資料5 改正障害者差別解消法の施行に向けた経済産業省所管事業分野における対応指針の改正について 経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室 p1 1.対応指針改正に向けた主な動き 障害を理由とする差別の解消を推進することを目的とした「障害者差別解消法」が平成25年6月に制定された。同法に基づき、これまで経済産業省としては、事業者における障害のある方への対応のあり方を定めた「経済産業省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針(経済産業省対応指針)」を平成27年11月に策定し周知等を行ってきた。 令和3年5月に同法が改正され、令和6年4月1日には事業者における合理的配慮の提供が義務化されるところ、経済産業省としては、法改正を踏まえ下記を実施し、令和5年12月22日に経済産業省対応指針を改正・公表。 1 事業者や業界団体、経済団体からの意見聴取を実施 2 障害者団体へのヒアリングを実施 3 パブリックコメントによる意見聴取を実施(1ヶ月間) 2.経済産業省対応指針に関する改正ポイント(概要) (1)本文 1 主に基本方針改正を踏まえた修正(追加された考え方等の追記など) 2 経済産業省所管事業分野における相談窓口の明確化 (2)別紙 1 「障害特性に応じた配慮」に関する項目を新設 2 「不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例」の拡充(既存例の見直し、新規例の追加) 3 「不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例」の新設 4 「合理的配慮の提供」に関する例の拡充(既存例の見直し、新規例の追加) 5 「合理的配慮の提供義務違反に該当する/しないと考えられる例」の新設 6 「事前的改善措置としての環境の整備の例」の新設 ※改正内容の詳細については2ページ目以降の通り 3.周知・啓発に関する取組 令和5年12月22日に経済産業省対応指針を改正後、積極的に周知に努めている。 1 経済産業省HPに公表、ニュースリリース、SNSでの発信 2 業界団体・所管事業者に対して事務連絡による周知を実施 3 障害者差別解消に関する研修を実施(経済産業省主催) 4 業界団体や経済団体等に対する説明会や各種セミナーにおいて周知 5 個別に業界団体からの講演依頼等に対応 6 経済産業省庁舎窓口において、音声認識システム(文字起こし端末)を試行的に設置。 p2 4.経済産業省対応指針改正の内容について 経済産業省対応指針における改正内容について、主な箇所を下記のとおり示す。 ※追加・修正点は《》によって示している。 1 「障害特性に応じた配慮」に関する項目を新設 《【視覚障害】 (主な特徴) ・慣れていない場所では一人で移動することは困難 ・文書を読むことや書類に文字を記入することが困難 ・音声や手で触ることなどにより情報を得ている (一般的な対応) ・「こちら」、「あちら」、「これ」などの指示語は使わず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」など具体的に説明する ・視覚障害のある者が、必ずしも点字を読めるわけではないため、音声や点字表示など、視覚情報を代替する配慮を行う》 ※この他、聴覚障害・言語障害、肢体不自由、知的障害、発達障害、精神障害について記載。 2 「不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例」の拡充 ○事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来訪の際に《支援者や介助者》の同行を求める等の条件を付けること。 《○支援者や介助者の同伴が必要な障害者が来店した際に、障害者本人の意図に反して障害者本人ではなく支援者や介助者のみと対話し対応を行うこと。》 3 「不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例」の新設 《○実習を伴う講座において、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障害特性のある障害者に対し、当該実習とは別の実習を設定すること。(障害者本人の安全確保の観点) ○原則本人しか行うことができない手続を行う際に、障害者本人に同行した者が代筆しようとした場合に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の手続の意思等を確認すること。(障害者本人の損害発生防止の観点)》 4 「合理的配慮の提供」に関する例の拡充 【想定される場面例】 ・事務所(来客、窓口、問合せ等)  ・店舗(商品等販売、問合せ等) ・自宅への訪問(商品等販売、小売事業者による商品宅配等) 《・物品等購入時の契約行為  ・各種資格試験等の受験時 ・展示会、イベント等開催時の配慮(入場、介添者対応ほか) ・ガソリンスタンド接客(セルフスタンド) ・学習塾、フィットネスジム等での指導》 p3 《・訪問修理・設置・点検 ・セミナー等 など》 ア.物理的環境への配慮 《○イベント会場において知的障害のある子供が発声やこだわりのある行動をしてしまう場合に、保護者から子供の特性やコミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落ち着かない様子のときは別の場所等に誘導すること。 ○視覚障害のある者からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に、求めに応じてトイレの個室を案内すること。その際、同性の職員がいる場合は、障害者本人の希望に応じて同性の職員が案内すること。 》 イ.情報の取得、利用及び意思疎通への配慮 ○読み上げ、手書き文字(手のひらに文字を書いて伝える方法)、《筆談、手話、コミュニケーションボード、タブレット等の活用による多様な》コミュニケーション《、振り仮名や写真、イラストなど分かりやすい表現を使って説明するなどの意思疎通の配慮を行うこと》。 《○オンラインセミナーにおいて、オンライン会議システムの文字起こしや録画機能等を用いて障害者もアクセスできるようにすること。 ○聴覚障害のある受講生に対して講義を行う際には、講師は口の動きが見えるよう工夫すること。 ○店舗等において、視覚障害のある者から店員に対し、店内を付き添って買物の補助を求められた場合に、混雑による人手不足を理由に付添いはできないことを丁寧に説明し、代替措置として店員が買物リスト等に基づき商品を準備することができる旨を提案すること。 ○視覚障害等のある者が一人でセルフレジの操作をすることが困難な場合に、店員がサポートを行うなど柔軟な対応を行うこと。》 ウ.ルール・慣行の柔軟な変更 《○資格試験等を実施する際において、障害の特性に応じた休憩時間の調整や必要なデジタル機器の使用の許可などを行うこと。》 ○セルフサービスのガソリンスタンドにおいて、要望があった場合には、《法令遵守等の》安全《確保を前提として》給油《の補助を行うこと》。 5 「合理的配慮の提供義務違反に該当する/しないと考えられる例」の新設 《ア.合理的配慮の提供義務に該当すると考えられる例 ○イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること。 ○電話利用が困難な障害者から電話以外の手段により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、メール等の代替措置を検討せずに対応を断ること。 ○聴覚障害等のある者から入電があり、電話リレーサービスを介した問合せを希望する旨の意思の表明があった場合に、本人確認ができないこと等を理由に対応を拒否すること。》 p4 《○自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。 ○抽選申込みとなっているセミナーや講座への参加で、介助者や支援者の同伴が必要な障害者が当選した場合に、障害者本人の個別事情や講座の実施状況等を確認することなく、介助者や支援者の同伴を一律に認めないこと。 》 《イ.合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例 ○抽選販売を行っている限定商品について、抽選申込みの手続を行うことが困難であることを理由に、当該商品をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合に、当該対応を断ること。(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点) ○オンライン講座の配信を行っている事業者が、オンラインでの集団受講では内容の理解が難しいことを理由に対面での個別指導を求められた場合に、当該対応はその事業の目的・内容とは異なるものであり、対面での個別指導を可能とする人的体制・設備も有していないため、当該対応を断ること。(事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことの観点) ○店舗等において、視覚障害のある者から店員に対し、店内を付き添って買物の補助を求められた場合に、混雑による人手不足を理由に付添いを断ること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)》 6 「事前的改善措置としての環境の整備の例」の新設 《○障害者から申込書類への代筆を求められた場合に円滑に対応できるよう、あらかじめ申込手続における適切な代筆の仕方について職員研修を行うとともに、障害者から代筆を求められた場合には、研修内容を踏まえ、代筆で差し支えないものについては本人の意向を確認しながら職員が代筆すること。 ○聴覚障害等の障害のある者が円滑に工場見学できるよう、障害者団体等にも必要に応じて相談しながらマニュアルを作成する等、案内方法の工夫や案内スキルの向上を図ること。 ○オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行うとともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイト等の改良を行うこと。 ○店舗における車椅子専用駐車スペースの有無の表示については、現地駐車場だけでなく、ウェブサイトにも掲載するとともに、各店舗のウェブサイトには利用時の留意点等を掲載すること。 ○小売店において、バリアフリーに対応した店舗であることをウェブサイト上で明記すること。 ○障害者、介助者ともに安心して行動できるよう、店舗等において、階段の手すりを設置すること。 ○緊急時における障害者への対応方法を事前に取り決め、日頃から定期的に訓練を実施すること。》 以上