資料9 全銀協における障がい者差別解消を目指した取組み 2024年3月7日 一般社団法人 全国銀行協会 内閣府障害政策委員会説明資料 (※作業者注:本文中に下線の引いてある箇所については《二重山形括弧》で前後を挟んでいる。) p1 全国銀行協会(全銀協)とは・・・ ・日本国内で活動している銀行を直接の会員とする組織。 ・銀行の健全な発展を通じてわが国経済の成長に貢献することを目的に、さまざまな活動を行っている。 活動 ○適正な消費者取引の推進(全国銀行協会相談室、金融犯罪防止啓発活動など) ○《SDGs/ESG・コンプライアンスの推進等(ユニバーサルデザイン・バリアフリー推進活動など)》 ○決済システム等の企画・運営(内国為替制度、外為円決済制度など) ○銀行業務の円滑化、提言・意見発信(銀行界関連の法改正への対応など) 会員数(244会員:2024年1月末時点) 【正会員】都市銀行、地方銀行、第二地銀、信託銀行など114行 【準会員】外国銀行、ネット専業銀行など76行 【銀行持株会社会員】3社 【特別会員】全国各地の銀行協会50協会 【特例会員】ゆうちょ銀行 p2 全銀協のSDGsに関する取組み ・全銀協では、SDGsの推進体制および主な取組項目を定めた2018年度以降、SDGsで掲げられた諸課題に対する施策・対応を中長期的視点で強化するため、障がい者差別解消を目指した取組みを含め、さまざまな取組みを行っている。 SDGs推進体制 SDGsに関する施策の立案(P)、検討体制の構築(D)、進捗状況を定期的に確認・必要な見直し(C・A)を行い、年次ベースで総括する(=PDCAサイクルを回す)ことで、《刻々と変化する社会情勢や銀行界を取り巻く環境を踏まえ、中長期的にSDGsの課題に取り組んでいる》。 バリアフリー推進に関連する主な取組項目 《「高齢者等、様々な利用者に対する金融アクセス・サービスの拡充等」(目標8)》 バリアフリーに関する会員銀行の取組状況等を把握するためのアンケート調査の継続実施、関係省庁等における議論のフォロー・ヒアリング等での意見発信および会員銀行への情報提供・還元等 p3 全銀協の障がい者差別解消を目指した取組み ・会員銀行の意識醸成を図り、各行の取組みを支援・推進していくため、以下3つの柱を中心に取り組んでいる。 (1)会員銀行の取組状況等に関するアンケート調査の実施・還元 障がい者等に向けたサービスに関する会員銀行の取組みの実態を把握することを目的に、毎年、アンケートを実施し、その結果を会員銀行に還元。 (2)会員銀行向け各種支援ツールの作成・提供 『銀行におけるバリアフリーハンドブック』(※2024年度内の改訂を予定。)、『人権研修テキスト』、コミュニケーションボード等の支援ツールを作成。 会員銀行に提供し、銀行店舗や窓口における接遇の向上を支援。 (3)バリアフリー等を巡る環境・動向等や会員銀行の取組事例に関する情報提供 「SDGsレポート」等の小冊子の発行や講演会の開催等を通じて、バリアフリー等を巡る環境・動向、会員銀行の取組事例等を情報提供することにより、会員銀行の取組み推進を支援。 p4 (1)会員銀行の取組状況等に関するアンケート調査の実施・還元 ・実施対象:正会員(2023年度は114行) ・実施時期:毎年1回 ・質問内容:施設・設備対応状況、行内体制、障がい特性(視覚障がい、聴覚障がいなど)毎の取組状況等 主な調査項目 主な調査項目は以下のとおり。なお、時宜を得た内容となるよう、具体的な調査内容は毎年見直しを実施。具体的な事例は後述。 ・視覚に障がいのある方への対応 ・自筆が困難な方への対応 ・聴覚に障がいのある方への対応 ・身体障がいのある方への対応 ・知的・精神・発達障がいのある方への対応 調査結果の還元 実態の把握に終始せず、得られた結果を取りまとめ、会員銀行に還元することで、各銀行が他行の取組みや好事例・課題点等を参考とすることができる体制を整え、会員銀行の取組みの一層の促進を図っている。 また、金融庁での会合等を通じて、障がい者団体に対してアンケート結果から得た必要な内容を共有することを通じて相互理解を図っている。 p5 (2)会員銀行向け各種支援ツールの作成・提供 銀行におけるバリアフリーハンドブック 対象:銀行のバリアフリー担当、窓口担当等 内容:視覚障がい者、聴覚・言語障がい者、肢体障がい者、高齢者、その他配慮が必要な方(知的障がい者、妊娠されている方等)に分けて、それぞれ《心構え、コミュニケーションの方法、必要な配慮等について記載》(2006年発行)。 (※)2024年度内の改訂を予定。 人権研修テキスト 対象:新入行員等 内容:人権問題を巡る諸情勢や企業活動に関連する人権問題を幅広く記載(毎年改訂、発行)。 監修:公益財団法人 人権教育啓発推進センター コミュニケーションボード 使用場所:銀行店舗等 目的:聴覚障がい者や外国人など《話言葉や文字によるコミュニケーションに不安のある銀行利用者が、店頭で希望する取引や手続きを円滑に銀行職員に伝えていただく》ことを目的に作成。業界として共通の絵記号デザインを初めて作成(2008年)。 p6 (3)バリアフリー等に関する情報提供(講演会、説明会等) 過去講演会等一覧(※講師の所属や肩書、組織の名称等は講演当時のもの。) (2021年度) 総務省 飯村 由香理 氏/(一般社団法人)電話リレーサービス 専務理事 石井 靖乃 氏:「公共インフラとしての電話リレーサービス」について (一般社団法人)全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事兼事務局長 又村 あおい 氏:「改正障害者差別解消法を踏まえた金融機関における合理的配慮」について (2019年度) おおごだ法律事務所 弁護士 大胡田 誠 氏:「対話こそ共生社会を開くカギ〜障害者差別解消法施行から3年に考える」 特定非営利活動法人 大活字文化普及協会 理事・事務局長 市橋 正光 氏:「金融機関における高齢者・障がい者の課題と代読・代筆対応について」 公益財団法人 日本補助犬協会 代表理事 朴 善子 氏:「ほじょ犬と学ぶ『心のバリアフリー』」 一般社団法人 ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステナブル・サプライチェーン 代表理事 下田屋 毅 氏:「外国人の人権をめぐる課題、企業の対応について」 (2017年度) 東京都発達障害者支援センター センター長 山ア 順子 氏:発達障害者をめぐる課題 (2016年度) 鈴木 徹 氏(陸上競技、リオ2016大会まで5大会連続入賞)/須藤 正和 氏(セーリング、過去パラリンピック3大会出場):<第一部>リオ・パラリンピアンから見た共生社会実現への課題/<第二部>パラリンピアンから見た職場や社会のあり方 (2015年度) 慶應義塾大学商学部 教授 中島 隆信 氏:経済学で考える障害者差別〜障害者差別解消法施行に向けて〜 (2013年度) つくし総合法律事務所 東京事務所 弁護士 大胡田 誠 氏:障害者関係法規の最新動向 p7 (3)バリアフリー等に関する情報提供(SDGsレポート等) 全銀協「SDGsレポート」 全銀協のSDGs等に関する活動や会員銀行の取組事例を紹介する「SDGsレポート」を2018年度から毎年発刊。 《会員銀行のバリアフリーに関する先進的な事例等を紹介。》 ・三菱UFJ銀行 窓口における手話通訳サービスの取組み ・セブン銀行 視覚障害者向けATM音声ガイダンスサービス認知向上への取組み ・あおぞら銀行 手話通訳サービスの導入 障がいのある従業員が安心して働ける職場環境づくりに関する取組み ・愛媛銀行 聴覚障がい者対応研修〜聴覚障がいの模擬体験を通じた取組み〜 情報連絡等 ・2023年度 金融庁「障がい者団体との意見交換会」に寄せられた障がい者団体からの要望事項および好事例 ・2022年度 金融庁「障がい者団体との意見交換会」に寄せられた障がい者団体からの要望事項および好事例 ・2021年度 「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」の改正 「公共インフラとしての電話リレーサービス」の提供開始 「公共インフラとしての電話リレーサービス」に関する実務上の留意事項 行員等による代筆対応の取扱いに係る周知・徹底方お願い等 ・2020年度 「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」の施行 ・2019年度 金融庁「障がい者団体との意見交換会」に寄せられた障がい者団体からの要望事項 ・2018年度 金融庁「障がい者団体との意見交換会」に寄せられた障がい者団体からの要望事項 (※この他、個別に寄せられた陳情等についても会員に適宜還元。) p8 会員銀行の障がい者差別解消を目指した取組み ・会員銀行の取組状況等に関するアンケート調査により得られた事例を中心に紹介 視覚に障がいのある方への対応 全銀協の会員銀行が設置しているATMの総設置台数に占める視覚障がい者対応ATM(※視覚障がいのある方が利用しやすい機能を備えたATMで、ハンドセット(ナンバーキーも備えた電話の受話器のような装置)や画面の文字拡大機能などを備えたATMなどがある。)総設置台数の割合は9割を超えており、2004年度の割合(約16%)、2014年度の割合(約77%)と比して着実に増加。 p9 会員銀行の障がい者差別解消を目指した取組み 自筆が困難な方への対応 ほぼ全行が、目や手などが不自由な方の《代筆依頼への対応を行内規則等で定めている》と回答 社内研修の実施等も含め、定期的に遵守状況のフォローを実施 聴覚に障がいのある方への対応 ほぼ全行が店舗窓口等で、《聴覚障がい者等に対して口頭でのやり取り以外を可能としている》と回答 口頭以外の対応方法は、以下のとおり ・筆談 ・コミュニケーションボード ・手話通訳者 ・その他(遠隔手話サービス等) 身体障がいのある方への対応 (取組事例) 車いす利用者に配慮したATMを設置 ローカウンターや記帳台を設置 店舗出入口のスロープ等のバリアフリーを実施 車いす使用者用駐車場施設を設置 知的・精神・発達障がいのある方への対応 (取組事例) 知的・精神・発達障がいのある方に配慮した対応を行っている銀行の具体的な対応方法 ・多様な障がいの特徴を踏まえた応対マニュアル策定 ・多様な障がい者への対応力向上のための研修 ・ヘルプマークを着用した顧客への対応の周知 p10 会員銀行の障がい者差別解消を目指した取組み その他の対応事例(ハード面) 店舗設備等において、店舗出入口スロープや点字ブロックの設置、卓上型対話支援機器の設置、多目的トイレの設置、視覚障がい者対応ATM全台対応を積極的に導入。 車いす利用者に配慮したATMの全台対応。 店舗新築時には国土交通省建築設計標準(令和2年度改正版)にもとづき障がい者トイレの設置等を対応。 手続きにサポートや配慮を必要とされる顧客が気軽に申し出できるよう「お手伝いカード」を新設し、営業店に設置。 施設設備の改修(範囲拡大等)において、障がい者でも利用しやすいかどうかをあらかじめ開発段階で確認する等、ユニバーサルデザイン対応を推進。 その他の対応事例(ソフト面) 行員の顧客対応能力の向上のため、コミュニケーションボードの活用、介助技術や適切なコミュニケーションを養うための職員向け研修・勉強会の実施などの、取組みを実施・継続。 外見からわかりにくい障がい(発達、知的、精神障がい)のある顧客への応対方法を学ぶ研修を実施。 (行内対応) 「改正障害者差別解消法」施行に際して、知見のある外部機関に監修を依頼し「障がいのあるお客さまへの応対ハンドブック」を制定。 サービスケアアテンダントやユニバーサルコミュニケーションデザインの資格取得の支援・推進など、障がい者や高齢者への理解浸透と応対面を強化。 p11 会員銀行の障がい者差別解消を目指した取組み 具体的な対応事例(表) 項番 1. 障がい属性 視覚障がい 状況 視覚障がいのある方が住所変更のお手続きのため来店。書類の記入が難しいとの申し出を受けた。 対応 行員2名(1名役席者)で対応。予め定めた自行の事務規程に則り、《個人情報に配慮するため応接に誘導し行員が代筆内容を読み上げながら代筆対応をスムーズに実施》。 項番 2. 障がい属性 視覚障がい 状況 「暗証番号を忘れてしまった」と申し出あり。お客さまに視覚障がいがあったため、暗証番号照会依頼書の代筆を希望された。 対応 お客さまの意向を踏まえ、《暗証番号照会依頼書を職員が代筆》し、暗証番号をお伝え。 項番 3. 障がい属性 聴覚、言語障がい 状況 住宅ローンの相談に来店予約をされたお客さまに聴覚障がいがあることが過去の取引経緯書より判明。 お客さまからの相談は特になかったが、取引経緯を確認した際、お客さま側において手続きに不安があることを想定。 対応 事前にどのような対応をすればコミュニケーションをとれるか、担当者の過去の経験から、《筆談器、コミュニケーションボード、簡単な手話を準備し》て、お客さまに通常と同様のサービス(事務手続き)を提供。同事例は行内でも共有。 p12 項番 4. 障がい属性 聴覚・言語障がい 状況 聴覚障がいおよび発語障がいのあるお客さまから、筆談での受付の希望を受けた。 対応 銀行窓口において、申し出に応じて《筆談にて受付》を実施。筆談に加えて《ジェスチャーを追加》することで、お客さまの理解に合わせた対応を実施。 項番 5. 障がい属性 聴覚・言語障がい 状況 来店された顧客の通帳表紙部に「耳が聞こえづらいです。手招きして呼んでください。」という内容のシールが貼られていることを確認した。 対応 コロナ禍で職員がマスクを着用しており、窓口にはビニールカーテンが設置されているため、耳が不自由な方にとって手話の方が伝わるかもしれないと思い、手話で「いらっしゃいませ」、「お待たせいたしました」、「ありがとうございました」とお伝え。 項番 6. 障がい属性 聴覚・言語障がい 状況 電話リレーサービスからアクセスセンター(コールセンター)へ入電があり、(1)インターネットバンキングにログインできないとの照会および(2)カードローンの借入れができない旨の申し出を受けた。 対応 (1)については、パスワードロックのため再設定方法を案内。(2)では、対応方法を案内。 p13 項番 7. 障がい属性 聴覚・言語障がい 状況 (店舗において)テレビ電話での受付窓口では、補聴器を利用するお客さまには音声が聞こえにくい場合が多いとの申し出を受けた。 対応 テレビ電話での受付窓口ではなく、有人の店頭窓口を案内。 項番 8. 障がい属性 聴覚・言語障がい 状況 銀行アプリ(インターネットバンキングの各種取引等が可能な個人向けスマートフォン専用アプリ)の残高・取引明細部分の表示を拡大して見たいとの申し出を受けた。 対応 《取引明細について》PDFもしくはCSV方式での出力による《拡大表示を可能とする機能》を実装。 項番 9. 障がい属性 聴覚・言語障がい、肢体不自由(高齢の方) 状況 入院中で、手が不自由かつ発声が困難なお客さまから、運用商品を全部解約したいとの申し出を受けた。またコロナ渦であり、病院では家族以外の面談が困難な状況である点も相談を受けた。 対応 家族が病室に入り、ZOOMを通じて本人確認と解約の意思確認を行い、非対面での取引を行う方法を検討したが、発声が難しいことから取り止め。その後、所管部との協議と、《お客さまとも相談のうえ》、念書を用いた対応により、顧客申し出どおり商品の全部解約手続きを完了。 p14 項番 10. 障がい属性 発達障がい 状況 発達障がいのため、窓口の呼び出し音声が苦手との申し出があった。 対応 《呼び出しの際、ロビー担当者より個別にお声がけ》し対応。 項番 11. 障がい属性 意思疎通が困難 状況 意思疎通が難しく、筆談による対応が必要であるお客さまがご来店され、窓口で対応を実施した。 対応 《筆談や身振り手振り》等、お客さまの立場に立って丁寧にヒアリングし、お客さまのご依頼に対応。 支店内でも改めて共有を実施し、引き続き「障害者差別解消法」の趣旨に則った対応を実施することを確認。 以上