参考資料3-1 文部科学省 所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針 p1 目次 第1 趣旨 1 障害者差別解消法の制定の背景及び経過 2 法の基本的な考え方 3 本指針の位置付け 4 留意点 第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 1 不当な差別的取扱い (1)不当な差別的取扱いの基本的な考え方 (2)正当な理由の判断の視点 (3)不当な差別的取扱いの例 2 合理的配慮 (1)合理的配慮の基本的な考え方 (2)過重な負担の基本的な考え方 (3)合理的配慮の例 (4)環境の整備との関係 第3 関係事業者における相談体制の整備 第4 関係事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する仕組みの整備 第5 文部科学省所管事業分野に係る相談窓口 p2 第1 趣旨 1 障害者差別解消法の制定の背景及び経過 我が国は、平成19年に障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)に署名して以来、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正をはじめとする国内法の整備等を進めてきた。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年に制定された。 また、令和3年6月には、事業者による合理的配慮の提供を義務付けるとともに、行政機関相互間の連携の強化を図るほか、相談体制の充実や事例の収集・提供の確保など障害を理由とする差別を解消するための支援措置の強化を内容とする障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号)が公布された。 2 法の基本的な考え方 (1)法の対象となる障害者は、法第2条第1号に規定する障害者、すなわち、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等に起因する障害を含む。以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものである。 これは、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者の定義と同様であり、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえている。 したがって、法が対象とする障害者の該当性は、当該者の状況等に応じて個別に判断されることとなり、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。 p3 (2)法は、日常生活及び社会生活全般に係る分野を広く対象としている。ただし、事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条の規定により、障害者の雇用の促進に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされていることから、この対応指針(以下「本指針」という。)の対象外となる。なお、同法第34条及び第35条において、雇用の分野における障害者に対する差別に禁止が定められ、また、同法第36条の2及び第36条の3において、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮の提供義務)が定められたことを認識し、同法36条第1項及び第36条の5第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める各指針を踏まえて適切に対処することが求められることに留意する。 3 本指針の位置付け 本指針は、法第11条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」という。)に即して、法第8条に規定する事項に関し、文部科学省が所管する分野における事業者(以下「関係事業者」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めたものである。 なお、事業者とは、商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)、すなわち、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者をいい、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、学校法人、宗教法人、非営利事業を行う社会福祉法人及び特定非営利活動法人なども含まれる。また、主たる事業に付随する事業も法の「事業」に該当し、例えば、学校法人が設置する大学医学部の附属病院や宗教法人が設置する博物館等についても、本指針が適用される。このほか、本指針で使用する用語は、法第2条及び基本方針に定める定義に従う。 また、本指針は、法施行後の具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ、必要に応じ見直しを行うものとする。 4 留意点 本指針で「望ましい」と記載している内容は、関係事業者がそれに従わない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する。 p4 なお、関係事業者における障害を理由とする差別の解消に向けた取組は、本指針を参考にして、各関係事業者により自主的に取組が行われることが期待されるが、自主的な取組のみによってはその適切な履行が確保されず、関係事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など特に必要があると認めるときは、法第12条の規定により、文部科学大臣は、関係事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができることとされている。 こうした行政措置に至る事案を未然に防止するため、文部科学大臣は、関係事業者に対して、本指針に係る十分な情報提供を行うとともに、関係事業者からの照会・相談に丁寧に対応するなどの取組を積極的に行う必要があることから、文部科学省においては、第5のとおり、相談窓口を設置することとする。 第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 1 不当な差別的取扱い (1)不当な差別的取扱いの基本的な考え方 関係事業者は、法第8条第1項の規定のとおり、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 ア・法が禁止する障害者の権利利益の侵害とは、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付すことなどによる権利利益の侵害である。 なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する。 また、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、法第8条第1項に規定する不当な差別的取扱いではない。 イ・したがって、障害者を障害者でない者より優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)や、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱い、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、関係事業者の行う事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 p5 (2)正当な理由の判断の視点 正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ない場合である。関係事業者においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、関係事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)の観点から、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。個別の事案ごとに具体的場面や状況に応じた検討を行うことなく、抽象的に事故の危惧がある、危険が想定されるなどの一般的・抽象的な理由に基づいて、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付すなど障害者を不利に扱うことは、法の趣旨を損なうため、適当ではない。 関係事業者は、個別の事案ごとに具体的な検討を行った上で正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、関係事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。 (3)不当な差別的取扱いの例 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例及び正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例は別紙1のとおりである。 なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、これらの例だけに限られるものではないこと、正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であること、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意する。 2 合理的配慮 p6 (1)合理的配慮の基本的な考え方 関係事業者は、法第8条第2項の規定のとおり、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)をしなければならない。 ア・権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。 法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、事業者に対し、その事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。 これまで事業者による合理的配慮の提供は努力義務とされていたが、令和3年の法改正により、法的義務へと改められた。関係事業者においては、合理的配慮の提供の義務化を契機として、本指針に基づき、合理的配慮の必要性につき一層認識を深めることが求められる。 p7 イ・合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、2(2)で示す「過重な負担の基本的な考え方」に掲げた要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要がある。さらに、合理的配慮の内容は、2(4)で示す「環境の整備」に係る状況や技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。加えて、合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。 合理的配慮は、関係事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 建設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と関係事業者が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要である。例えば、障害者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、関係事業者が対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられる。 ウ・意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示、身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。 また、意思の表明には、障害者からの意思の表明のみでなく、障害の特性等により本人の意思の表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者、法定代理人その他意思の表明に関わる支援者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。 p8 なお、意思の表明が困難な障害者が家族やコミュニケーションを支援する者を伴っておらず、本人の意思の表明もコミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も困難であることなどにより、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑み、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。 エ・介助者や支援員等の人的支援に関しては、障害者本人と介助者や支援員等の人間関係や信頼関係の構築・維持が重要であるため、これらの関係も考慮した支援のための環境整備にも留意することが望ましい。また、支援機器の活用により、障害者と関係事業者双方の負担が軽減されることも多くあることから、支援機器の適切な活用についても配慮することが望ましい。 さらに、文部科学省所管事業分野のうち教育分野については、教育基本法(平成18年法律第120号)や障害者との関係性が長期にわたるなど固有の特徴を有すること等を踏まえて、スポーツ分野についてはスポーツ基本法(平成23年法律第78号)等を踏まえて、文化芸術分野については文化芸術基本法(平成13年法律第148号)等を踏まえて、各分野の特に留意すべき点を別紙2のとおり示す。 (2)過重な負担の基本的な考え方 過重な負担については、関係事業者において、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。個別の事案ごとに具体的場面や状況に応じた検討を行うことなく、一般的・抽象的な理由に基づいて過重な負担に当たると判断することは、法の趣旨を損なうため、適当ではない。関係事業者は、個別の事案ごとに具体的な検討を行った上で過重な負担に当たると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際には前述のとおり、関係事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。 1 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) p9 2 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) 3 費用・負担の程度 4 事務・事業規模 5 財政・財務状況 (3)合理的配慮の例 合理的配慮の例は別紙1のとおりである。 なお、「2(1)イ」で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、掲載した例についてはあくまでも例示であり、掲載した例以外であっても合理的配慮に該当するものがあること、また、あらゆる関係事業者が必ずしも実施するものではないことに留意する。 また、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例及び該当しないと考えられる例は別紙1のとおりである。これらの例についても、掲載されている例はあくまでも例示であり、合理的配慮の提供義務違反に該当するか否かについては、個別の事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であることに留意する。 (4)環境の整備との関係 法第5条においては、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等をいう。以下同じ。)を、環境の整備として事業者の努力義務としている。 環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、ハード面のみならず、職員に対する研修や、規程の整備等の対応も含まれることが重要である。 p10 障害を理由とする差別の解消のための取組は、法や高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)等不特定多数の障害者を対象とした事前的な措置を規定する法令に基づくこのような環境の整備に係る施策や取組を着実に進めることが必要であり、特に、公立小中学校等及び特別支援学校については、一定規模以上の施設の新築等を行う場合には、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令(平成18年政令第379号)で定める建築物移動等円滑化基準に適合させなければならず、既存の施設についても、同基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととされている。また、その他の学校施設についても、新築等を行う場合には同基準への適合が努力義務となっている。 環境の整備は、不特定多数の障害者向けに事前的改善措置を行うものであるが、合理的配慮は、環境の整備を基礎として、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者に対して、個別の状況に応じて講じられる措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなるが、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である。合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例は別紙1のとおりである。 なお、多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことは有効である。また環境の整備は、障害者との関係が長期にわたる場合においても、その都度の合理的配慮の提供が不要となるという点で、中・長期的なコストの削減・効率化にも資することとなる。 第3 関係事業者における相談体制の整備 関係事業者においては、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、既存の利用者等からの相談窓口等の活用や窓口の開設による相談窓口の整備や、相談対応を行う担当者をあらかじめ定めておく等といった、組織的な対応ができるような措置を講ずることが重要である。また、ホームページ等を活用し、相談窓口等に関する情報を周知することや、相談の際に、性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対話のほか、電話、ファックス、電子メール、筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字、るび付与、オンライン会議システムなど、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段や情報提供手段を、相談者の障害の特性に応じて用意して対応することが望ましい。なお、ホームページによる周知に際しては、視覚障害者、聴覚障害者等の情報アクセシビリティに配慮し、例えば、音声読み上げ機能に対応できるよう画像には説明文を付す、動画を掲載する場合に字幕、手話等を付すなどの配慮を行うことが望ましい。 p11 また、実際の相談事例については、プライバシーに配慮しつつ順次蓄積し、以後の合理的配慮の提供等に活用することが望ましい。 第4 関係事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する仕組みの整備 関係事業者は、障害者に対して性別や年齢等にも配慮しながら適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、研修等を通じて、法の趣旨の普及を図るとともに、いわゆる「社会モデル」の考え方を含めた障害に関する理解の促進を図ることが重要である。普及すべき法の趣旨には、法第1条に規定する法の目的、すなわち、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すことが含まれる点にも留意する。 特に学校教育分野においては、教職員の理解の在り方や指導の姿勢が幼児、児童、生徒及び学生(以下「児童生徒等」という。)に大きく影響することに十分留意し、児童生徒等の発達の段階に応じた支援方法、外部からは気付きにくいこともある難病等をはじめとした病弱(身体虚弱を含む。)、発達障害、高次脳機能障害等についての理解、児童生徒等の間で不当な差別的取扱いが行われている場合の適切な対応方法等も含め、研修・啓発を行うことが望ましい。また、スポーツ分野や文化芸術分野においても、指導者等関係者の理解の在り方や指導の姿勢がスポーツや文化芸術活動に参加する者等に大きく影響することに十分留意した研修・啓発を行うことが望ましい。 研修・啓発においては、内閣府が障害者の差別解消に向けた理解促進のためのポータルサイトにおいて提供している、事業者が障害者に対応する際に参考となる対応例及び文部科学省や同省が所管する独立行政法人等が提供する各種情報を活用することが効果的である(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が運営する「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」や独立行政法人日本学生支援機構が作成する「大学等における障害のある学生への支援・配慮事例」、「教職員のための障害学生修学支援ガイド」、「合理的配慮ハンドブック」等)。また、障害者から話を聞く機会を設けることや、研修・啓発の内容によっては、医療、保健、福祉等の関係機関や障害者関係団体と連携して実施することも効果的である。 p12 さらに、関係事業者の内部規則やマニュアル等について、障害者へのサービス提供等を制限するような内容が含まれていないかについて点検することや、個別の相談事案等への対応を契機として、必要な改正等を検討するなど、障害を理由とする差別の解消の推進に資するような対応が重要である。 第5 文部科学省所管事業分野に係る相談窓口 文部科学省所管事業分野に係る相談窓口は以下のとおり。 なお、さらに詳細な相談窓口は内閣府のホームページに掲載している。 事業分野 ○教育分野 ・幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校関係 相談窓口 初等中等教育局特別支援教育課 事業分野 ○教育分野 ・大学、高等専門学校関係 相談窓口 高等教育局学生支援課 事業分野 ○教育分野 ・専修大学、各種学校関係 相談窓口 総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室 事業分野 ○教育分野 ・社会教育、生涯学習関係 相談窓口 総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課 事業分野 ○スポーツ分野 相談窓口 スポーツ庁健康スポーツ課障害者スポーツ振興室 事業分野 ○文化芸術分野 相談窓口 文化庁各事業所管課室 事業分野 ○科学技術・学術分野 相談窓口 科学技術・学術政策局政策課 p13 附則 この対応指針は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号)の施行の日から施行する。 p14 (別紙1) 障害を理由とする不当な差別的取扱い、合理的配慮等の例 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例 ○障害があることを理由として、学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、一律に窓口対応を拒否し、又は対応の順序を後回しにすること。 ○障害があることを理由として、一律に資料の送付、パンフレットの提供、説明会やシンポジウムへの出席等を拒んだり、資料等に関する必要な説明を省いたりすること。 ○障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、一律にあるいは漠然とした安全上の問題を理由に社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等の施設利用を拒否すること。例えば、車椅子利用者が体育館の利用を希望した場合に、他の利用者の活動に支障がないにも関わらず、単にタイヤの跡が付いてしまうという理由で体育館の利用を拒否すること。 ○障害があることを理由として、具体的な場面や状況に応じた検討を行うことなく、障害者に対し一律に、入学の出願の受理、受験、入学、授業等の受講や研究指導、実習等校外教育活動、入寮、式典参加を拒むことや、これらを拒まない代わりとして正当な理由のない条件を付すこと。 ○試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に、当該試験等の結果を学習評価の対象から除外したり、評価において差を付けたりすること。 2 正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例 ○学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者である利用者に障害の状況等を確認すること。(障害者本人の安全確保の観点) p15 ○通級による指導、特別支援学級及び特別支援学校において、特別の教育課程を編成すること。(障害者本人の損害発生防止の観点) ○アレルギー疾患を有する障害のある児童生徒等の実習において、アレルゲンとなる材料を使用するなど、病気や障害の特性等によって実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる場合、アレルゲンとならない材料に代替し、別の部屋で実習を設定すること。(障害者本人の安全確保の観点) ○手続を行うため、障害者本人に同行した者が代筆しようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の手続の意思等を確認すること。(障害者本人の損害発生防止の観点) 3 合理的配慮に当たり得る配慮の例 (1)物理的環境への配慮や人的支援の配慮の例 1 主として物理的環境への配慮に関するもの ○学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、災害時の警報音、緊急連絡等が聞こえにくい障害者に対し、災害時に関係事業者の管理する施設の職員が直接災害を知らせたり、緊急情報・館内放送を視覚的に受容することができる警報設備・電光表示機器等を用意したりすること。 ○管理する施設・敷地内において、車椅子利用者のためにキャスター上げ等の補助をし、又は段差に携帯スロープを渡すこと。 ○配架棚の高い所に置かれた図書やパンフレット等を取って渡したり、図書やパンフレット等の位置を分かりやすく伝えたりすること。 ○疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際、別室の確保が困難である場合に、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設けること。 ○移動に困難のある学生等のために、通学のための駐車場を確保したり、参加する授業で使用する教室をアクセスしやすい場所に変更したりすること。 p16 ○学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、障害のある子供が必要以上の発声やこだわりのある行動をするなど落ち着かない状況にある場合に、保護者から子供の特性やコミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落ち着くことができるよう、個室等を提供すること。 ○児童生徒等が医療的ケアを必要とする場合、障害の状態や特性に配慮しながら、医療的ケアの実施のための別室等を用意するなど、衛生的な環境を提供すること。 ○劇場・音楽堂等において、手話通訳や字幕、音声ガイド等の対応に努めるとともに、施設や公演主催者等のウェブサイトやSNS等で、鑑賞サポートに関する情報提供に努めること。 2 主として人的支援の配慮に関するもの ○目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、介助する位置(左右・前後・距離等)について、障害者の希望を聞いたりすること。 ○介助等を行う学生(以下「支援学生」という。)、保護者、支援員等の教室への入室、授業や試験でのパソコン入力支援、移動支援、待合室での待機を許可すること。 ○学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、視覚障害のある者からトイレの個室へ案内するよう求めがあった場合に、求めに応じてトイレの個室まで案内すること。その際、同性の職員がいる場合は、障害者本人の希望に応じて同性の職員が案内すること。 p17 (2)情報の取得、利用及び意思疎通への配慮の例 ○学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、筆談、要約筆記、読み上げ、手話、点字、支援機器、触覚による意思伝達などによる多様なコミュニケーション手段、るびや写真、イラストなど分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通の配慮を行うこと。 ○情報保障の観点から、見えにくさに応じた情報の提供(聞くことで内容が理解できる説明・資料や、拡大コピー、拡大文字又は点字を用いた資料、カラーユニバーサルデザインに配慮した資料、遠くのものや動きの速いものなど触ることができないものを確認できる模型や写真等の提供)、聞こえにくさに応じた視覚的な情報の提供、見えにくさと聞こえにくさの両方がある場合に応じた情報の提供(手のひらに文字を書いて伝える、活動や場所の手がかりとなるものを示す等)、知的障害に配慮した情報の提供(伝える内容の要点を筆記する、漢字にるびを振る、単語や文節の区切りに空白を挟んで記述する「分かち書き」にする、なじみのない外来語は避ける等)を行うこと。また、その際、各媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用すること。 ○知的障害のある利用者等に対し、抽象的な言葉ではなく、具体的な言葉を使うこと。例えば、「手続」や「申請」などのサービスを受ける際に必要な言葉の意味を短い言葉で分かりやすく具体的に説明して、当該利用者等が理解しているかを確認すること。 ○言葉だけを聞いて理解することや言葉だけでの意思疎通に困難がある障害者に対し、絵や写真カード、コミュニケーションボード、タブレット端末等のICT機器の活用、視覚的に伝えるための情報の文字化、質問内容を「はい」又は「いいえ」で端的に答えられるようにすることなどにより意思を確認したり、本人の自己選択・自己決定を支援したりすること。 ○比喩表現等の理解が困難な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに説明すること。 (3)ルール・慣行の柔軟な変更の例 ○学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、事務手続の際に、職員や教員、支援学生等が必要書類の代筆を行うこと。 p18 ○障害者が立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意すること。 ○他人との接触、多人数の中にいることによる緊張のため、不随意の発声等がある場合、緊張を緩和するため、当該障害者に説明の上、施設の状況に応じて別室を用意すること。 ○学校、文化施設等において、視覚障害者等に対して板書やスクリーン等がよく見えるように、黒板等に近い席を確保すること。 ○スポーツ施設、文化施設等において、移動に困難のある障害者を早めに入場させ席に誘導したり、車椅子を使用する障害者の希望に応じて、決められた車椅子用以外の客席も使用できるようにしたりすること。 ○入学試験や検定試験において、本人・保護者の希望、障害の状況等を踏まえ、別室での受験、試験時間の延長、点字や拡大文字、音声読み上げ機能の使用、車椅子の持参使用等を許可すること。 ○点字や拡大文字、音声読み上げ機能を使用して学習する児童生徒等のために、授業で使用する教科書や資料、問題文を点訳又は拡大したものやテキストデータ等を事前に渡すこと。 ○聞こえにくさのある児童生徒等に対し、外国語のヒアリングの際に、音質・音量を調整したり、文字による代替問題を用意したりすること。 ○知的障害のある児童生徒等に対し、抽象的な言葉や文章を説明する際、絵カード、文字カード、ICT機器等、分かりやすい教材・教具に代えて行うこと。 p19 ○肢体不自由のある児童生徒等に対し、体育の授業の際に、上・下肢の機能に応じてボール運動におけるボールの大きさや投げる距離を変えたり、走運動における走る距離を短くしたり、スポーツ用車椅子の使用を許可したりすること。 ○日常的に医療的ケアを要する児童生徒等に対し、本人が対応可能な場合もあることなどを含め、配慮を要する程度には個人差があることに留意して、医療機関や本人が日常的に支援を受けている介助者等と連携を図り、個々の状態や必要な支援を丁寧に確認し、過剰に活動の制限等をしないようにすること。 ○慢性的な病気等のために他の児童生徒等と同じように運動ができない児童生徒等に対し、運動量を軽減したり、代替できる運動を用意したりするなど、病気等の特性を理解し、過度に予防又は排除をすることなく、参加するための工夫をすること。 ○病気療養等のため学習できない期間が生じる児童生徒等に対し、ICTを活用した学習活動や補講を行うなど、学習機会を確保する方法を工夫すること。 ○読み・書き等に困難のある児童生徒等のために、授業や試験において読みやすい字体による資料を作成したり、タブレット端末等のICT機器使用を許可したり、筆記に代えて口頭試問で行ったりすること。 ○障害の特性等により人前での発表が困難な児童生徒等に対し、必要に応じて代替措置としてレポートを課すことや、児童生徒等が自らの発表を録画したものを発表用資料として活用すること。 ○学校生活全般において、対人関係の形成に困難があったり、意思を伝えることに時間を要したりする児童生徒等に対し、活動時間を十分に確保したり障害の特性に応じて個別に対応したりすること。 ○理工系の実験、地質調査のフィールドワークなどでグループワークができない学生等や、実験の手順や試薬を混同するなど、作業が危険な学生等に対し、当該科目の履修に当たり、個別の実験時間や実習課題を設定するほか、個別のティーチング・アシスタント等を付けることや、実験補助のための機器などの教室設備の整備等をすること。 p20 4 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例 ○入学試験や検定試験等において、筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、「デジタル機器の使用を認めた前例がない」という理由で、必要な調整を行うことなく、一律に対応を断ること。 ○介助を必要とする障害者から、講座の受講に当たり介助者の同席を求める申出があった場合に、当該講座が受講者本人のみの参加をルールとしていることを理由として、受講者である障害者本人の個別事情や講座の実施状況等を確認することなく、一律に介助者の同席を断ること。 ○自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、視覚障害者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で一律に対応を断ること。 ○視覚障害者が、点字ブロックのないイベント会場内の移動に必要な介助を求める場合に、「安全上何かあったら困る」という理由で移動介助の可能性を検討せず、一律に介助を断ること。 ○着替えに介助を必要とするスポーツ施設の利用者が、支援者と共に利用できる更衣室を希望した場合に、空いている会議室や事務室など代替施設を検討することなく、設備がないという理由で一律に対応を断ること。 ○劇場・音楽堂等において、車椅子利用者から施設の構造上もしくは前席の観客の体格や行動等により舞台がよく見えないこと等を理由として、観覧席の変更を求める申出があった場合に、車椅子利用者観覧席の床面を嵩上げしたり、良好な視野を確保できる別の場所や席に案内したりといった対応が可能かどうかの検討を行うことなく、一律に対応を断ること。 p21 5 合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例 ○医療的ケア児が体調不良のため登校ができない場合に、医療的ケア看護職員に家庭での個別の体調管理を依頼する等、事業の一環として行っていない業務の提供を保護者等から求められた場合に、その提供を断ること。(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点) ○オンライン講座の配信のみを行っている社会教育施設等が、オンラインでの集団受講では内容の理解が難しいことを理由に対面での個別指導を求められた場合に、当該対応はその事業の目的・内容とは異なるものであり、対面での個別指導を可能とする人的体制・設備も有していないため、当該対応を断ること。(事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことの観点) ○図書館等において、混雑時に視覚障害者から職員等に対し、館内を付き添って利用の補助を求められた場合に、混雑時のため付添いはできないが、職員が聞き取った書籍等を準備することができる旨を提案すること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点) ○発達障害等の特性のある大学生から、得意科目で習得した単位を不得意な科目の単位として認定してほしい(卒業要件を変更して単位認定をしてほしい)と要望された場合、受講方法の調整などの支援策を提示しつつ、卒業要件を変更しての単位認定は、自大学におけるディプロマ・ポリシー等に照らし、教育の目的・内容・機能の本質的な変更に当たるとの判断から、当該対応を断ること。(事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことの観点) ○車椅子利用者が試合直前になって介助者を同伴してスポーツを観戦することになった場合に、介助者席として車椅子利用者の隣の席は用意できなかったが、できるだけ近接した席を用意すること。(過重な負担(物理的・技術的制約)の観点) ○歩行に困難のある児童生徒やその保護者から段差でつまずかないように特別支援教育支援員を追加で配置するよう求めがあった場合に、つまずきを防止するための方策について検討した結果として、例えば簡易スロープによる段差の解消といった代替案を提案すること。(過重な負担の観点) p22 6 合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例 ○校長が、教職員による特別支援教育に対する理解を促進するための校内研修を実施(環境の整備)するとともに、教職員が、児童生徒一人一人の障害の状態等に応じた配慮を行うこと。(合理的配慮の提供) ○設置者が、エレベーターやバリアフリートイレ、スロープの設置といった学校施設のバリアフリー化を進める(環境の整備)とともに、教職員が、車椅子を利用する児童生徒の求めに応じて教室間の移動等の補助を行うこと。(合理的配慮の提供) ○障害者から申込書類への代筆を求められた場合に円滑に対応できるよう、あらかじめ申込手続における適切な代筆の仕方について研修を行う(環境の整備)とともに、障害者から代筆を求められた場合には、研修内容を踏まえ、本人の意向を確認しながら担当者が代筆すること。(合理的配慮の提供) ○オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行うこと。(環境の整備) ○講演会等で、情報保障の観点から、手話通訳者を配置したり、スクリーンへ文字情報を提示したりする(環境の整備)とともに、申出があった際に、手話通訳者や文字情報が見えやすい位置に座席を設定すること。(合理的配慮の提供) ○社会教育施設等を利用する知的障害者や読字に障害のある方に向けて、わかりやすい資料を準備したり、施設内の看板や表示にるびやピクトグラムを使用したりする(環境の整備)とともに、利用者一人一人の障害の状態等に応じて、スタッフがわかりやすい言葉を用いて説明、代読する等の配慮を行うこと。(合理的配慮の提供) p23 ○図書館への来館が困難な障害者に対して、郵送や宅配による貸出等のサービスを行う(環境の整備)とともに、それらを独自に行っていない図書館において、郵送や宅配による貸出等のサービスを行っている図書館と連携し利用者一人一人の障害の程度に応じた貸出等の配慮を行うこと。(合理的配慮の提供) p24 (別紙2) 分野別の留意点 教育分野 1 総論 権利条約のうち、教育分野について規定した第24条は、教育についての障害者の権利を認めることを明言し、「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、障害者を包容する教育制度)及び生涯学習の確保を締約国に求めている。 これらは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が一般的な教育制度から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な合理的配慮が提供されること等が必要とされている。 障害者基本法においては、第4条第1項において「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と、また、同条第2項において「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」とされている。さらに、国及び地方公共団体は、教育基本法第4条第2項において「障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない」とされているほか、障害者基本法第16条第1項において「障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない」とされている。 学校教育分野においては、これらの規定も踏まえて既に権利条約等への対応のための取組が進められており、合理的配慮等の考え方も、中央教育審議会初等中等教育分科会が平成24年7月に取りまとめた「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」及び文部科学省高等教育局長決定により開催された「障害のある学生の修学支援に関する検討会」が平成29年3月に取りまとめた「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第二次まとめ)」等により示されている。 p25 また、平成31年3月に取りまとめられた「学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議」報告書において、障害の有無にかかわらず共に学ぶ場づくりに当たって、合理的配慮の推進の必要性が示されている。 さらに、令和4年9月に公表された障害者権利委員会からの総括所見において、合理的配慮の保障も含めた教育環境の改善等について勧告された。令和5年3月には「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議報告」も取りまとめられ、通常の学級においても障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導や必要な支援がなされるよう方向性が示されている。 加えて、令和5年4月より、法の改正等を背景として、障害のある学生の修学支援に関する検討会が改めて設置され、高等教育段階における障害学生の修学支援のあり方について検討が行われている。 また、令和元年6月には視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第49号)が、令和4年5月には障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(令和4年法律第50号)が、それぞれ成立したところであり、これらの法による理念や規定を踏まえた取組は、学校教育段階だけでなく、地方公共団体における生涯学習提供者や社会教育施設等においても共生社会の実現に向けて同様に推進されるべきものである。 教育基本法第4条第2項による義務を負うのは国及び地方公共団体であるが、障害者基本法第4条及び同条を具体化する法の理念を踏まえ、学校教育を行う事業者においても、これらの法の理念や規定、有識者会議により示された考え方を参考とし、取組を一層推進することが必要である。また、専修学校及び各種学校を設置する事業者においては、後述する初等中等教育段階又は高等教育段階のうち相当する教育段階の留意点を参考として対応することが望ましい。 なお、これらの法の理念や規定、有識者会議により示された考え方は、特別支援教育、障害のある学生の修学支援及び、学校卒業後に社会で学ぶ機会の全体に関するものであり、現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明を受けて行う合理的配慮の提供にとどまらず、これらに基づく取組を推進することにより、当該意思の表明がない場合にも、適切と思われる配慮に関する建設的対話を働きかけるなどの自主的な取組も推進され、自ら意思を表明することが必ずしも容易ではない障害児・者も差別を受けることのない環境の醸成につながることが期待される。 p26 2 初等中等教育段階 (1)合理的配慮に関する留意点 障害のある幼児、児童及び生徒に対する合理的配慮の提供については、中央教育審議会初等中等教育分科会の報告に示された合理的配慮の考え方を踏まえて対応することが適当である。具体的には、主として以下の点に留意する。 ア・合理的配慮の合意形成に当たっては、権利条約第24条第1項にある、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするといった目的に合致するかどうかの観点から検討が行われることが重要である。 イ・合理的配慮は、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じ、設置者・学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(大学及び高等専門学校を除く。)をいう。以下同じ。)及び本人・保護者により、発達の段階を考慮しつつ合意形成を図った上で提供されることが望ましく、その内容を個別の教育支援計画に明記することが重要である。 ウ・合理的配慮の合意形成後も、幼児、児童及び生徒一人一人の発達の程度、適応の状況等を勘案しながら柔軟に見直しができることを共通理解とすることが重要である。 エ・合理的配慮は、障害者がその能力を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであるインクルーシブ教育システムの理念に照らし、その障害のある幼児、児童及び生徒が十分な教育が受けられるために提供できているかという観点から評価することが重要である。例えば、個別の教育支援計画や個別の指導計画について、各学校において計画に基づき実行した結果を評価して定期的に見直すなど、PDCAサイクルを確立させていくことが重要である。 オ・進学や進級等の移行時においても途切れることのない一貫した支援を提供するため、個別の教育支援計画の引継ぎ、学校間や関係機関も含めた情報交換等により、合理的配慮の引継ぎを行うことが必要である。 p27 なお、学校教育分野において、障害のある幼児、児童及び生徒の将来的な自立と社会参加を見据えた障害の早期発見・早期支援の必要性及びインクルーシブ教育システムの理念に鑑み、幼児教育段階や小学校入学時点において、意思の表明の有無に関わらず、幼児及び児童に対して適切と思われる支援を検討するため、幼児及び児童の障害の状態等の把握に努めることが望ましい。具体的には、保護者と連携し、プライバシーにも留意しつつ、地方公共団体が実施する乳幼児健診の結果や就学前の療育の状況、就学相談の内容を参考とすること、後述する校内委員会において幼児及び児童の支援のニーズ等に関する実態把握を適切に行うこと等が考えられる。また、障害のある子供一人一人の教育的ニーズや必要な支援の内容を、複数の担当者で検討したり、実態の的確な把握(各種のアセスメント等)や個別の教育支援計画等を作成するために専門家等の活用を図ったりするなど、具体的な対応を組織的に進めることが大切である。 (2)合理的配慮の例 別紙1のほか、報告において整理された合理的配慮の観点や障害種別の例及び独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が運営する「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」や「特別支援教育教材ポータルサイト」も参考とすることが効果的である。 なお、これらに示されているもの以外は提供する必要がないということではなく、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されることが望ましい。 (3)相談体制の整備に関する留意点 学校教育法第81条第1項の規定により、私立学校を含め、障害により教育上特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒が在籍する全ての学校において、特別支援教育を実施することとされている。 学校の校長(園長を含む。以下同じ。)は、特別支援教育の実施の責任者として、自らが特別支援教育や障害に関する認識を深めるとともに、リーダーシップを発揮しつつ、特別支援学校のセンター的機能等も活用しながら、次の体制の整備を行い、組織として十分に機能するよう教職員を指導することが重要である。 ア・特別支援教育コーディネーターの指名 各学校の校長は、各学校における特別支援教育の推進のため、主に、「2(3)イ」に述べる校内委員会や校内研修の企画・運営、関係諸機関や関係する学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口などの役割を担う教員を「特別支援教育コーディネーター」に指名し、校務分掌に明確に位置付ける。 p28 また、校長は、特別支援教育コーディネーターが合理的配慮の合意形成、提供、評価、引継ぎ等の一連の過程において重要な役割を担うことに十分留意し、学校において組織的に機能するよう努める。 イ・特別支援教育に関する校内委員会の設置 各学校においては、校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立し、障害のある又はその可能性があり特別な支援を必要としている幼児、児童及び生徒の実態把握や支援方策の検討等を行うため、校内に特別支援教育に関する校内委員会を設置する。 校内委員会は、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、教務主任、生徒指導主事、通級による指導担当教員、特別支援学級担当教員、養護教諭、対象の幼児、児童及び生徒の学級担任、学年主任、その他必要と認められる者などで構成する。 学校においては、主として学級担任や特別支援教育コーディネーター等が、幼児、児童及び生徒・保護者等からの相談及び現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明を最初に受け付けることが想定される。各学校は、相談等を受けた学級担任や特別支援教育コーディネーター等と本人・保護者との対話による合意形成が困難である場合には、校内委員会を含む校内体制への接続が確実に行われるようにし、校長のリーダーシップの下、合意形成に向けた検討を組織的に行うことが必要である。 このような校内体制を用いてもなお合意形成が難しい場合は、設置者である学校法人等が、法的知見を有する専門家等の助言を得るなどしつつ、法の趣旨に即して適切に対応することが必要である。また、必要に応じ、法に基づいて設置される地域の相談窓口と連携を図ることも考えられる。 (4)研修・啓発に関する留意点 基本方針は、地域住民等に対する啓発活動として、「国民一人一人が法の趣旨について理解を深め、建設的対話を通じた相互理解が促進されるよう、障害者も含め、広く周知・啓発を行うことが重要である」としている。 この周知・啓発において学校教育が果たす役割は大きく、例えば、障害者基本法第16条第3項にも規定されている障害のある幼児、児童及び生徒と障害のない幼児、児童及び生徒の交流及び共同学習は、障害のない幼児、児童及び生徒が障害のある幼児、児童及び生徒と特別支援教育に対する正しい理解と認識を深めるための絶好の機会であり、同じ社会に生きる人間として、お互いを正しく理解し、共に助け合い、支え合って生きていくことの大切さを学ぶ場である。また、障害のある幼児、児童及び生徒の保護者、障害のない幼児、児童及び生徒の保護者や地域の方々が、共同学習や学校開放等を通じて学校教育に関わることにより、障害者に対する理解を深めていくことができる。 p29 学校においては、学校教育が担う重要な役割を認識し、幼児、児童及び生徒の指導や保護者との連絡に携わる教職員一人一人が、研修等を通じて、法の趣旨を理解するとともに、障害に関する理解を深めることが重要である。 3 高等教育段階 障害のある学生の修学支援については、本項に記載の内容のほか、文部科学省高等教育局長決定による「障害のある学生の修学支援に関する検討会」において報告されている各「まとめ」も参照しつつ対応することが望ましい。 (1)合理的配慮に関する留意点 障害のある学生に対する合理的配慮の提供については、大学等(大学及び高等専門学校をいう。以下同じ。)が個々の学生の状態・特性等に応じて提供するものであり、多様かつ個別性が高いものである。合理的配慮を提供するに当たり、大学等が指針とすべき考え方を項目別に以下のように整理した。ここで示すもの以外は合理的配慮として提供する必要がないというものではなく、個々の学生の障害の状態・特性や教育的ニーズ等に応じて配慮されることが望まれる。 1 機会の確保:障害を理由に修学を断念することがないよう、修学機会を確保すること、また、高い教養と専門的能力を培えるよう、教育の質を維持すること。 2 情報公開:障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生に対し、大学等全体としての受入れ姿勢・方針を示すこと。 3 決定過程:権利の主体が学生本人にあることを踏まえ、学生本人の要望に基づいた調整を行うこと。 4 教育方法等:情報保障、コミュニケーション上の配慮を行うこと、また、試験、成績評価の実施にあたっては、教育目標や公平性を損なう評価基準の変更や、合格基準を下げるなどの対応は行わないよう留意しつつ、配慮を行うこと。 5 支援体制:大学等全体として専門性のある支援体制の確保に努めること。 6 施設・設備:安全かつ円滑に学生生活を送れるよう、バリアフリー化に配慮すること。 p30 (2)合理的配慮の例 別紙1のほか、独立行政法人日本学生支援機構が作成する「大学等における障害のある学生への支援・配慮事例」や「教職員のための障害学生修学支援ガイド」、「合理的配慮ハンドブック」等も参考とすることが効果的である。 なお、これらに示されているもの以外は提供する必要がないということではなく、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されることが望ましい。 (3)相談体制の整備に関する留意点 大学等の学長(校長を含む。以下同じ。)は、リーダーシップを発揮し、大学等全体として、学生から相談を受けた時の体制整備を含む次のような支援体制を確保することが重要である。 ア・担当部署の設置及び適切な人的配置 支援体制を整備するに当たり、必要に応じ、障害のある学生の支援を専門に行う担当部署の設置及び適切な人的配置(専門性のある専任教職員、コーディネーター、相談員、手話通訳等の専門技術を有する支援者等)を行うほか、学内(学生相談に関する部署・施設、保健管理に関する部署・施設、学習支援に関する部署・施設、障害に関する様々な専門性を持つ教職員)との役割を明確にした上で、関係部署・施設との連携を図る。 なお、障害のある学生の所属学部や学科、担当教職員により提供する支援の内容が著しく異なるなどの状況が発生した場合は、学長及び障害のある学生の支援を専門に行う担当部署等を中心に、これらの事案の内容を十分に確認した上で、必要な調整を図り、さらに再発防止のための措置を講じることが重要である。 加えて、障害のある学生と大学等との間で提供する合理的配慮の内容の決定が困難な場合、大学等は、本人からの不服申立てを受理し、障害のある学生への支援を行う部署や委員会等に対して、第三者的視点から中立的な立場で調停ができる、紛争解決のための調整を行う学内組織を整備することが望ましい。 これらの調整の結果、なお合意形成が難しい場合は、大学等の設置者である学校法人等が、法的知見を有する専門家等の助言を得るなどしつつ、法の趣旨に即して適切に対応することが必要である。 p31 併せて、大学等は、学内の紛争解決のための学内組織の存在に加えて、法に基づく紛争解決のための学外の相談窓口の存在を障害のある学生に周知し、必要に応じて連携を図ることが重要である。 イ・外部資源の活用 障害は多岐にわたり、各大学等内の資源のみでは十分な対応が困難な場合があることから、必要に応じ、学外(地方公共団体、社会福祉法人、NPO、他の大学等、特別支援学校など)の教育資源の活用や障害者関係団体、医療、福祉、労働関係機関等との連携についても検討する。 ウ・周囲の学生の支援者としての活用 障害のある学生の日常的な支援には、多数の人材が必要となる場合が多いことから、周囲の学生を支援者として活用することも一つの方法である。 一方で、これらの学生の支援者としての活用に当たっては、一部の学生に過度な負担が掛かることや支援に携わる学生と障害のある学生の人間関係に問題が生じる場合があることから、これらに十分留意するとともに、障害の知識や対応方法、守秘義務の徹底等、事前に十分な研修を行い、支援の質を担保した上で実施することが重要である。 (4)学生・教職員の理解促進・意識啓発を図るための配慮 障害のある学生からの様々な相談は、必ずしも担当部署に対して行われるとは限らず、障害のある学生の身近にいる学生や教職員に対して行われることも多いと考えられる。それらに適切に対応するためには、障害により日常生活や学習場面において様々な困難が生じることについて、周囲の学生や教職員が理解していることが望ましく、その理解促進・意識啓発を図ることが重要である。なお、情報の共有方法・共有内容等については、合理的配慮の内容決定と同様に、障害のある学生本人との建設的対話による相互理解を通じて決定する必要があることに留意する。 (5)情報公開 各大学等は、障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生に対し、大学等全体としての受入れ姿勢・方針を明確に示すことが重要である。 p32 また、各大学等が明確にすべき受入れ姿勢・方針は、入学試験における障害のある受験者への配慮の内容、大学構内のバリアフリーの状況、入学後の支援内容・支援体制(支援に関する窓口の設置状況、授業や試験等における支援体制、教材の保障等)、受入れ実績(入学者数、在学者数、卒業・修了者数、就職者数等)など、可能な限り具体的に明示することが望ましく、それらの情報をホームページ等に掲載するなど、広く情報を公開することが重要である。なお、ホームページ等に掲載する情報は、障害のある者が利用できるように情報アクセシビリティに配慮することが望まれる。 4 社会教育・生涯学習 (1)合理的配慮に関する留意点 障害の有無にかかわらず、交流する機会や共に学ぶ機会を広く整備していくことが重要である。教育基本法第3条では「生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。」と規定されている。また同法第4条第2項において、「国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。」と規定されており、社会教育施設等の担当者や生涯学習における学習機会提供者においては、学習参加者本人・家族等と可能な限りの合意形成を図った上で、一人一人の障害の状態やニーズ等に応じた合理的配慮を決定し、提供することが期待されている。 「学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議」の報告書では、以下に挙げるバリアが指摘されている。 1 学びの場における施設・設備面における環境のバリア 2 学習機会の提供主体等の「障害」に対する理解や合理的配慮に関する知識の不十分さによる意識のバリア 3 学びの場にたどり着くまでの情報や学習に参加した際の情報保障の不十分さによる情報のバリア 1 については、公民館や図書館において個別に定めている設置や運営についての基準の中で、障害者の参加促進や円滑な利用に向けた施設整備に努めるものとしている。加えて2 意識のバリア3 情報のバリアに留意し、社会教育施設等における既存事業において、合理的配慮の準備があることを周知する等、段階を踏み、継続して障害者が安心して学ぶことができる環境を醸成することも必要である。障害があることで、自由に学習機会を選択し、学ぶことが阻害されないよう、担当者や生涯学習提供者が、障害や合理的配慮への理解を深め、参加のための情報提供段階から留意することが望まれる。 p33 (2)合理的配慮の例 別紙1に記載のある学習参加時の合理的配慮だけでなく、潜在的ニーズのある障害者が社会教育施設等での学びの情報を取得し、選択するに当たっての障壁について、以下に挙げる配慮を提供することが望ましい。 ○講座の広報に「車椅子来場可」、「補助犬同伴可」等、アイコン等を用いてわかりやすく表示する。 ○視覚障害者へのパンフレットやイベントチラシに、点字版を作成したり、アプリで読込みできる音声コードを記載して郵送したりする。 ○知的障害や発達障害のある参加者に向けたパンフレットや資料等にるびを振る。 スポーツ・文化芸術分野 スポーツ分野については、スポーツ基本法第2条第5項において、「スポーツは、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない。」と規定されている。スポーツに関する施設及びサービス等を提供する事業者においては、障害の有無にかかわらず誰もが楽しく安全にスポーツに親しむことができる環境を整備し、障害者がスポーツに参加する機会の拡充を図るとの基本的な考え方を踏まえて対応することが適当である。 文化芸術分野について、文化芸術基本法の前文は、「我が国の文化芸術の振興を図るためには、文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行う者の自主性を尊重することを旨としつつ、文化芸術を国民の身近なものとし、それを尊重し大切にするよう包括的に施策を推進していくことが不可欠である」との理念を、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(平成30年法律第47号)第3条は、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることに鑑み、国民が障害の有無にかかわらず、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるよう、障害者による文化芸術活動を幅広く促進すること」等の基本理念をそれぞれ掲げている。文化芸術分野の関係事業者においては、これらの理念に基づき、障害の有無にかかわらず、誰もが文化芸術活動に親しむことができるよう、適切に対応することが重要である。 具体的には、以下の点に留意する。 p34 ○合理的配慮は、一人一人の障害の状態や必要な支援、活動内容等に応じて決定されるものである。本人・保護者等とよく相談し、可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましい。 ○障害者が使用する用具等が施設の管理・維持に与える影響の程度については、具体的場面や状況により異なるものであるため、当該場面や状況に応じて、柔軟に対応することが重要である。