障害別に応じたきめ細かな施策が記述されています。 同じ文部科学省にも関わらず、記述の表現が異なるので、1「教育の振興」の各節においても、2「文化芸術活動・スポーツ等の振興」と同様に、障害別に応じたきめ細かな施策を盛り込んでください。 [2.文化芸術活動・スポーツ等の振興 (2)スポーツ ○東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、「オリンピック・パラリンピック・ムーブメント全国展開事業」として、パラリンピアンとの交流・パラスポーツ体験事業を重点的に実施するなど、障害当事者以外に向けた障害者スポーツ体験・理解の促進を図るとともに、「Specialプロジェクト2020」として、全国の特別支援学校でのスポーツ・文化・教育の祭典の実施に向けた先進事例を蓄積するためのモデル事業や特別支援学校等を活用した地域における障害者スポーツの拠点づくりの支援を実施した。] 2022年9月のICSD総会にて、東京2025デフリンピック招致が決定し、2022年度は何度かスポーツ庁も含めた五者連絡会議(ろうあ連盟、東京都、スポーツ庁、JOC、JPSA)を開催しているにもかかわらず、デフリンピック、デフスポーツの記載がありません。 今後、国として東京2025デフリンピックに向けた閣議決定をされるときいていますので、デフリンピック、デフスポーツについても盛り込むようにしてください。 (参考 https://www.jfd.or.jp/2023/05/25/pid25411) p7 <厚生労働省> [○日常生活用具の給付について] ・日常生活においてもIT化が加速していますが、日常生活用具品目では、現在の生活様式と合致しないものが見受けられます。例えば、聴覚障害者用通信装置はFAXのみ給付している自治体がほとんどです。情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に基づき、現在の生活様式にあったタブレットや視覚的な情報へのアクセスが可能な品目を追加するよう通知してください。 [○精神保健福祉法改正による相談支援体制等の強化について] 「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」において、『有識者や当事者等の構成員により「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築により一層の推進に向けた具体的かつ実効性な仕組み、体制等について議論が行われました。これを踏まえ、精神障害者等に対する支援の今後の方向性を含む形で、令和4年6月に報告書がとりまとめられました。』と記載されていますが、検討会構成員にはきこえない当事者が入っていません。 また精神保健福祉士を有するきこえない人たちへのヒアリングを行っていないため、報告書には聴覚障害、また盲ろうを併せ持つ精神障害者の場合の対応方法等が記載されておらず、盲ろう障害を併せ持つ精神障害者への適切な対応ができていないのが現状です。検討にはきこえない当事者を必ず入れるようにしてください。 <雇用・就業、経済的自立の支援> [○障害者雇用について] 障害者雇用数については、障害者総数だけではなく、具体的な障害別を示してください。また、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の支給の件数の内訳や活用率を示してください。 さらに、雇用した後の職場定着について、会社や周囲の理解や障害者個人の努力等だけでは定着できない人がおり、障害者介助等助成金の制度活用等が必要になります。制度の利用期間の延長や、活用のしやすさの検討を進めて下さい。また、手話通訳・要約筆記担当委嘱助成金活用率も示してください。 [○その他] ・障害者差別解消支援地域協議会に、どれくらいろう当事者団体が参画しているかどうか公表してください。 ・基幹相談支援センターに手話通訳者やろうあ者相談員を配置しているか確認、公表してください。 ・自立支援協議会にろう当事者団体が参画しているかどうか公表してください。 p8 ・地域の消費生活センターの受付において、電話番号以外の対応ができているかを確認してください。 [○障害者の虐待防止や権利擁護] ・きこえない女性がDV被害にあった際に、女性を対象に「ひとりで悩んでいませんか」のようなカードが配布されることがありますが、連絡先が電話番号だけになっています。被害にあった際に電話番号以外の方法で相談できるようにしてください。 ・障害者の虐待防止や権利擁護に関する研修において、きこえないという特性、特に盲ろう者の特性やコミュニケーション、対応方法等の内容を盛り込むようにしてください。実際に起きた事例では、盲ろう者とろう者の夫婦の会話の中、叩く(怒っていることを伝える手段)行為を見かけたケアマネが誤って虐待と判断し、虐待防止センターに通報した結果、「虐待」と認定されてしまった事例があります。これは、虐待防止センターもケアマネも行政も正しい知識がなかったことが原因です。このようなことがないよう、障害者の虐待防止や権利擁護に関する研修において、きこえないという特性、特に盲ろう者の特性やコミュニケーション、対応方法等の内容を盛り込んでください。 p9 <経済産業省> [1.安心・安全な生活環境の整備について 【アクセシビリティに配慮した施設、製品等の普及促進】 (項目番号:1-(3)-5) 1 ユニバーサルデザイン化の一環であるアクセシブルデザインについて、令和4年度までに関連する日本産業規格(JIS)を43規格制定した。] 日本産業規格(JIS)では達成基準水準AからAAAの適合レベルが定められていますが、きこえない人のアクセシビリティや合理的配慮が提供されているとはいえません。当事者の意見もふまえ、見直しを進めてください。 例えば、手話言語を使う人には手話動画(AAA)の提供が合理的配慮であり、字幕(AA)では代替にはなりません。※他省庁も同様です。 <国土交通省> [1.移動等円滑化の促進に関する基本方針 ・高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号。(以下「バリアフリー法」という。)に基づく基本方針において、旅客施設・車両等・公園・建築物等に係るバリアフリー整備目標を定めているところ。] バリアフリートイレ等の検討において、きこえない当事者のニーズに沿ったものにしてください。現状、一般のトイレを利用中に、きこえない人が体調不良になると房の外の人と意思疎通ができなくなってしまいます。各施設をバリアフリー化する際には、当事者ニーズをふまえたものになるようにしてください。 旅客施設・車両等・公園・建築物等に係るバリアフリー整備目標については、きこえない当事者にもヒアリングし、策定するようにしてください。