参考資料6-1 国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針 令和5年11月 国土交通省 目次 一、趣旨 p1 1 障害者差別解消法の制定の背景及び経緯 p1 2 法の基本的な考え方 p1 3 対応指針の意義・性質 p2 二、障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 p3 1 障害を理由とする不当な差別的取扱いの基本的な考え方 p3 (1)趣旨 p3 (2)正当な理由の判断の視点 p3 (3)積極的改善措置等の取扱い p4 2 合理的配慮の基本的な考え方 p4 (1)趣旨 p4 (2)意思の表明 p5 (3)過重な負担の基本的な考え方 p5 (4)環境の整備と合理的配慮の関係 p6 三、障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 p7 四、事業者における相談体制の整備 p8 1 相談窓口の設置 p8 2 相談時のコミュニケーションへの配慮 p8 3 相談事例の蓄積と活用 p8 五、事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する制度等の整備 p9 六、国土交通省における所掌する分野ごとの相談窓口 p9 別紙 【不動産業関係】 p11 【設計等業関係】 p17 【鉄道事業関係】 p20 【一般乗合旅客自動車運送業関係】 p23 【一般乗用旅客自動車運送業関係】 p27 【対外旅客定期航路事業関係】 p29 【国内旅客船業関係】 p32 【航空運送業関係】 p35 【航空旅客ターミナル施設事業関係】 p40 【旅行業関係】 p43 【予報業務関係】 p47 p1 一、趣旨 1 障害者差別解消法の制定の背景及び経緯 我が国では、障害者権利条約の国連採択(平成18年)及び署名(平成19年)を受けて、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正(平成23年)など、これに対応した国内法の整備を順次実施してきた。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障害者基本法の差別禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年に制定された。 また、令和3年6月には、事業者による合理的配慮の提供を義務付けるとともに、行政機関相互間の連携の強化を図るほか、相談体制の充実や情報の収集・提供の確保など障害を理由とする差別を解消するための支援措置の強化を内容とする改正法が公布された(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号))。 2 法の基本的な考え方 法は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進することで、共生社会の実現に資することを目的としている。 法が対象とする障害者は、法第2条第1号に規定する障害者である。具体的には、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものである。これは、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者の定義と同様であり、いわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえている。したがって、法が対象とする障害者の該当性は当該者の状況等に応じて個別に判断されることとなり、いわゆる障害者手帳の所持者に限定されない。 法が対象とする事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者としている。したがって、例えば、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う特定非営利活動法人も対象となり、また対面やオンラインなどサービス等の提供形態の別も問わない。 p2 法は、日常生活及び社会生活全般に係る分野を広く対象としている。ただし、事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置は、法第13条において、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めによることとされている。 法は、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し、事業者に対し、差別の解消に向けた具体的取組を求めるとともに、普及啓発活動等を通じて、障害者も含めた国民一人一人が、それぞれの立場において自発的に取り組むことを促している。 法は、事業者が障害を理由とする不当な差別的取扱いを行うこと及び合理的配慮の不提供により障害者への権利利益の侵害をもたらすことは、差別に当たるとして禁止するとともに、事業者に対し合理的な配慮の提供の義務を課している。 3 対応指針の意義・性質 この対応指針は、法第11条第1項の規定に基づき、国土交通省が所管する事業の事業者が差別の解消に向けた具体的取組を適切に行うために必要な事項について、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」という。)に即して作成するものである。 この対応指針は、事業者における差別の解消に向けた具体的取組に資するための一般的な考え方を記載したものであり、この対応指針に盛り込まれた不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、あくまで例示であって記載された具体例に限定されるものでもないこと、さらには、今後の事例の蓄積により、見直しがありえることに留意する必要がある。 この対応指針で「望ましい」と記載している内容は、事業者がそれに従わない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する。 法の理念である共生社会の実現に向け、事業者においてこの対応指針を積極的に活用し、取組を主体的に進めることが期待される。 p3 なお、事業者における障害を理由とする差別の解消に向けた取組は、この対応指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待されるが、自主的な取組のみによってはその適切な履行が確保されず、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、法第12条の規定に基づき、国土交通大臣は、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告(以下「報告徴収等」という。)をすることがある。また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律施行令(平成28年政令第32号。以下「施行令」という。)第3条により、事業法等における監督権限に属する事務を地方公共団体の長等が行うこととされているときは、法第12条に規定する国土交通大臣大臣の権限に属する事務についても、当該地方公共団体の長等が行うことがある。なお、この場合であっても、障害を理由とする差別の解消に対処するため特に必要があると認められるときは、国土交通大臣がその事務を行うことは妨げられていない。 二、障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 1 障害を理由とする不当な差別的取扱いの基本的な考え方 (1)趣旨 法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否すること、場所・時間等を制限すること、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する。 (2)正当な理由の判断の視点 正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。 事業者においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、以下に掲げるような障害者、事業者、第三者の権利利益等の観点を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。 ○安全の確保 ○財産の保全 ○事業の目的・内容・機能の維持 p4 ○損害発生の防止等 正当な理由に相当するか否かについては、個別の事例ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であること、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には、別途の検討が必要であることに留意する。 事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。 なお、「客観的に判断する」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものである。また、「正当な理由」を根拠に、不当な差別的取扱いを禁止する法の趣旨が形骸化されるべきではなく、拡大解釈や具体的な検討もなく単に安全の確保などという説明のみでサービスを提供しないといったことは適切ではない。 (3)積極的改善措置等の取扱い 障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲でプライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。 2 合理的配慮の基本的な考え方 (1)趣旨 法は、事業者に対し、その事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行うことを義務付けている。 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものである。また、その内容は、後述する「環境の整備」に係る状況や、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。 p5 合理的配慮は、事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。その提供に当たってはこれらの点に留意した上で、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、当該障害者本人の意向を尊重しつつ、以下(3)の過重な負担の判断要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要がある。 建設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と事業者が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要である。 また、合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。 (2)意思の表明 障害者からの、現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明は、言語(手話を含む。)、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(手話通訳、要約筆記等を介するものを含む。)により実施される。その際には、社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることが望ましい。 また、障害の特性等により本人の意思の表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が、本人を補佐して行う場合もありうる。 なお、意思の表明が困難な障害者が、家族や支援者・介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨を踏まえ、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。 (3)過重な負担の基本的な考え方 事業者においては、過重な負担に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。 ○事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) ○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) p6 ○費用・負担の程度 ○事務・事業規模 ○財政・財務状況 事業者は、上記判断にあたっては、当該障害者等との話し合いなどにより、その意向を十分に把握・尊重しつつ、具体的にどのような措置を講じるか検討・調整を行うこととする。 複数の事業者が関係する場合には、それぞれの事業者の負担も十分考慮した上で、提供予定の合理的配慮について、事業者間での引き継ぎなど連携を円滑に行うことが望ましい。 また、同種のサービス等が行政機関等と事業者の双方で行われる場合には、その類似性を踏まえつつ、事業主体の違いも考慮した上での対応に努めることが望ましい。 事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際には、前述のとおり、事業者と障害者の双方が、お互いの立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。 「過重な負担」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものである。また、「過重な負担」を根拠に、合理的配慮の提供を求める法の趣旨が形骸化されるべきではなく、拡大解釈や具体的な検討もなく合理的配慮の提供を行わないといったことは適切ではない。 (4)環境の整備と合理的配慮の関係 法は、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)を、環境の整備として事業者の努力義務としている。環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、ハード面のみならず、社員に対する研修や、規定の整備等の対応も含まれることが重要である。 障害を理由とする差別の解消のための取組は、法やいわゆるバリアフリー法等不特定多数の障害者を対象とした事前的な措置を規定する法令に基づく環境の整備に係る施策や取組を着実に進め、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である。 p7 環境の整備は、不特定多数の障害者向けに事前改善措置を行うものであるが、合理的配慮は、環境の整備を基礎として、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者に対して、個別の状況に応じて講じられる措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。 合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る一例としては以下の例が挙げられる。 ○障害者から申込書類への代筆を求められた場合に円滑に対応できるよう、あらかじめ申込手続における適切な代筆の仕方について店員研修を行う(環境の整備)とともに、障害者から代筆を求められた場合には、研修内容を踏まえ、本人の意向を確認しながら店員が代筆する(合理的配慮の提供)。 ○オンラインでの申込手続が必要で、ウェブサイトの手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて代替手段(電話・電子メール・対面等)を提案し、本人の意向を確認しながら対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、過重な負担がない範囲でウェブサイトの改良を行う(環境の整備)。 なお、多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことや、相談・紛争事案を事前に防止する観点からは、合理的配慮の提供に関する相談対応等を契機に、事業者の内部規則やマニュアル等の制度改正等の環境の整備を図ることは有効である。 また、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、環境の整備も考慮に入れることにより、中長期的なコスト削減・効率化につながりうる点は重要である。 なお、社会情勢の変化に伴い、環境の整備と合理的配慮の関係が変わりうることにも注意が必要である。 三、障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 この対応指針は国土交通省所管事業の事業者向けに作成されたものであり、別紙において主な事業に関する障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例を示している。なお、別紙の例以外であっても不当な差別的取扱い及び合理的配慮に該当するものがあることに留意する。 p8 四、事業者における相談体制の整備 1 相談窓口の設置 事業者は、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、既存の顧客相談窓口等がある場合にはその活用を、ない場合には新たに窓口を設置等することが重要である。 また、HP等を活用し、相談窓口、相談方法等に関する情報を広く周知・広報することが重要である。 なお、専門知識を有する担当者の配置や職員研修等により、窓口担当者の専門性を確保しておくことが望ましい。 2 相談時のコミュニケーションへの配慮 様々な障害特性を持つ障害者等からの相談が想定されることから、必要に応じて障害者団体等とも連携し、相談時には、電話、FAX、電子メール、点字、拡大文字、ルビ付与、分かりやすい表現への置換え、手話、筆談、要約筆記、手書き文字(手のひらに指で文字を書いて伝える方法)、代読、IT機器(タブレット等による図や絵)の活用など、障害特性に応じた多様なコミュニケーション手段を、可能な範囲で用意して対応することが望ましい。 なお、相談等に対応する際には、障害者の性別、年齢、状態等にも配慮することが重要である。 3 相談事例の蓄積と活用 相談事例等は、順次蓄積を行うこととし、蓄積した事例は、相談者の個人情報やプライバシーに配慮しつつ、事業者内で共有を図り、必要に応じて障害者団体等とも調整を行うなど、今後の合理的配慮の提供等にあたって適宜活用するものとする。 p9 五、事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する制度等の整備 事業者は、障害者に対して性別や年齢等にも配慮しながら適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、障害特性などを理解することができるマニュアル等や各種研修等を通じて法の趣旨や基本方針、対応指針の普及を図るとともに、障害への理解の促進に努めるなど、各事業者・各職員における認識の共有化を図るものとする。 たとえば、障害者が参画する内部研修の企画、障害者団体やその他団体等が実施する既存の外部研修の受講等を通じた効果的な研修を実施することが考えられる。 また、日ごろから障害者団体等と意見交換の機会をもつことや、接遇やコミュニケーションに関連する資格の取得も奨励される。 なお、接遇方法やサービス等の提供方法を定めた各種対応マニュアル等が既に整備されている場合には、法の趣旨を踏まえ、必要に応じて内容の見直し等を行うことが求められる。 内閣府による障害者の差別解消に向けた理解促進のためのポータルサイトにおいて、事業者が障害者に対応する際に参考となる対応例を提供しているため、参考とすること。 六、国土交通省における所掌する分野ごとの相談窓口 本対応指針に関する国土交通省の相談窓口を、別表のとおり設置する。 相談窓口となる部局は、障害者等から相談等を受けた場合には、その案件の内容に応じて、関係各局課室へ情報提供及び対応を依頼する。 p10 附則 この対応指針は、令和6年4月1日から適用する。 別表 組織 本省 担当部署 総合政策局バリアフリー政策課 相談内容 法律全体及び以下の地方支分部局が所掌する事業以外 組織 地方整備局 担当部署 主任監査官 相談内容 地方整備局が所掌する事業 組織 北海道開発局 担当部署 監察官 相談内容 北海道開発局が所掌する事業 組織 地方運輸局 担当部署 交通政策部バリアフリー推進課 相談内容 地方運輸局が所掌する事業 組織 神戸運輸監理部 担当部署 総務企画部総務課 相談内容 神戸運輸監理部が所掌する事業 p11 別紙 【不動産業関係】 1 対象事業 宅地建物取引業(宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第2条第2号に規定する宅地建物取引業をいう。)、マンション管理業(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)第2条第7号に規定するマンション管理業をいう。)、住宅宿泊管理業(住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第2条第6項に規定する住宅宿泊管理業をいう。)、賃貸住宅管理業(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号。以下「賃貸住宅管理業法」という。)第2条第2項に規定する賃貸住宅管理業をいう。)、特定転貸事業(賃貸住宅管理業法第2条第5項に規定する特定賃貸借契約(賃貸住宅管理業法第2条第4項に規定する特定賃貸借契約をいう。)に基づき賃借した賃貸住宅を第三者に転貸する事業をいう。)を対象とする。以下、マンション管理業、住宅宿泊管理業、賃貸住宅管理業及び特定転貸事業を「不動産管理業」という。 なお、住宅の賃貸を事業として営む場合であっても、障害があることや客観的に見て正当性のない安全上の懸念を理由に入居を拒否することは不当な差別的取扱いと考えられる他、不当な差別的取扱い及び合理的配慮の事例は上記の宅地建物取引業、不動産管理業と同様に考えられる。 2 具体例(宅地建物取引業) (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・物件一覧表や物件広告に「障害者不可」などと記載する。 ・障害者に対して、「当社は障害者向け物件は取り扱っていない」として話も聞かずに門前払いする。 ・賃貸物件への入居を希望する障害者に対して、障害があることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。 ・賃貸物件への入居を希望する障害者に対して、先に契約が決まった事実がないにもかかわらず、「先に契約が決まったため案内できない」等、虚偽の理由にすり替えて説明を行い、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。 ・障害者に対して、客観的に見て正当な理由が無いにもかかわらず、「火災を起こす恐れがある」等の懸念を理由に、仲介を断る。 ・一人暮らしを希望する障害者に対して、一方的に一人暮らしは無理であると判断して、仲介を断る。 p12 ・車椅子で物件の内覧を希望する障害者に対して、車椅子での入室が可能かどうか等、賃貸人との調整を行わずに内覧を断る。 ・障害者に対し、障害を理由とした誓約書の提出を求める。 ・賃貸物件への入居を希望する障害者に対し、障害があることを理由として、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げる。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 ・障害があることやその特性による事由を理由として、契約の締結等の際に、必要以上の立会者の同席を求める。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・障害の状況等を考慮した適切な物件紹介や適切な案内方法等を検討するため、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・障害者が物件を探す際に、障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、最寄り駅から物件までの道のりを一緒に歩いて確認したり、1軒ずつ中の様子を手を添えて丁寧に案内する。 ・車椅子を使用する障害者が住宅を購入する際に、住宅購入者の費用負担で間取りや引き戸の工夫、手すりの設置、バス・トイレの間口や広さ変更、車椅子用洗面台への交換等を行うこと等を希望する場合において、宅建業者が住宅のリフォーム等に関わるときは、売主等に顧客の希望を適切に伝える等必要な調整を行う。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、バリアフリー物件等、障害者が不便と感じている部分に対応している物件があるかどうかを確認する。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、ゆっくり話す、手書き文字(手のひらに指で文字を書いて伝える方法)、筆談を行う、分かりやすい表現に置き換える、IT機器(タブレット等による図や絵)の活用等、相手に合わせた方法での会話を行う。 p13 ・種々の手続きにおいて、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、文章を読み上げたり、書類の作成時に書きやすいように手を添える。 ・書類の内容や取引の性質等に照らして特段の問題が無いと認められる場合に、自筆が困難な障害者からの要望を受けて、本人の意思確認を適切に実施した上で、代筆対応する。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、契約内容等に係る簡易な要約メモを作成したり、家賃以外の費用が存在することを分かりやすく提示したりする等、契約書等に加えて、相手に合わせた書面等を用いて説明する。 ・物件案内時に、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、段差移動のための携帯スロープを用意する。 ・物件案内時に、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、車椅子を押して案内をする。 ・物件案内の際、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、肢体不自由で移動が困難な障害者に対し、事務所と物件の間を車で送迎する。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、物件の案内や契約条件等の各種書類をテキストデータで提供する、ルビ振りを行う、書類の作成時に大きな文字を書きやすいように記入欄を広く設ける等、必要な調整を行う。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、物件のバリアフリー対応状況が分かるよう、写真を提供する。 ・障害者の居住ニーズを踏まえ、バリアフリー化された物件等への入居が円滑になされるよう、住宅確保要配慮者居住支援協議会の活動等に協力し、国の助成制度等を活用して適切に改修された住戸等の紹介を行う。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・内見等に際して、移動の支援として、車椅子を押して案内を行う、事務所と物件の間を車で送迎する等の対応を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断る。 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話又は保護者や支援者・介助者の介助等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 p14 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・宅建業者が、歩行障害を有する者やその家族等に、個別訪問により重要事項説明等を行うことを求められた場合に、個別訪問を可能とする人的体制を有していないため対応が難しい等の理由を説明した上で、当該対応を断ること。(なお、個別訪問の代わりに、相手方等の承諾を得て、WEB会議システム等を活用した説明を行うこと等により歩行障害を有する者が不動産取引の機会を得られるよう配慮することが望ましい。) 3 具体例(不動産管理業) (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・不動産管理業者が、契約の相手方に障害者が含まれることを理由に、管理業務の受託や特定賃貸借契約の締結を拒否する。 ・特定転貸事業者が、自ら入居者募集を行う場合、物件一覧表や物件広告に「障害者不可」などと記載する。 ・特定転貸事業者が、自ら入居者募集を行う場合、障害者に対して、「当社は障害者向け物件は取り扱っていない」として話も聞かずに門前払いする。 ・特定転貸事業者が、自ら入居者募集を行う場合、賃貸物件への入居を希望する障害者に対し、障害があることを理由として、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げる。 ・特定転貸事業者が、障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみを理由として、客観的に見て正当な理由が無いにもかかわらず、賃貸物件への入居を希望する障害者に対して敷金や保証金等を通常より多く求める。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意見を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 ・特定転貸事業者が、自ら入居者募集を行う場合、緊急時に電話による連絡ができないという理由のみをもって入居を断る。 ・障害があることやその特性による事由を理由として、契約の締結等の際に、必要以上の立会者の同席を求める。 p15 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、ゆっくり話す、手書き文字(手のひらに指で文字を書いて伝える方法)、筆談を行う、分かりやすい表現に置き換える、IT機器(タブレット等による図や絵)の活用等、相手に合わせた方法での会話を行う。 ・種々の手続きにおいて、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、文章を読み上げたり、書類の作成時に書きやすいように手を添える。 ・書類の内容や取引の性質等に照らして特段の問題が無いと認められる場合に、自筆が困難な障害者からの要望を受けて、本人の意思確認を適切に実施した上で、代筆対応する。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、契約内容等に係る簡易な要約メモを作成したり、必要となる費用の詳細を分かりやすく提示したりする等、契約書等に加えて、相手に合わせた書面等を用いて説明する。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、重要事項説明や契約条件等の各種書類をテキストデータで提供する、ルビ振りを行う、書類の作成時に大きな文字を書きやすいように記入欄を広く設ける等、必要な調整を行う。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・不動産管理業者が重要事項の説明等を行うにあたって、知的障害を有する者やその家族等から分かりづらい言葉に対して補足を求める旨の意思の表明があったにもかかわらず、補足をすることなく説明を行った。 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話又は保護者や支援者・介助者の介助等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 p16 ・建物内の掲示又は各戸に配布されるお知らせ等について、障害者やその家族・介助者等から文章の読み上げやテキストデータによる提供を求める旨の意思の表明があったにもかかわらず、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・不動産管理業者が、歩行障害を有する者やその家族等に、個別訪問により重要事項説明等を行うことを求められた場合に、個別訪問を可能とする人的体制を有していないため対応が難しい等の理由を説明した上で、当該対応を断ること。(なお、個別訪問の代わりに、相手方等の承諾を得て、WEB会議システム等を活用した説明を行うこと等により歩行障害を有する者が契約等の機会を得られるよう配慮することが望ましい。) p17 【設計等業関係】 1 対象事業 設計等(建築士法(昭和25年法律第202号)第23条に規定する設計等をいう。)の業を対象とする。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・障害者であることを理由に、設計等の業務を受けることを拒否する。 ・車椅子利用者に対して、建築士事務所に十分な通路幅等が無い場合に、他の打合せ場所の利用を検討することなく、設計等の業務を受けることを拒否する。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 ・障害があることやその特性による事由を理由として、契約締結等の際に、必要以上の立会者の同席を求める。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・障害の状況等を考慮した適切な設計検討を行うため、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) ・設計等業の相談を受けた場合に、お互いに相手の立場を尊重しながら、相互理解を図った上で、事業者側に障害に関する医療知識等の知見が十分でなく、適切に業務を行うことが難しいと判断したため、その理由を丁寧に説明すると共に、医療知識等の知見をより有する適切な事業者等を紹介する。(安全の確保) ・設計を進める中で障害の状況等に対応するために設計変更が必要となった場合において、契約期間の延長や契約価格の変更などの適切な契約変更を行うことについて、事前に申し入れる。(損害発生の防止) p18 (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、ゆっくり話す、手書き文字(手のひらに指で文字を書いて伝える方法)、筆談を行う、手話、分かりやすい表現に置き換える、IT機器(タブレット等による図や絵)の活用等、相手に合わせた方法での会話を行う。 ・種々の手続きにおいて、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、文章を読み上げたり、書類の作成時に代筆、または書きやすいように手を添える。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、重要事項説明や契約条件等の各種書類をテキストデータで提供する、ルビ振りを行う、書類の作成時に大きな文字を書きやすいように記入欄を広く設ける等、必要な調整を行う。 ・視覚障害がある依頼者から、契約書類等を点字化して読むために契約締結日までの期間を確保したいとの申し出があったため、通常よりも長い期間を設定する。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・ゆっくり話す、手書き文字、筆談を行う等の対応を求められた場合に、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を行わず、また、対応に係る検討を行わずに断る。 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 ・打合せ等において、障害の特性に応じたコミュニケーションの手段(筆談、読み上げ等)を設けることを求められた場合に、具体的に対応方法を検討せず、事前に資料を渡すのみの対応とし、当日の議論に参加できない状況を作る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・打合せを行うに当たって、移動が困難な障害者から対面での対応を求められた場合(障害者のところへ事業者が伺う)において、他の業務都合等を勘案した結果、伺うことが難しいと判断したため、その理由を丁寧に説明するとともに、オンラインでの実施を提案する。(費用・負担が過重なもの) p19 ・改修設計において段差の解消を求められた場合において、構造等の制約により対応できないことが判明したため、その事情を丁寧に説明し、手すりの設置等の代替対応策を提案する。(実現困難なもの) p20 【鉄道事業関係】 1 対象事業 鉄道事業法(昭和61年法律第92号)による鉄道事業及び軌道法(大正10年法律第76号)による軌道事業(以下、鉄道事業等という。) なお、鉄道事業等は、大量輸送の確保、安全・定時運行という事業特性を帯びており、障害のある方やその周囲の方を含めたすべての旅客に対し、安全で安定した輸送を提供することが求められている。また、鉄道事業等は多くの地域にまたがり、事業者ごとにその運営方法や事業規模も異なる。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみを理由として、乗車を拒否する。 ・段差が解消されていないなど施設がバリアフリー化されていないことのみをもって、駅の利用を一律に拒否する。 ・車椅子利用者等であることのみをもって、鉄道駅の利用に事前の連絡を必須とする。 ・障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみを理由として、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることなく、一方的に乗車できる場所や時間帯を制限し、又は障害者でない者に対して付さない条件をつける。 ・身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬の帯同を理由として乗車を拒否する。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮の提供等をするために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) p21 ・車椅子等を使用して駅構内の移動や列車に乗車をする場合、段差があることなどによって、係員が補助を行っても車椅子利用者、高齢者、ベビーカー利用者等の安全確保が困難等の理由により、利用できる駅や列車等を提示する。(安全の確保) ・車椅子等を使用して列車に乗車する場合、関係者間の情報共有など待ち時間短縮に係る取組みを実施したうえで、段差に渡り板を渡す等乗降時の対応にかかる人員の手配等により、やむを得ず乗降に時間がかかる。(安全の確保) ・車椅子利用者等に対し、事前に関係個所との調整を行い、スムーズな乗降補助により待ち時間を短縮するため、列車に乗車する場合に、乗降に必要な利用者の情報の提供を求める。(権利・利益の保護) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、窓口等で障害のある方の障害の特性に応じたコミュニケーション手段(筆談、読み上げ、手話、IT機器の活用など)で対応する。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、関係者間の情報共有などにより待ち時間ができるだけ短くなるよう努めたうえで、障害のある方が列車に乗降する、又は列車の乗降のために駅構内を移動する際に手伝う。 ・券売機の利用が難しい場合、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、障害の特性に応じ、窓口での発売や券売機操作を手伝う。 ・鉄道駅の混雑時において、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、通行の安全を確保するためや各障害特性に応じた案内、誘導を行う。 ・鉄道駅において、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、プラットホームと車両との段差や隙間を解消するために渡り板を提供し乗降の手助けを行う。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・車椅子利用における乗降介助や駅構内の移動介助、券売機における購入補助、時刻や行先等の案内、その他特性に応じた社会的障壁の除去に関する申出に対して、「何かあったら困る」という抽象的な理由や「特別扱いはできない」という一方的な理由で、当該申出を断る。 p22 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により問い合わせ等があった際に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・管理外施設や公道における移動介助の依頼に対して、当該業務を事業の一環として行っていないことから、依頼を断る。(本来の業務に付随しないもの) ・排泄介助や飲食物の購入、荷物持ちなど、事業の一環として行っていない依頼を断る。(本来の業務に付随しないもの) p23 【一般乗合旅客自動車運送業関係】 1 対象事業 一般乗合旅客自動車運送事業(道路運送法(昭和26年法律第183号)第3条第1号イ・に規定する一般乗合旅客自動車運送事業)を対象とする。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみをもって、乗車を拒否する。 ・他の乗客に迷惑が掛かるという漠然とした理由で、お互いに相手の立場を尊重しながら、相互理解を図ることなく、利用を拒否する。 ・運転者が、乗車スペースがあると認識していたにもかかわらず、介助者や他の乗客への協力を依頼することなく車椅子使用者だけ乗車を拒否する。 ・車椅子固定場所の座席を別の乗客が利用している状況において、固定場所の座席を利用している乗客に対し協力を求めることなく、すでに他の乗客が当該座席を利用していることのみをもって車椅子利用者の利用を拒否する。 ・車椅子使用者に対し、混雑する時間のバス利用を避けてほしいと言う。 ・車椅子利用者であることのみを理由に、その必要性についての情報提供を適切に行うことなく、路線バス利用に際して事前の連絡を条件とする。 ・身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬の帯同を理由として乗車を拒否する。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) p24 ・車内が混雑していて車椅子スペースが確保できない場合、車椅子使用者に説明した上で、次の便への乗車をお願いする。(安全の確保) ・低床式車両やリフト付きバスでない場合、運転者ひとりで車椅子使用者の安全な乗車を行うことは無理と判断し、他の利用者に車内マイクを使って協力をお願いしたが、車内で利用者の協力が得られず乗車できない場合、説明をした上で発車する。(事業の目的・内容・機能の維持) ・車椅子又はベビーカーの乗客がすでに車椅子固定場所を利用中のため、乗車を断る。 ・車椅子の形態により、車椅子がバスに備え付けられている装置等によって固定できないため、転倒等により車椅子利用者や他の乗客が怪我をするおそれがあるため、乗車を遠慮してもらう。(安全の確保) ・車椅子使用者がバスに乗車する際、合理的配慮の提供等や、車椅子使用者が安心して乗車でき、車内の利用者にも車椅子スペースを開けてもらうよう協力していただきやすいように、可能な限り乗車予定の事前連絡の協力のお願いについてホームページ等で周知する。 (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、コミュニケーションボードや筆談、IT機器(タブレット等による図や絵)の活用等により対応を行う。 ・定期的にバスを利用する車椅子使用者の利用時間に合わせ、路線を指定してバリアフリー対応の車両を配車する。 ・車椅子使用者がバスに乗車する際、車内の利用者へ車椅子スペースを空けてもらうよう車内案内により協力をお願いする。 ・運賃支払いの手助けを必要とする障害者については、障害の特性に応じた配慮をする。 ・低床式車両の位置情報サービスの提供をすでに実施している事業者については、適切に当該サービスを提供する。 ・スロープ板を出すことが困難なバス停では、前後で乗降可能な位置にバスを停車する。 ・運行に支障のない範囲で、バスと歩道等のすき間が広く開かないよう停車する。 p25 ・視覚障害や聴覚障害のある利用者のため、音声合成装置や停留所名表示器を装備するなど、事業運営の範囲内で可能な限りハード面での充実を図るとともに、肉声による車内案内をこまめに行う。 ・車椅子使用者の乗車ができないことがないように、スロープや車椅子固定装置の整備・点検を徹底する。 ・運転者への教育等を行うことにより、高齢者や障害者等の特性を理解することで、本来業務に付随する範囲内において適切な接遇・介助や、必要に応じてトラブル防止のための車内案内を行う。 ・低床式車両やリフト付きバスでない場合、運転者ひとりで車椅子使用者の安全な乗車を行うことは無理と判断し、他の利用者に車内マイクを使って協力をお願いする。 ・運行業務の範囲内において、やむを得ず通常の停留所から位置をずらして停車する場合には、乗客に対し、降車時の安全確保のための注意を促す。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、乗降が困難な乗客に対しては、本来業務に付随する範囲内において介助等を行う。 ・混雑時に視覚障害のある利用者から乗降の補助を求められた場合において、状況を丁寧に説明した上で、周囲の混雑状況が解消するまで待機を提案する。利用者の了解が得られれば、混雑の解消後、乗降の補助を行う。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・車両外(公道等)における移動介助等の本来業務に付随しない依頼などに対して、丁寧に説明を行ったうえで断る。(本来の業務に付随しないもの) ・障害内容や必要な配慮に関する情報の提供が行われない(配慮を提供する側がどのような対応をとることが適切であるか判断できない)状況において、建設的な対話なく配慮の提供を求める障害者の対応を断る。(障害者側が建設的対話に応じないもの) ・座席指定制を導入する乗合バスにおいて、車内持ち込み医療器具等のために複数の座席を必要とする旅客について、1席を超える座席の旅客運賃を徴収する。(この場合においては、当該旅客に過度な負担が生じないよう、可能な限り配慮する。)(費用・負担が過重なもの) p26 ・先着で販売している割引乗車券について、障害のため当該販売開始日に購入手続を行うことが困難であることを理由に、当該割引乗車券をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合において、当該対応を断る。(障害者以外と比べて同等以上の機会提供)。 p27 【一般乗用旅客自動車運送業関係】 1 対象事業 一般乗用旅客自動車運送事業(道路運送法(昭和26年法律第183号)第3条第1号ハ・に規定する一般乗用旅客自動車運送事業)を対象とする。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・車椅子使用者、白杖使用者等外見上障害者と認識して止まることなく、乗車を拒否する。又は障害者と認識した時点で、乗車を拒否する。 ・車椅子の乗車設備、固定装置等がある車両であるにもかかわらず、車椅子使用者の乗車を拒否する(乗務員の身体的理由から乗車の引受けが困難な場合を除く)。 ・運転手が車椅子をトランクに積むことで乗車が可能であるにもかかわらず、セダン型タクシーであることのみを理由に車椅子使用者の乗車を拒否する。 ・身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬の帯同を理由として乗車を拒否する。 ・障害者割引に対して、割引タクシー券の利用や領収書の発行を拒否する。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) ・車椅子の乗車設備、固定装置等がない車両の場合、車椅子を使用したままの乗車を断る。(安全の確保) ・セダン式タクシーの場合、手動車椅子や簡易電動車椅子等の折りたたみ可能なものは、法令等の基準内においてトランクに(ひも等で縛り)積載が可能であるが、大型電動車椅子等の折りたたみが不可能なものについては積載できないため、乗車を断る。(法令等の遵守) p28 ・車椅子からタクシー座席への移乗等にあたって、介助人がおらずタクシードライバーだけでは対応ができない場合は乗車を断る。(安全の確保) ・駐停車禁止除外標章等の交付を受けていない車両において、駐停車禁止場所での乗降や、車両を離れての介助行為等道路交通法等の法規制に抵触するサービスの提供を断る。(法令等の遵守) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・障害によりタクシーへの乗降が困難な乗客に対し、タクシードライバーが乗降時の介助を行う。 ・車椅子等の大きな荷物がある乗客に対し、タクシードライバーがトランクへの収納等の手助けを行う。 ・自身でシートベルトを装着することができない障害者の方の場合、乗車時にシートベルトの装着と装着確認をタクシードライバーが行う。 ・聴覚障害のある利用者等が乗車の際、メモを用いた筆談やIT機器(タブレット等による図や絵)の活用等によりコミュニケーションをとり、行先や要望事項を確認する。 ・タクシードライバーが、ユニバーサルドライバー研修等により高齢者や障害者等の特性を理解することで、認識不足による無意識的な障害者の方の乗車拒否を防ぐ。 ・視覚障害のある利用者からあらかじめ降車地点を明確に伝えられている場合であって、交通状況等によりやむを得ず依頼のあった降車地点からずれた位置で停車せざるを得ない場合にあっては、停車する位置について停車前に旅客と相談する。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 p29 【対外旅客定期航路事業関係】 1 対象事業 対外旅客定期航路事業(海上運送法(昭和24年法律第187号)第19条の4に規定する対外旅客定期航路事業をいう。)を対象とする。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・障害があることを理由に窓口手続きを拒否する。 ・障害があることを理由に対応の順序を後回しにする。 ・お互いに相手の立場を尊重しながら、相互理解を図ることなく、障害があることやそれに伴い車椅子を利用する等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として、単独での乗船を拒否する。 ・船内宿泊の際、障害があることを理由に、個室の予約を断る。 ・身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬の帯同を理由として乗船を拒否する。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 ・障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由に、一律に介助者の同伴を求める。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) ・障害の程度から客観的に判断して、緊急時に、乗組員が他の乗客の安全の確保を図りつつ補助を行ったとしても、安全に避難することが困難と考えられる場合において、当該障害者に介助者の付き添いを求める。(安全の確保) ・乗組員が乗降を補助する必要がある場合において、限られた乗組員で船舶を安全に離着岸させる都合上、乗下船の順番を前後させる。(安全の確保) p30 ・障害者から誘導や介助を求められた際に、限られた乗組員により運航している関係上すぐに対応が困難である場合、丁寧に説明したうえで、待ってもらう。(事業の目的・内容・機能の維持) ・乗組員の不足により障害者のアテンドが困難であり、安全性等に問題がある場合、予約時点で理由を丁寧に説明するなどして、別日・時間への変更等を提案する。(事業の目的・内容・機能の維持) ・車椅子ご利用団体(一定数以上)乗船の場合において、限られた施設(エレベーターの数など)で対応するため、十分な研修を受けたスタッフの配置や関係者間の情報共有により所要時間の短縮を図った上でも、やむを得ず通常の乗船時間前に乗船手続及び乗船を行う。(事業の目的・内容・機能の維持) ・利用中の車椅子の他に、手荷物として別途車椅子を持ち込む場合(競技用車椅子の持ち込みなど)には、格納場所等の確保の観点から、乗船日程や便をあらかじめ提案する。(事業の目的・内容・機能の維持) ・乗客タラップ損傷の一時的なハード面における課題時において、車椅子利用者の乗船日程をハード面の課題解決後とする。(安全の確保) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、筆談、読み上げ、手話、コミュニケーションボードやIT機器(タブレット等による図や絵)の活用などによるコミュニケーション、振り仮名や写真、イラストなど分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通に係る対応を行う。 ・車椅子の配置(環境の整備)に努めたうえで、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、所有台数の範囲内に限り、車椅子の貸し出しを行う。 ・車椅子使用者からの申し出を受けて、旅客船の乗降時等に障壁がある場所において、職員による補助を行う。 ・電話や窓口において、障害者が事前に申告または相談したことについて、連携を図ることが可能な場合においては、関係部署への引継ぎや情報共有を行う。 ・車のまま乗船したい旨事前に申込みがあった場合には、可能な限り、客室に近い駐車スペースを確保する。 ・障害者割引制度などを、利用者へ積極的に周知・案内する。 p31 ・研修等により、車椅子固定具やスロープなどの船舶設備の扱い方を乗組員が習熟することで、車椅子使用者が必要とする際に、適切に対応を行う。 ・災害発生時を考慮し、迅速かつ円滑な補助を行うため、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、障害者の座席などを出入口付近やバリアフリートイレ付近を提案する。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・障害内容や必要な配慮に関する情報の提供が行われない(配慮を提供する側がどのような対応をとることが適切であるか判断ができない)状況において、建設的な対話なく配慮の提供を求める障害者の対応を断る。(障害者側が建設的対話に応じないもの) ・障害を理由として、上等級への繰上要求が行われた場合に、理由を丁寧に説明した上で断る。(障害者以外と比べて同等以上の機会提供) ・客観的に見ても通常の範囲を超えた過剰な量の手荷物等を、船員または陸上職員に運搬させる要求に対し、理由を丁寧に説明したうえで断る。(本来の業務に付随しないもの)。 p32 【国内旅客船業関係】 1 対象事業 国内旅客船事業(海上運送法(昭和24年法律第187号)第3条第1項に規定する一般旅客定期航路業、同法第19条の3第1項に規定する特定旅客定期航路事業及び同法第21条第1項に規定する旅客不定期航路事業等をいう。)を対象とする。 なお、国内旅客船事業は、完全な予測が不可能な気象・海象(波、風、潮流、霧など)により船体性能や操縦方法と無関係に船が動揺し、乗り心地に大きな影響を与える特性を有しており、また、運航時間、船体規模及び航行区域などにより、事業者毎に船員の配乗体制を含め運営方法が異なる。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることなく、障害があることやそれに伴い車椅子を利用する等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として、単独での乗船を拒否する。 ・身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬の帯同を理由として乗船を拒否する。 ・船内宿泊の際、障害があることを理由に、個室の予約を断る。 ・お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることなく、事前連絡が無かったことを理由に乗船を拒否する。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 ・障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由に、一律に介助者の同伴を求める。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) p33 ・障害の程度から客観的に判断して、緊急時に、乗組員が他の乗客の安全の確保を図りつつ補助を行ったとしても、安全に避難することが困難と考えられる場合において、当該障害者に介助者の付き添いを求める。(安全の確保) ・乗組員が乗降を補助する必要がある場合において、限られた乗組員で船舶を安全に離着岸させる都合上、乗下船の順番を前後させる。(事業の目的・内容・機能の維持) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、筆談、読み上げ、手話、コミュニケーションボードやIT機器(タブレット等による図や絵)の活用などによるコミュニケーション、振り仮名や写真、イラストなど分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通に係る対応を行う。 ・車椅子利用者や介助者等からの意思の表明に応じて、乗下船する際に段差があった場合にスロープを渡す等の対応を行う。 ・電話や窓口において、障害者が事前に申告または相談したことについて、連携を図ることが可能な場合においては、関係部署への引継ぎや情報共有を行う。 ・車のまま乗船したい旨事前に申込みがあった場合には、可能な限り、客室に近い駐車スペースを確保する。 ・障害者割引制度などを、利用者へ積極的に周知・案内する。 ・研修等により、車椅子固定具やスロープなどの船舶設備の扱い方を乗組員が習熟することで、車椅子使用者が必要とする際に、適切に対応を行う。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・サポートできる範囲などについて乗船前にお互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を行わずに、介助者無しで単独乗船された場合において、当初確認できていたサポート範囲以外のサービス(入浴、トイレ、食事、車椅子からベッドへの移動・デッキでの散策への同行のサポートなどに係る介助)を求められた際、その提供を断る。(本来の業務に付随しないもの) p34 ・下船後に別の交通機関を利用する際、当該交通機関の駅等までの移動に同行を求められた際、その提供を断る。(本来の業務に付随しないもの)。 p35 【航空運送業関係】 1 対象事業 航空運送事業(航空法(昭和27年法律第231号)第2条第18項)等を対象とする。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・航空旅行に関して特段の支障等がない利用者に対し、診断書の提出を求める。 ・安全上の問題(職員が他の乗客の安全を図りつつ、可能な範囲で十分補助に努めたとしても安全に避難することが困難等)などがないにもかかわらず、又は、安全上の問題があるとしても当該安全上の問題について丁寧な説明を行うことなく、障害のみを理由に搭乗を拒否する。 ・車椅子使用者であることのみを理由に搭乗を拒否する。 ・安全上の問題(職員が他の乗客の安全を図りつつ、可能な範囲で十分補助に努めたとしても安全に避難することが困難等)などがないにもかかわらず、又は、安全上の問題があるとしても当該安全上の問題について丁寧な説明を行うことなく、障害のみを理由に付き添いの方の同伴を求める。 ・同伴者がいないことを理由に、軽度な歩行困難な利用者の搭乗を拒否する。 ・安全上の理由(非常口の横の座席であり、避難時に、素早く移動し、及び避難の手伝いを行っていただく必要があること等)などがなく、座席制限が不要であるにもかかわらず、又は、安全上の理由があるとしても当該安全上の理由について丁寧な説明を行うことなく、座席を制限する。 ・身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬(以下「身体障害者補助犬」という。)の帯同を理由として搭乗を拒否する。 ・車椅子を受託手荷物として預かる際、運送中の破損等に係る会社の損害賠償責任を一切免除する条件など、正当な理由の説明がないにもかかわらず、他の受託手荷物と異なる受託条件を付す。 ・搭乗に係る規則等に抵触する際、当該規則等の趣旨、必要性などを説明することなく、規則等に抵触することだけを伝えて搭乗を拒否する。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 p36 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 ・有効期限の記載のある診断書を提出しており、当該有効期限内であるにもかかわらず、搭乗の都度、新たな診断書の提出を求める。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) ・コミュニケーション等に係る合理的配慮の提供等を行っても、障害の種類や程度、人的体制・設備等から客観的に判断して、緊急時に職員の安全に関する指示が理解できないおそれがあり、職員が他の乗客の安全を図りつつ、可能な範囲で十分補助に努めたとしても安全に避難することが困難と考えられる場合に、当該障害者に介助者の付き添いを求める。(安全の確保) ・特別なお手伝いが必要な場合に、緊急時を含め十分なサービスを提供できるようにするため、搭乗当日、障害等の状況確認を含めた搭乗手続に時間を要する。(安全の確保) ・車椅子使用者及び一般の利用者に円滑に搭乗・降機をしてもらうため、車椅子使用者に対して、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ったうえで、必要最小限の範囲で、最初の搭乗、最後の降機等を依頼する。(事業の目的・内容・機能の維持) ・国土交通省通達により、身体が不自由な利用者、身体障害者補助犬を同伴される利用者等の緊急脱出時の援助者として行動することが困難と考えられる利用者に対して、非常口座席の利用を制限する。(安全の確保) ・保安上の理由により、障害者を含め全ての利用者を保安検査の対象とする。この場合において、補助具(義足、インプラント等)を利用しているお客様から、「金属探知機は補助具に反応しているので更なるチェックは不要である」との申し出があっても、航空保安の観点から、改めて補助具を外して金属探知機を通ってもらう、又は触手による検査を行う。(安全の確保) ・客室乗務員等の本来の業務に付随するものでないため、食事・化粧室の利用などの介助が必要な利用者に対して、付き添いの方の同伴を求める。ただし、食事は不要である旨利用者より申し出があった場合は、食事の介助のための同伴は求めない。(事業の目的・内容・機能の維持) ・本来の業務に付随するものでないため、包帯の交換や注射等医療行為は実施しない。(事業の目的・内容・機能の維持) p37 ・電動車椅子の利用者に対して、通常よりも搭乗手続や保安検査に時間を要することから、十分な研修を受けたスタッフの配置や関係者間の情報共有により所要時間の短縮を行った上で必要最小限の時間を説明するとともに、搭乗に間に合う時間に空港に来てもらうよう依頼する。(事業の目的・内容・機能の維持) ・車椅子の受託に当たり取り外せる部分を取り外すなどの工夫を十分に行っても、なお使用機材、空港車両、人員等の理由により、車椅子のサイズと重量が搭載の規定範囲を超えていると判断される場合は、車椅子の受託を断る。(事業の目的・内容・機能の維持) ・受託する車椅子の運搬ルート等の検討を十分に行っても、なお空港要件(エレベーターの有無や天候、車椅子の重さなど)により航空機のドア付近(機側)で車椅子の受託又は返却を行うことができないと判断される場合は、機側での車椅子の受託又は返却を断る。(事業の目的・内容・機能の維持) ・短時間でのストレッチャーの着脱は不可能であるため、ストレッチャー使用者が希望される搭乗便の機材上の前後の便が満席であることを理由に、搭乗便の変更を依頼する。(安全の確保) ・ストレッチャーの取り付け可能な空港が限られているため、搭乗便の変更を依頼する。(事業の目的・内容・機能の維持) ・混雑時に視覚障害のある利用者から搭乗の補助を求められた場合において、状況を丁寧に説明した上で、周囲の混雑状況が解消するまで、待合スペースでの待機を提案する。(安全の確保) ・車椅子利用者の搭乗に際し、搭乗当日の待機時間の短縮を目的とした空港スタッフや客室乗務員の連携に必要な準備を行うために事業者が必要とする最小限の範囲で、あらかじめ書面の提出を求める。(権利・利益の保護) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・車椅子の配置(環境の整備)に努めたうえで、所有台数の範囲内に限り、車椅子の貸し出しを行う。 ・利用者自身で使用する車椅子を無料で預かる。 ・杖・松葉杖(先の尖ったものを除く)の機内の持ち込みを許可する。 ・車椅子使用者に対して、一般の利用者に優先して搭乗を開始する。 p38 ・安全に関する情報について、視覚障害のある利用者からの求めに応じて、個別に口頭にて案内を実施し、又は点字によるパンフレットを用意する。 ・聴覚障害あるいは言語障害のある利用者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、その障害の特性に応じたコミュニケーション手段(メモや筆談ボード、IT機器の活用など)を用いて対応する。 ・視覚障害のある利用者や握力の弱い利用者、介助者等からの意思の表明に応じて、機内食の包装の開封を手伝う。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、化粧室に行く際に移動を手伝う。 ・航空機に搭載可能な電動車椅子のサイズの情報等を提供するとともに、航空機の予約や搭乗に係る障害のある利用者専用の窓口を設置する。 ・膝を曲げることが困難な利用者からの求めに応じて、可能な限り利用者の要望に沿った座席を用意する。 ・人的対応が可能な場合で、利用者の状況により利用者の希望があれば、チェックインカウンターから搭乗口へ、又は搭乗口から到着ロビーの間、係員が同行する。 ・車椅子利用者の搭乗に際し、人的対応が可能な場合で、当該利用者の希望があれば、車椅子のサイズと重量が対応可能な範囲内で、利用者自身の車椅子を航空機のドア付近にて預かる。また、車椅子の返却に当たっては、機内用車椅子に座っている時間の長さなども考慮し、対応可能な範囲で、当該利用者と返却場所等を調整する。 ・調整可能な範囲で、車椅子を使用され、かつ階段の昇降ができない利用者の予約がある場合は、ボーディングブリッジのあるスポット又はリフトカー等を準備する。 ・乗り継ぎを行う際にお客様から希望があった場合において、遅延などの不可抗力を除いて、乗り継ぎ時間に間に合うよう、事業範囲内で移動のサポートや案内を行う。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・チェックインカウンターから搭乗までの移動に際して、事業範囲内で特別な支援を求める申出があった場合において、お互いに相手の立場を尊重した建設的対話を行うことなく、「何かあったら困る」という抽象的な理由や「特別扱いはできない」という理由で、当該申出を断る。 p39 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・機内持ち込み医療器具等のために複数の座席を必要とする旅客について、1席を超える座席の旅客運賃を徴収する。(この場合においては、当該旅客に過度な負担が生じないよう、可能な限り配慮する。)(費用・負担が過重なもの) ・事業者において、障害者から事業の一環として行っていない業務の提供を求められた場合、丁寧なコミュニケーションを経て、その提供を断る。(本来の業務に付随しないもの) ・先着で販売している割引航空券について、障害のため当該販売開始日に購入手続を行うことが困難であることを理由に、当該割引航空券をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合において、当該対応を断る。(障害者以外と比べて同等以上の機会提供) p40 【航空旅客ターミナル施設事業関係】 1 対象事業 空港法(昭和31年法律第80号)第15条第1項に規定する空港機能施設事業のうち、航空旅客の取扱施設(以下「航空旅客ターミナル施設」という。)を管理する事業を対象とする。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると懸念される事例 ・障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみをもって、航空旅客ターミナル施設の利用を拒否する。 ・障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみをもって、立ち入る場所や時間帯を制限し、又は障害者でない者に対して付さない条件をつける。 ・身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬(以下、「身体障害者補助犬」という。)の帯同を理由として航空旅客ターミナル施設の利用を拒否する。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) ・コミュニケーション等に係る合理的配慮の提供等を行っても、障害の種類や程度、人的体制・設備等から客観的に判断して、緊急時に職員の安全に関する指示が理解できないおそれがあり、職員が他の乗客等の安全の確保を図りつつ補助を行っても安全に避難することが困難と考えられる場合に、当該障害者に介助者の付き添いを求める。(安全の確保) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 p41 ・障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて乗用カート及び車椅子の貸し出しを行うとともに、WEBサイトにて貸し出しの情報を掲載する。 ・ロビー等に設置している椅子に優先席を設ける。 ・聴覚障害、視覚障害、言語障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の障害のある利用者や介助者等からの意思の表明に応じて、その障害の特性に応じたコミュニケーション手段(メモ、筆談ボード、手話ができるスタッフの配置、コミュニケーションを支援するアプリケーションソフトウェア等)を用いて対応する。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、代筆・代読等の対応を行う。 ・災害時の避難誘導について、過度な負担の無い範囲内において、障害の特性に応じた対応を実施する。 ・利用者の希望があれば、出発時は航空旅客ターミナル施設内からチェックインカウンターまで、到着時は到着ロビーから航空旅客ターミナル施設内の希望する場所まで、職員が同行する。また、その際には、利用者の移動及び手続きが円滑に進むよう、他の空港関係者と連携を行う。 ・タッチパネル式を採用しているサービス(ロッカー等)について、視覚障害や身体障害のある利用者等が利用できるサービスの併用及び人的対応等代替手段を提供する。 ・ピクトグラム等案内表示の解説を記載した航空旅客ターミナル施設内のパンフレットを準備(環境の整備)し、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、分かりやすく各種施設への案内を行う。 ・聴覚障害のある利用者に対して、搭乗に関する情報や緊急情報について、音声情報とともに視覚的情報手段(手話、字幕等)を提供する。 ・航空旅客ターミナル施設内にある資料、情報誌等を点字等に対応させたものを使用し、視覚障害のある利用者からの意思の表明に応じて、理解しやすいよう説明する。 ・利用者に対する割引制度やサービスの周知を行う。 ・車椅子利用者との対話により、必要により最寄りの車椅子利用者の目線に合わせた自動販売機やカウンター等を案内する。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 p42 ・航空旅客ターミナル施設の利用に際して特別な支援を求める申出があった場合において、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を行うことなく、「何かあったら困る」という抽象的な理由や「特別扱いはできない」という理由で、当該申出を断る。 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・事業者において、障害者から事業の一環として行っていない業務の提供を求められた場合、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を行ったうえで、その提供を断る。(本来の業務に付随しないもの) p43 【旅行業関係】 1 対象事業 旅行業(旅行業法(昭和27年法律第239号)第2条第1項に規定する旅行業及び同条第2項に規定する旅行業者代理業をいう。)を対象とする。 なお、旅行業とは、旅行者と運送機関、宿泊施設、飲食施設その他の観光関連施設(以下、総称して「運送機関等」という。)との間に入り、旅行者が、運送機関等による運送、宿泊、飲食その他の観光に関連するサービス(以下「運送等サービス」という。)の提供を受けられるよう、ツアーの企画、運送等サービスの手配等を行う事業であり、自ら運送等サービスを提供する事業ではない。 以下では、旅行業にかかる「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮」の具体例を示すが、上記の旅行業の内容から、旅行中に利用される運送等サービスそのものにかかる「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮」の具体例(運送機関等がその主体となる。)についてまで示すものではない。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・障害があるということだけを理由として、障害の状況、ツアー(参加者を募集するパッケージツアーを言う。以下同じ。)の内容、介助者の同行の有無にかかわらず、一律に、ツアーへの参加を拒否したり、旅程の一部に制限を加える。 ・障害があるということだけを理由として、一律にツアーへの参加を認めず、また、ツアー料金を増額する。(ただし、専用車の手配等の障害者への対応に必要な費用について、事前に丁寧な説明を行ったうえで、別途請求することは除く。) ・ツアーの内容、障害の状況、介助者の同行の有無に照らし、当該障害者がツアーに参加しても、ツアーの安全かつ円滑な実施に支障が生じるおそれがないにもかかわらず、ツアーへの参加を拒否したり、旅程の一部に制限を加える。なお、「ツアーの安全かつ円滑な実施に支障が生じる」場合とは、ツアー中の参加者全員(障害者本人を含む。)の安全を確保できない場合や、いずれかの参加者に対し旅程どおりのサービスを提供できなくなる場合等を指す。 p44 ・障害者について、ツアー中の介助、補助その他の支援措置が必要ない、又は、支援措置が必要であるとしても、添乗員等において対応可能な医学的、専門的知識を要しない軽微な措置で足りるにもかかわらず、一律に、ツアーへの参加を拒否したり、旅程の一部に制限を加える、又は、介助者の同行をツアー参加の条件とする。 ・障害者が、車椅子の使用、身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬(以下、「身体障害者補助犬」という。)の同伴、特別食の準備等、ツアー参加に当たり必要となる条件、措置を旅行申込み時に申告しているにもかかわらず、ツアー中に利用する運送機関等における対応の可否、旅程への影響の有無、及び、他の参加者への影響の有無を確認することなく、一律に、ツアーへの参加を拒否したり、旅程の一部に制限を加える、又は、障害者が必要とする条件、措置を拒否する。 ・車椅子利用の障害者が貸切バスツアー(添乗員付き)に申し込んだ際に、具体的な事情に基づかず、添乗員が他のお客様をケアできなくなるといった抽象的な懸念のみを理由として、特段の代案の検討のためのコミュニケーションを取ろうとすることなく、参加を断る。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) ・障害者から、事前に申告のあった障害の状況や、必要とする条件、措置に適切に対応できる運送等サービスをやむを得ず手配できない場合に、ツアーへの参加を拒否する、又は、旅程の一部に制限を加える。(事業の目的・内容・機能の維持) ・障害者について、ツアー中に、添乗員等において対応可能な医学的、専門的知識を要しない軽微な措置を超える介助、補助その他の支援措置が必要となるにもかかわらず、障害者が、介助者の同伴を拒絶する場合に、ツアーへの参加を拒否する、又は、旅程の一部に制限を加える。(安全の確保) ・障害者から、障害の状況や必要とする条件、措置について、旅行申込み時に申告がなく、事前に、運送機関等における対応の可否、旅程への影響の有無、又は、他の参加者への影響の有無を確認することができず、当該障害への適切な対応を確保できない場合に、ツアーへの参加を拒否する、又は、旅程の一部に制限を加える。(事業の目的・内容・機能の維持) p45 ・契約を行うに当たって障害者が来店した際、互いの置かれた状況を踏まえて、コミュニケーションの方法を工夫し、障害の状況等を確認しようと試みたが、それにもかかわらず、円滑なコミュニケーションが取れないため、やむを得ず契約を断る。(事業の目的・内容・機能の維持) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・ツアーについて相談を受ける際、利用する運送機関等におけるバリアフリーの状況について情報を提供する。 ・ツアーへの申込みを断る場合でも、障害者が安全、安心に参加できる旅行について相談する。 ・旅行申込み時に申告された障害の状況を踏まえ、利用しやすい運送等サービス(リフト付きバス、車椅子席付きバス、特別食を提供できる飲食施設等)を提案、紹介する(既に利用する運送等サービスが決定しており、その変更が困難なツアーについては、この限りではない。)。 ・貸切バスツアー等、事業者においてバスの座席位置を決められる場合は、旅行申込み時に申告された障害の状況や希望を踏まえ、座席位置に配慮する。 ・旅行申込み時に申告された障害の状況や希望を踏まえ、利用する運送機関等に、障害者に対して合理的な配慮を提供するよう要請する。 ・ツアー中、エスカレーターやスロープのあるルートが付近にある場合に、添乗員等がそのルートを紹介する(ただし、添乗員等が同行するツアーに限る。)。 ・取引条件説明書面、契約書面、申込書類、確定書面その他の契約に関する書面及び案内書面の重要な部分について、可能な限り、障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、読上げによる説明、音声変換のためのテキストデータの交付、IT機器(タブレット等による図や絵)の活用等の措置をとる。 ・ツアー中、聴覚障害のある者又は知的障害者のため、添乗員等が、集合・解散時間や重要な注意事項を大きなボードや画用紙等に記載して見せたり、それらが記載されたメモを交付する等して案内する(ただし、添乗員等が同行するツアーに限る。)。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・車椅子利用者がツアーに参加することを認識しつつ、可能な範囲での事前調整を行わなかった。 p46 ・ツアー中、移動に係る支援要請(旅行業者の本来の業務に含まれない対応を求める過剰な要請は除く)があった場合において、障害者と、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を行うなどして具体的な支援の可能性すら検討せず、支援を断る。 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 ・打合せ等において、障害の特性に応じたコミュニケーションの手段(筆談、読み上げ等)を設けることを求められた場合に、具体的に対応方法を検討せず、事前に資料を渡すのみの対応とし、当日の議論に参加できない状況を作る。 3 合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例 ・障害がある利用者から、ツアーに参加するに当たり、特別に、専門の介助者を無償でつけて欲しい、自分用の専用車(マイクロバス等)を手配して欲しいとの要求があったため、旅行業者として、ツアーにおいて、当該利用者のための特別の対応を旅行業者の費用負担において実施することはできない旨を丁寧に説明し、当該要求を断る。(費用・負担が過重なもの) ・ツアー申込時点において、食事や入浴、化粧室の利用に関するツアー内での介助を求められた場合、お互いに相手の立場を尊重しながらの建設的対話を通じて互いの状況等を理解しようと努めた上で、添乗員やガイドの本来の業務から逸脱する要請について断る。(本来の業務に付随しないもの) p47 【予報業務関係】 1 対象事業 気象業務法(昭和27年法律第165号)第17条の規定に基づき許可を受けて実施する予報業務を対象とする。 なお、予報業務は、情報通信技術の活用により様々な媒介を通じてサービス提供される形態が主であり、サービス提供における情報アクセシビリティの向上等の「環境の整備」に努める必要があるが、以下では、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第11条第1項の規定に基づき、サービス提供に先だった相談や契約等の場面を中心に「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮」の具体例を示す。 2 具体例 (1)不当な差別的取扱い 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例 ・障害者であることを理由に、予報の提供を拒否する。 ・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。 ・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。 ・障害があることやその特性による事由を理由として、契約の締結等の際に、必要以上の立会者の同席を求める。 2 障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例 ・障害の状況等を考慮した適切な予報の提供を行うため、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護) (2)合理的配慮 1 合理的配慮の提供の事例 ・契約時やサービスの説明時等において、障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、ゆっくり話す、手書き文字(手のひらに指で文字を書いて伝える方法)、筆談を行う、分かりやすい表現に置き換える、IT機器(タブレット等による図や絵)の活用等、相手に合わせた方法での会話を行う。 p48 ・種々の手続きにおいて、障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、文章を読み上げたり、書類の作成時に代筆または書きやすいように手を添える。 ・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、契約書等の各種書類をテキストデータで提供する、ルビ振りを行う、書類の作成時に大きな文字を書きやすいように記入欄を広く設ける等、必要な調整を行う。 ・オンラインでのサービス利用の申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっている場合、手続に際しての支援を求める申出に応じて、電話や電子メールでの対応を行う。 2 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例 ・契約時やサービスの説明時等において、ゆっくり話す、手書き文字、筆談を行う等の対応を求められた場合に、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を行うことなく、また、対応に係る検討を行わずに断る。 ・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。 ・打合せ等において、障害の特性に応じたコミュニケーションの手段(筆談、読み上げ等)を設けることを求められた場合に、具体的に対応方法を検討せず、事前に資料を渡すのみの対応とし、当日の議論に参加できない状況を作る。