基礎資料2(6-2) 障害者権利条約 Convention on the Rights of Persons with Disabilities 外務省 p1 本パンフレットの点字データ・音声データURLは以下の通り (点字データ)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/data/tenji.bes (音声データ)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/data/onsei.mp3 p2 「障害者の権利に関する条約」の締結(※締結とは、国が条約の内容を守ることを約束することを表します。) わかりやすい版 障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)とは 障害者権利条約は、障害者の権利を実現するために国がすべきことを決めています。条約とは、国際的な約束のことです。障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由を守るための約束です。障害者権利条約は、障害者がもともと持っている自分らしさを大事にしています。 障害者権利条約ができるまで 条約は、国どうしの話し合いで作られることが普通です。でも、障害者権利条約を作るための話し合いには、障害者団体も参加することができました。それは、障害者の間で広く知られている「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」(英語でNothing About Us Without Us)という考え方が大事にされたからです。どの国も、本当に障害者のためになる条約を作ろうと思っていたからです。 日本を代表して話し合いに参加した人たちの中には、障害のある人もいました。日本は話し合いがうまくいくよう協力しました。200人ぐらいの日本の障害者団体の人たちが、ニューヨークにある国連の本部まで行きました。そして、国連での話し合いの様子を聴きました。話し合いは5年近く続きました。そして、2006年12月13日に国連で障害者権利条約の全ての内容が決められました。 日本が障害者権利条約を締結(※締結とは、国が条約の内容を守ることを約束することを表します。)するまで 日本は、2007年に条約に署名(サイン)をしました。署名は、条約の内容に基本的に賛成していることを表します。署名の後、日本はまず、障害者制度の改革に力を入れました。(P3の表を見て下さい。) このような改革が行われたことから、2014年1月20日に、日本は条約を締結しました。 p3 (作業者注・表始まり) ・2011年 障害者基本法の内容が新しくされました。 障害者基本法は、障害者についての法律や制度の基本的な考え方を決めています。 ・2012年 障害者総合支援法が作られました。 障害者総合支援法は、障害者福祉のしくみを新しくしたものです。 ・2013年 障害者差別解消法が作られました。 障害者差別解消法は、障害があるという理由で障害者を差別することを禁止しています。また、その人に合った工夫、やり方を配慮することで、障害者が困ることをなくしていくことなどを決めています。障害者への差別をなくすことで、障害のある人もない人も共に生きる社会をつくることを目指しています。 ・2013年 障害者雇用促進法の内容が新しくされました。 障害者雇用促進法は、障害者が働くとき、働きたいときの差別を禁止しています。障害者が働くとき、働きたいときに困ることなどをなくしていくことも決めています。 (作業者注・表終わり) 障害者権利条約の主な内容 ここから、障害者権利条約の大事な内容を説明します。障害者権利条約の中には、「社会モデル」と呼ばれる考え方が反映されています。「社会モデル」とは、「障害」は障害者ではなく社会が作り出しているという考え方です。 平等、差別しないこと、合理的配慮 障害者権利条約の第2条では、障害者に「合理的配慮」をしないことは差別になると決めています。「合理的配慮」とは、障害者が困ることをなくしていくために、周りの人や会社などがすべき無理のない配慮のことです。第5条では、国が障害に基づくあらゆる差別を禁止し、「合理的配慮」がされるよう手続きをとることも決めています。 p4 「障害者の権利に関する条約」の締結 わかりやすい版 障害者が積極的に関わること 第4条では、障害者に関わることを決めるときなどに、障害者とよく相談することを決めています。 バリアをなくしていくこと(施設やサービスの利用のしやすさ) 第9条では、建物や公共の乗り物、情報や通信などが障害者にとって使いやすくなるよう決めています。生活するうえで、なるべく妨げ(バリア)になるものを取り除いていくための決まりを、国が作ることなどを決めています。 自立した生活と地域で共にくらすこと 第19条では、国は、全ての障害者が地域社会で生活できるよう決めています。障害者が障害のない人と平等の権利を持ち、地域社会に参加しやすくするために必要な手続きを国がとることを決めています。 教育 第24条では、教育についての障害者の権利を決めています。国が、障害者があらゆる段階の教育を受けられるようにすべきことを決めています。また、教育を受けるとき、それぞれの障害者にとって必要な「合理的配慮」がされることを決めています。 雇用 第27条では、障害者が働く権利を障害のない人と平等に持つことを決めています。どんな形の働き方でも障害に基づくあらゆる差別を禁止するよう決めています。また、障害者が職場で「合理的配慮」を得られるように国が必要な手続きをとるよう決めています。 p5 文化・スポーツなど 第30条では、障害者が生活の中で文化やスポーツを楽しむ権利について決めています。また、国は障害者が文化的な公演などを楽しみやすいようにするよう決めています。国は障害者がレクリエーションやスポーツに参加できるようにすることも決めています。 国際協力 第32条では、世界の障害者の権利を守っていくため、世界の国々と力をあわせていくことが大事であるということを決めています。 国内の実施と監視 第33条では、国の中で条約の内容が守られているかどうかをチェックするしくみを作るよう決めています。日本では、このしくみとして内閣府に「障害者政策委員会」が作られました。「障害者政策委員会」には、障害者や障害者団体の人たちが委員として参加しています。 国による報告 第34条では、「障害者の権利に関する委員会」について決めています。「障害者の権利に関する委員会」の委員は、条約を締結した国の中から18人が選ばれます。第35条では、条約がどのように実施されているかについて、国が「障害者の権利に関する委員会」に報告しなければならないことを決めています。また、「障害者の権利に関する委員会」が国からの報告の内容をくわしく調べることも決めています。 p6 障害者の声が実を結ぶとき〜 障害者権利条約の締結 障害者権利条約とは 国連総会で、「障害者権利条約」(正式名称:「障害者の権利に関する条約」)が採択されたのは、2006年12月のことです。この条約は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利を実現するための措置等について規定しており、障害者に関する初めての国際条約です。その内容は、条約の原則(無差別、平等、社会への包容等)、政治的権利、教育・健康・労働・雇用に関する権利、社会的な保障、文化的な生活・スポーツへの参加、国際協力、締約国による報告等、幅広いものとなっています。 条約作成に至る国際的な経緯 障害者権利条約が採択されるまでに国連では様々な取組が行われました。1975年には「障害者の権利宣言」が採択され、翌1976年には1981年を「国際障害者年」とすることが決議されました。1982年には「障害者に関する世界行動計画」と「国連障害者の十年」(1983年から1992年まで)決議が採択されました。1993年には「障害者の機会均等化に関する標準規則」が採択され、障害者の社会的障壁を取り除くべきとの理念が示されました。2001年12月の国連総会では、「障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約」決議が採択され、国際条約を起草するための「アドホック委員会」を設置することが決まりました。 “私たちのことを、私たち抜きに決めないで” 条約の起草交渉は、政府間で行われることが通例ですが、このアドホック委員会では、障害者団体は傍聴できるだけでなく、発言する機会も設けられました。それは、障害者の間で使われているスローガン「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」に表れている、障害者が自身に関わる問題に主体的に関与するとの考え方を反映し、名実ともに障害者のための条約を作成しようという、国際社会の総意の表れでした。日本の政府代表団は、障害当事者を顧問に迎え、起草交渉に積極的に関与したほか、日本から延べ200人にのぼる障害者団体の関係者が国連本部(ニューヨーク)に足を運び、実際にアドホック委員会を傍聴しました。2002年から8回にわたるアドホック委員会を経て、2006年12月13日、障害者権利条約が国連総会で採択されました。2008年5月3日、障害者権利条約は、効力発生の要件が整い発効しました。 p7 “締結の前に、国内法の整備を” 日本は、障害者権利条約が採択された翌年の2007年9月28日に条約に署名しました。一方、条約の締結(批准)については、国内の障害当事者等から、条約の締結に先立ち国内法の整備を始めとする障害者に関する制度改革を進めるべきとの意見が寄せられました。政府は、これらの意見も踏まえ、2009年12月に内閣総理大臣を本部長、全閣僚をメンバーとする「障がい者制度改革推進本部」を設置し、集中的に障害者に関する制度改革を進めていくこととしました。これを受けて、障害者基本法の改正(2011年8月)、障害者総合支援法の成立(2012年6月)、障害者差別解消法の成立と障害者雇用促進法の改正(2013年6月)等、様々な制度改革が行われました。このように、条約の締結に先立って国内の障害者制度を充実させたことについては、国内外から評価する声が聞かれています。 日本の障害者権利条約の締結 2013年6月の障害者差別解消法の成立をもって、一通りの障害者制度の充実がなされたことから、同年10月、国会において日本の障害者権利条約の締結について議論が始まりました。そして、同年11月19日には衆議院本会議において、12月4日には参議院本会議において、日本の障害者権利条約の締結が全会一致で承認されました。これを受けて、2014年1月20日、日本は条約の批准書を国連に寄託し、日本は141番目の締約国・機関となりました。 条約締結後の取組 日本が障害者権利条約を締結したことにより、障害者の権利の実現に向けた取組が一層強化されることが期待されます。内閣府に設置されている「障害者政策委員会」は、国内の障害者施策が障害者権利条約の趣旨に沿っているかとの観点からモニタリングを行うことになりました。また、日本は、条約に基づく義務の履行等についての報告を、条約に基づき設置されている「障害者の権利に関する委員会」に提出し、同委員会は、その報告の内容について審査を行うことになりました。さらに、障害者に関する国際協力も一層推進されることが期待されており、日本は国連の場やODA等を通じて、世界の障害者の権利向上に貢献していきます。 p8 条約の主な内容 障害者権利条約における障害のとらえ方 従来の障害のとらえ方は、障害は病気や外傷等から生じる個人の問題であり、医療を必要とするものであるという、いわゆる「医学モデル」の考え方を反映したものでした。一方、障害者権利条約では、障害は主に社会によって作られた障害者の社会への統合の問題であるという、いわゆる「社会モデル」の考え方が随所に反映されています。これは、例えば、足に障害をもつ人が建物を利用しづらい場合、足に障害があることが原因ではなく、段差がある、エレベーターがない、といった建物の状況に原因(社会的障壁)があるという考え方です。 国連の議論においては、主に1980年代の様々な取組を通じて障害に対する知識と理解が深まり、障害者の医療や支援に対するニーズ(リハビリテーション等)と障害者が直面する社会的障壁の双方に取り組む必要性が認識されるようになり、この条約もそうした認識に基づき作成されました。 目的 この条約の目的は、「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」です。この条約では、障害者には「長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む」とされています。 平等・無差別と合理的配慮 条約の第2条(定義)では、障害者の人権と基本的自由を確保するための「必要かつ適当な変更及び調整」であって、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」を「合理的配慮」と定義しています。これは、例えば車椅子用に段差に渡し板を敷いたり、窓口で筆談や読み上げ等により理解を助けること等が当たります。そして、障害に基づく差別には「合理的配慮の否定」が含まれます。また、第4条(一般的義務)では、締約国に障害者に対する差別となる既存の法律等を修正・撤廃するための適切な措置をとることを求めているほか、第5条(平等及び無差別)では、障害に基づくあらゆる差別を禁止することや、合理的配慮の提供が確保されるための適当な措置をとることを求めています。この「合理的配慮の否定」を障害に基づく差別に含めたことは、条約の特徴の一つとされています。 意思決定過程における障害当事者の関与 条約の第4条(一般的義務)では、締約国は障害者に関する問題についての意思決定過程において、障害者と緊密に協議し、障害者を積極的に関与させるよう定めています。また、第35条(締約国による報告)では、条約に基づき設置されている「障害者の権利に関する委員会」に対する報告を作成するに当たり、先の第4条の規定に十分な考慮を払うこととされています。 これらの規定には、いわゆる“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)の考え方を背景として、障害当事者の声を重視するというこの条約の特徴が表れています。 p9 施設・サービス等の利用の容易さ 条約の第9条(施設及びサービス等の利用の容易さ)では、締約国は、障害者が輸送機関、情報通信等の施設・サービスを利用する機会を有することを確保するため、適当な措置をとることを定めています。この措置には、施設・サービス等の利用の容易さに対する妨げ・障壁を特定し、撤廃することが含まれます。 自立した生活・地域社会への包容 条約の第19条(自立した生活及び地域社会への包容)では、締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認め、障害者が、この権利を完全に享受し、地域社会に完全に包容され、参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとることを定めています。 教育 条約の第24条(教育)では、締約国は教育についての障害者の権利を認めることを定めています。障害者が精神的・身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とすること等を目的として、締約国は障害者を包容するあらゆる段階の教育制度や生涯学習を確保することとされています。 また、その権利の実現に当たり、障害に基づいて一般的な教育制度から排除されないこと、個々の障害者にとって必要な「合理的配慮」が提供されること等が定められています。 雇用 条約の第27条(雇用及び労働)では、締約国は、障害者が、障害のない人と平等に労働に関する権利を有することを認め、その権利が実現されることを保障・促進することを定めています。特にあらゆる形態の雇用における、障害に基づく差別の禁止や、職場での障害者に対する「合理的配慮」の確保等のため、締約国が適当な措置をとることを定めています。 p10 条約に関する日本の取組 障害者とは 日本では、2011年の改正前の障害者基本法では、障害者は「身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」と規定されていました。 障害者権利条約における関連規定を踏まえ、2011年に障害者基本法が改正され、いわゆる「社会モデル」の考え方を反映し、障害者は「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と規定されました。同様に、社会的障壁についても「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」と規定されました。 平等 条約の第2条(「障害に基づく差別」の定義)や第5条(平等及び無差別)の規定に関して、日本では、2011年の障害者基本法の改正時に、同法の「基本原則」に「差別の禁止」が規定され、障害者が社会的障壁の除去を必要とし、そのための負担が過重でない場合は、その障壁を除去するための措置が実施されなければならないことが定められました。 この規定を具体化する法律が障害者差別解消法です。この法律は、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、障害を理由とする差別を解消することを目的としています。この法律では、障害を理由とする差別を「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」の二つに整理しています。「不当な差別的取扱い」とは、障害があるというだけで、商品やサービスの提供を拒否するような行為をいい、国の行政機関や地方公共団体、事業者の区別なく禁止されています。また、障害者等から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合に、その実施が負担になりすぎない範囲で「合理的な配慮」を行うことも求められており、この合理的な配慮を欠くことで障害者の権利利益が侵害される場合は、これも差別に当たるとされています。具体的に何が不当な差別に当たり、どのようなことが合理的な配慮として求められるのかは、個々の状況で判断されるため、この法律では、対応要領や対応指針で具体例を示すことにしています。 意思決定過程における障害当事者の関与 日本では、2011年の障害者基本法の改正で障害者、障害者の自立・社会参加に関する事業の従事者及び学識経験者から構成される「障害者政策委員会」が設置されました。同委員会は障害者基本計画の策定に当たり「調査審議し」、また、同計画の実施状況を監視し、必要に応じて「内閣総理大臣又は関係各大臣に対し意見を述べる」こと等が定められています。 p11 バリアフリー 条約の第9条(施設及びサービスの利用の容易さ)に関して、日本では「どこでも、誰でも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づいて高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)が制定されています。この法律には、建築物や旅客施設、車両等を新設等する際に、バリアフリー基準に適合させること等が定められています。このようなハード面の取組に加え、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め協力を求める「心のバリアフリー」についても定められています。 このほかユニバーサル社会の実現に向け、ICT(情報通信技術)による歩行者の移動支援や、障害者を含む誰もが安心して旅行を楽しむことができる「ユニバーサルツーリズム」等が進められています。 情報バリアフリーに向けたICTの活用については、障害者の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発が行われています。また、障害者の社会参加を支援するシステムの開発・普及や、手話や点訳等によるコミュニケーション支援体制の充実も進められています。 地域における共生 条約の第19条(自立した生活及び地域社会への包容)に関して、障害者基本法では、障害の有無にかかわらず共生する社会の実現を図るに当たって旨とするべき事項として「全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること」が規定されています。また、2011年の同法の改正で新たに、全ての障害者は、可能な限り、「地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと」「言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」が規定されました。 また、同法では、国及び地方公共団体は、障害者が「医療、介護、保健、生活支援その他自立のための適切な支援を受けられるよう必要な施策」を講じることが義務付けられています。これに関連して、障害者総合支援法に基づき、地域において暮らすことができるよう、障害福祉サービス等の充実が図られています。 p12 条約に関する日本の取組 教育 条約の第24条(教育)に関して、障害者を包容する教育制度(いわゆるインクルーシブ教育システム)とは、障害のある児童がその潜在能力を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加できるようにするという教育理念のもと、障害のある児童と障害のない児童とが可能な限り一緒に教育を受けられるよう配慮することと考えられています。 日本では、同条の内容を踏まえ、2011年に障害者基本法が改正され、「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮」すること等が新たに規定されました。 2013年に、学校教育法施行令が改正され、従来、一定の程度以上の障害のある児童生徒は特別支援学校への就学が原則とされ、小中学校への就学は例外だったものが、障害の状態等を踏まえ、総合的な観点から就学先を決めるようになりました。 さらに、一人ひとりのニーズに応じたきめ細かな指導を行うため、通級指導の教員の増員や、特別支援教育支援員の経費に対する地方財政措置が行われています。また、障害のある児童等に対する個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成が進められているほか、弱視の児童等のための拡大教科書等の普及促進、教育・医療・福祉・保健・労働といった関係機関の連携等による、発達障害を含む障害のある児童に対する支援に必要な様々な施策が進められています。 雇用 日本では、条約の第27条(労働及び雇用)の趣旨を踏まえ、2013年6月に障害者雇用促進法が一部改正され、雇用分野における障害者差別の禁止や、精神障害者を障害者の法定雇用率の算定基礎に加えること等が盛り込まれました。 国や地方公共団体では、知的障害者を非常勤職員として雇用し、一定の業務経験の後に企業への就職を目指す「チャレンジ雇用」が進められています。 障害者の雇用に伴う事業主の負担を軽減するため、障害者雇用納付金制度が設けられ、法定雇用率を未達成の企業からは納付金を徴収し、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には障害者雇用調整金が支給される等様々な助成が行われています。 2013年4月からは、障害者優先調達推進法の制定を受け、国や地方公共団体、独立行政法人等の公的機関による障害者就労施設等からの優先的な購入も行われています。このほか、全国障害者技能競技大会「アビリンピック」の開催を通じて、広く社会の障害者に対する理解と認識が深められ、雇用の促進が図られています。 p13 文化・スポーツ 条約の第30条(文化的生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加)に定められている障害者の芸術活動に関して、芸術活動に取り組む障害者やその家族、支援者等に対する具体的な支援等の振興が進められています。 また、障害者も楽しめる舞台芸術公演、展覧会等も各地で開催されるようになっています。国立劇場や国立美術館、国立博物館等では、障害者の入場料の割引や無料措置が行われているものもあります。また、全国各地の劇場や美術館、博物館でも、車いす用のトイレやエレベーターの設置等、環境改善が進められています。 障害者スポーツに関しては、2011年に成立したスポーツ基本法において、障害者の自主的かつ積極的なスポーツを推進するとの理念が掲げられています。同法を受けて、障害者スポーツ指導者の養成、全国障害者スポーツ大会の開催等、障害者スポーツの裾野を拡大するとともに、パラリンピックやデフリンピック等の競技大会への派遣や、トップアスリートに対する強化支援等の障害者スポーツにおける国際競技力向上が図られています。 国際協力 日本はこれまで、障害者施策に関する技術や経験を数多く蓄積してきました。これらを、政府開発援助(ODA)の活動を通じて開発途上国の障害者施策に役立てることは、極めて有効であり、重要です。条約の第32条(国際協力)を踏まえ、障害と開発に関する国際協力がこれまで以上に進められています。 具体的には、鉄道建設や空港建設にバリアフリー設計を取り入れる等の有償資金協力、リハビリテーション施設の整備等の無償資金協力、障害者の社会参加に関する研修員の受入れや専門家・JICA(国際協力機構)ボランティアの派遣等の技術協力が行われています。また、日本NGO連携無償資金協力を通じた、障害者への職業訓練等の、草の根レベルの支援も行われています。 これらの協力においては、障害当事者を中心とする意思決定や実施が重視されており、日本の協力によりタイのバンコクに設立された「アジア太平洋障害者センター」、ODA事業として初めて盲ろう当事者が専門家として派遣された、ウズベキスタンでの「タシケント市における盲ろう者のコミュニケーション支援」等、様々な事業で約10年間に延べ100人以上の障害当事者が派遣されています。 こうした直接的な援助のほか、国連における協力や地域協力のため、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)を通じた活動支援等も行われています。 p14 条約の実施に関する仕組み 国内の仕組み ―条約の実施を監視するための枠組み― 条約の第33条(国内における実施及び監視)は、締約国が自国の法律上・行政上の制度に従って「条約の実施を監視するための枠組み」を自国内に設置することを定めています。 日本では、この規定を念頭に2011年に障害者基本法が改正され、障害者、障害者の自立・社会参加に関する事業の従事者及び学識経験者から構成される「障害者政策委員会」が設置されています。委員は内閣総理大臣により任命されますが、その構成については、同委員会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた調査審議が行えるよう配慮されることが定められています。 同法では、政府は障害者施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を策定することが定められています。障害者政策委員会は、この障害者基本計画の作成・変更について調査審議を行い、必要に応じて内閣総理大臣又は関係各大臣に対して意見を述べることとされています。また、同委員会は障害者基本計画の実施状況を監視し、必要に応じて内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告を行うこととされています。どちらの場合も、同委員会は関係行政機関の長に対して、資料の提出等の協力を求めることができます。このような機能を通じて、同委員会は条約の実施を監視することになります。 この「条約の実施を監視するための枠組み」は、「合理的配慮の否定」に関する規定と同様、これまでの人権条約には見られない新たな規定であり、障害者権利条約の特徴ということができます。 国際的な仕組み ―障害者の権利に関する委員会― 条約の第35条(締約国による報告)では、締約国は、条約に基づく義務を履行するためにとった措置等に関する包括的な報告を「障害者の権利に関する委員会」に提出することを定めています。この報告の作成に当たっては、公開された透明性のある過程を踏むことを検討するとともに、障害者の関与について十分な考慮を払うことが求められています。 「障害者の権利に関する委員会」は、締結国から選ばれた18人の専門家から構成され(第34条)、締結国による報告を検討し、報告について提案や勧告を行うこと(第36条)が定められています。この仕組みにより、締約国は条約の実施について p15 障害者の権利に関する条約 (※以下、パンフレットには左に和訳、右に原文が記載されているが、今回の資料においては和訳のみの記載とする。) 前文 この条約の締約国は、 (a)国際連合憲章において宣明された原則が、人類社会の全ての構成員の固有の尊厳及び価値並びに平等のかつ奪い得ない権利が世界における自由、正義及び平和の基礎を成すものであると認めていることを想起し、 (b)国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、全ての人はいかなる差別もなしに同宣言及びこれらの規約に掲げる全ての権利及び自由を享有することができることを宣明し、及び合意したことを認め、 (c)全ての人権及び基本的自由が普遍的であり、不可分のものであり、相互に依存し、かつ、相互に関連を有すること並びに障害者が全ての人権及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを保障することが必要であることを再確認し、 (d)経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約、児童の権利に関する条約及び全ての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約を想起し、 (e)障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め、 (f)障害者に関する世界行動計画及び障害者の機会均等化に関する標準規則に定める原則及び政策上の指針が、障害者の機会均等を更に促進するための国内的、地域的及び国際的な政策、計画及び行動の促進、作成及び評価に影響を及ぼす上で重要であることを認め、 (g)持続可能な開発に関連する戦略の不可分の一部として障害に関する問題を主流に組み入れることが重要であることを強調し、 (h)また、いかなる者に対する障害に基づく差別も、人間の固有の尊厳及び価値を侵害するものであることを認め、 (i)さらに、障害者の多様性を認め、 (j)全ての障害者(より多くの支援を必要とする障害者を含む。)の人権を促進し、及び保護することが必要であることを認め、 (k)これらの種々の文書及び約束にもかかわらず、障害者が、世界の全ての地域において、社会の平等な構成員としての参加を妨げる障壁及び人権侵害に依然として直面していることを憂慮し、 p16 (l)あらゆる国(特に開発途上国)における障害者の生活条件を改善するための国際協力が重要であることを認め、 (m)障害者が地域社会における全般的な福祉及び多様性に対して既に貴重な貢献をしており、又は貴重な貢献をし得ることを認め、また、障害者による人権及び基本的自由の完全な享有並びに完全な参加を促進することにより、その帰属意識が高められること並びに社会の人的、社会的及び経済的開発並びに貧困の撲滅に大きな前進がもたらされることを認め、 (n)障害者にとって、個人の自律及び自立(自ら選択する自由を含む。)が重要であることを認め、 (o)障害者が、政策及び計画(障害者に直接関連する政策及び計画を含む。)に係る意思決定の過程に積極的に関与する機会を有すべきであることを考慮し、 (p)人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的な、種族的な、先住民族としての若しくは社会的な出身、財産、出生、年齢又は他の地位に基づく複合的又は加重的な形態の差別を受けている障害者が直面する困難な状況を憂慮し、 (q)障害のある女子が、家庭の内外で暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取を受ける一層大きな危険にしばしばさらされていることを認め、 (r)障害のある児童が、他の児童との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を完全に享有すべきであることを認め、また、このため、児童の権利に関する条約の締約国が負う義務を想起し、 (s)障害者による人権及び基本的自由の完全な享有を促進するためのあらゆる努力に性別の視点を組み込む必要があることを強調し、 (t)障害者の大多数が貧困の状況下で生活している事実を強調し、また、この点に関し、貧困が障害者に及ぼす悪影響に対処することが真に必要であることを認め、 (u)国際連合憲章に定める目的及び原則の十分な尊重並びに人権に関する適用可能な文書の遵守に基づく平和で安全な状況が、特に武力紛争及び外国による占領の期間中における障害者の十分な保護に不可欠であることに留意し、 (v)障害者が全ての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするに当たっては、物理的、社会的、経済的及び文化的な環境並びに健康及び教育を享受しやすいようにし、並びに情報及び通信を利用しやすいようにすることが重要であることを認め、 (w)個人が、他人に対し及びその属する地域社会に対して義務を負うこと並びに国際人権章典において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識し、 (x)家族が、社会の自然かつ基礎的な単位であること並びに社会及び国家による保護を受ける権利を有することを確信し、また、障害者及びその家族の構成員が、障害者の権利の完全かつ平等な享有に向けて家族が貢献することを可能とするために必要な保護及び支援を受けるべきであることを確信し、 p17 (y)障害者の権利及び尊厳を促進し、及び保護するための包括的かつ総合的な国際条約が、開発途上国及び先進国において、障害者の社会的に著しく不利な立場を是正することに重要な貢献を行うこと並びに障害者が市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的分野に均等な機会により参加することを促進することを確信して、 次のとおり協定した。 第一条 目的 この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。 障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。 第二条 定義 この条約の適用上、 「意思疎通」とは、言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用しやすいマルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいう。 「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。 「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。 「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。 「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。 第三条 一般原則 この条約の原則は、次のとおりとする。 (a)固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立の尊重 (b)無差別 (c)社会への完全かつ効果的な参加及び包容 (d)差異の尊重並びに人間の多様性の一部及び人類の一員としての障害者の受入れ (e)機会の均等 (f)施設及びサービス等の利用の容易さ (g)男女の平等 (h)障害のある児童の発達しつつある能力の尊重及び障害のある児童がその同一性を保持する権利の尊重 p18 第四条 一般的義務 1 締約国は、障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。 (a)この条約において認められる権利の実現のため、全ての適当な立法措置、行政措置その他の措置をとること。 (b)障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するための全ての適当な措置(立法を含む。)をとること。 (c)全ての政策及び計画において障害者の人権の保護及び促進を考慮に入れること。 (d)この条約と両立しないいかなる行為又は慣行も差し控えること。また、公の当局及び機関がこの条約に従って行動することを確保すること。 (e)いかなる個人、団体又は民間企業による障害に基づく差別も撤廃するための全ての適当な措置をとること。 (f)第二条に規定するユニバーサルデザインの製品、サービス、設備及び施設であって、障害者に特有のニーズを満たすために必要な調整が可能な限り最小限であり、かつ、当該ニーズを満たすために必要な費用が最小限であるべきものについての研究及び開発を実施し、又は促進すること。また、当該ユニバーサルデザインの製品、サービス、設備及び施設の利用可能性及び使用を促進すること。さらに、基準及び指針を作成するに当たっては、ユニバーサルデザインが当該基準及び指針に含まれることを促進すること。 (g)障害者に適した新たな機器(情報通信機器、移動補助具、補装具及び支援機器を含む。)についての研究及び開発を実施し、又は促進し、並びに当該新たな機器の利用可能性及び使用を促進すること。この場合において、締約国は、負担しやすい費用の機器を優先させる。 (h)移動補助具、補装具及び支援機器(新たな機器を含む。)並びに他の形態の援助、支援サービス及び施設に関する情報であって、障害者にとって利用しやすいものを提供すること。 (i)この条約において認められる権利によって保障される支援及びサービスをより良く提供するため、障害者と共に行動する専門家及び職員に対する当該権利に関する研修を促進すること。 2 各締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、これらの権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、また、必要な場合には国際協力の枠内で、措置をとることを約束する。ただし、この条約に定める義務であって、国際法に従って直ちに適用されるものに影響を及ぼすものではない。 3 締約国は、この条約を実施するための法令及び政策の作成及び実施において、並びに障害者に関する問題についての他の意思決定過程において、障害者(障害のある児童を含む。以下この3において同じ。)を代表する団体を通じ、障害者と緊密に協議し、及び障害者を積極的に関与させる。 4 この条約のいかなる規定も、締約国の法律又は締約国について効力を有する国際法に含まれる規定であって障害者の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。この条約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ、又は存する人権及び基本的自由については、この条約がそれらの権利若しくは自由を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利及び自由を制限し、又は侵してはならない。 p19 5 この条約は、いかなる制限又は例外もなしに、連邦国家の全ての地域について適用する。 第五条 平等及び無差別 1 締約国は、全ての者が、法律の前に又は法律に基づいて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認める。 2 締約国は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保障する。 3 締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するための全ての適当な措置をとる。 4 障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、この条約に規定する差別と解してはならない。 第六条 障害のある女子 1 締約国は、障害のある女子が複合的な差別を受けていることを認識するものとし、この点に関し、障害のある女子が全ての人権及び基本的自由を完全かつ平等に享有することを確保するための措置をとる。 2 締約国は、女子に対してこの条約に定める人権及び基本的自由を行使し、及び享有することを保障することを目的として、女子の完全な能力開発、向上及び自律的な力の育成を確保するための全ての適当な措置をとる。 第七条 障害のある児童 1 締約国は、障害のある児童が他の児童との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を完全に享有することを確保するための全ての必要な措置をとる。 2 障害のある児童に関する全ての措置をとるに当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。 3 締約国は、障害のある児童が、自己に影響を及ぼす全ての事項について自由に自己の意見を表明する権利並びにこの権利を実現するための障害及び年齢に適した支援を提供される権利を有することを確保する。この場合において、障害のある児童の意見は、他の児童との平等を基礎として、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。 第八条 意識の向上 1 締約国は、次のことのための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する。 (a)障害者に関する社会全体(各家庭を含む。)の意識を向上させ、並びに障害者の権利及び尊厳に対する尊重を育成すること。 p20 (b)あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行(性及び年齢に基づくものを含む。)と戦うこと。 (c)障害者の能力及び貢献に関する意識を向上させること。 2 このため、1の措置には、次のことを含む。 (a)次のことのための効果的な公衆の意識の啓発活動を開始し、及び維持すること。 (i)障害者の権利に対する理解を育てること。 (ii)障害者に対する肯定的認識及び一層の社会の啓発を促進すること。 (iii)障害者の技能、長所及び能力並びに職場及び労働市場に対する障害者の貢献についての認識を促進すること。 (b)教育制度の全ての段階(幼年期からの全ての児童に対する教育制度を含む。)において、障害者の権利を尊重する態度を育成すること。 (c)全ての報道機関が、この条約の目的に適合するように障害者を描写するよう奨励すること。 (d)障害者及びその権利に関する啓発のための研修計画を促進すること。 第九条 施設及びサービス等の利用の容易さ 1 締約国は、障害者が自立して生活し、及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にすることを目的として、障害者が、他の者との平等を基礎として、都市及び農村の双方において、物理的環境、輸送機関、情報通信(情報通信機器及び情報通信システムを含む。)並びに公衆に開放され、又は提供される他の施設及びサービスを利用する機会を有することを確保するための適当な措置をとる。この措置は、施設及びサービス等の利用の容易さに対する妨げ及び障壁を特定し、及び撤廃することを含むものとし、特に次の事項について適用する。 (a)建物、道路、輸送機関その他の屋内及び屋外の施設(学校、住居、医療施設及び職場を含む。) (b)情報、通信その他のサービス(電子サービス及び緊急事態に係るサービスを含む。) 2 締約国は、また、次のことのための適当な措置をとる。 (a)公衆に開放され、又は提供される施設及びサービスの利用の容易さに関する最低基準及び指針を作成し、及び公表し、並びに当該最低基準及び指針の実施を監視すること。 (b)公衆に開放され、又は提供される施設及びサービスを提供する民間の団体が、当該施設及びサービスの障害者にとっての利用の容易さについてあらゆる側面を考慮することを確保すること。 (c)施設及びサービス等の利用の容易さに関して障害者が直面する問題についての研修を関係者に提供すること。 (d)公衆に開放される建物その他の施設において、点字の表示及び読みやすく、かつ、理解しやすい形式の表示を提供すること。 (e)公衆に開放される建物その他の施設の利用の容易さを促進するため、人又は動物による支援及び仲介する者(案内者、朗読者及び専門の手話通訳を含む。)を提供すること。 p21 (f)障害者が情報を利用する機会を有することを確保するため、障害者に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること。 (g)障害者が新たな情報通信機器及び情報通信システム(インターネットを含む。)を利用する機会を有することを促進すること。 (h)情報通信機器及び情報通信システムを最小限の費用で利用しやすいものとするため、早い段階で、利用しやすい情報通信機器及び情報通信システムの設計、開発、生産及び流通を促進すること。 第十条 生命に対する権利 締約国は、全ての人間が生命に対する固有の権利を有することを再確認するものとし、障害者が他の者との平等を基礎としてその権利を効果的に享有することを確保するための全ての必要な措置をとる。 第十一条 危険な状況及び人道上の緊急事態 締約国は、国際法(国際人道法及び国際人権法を含む。)に基づく自国の義務に従い、危険な状況(武力紛争、人道上の緊急事態及び自然災害の発生を含む。)において障害者の保護及び安全を確保するための全ての必要な措置をとる。 第十二条 法律の前にひとしく認められる権利 1 締約国は、障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。 2 締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。 3 締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置をとる。 4 締約国は、法的能力の行使に関連する全ての措置において、濫用を防止するための適当かつ効果的な保障を国際人権法に従って定めることを確保する。当該保障は、法的能力の行使に関連する措置が、障害者の権利、意思及び選好を尊重すること、利益相反を生じさせず、及び不当な影響を及ぼさないこと、障害者の状況に応じ、かつ、適合すること、可能な限り短い期間に適用されること並びに権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関による定期的な審査の対象となることを確保するものとする。当該保障は、当該措置が障害者の権利及び利益に及ぼす影響の程度に応じたものとする。 5 締約国は、この条の規定に従うことを条件として、障害者が財産を所有し、又は相続し、自己の会計を管理し、及び銀行貸付け、抵当その他の形態の金融上の信用を利用する均等な機会を有することについての平等の権利を確保するための全ての適当かつ効果的な措置をとるものとし、障害者がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。 第十三条 司法手続の利用の機会 1 締約国は、障害者が全ての法的手続(捜査段階その他予備的な段階を含む。)において直接及び間接の参加者(証人を含む。)として効果的な役割を果たすことを容易にするため、手続上の配慮及び年齢に適した配慮が提供されること等により、障害者が他の者との平等を基礎として司法手続を利用する効果的な機会を有することを確保する。 p22 2 締約国は、障害者が司法手続を利用する効果的な機会を有することを確保することに役立てるため、司法に係る分野に携わる者(警察官及び刑務官を含む。)に対する適当な研修を促進する。 第十四条 身体の自由及び安全 1 締約国は、障害者に対し、他の者との平等を基礎として、次のことを確保する。 (a)身体の自由及び安全についての権利を享有すること。 (b)不法に又は恣意的に自由を奪われないこと、いかなる自由の剥奪も法律に従って行われること及びいかなる場合においても自由の剥奪が障害の存在によって正当化されないこと。 2 締約国は、障害者がいずれの手続を通じて自由を奪われた場合であっても、当該障害者が、他の者との平等を基礎として国際人権法による保障を受ける権利を有すること並びにこの条約の目的及び原則に従って取り扱われること(合理的配慮の提供によるものを含む。)を確保する。 第十五条 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由 1 いかなる者も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、いかなる者も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。 2 締約国は、障害者が、他の者との平等を基礎として、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けることがないようにするため、全ての効果的な立法上、行政上、司法上その他の措置をとる。 第十六条 搾取、暴力及び虐待からの自由 1 締約国は、家庭の内外におけるあらゆる形態の搾取、暴力及び虐待(性別に基づくものを含む。)から障害者を保護するための全ての適当な立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置をとる。 2 また、締約国は、特に、障害者並びにその家族及び介護者に対する適当な形態の性別及び年齢に配慮した援助及び支援(搾取、暴力及び虐待の事案を防止し、認識し、及び報告する方法に関する情報及び教育を提供することによるものを含む。)を確保することにより、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待を防止するための全ての適当な措置をとる。締約国は、保護事業が年齢、性別及び障害に配慮したものであることを確保する。 3 締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待の発生を防止するため、障害者に役立つことを意図した全ての施設及び計画が独立した当局により効果的に監視されることを確保する。 4 締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力又は虐待の被害者となる障害者の身体的、認知的及び心理的な回復、リハビリテーション並びに社会復帰を促進するための全ての適当な措置(保護事業の提供によるものを含む。)をとる。このような回復及び復帰は、障害者の健康、福祉、自尊心、尊厳及び自律を育成する環境において行われるものとし、性別及び年齢に応じたニーズを考慮に入れる。 p23 5 締約国は、障害者に対する搾取、暴力及び虐待の事案が特定され、捜査され、及び適当な場合には訴追されることを確保するための効果的な法令及び政策(女子及び児童に重点を置いた法令及び政策を含む。)を策定する。 第十七条 個人をそのままの状態で保護すること 全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する。 第十八条 移動の自由及び国籍についての権利 1 締約国は、障害者に対して次のことを確保すること等により、障害者が他の者との平等を基礎として移動の自由、居住の自由及び国籍についての権利を有することを認める。 (a)国籍を取得し、及び変更する権利を有すること並びにその国籍を恣意的に又は障害に基づいて奪われないこと。 (b)国籍に係る文書若しくは身元に係る他の文書を入手し、所有し、及び利用すること又は移動の自由についての権利の行使を容易にするために必要とされる関連手続(例えば、出入国の手続)を利用することを、障害に基づいて奪われないこと。 (c)いずれの国(自国を含む。)からも自由に離れることができること。 (d)自国に戻る権利を恣意的に又は障害に基づいて奪われないこと。 2 障害のある児童は、出生の後直ちに登録される。障害のある児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知り、かつ、その父母によって養育される権利を有する。 第十九条 自立した生活及び地域社会への包容 この条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。この措置には、次のことを確保することによるものを含む。 (a)障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。 (b)地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること。 (c)一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること。 第二十条 個人の移動を容易にすること 締約国は、障害者自身ができる限り自立して移動することを容易にすることを確保するための効果的な措置をとる。この措置には、次のことによるものを含む。 p24 (a)障害者自身が、自ら選択する方法で、自ら選択する時に、かつ、負担しやすい費用で移動することを容易にすること。 (b)障害者が質の高い移動補助具、補装具、支援機器、人又は動物による支援及び仲介する者を利用する機会を得やすくすること(これらを負担しやすい費用で利用可能なものとすることを含む。)。 (c)障害者及び障害者と共に行動する専門職員に対し、移動のための技能に関する研修を提供すること。 (d)移動補助具、補装具及び支援機器を生産する事業体に対し、障害者の移動のあらゆる側面を考慮するよう奨励すること。 第二十一条 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会 締約国は、障害者が、第二条に定めるあらゆる形態の意思疎通であって自ら選択するものにより、表現及び意見の自由(他の者との平等を基礎として情報及び考えを求め、受け、及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することができることを確保するための全ての適当な措置をとる。この措置には、次のことによるものを含む。 (a)障害者に対し、様々な種類の障害に相応した利用しやすい様式及び機器により、適時に、かつ、追加の費用を伴わず、一般公衆向けの情報を提供すること。 (b)公的な活動において、手話、点字、補助的及び代替的な意思疎通並びに障害者が自ら選択する他の全ての利用しやすい意思疎通の手段、形態及び様式を用いることを受け入れ、及び容易にすること。 (c)一般公衆に対してサービス(インターネットによるものを含む。)を提供する民間の団体が情報及びサービスを障害者にとって利用しやすい又は使用可能な様式で提供するよう要請すること。 (d)マスメディア(インターネットを通じて情報を提供する者を含む。)がそのサービスを障害者にとって利用しやすいものとするよう奨励すること。 (e)手話の使用を認め、及び促進すること。 第二十二条 プライバシーの尊重 1 いかなる障害者も、居住地又は生活施設のいかんを問わず、そのプライバシー、家族、住居又は通信その他の形態の意思疎通に対して恣意的に又は不法に干渉されず、また、名誉及び信用を不法に攻撃されない。障害者は、このような干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。 2 締約国は、他の者との平等を基礎として、障害者の個人、健康及びリハビリテーションに関する情報に係るプライバシーを保護する。 第二十三条 家庭及び家族の尊重 1 締約国は、他の者との平等を基礎として、婚姻、家族、親子関係及び個人的な関係に係る全ての事項に関し、障害者に対する差別を撤廃するための効果的かつ適当な措置をとる。この措置は、次のことを確保することを目的とする。 (a)婚姻をすることができる年齢の全ての障害者が、両当事者の自由かつ完全な合意に基づいて婚姻をし、かつ、家族を形成する権利を認められること。 p25 (b)障害者が子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する権利を認められ、また、障害者が生殖及び家族計画について年齢に適した情報及び教育を享受する権利を認められること。さらに、障害者がこれらの権利を行使することを可能とするために必要な手段を提供されること。 (c)障害者(児童を含む。)が、他の者との平等を基礎として生殖能力を保持すること。 2 締約国は、子の後見、養子縁組又はこれらに類する制度が国内法令に存在する場合には、それらの制度に係る障害者の権利及び責任を確保する。あらゆる場合において、子の最善の利益は至上である。締約国は、障害者が子の養育についての責任を遂行するに当たり、当該障害者に対して適当な援助を与える。 3 締約国は、障害のある児童が家庭生活について平等の権利を有することを確保する。締約国は、この権利を実現し、並びに障害のある児童の隠匿、遺棄、放置及び隔離を防止するため、障害のある児童及びその家族に対し、包括的な情報、サービス及び支援を早期に提供することを約束する。 4 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。いかなる場合にも、児童は、自己の障害又は父母の一方若しくは双方の障害に基づいて父母から分離されない。 5 締約国は、近親の家族が障害のある児童を監護することができない場合には、一層広い範囲の家族の中で代替的な監護を提供し、及びこれが不可能なときは、地域社会の中で家庭的な環境により代替的な監護を提供するようあらゆる努力を払う。 第二十四条 教育 1 締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容するあらゆる段階の教育制度及び生涯学習を確保する。当該教育制度及び生涯学習は、次のことを目的とする。 (a)人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。 (b)障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。 (c)障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。 2 締約国は、1の権利の実現に当たり、次のことを確保する。 (a)障害者が障害に基づいて一般的な教育制度から排除されないこと及び障害のある児童が障害に基づいて無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと。 (b)障害者が、他の者との平等を基礎として、自己の生活する地域社会において、障害者を包容し、質が高く、かつ、無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することができること。 p26 (c)個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。 (d)障害者が、その効果的な教育を容易にするために必要な支援を一般的な教育制度の下で受けること。 (e)学問的及び社会的な発達を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられること。 3 締約国は、障害者が教育に完全かつ平等に参加し、及び地域社会の構成員として完全かつ平等に参加することを容易にするため、障害者が生活する上での技能及び社会的な発達のための技能を習得することを可能とする。このため、締約国は、次のことを含む適当な措置をとる。 (a)点字、代替的な文字、意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式並びに定位及び移動のための技能の習得並びに障害者相互による支援及び助言を容易にすること。 (b)手話の習得及び聾社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。 (c)盲人、聾者又は盲聾者(特に盲人、聾者又は盲聾者である児童)の教育が、その個人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段で、かつ、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において行われることを確保すること。 4 締約国は、1の権利の実現の確保を助長することを目的として、手話又は点字について能力を有する教員(障害のある教員を含む。)を雇用し、並びに教育に従事する専門家及び職員(教育のいずれの段階において従事するかを問わない。)に対する研修を行うための適当な措置をとる。この研修には、障害についての意識の向上を組み入れ、また、適当な意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式の使用並びに障害者を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れるものとする。 5 締約国は、障害者が、差別なしに、かつ、他の者との平等を基礎として、一般的な高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習を享受することができることを確保する。このため、締約国は、合理的配慮が障害者に提供されることを確保する。 第二十五条 健康 締約国は、障害者が障害に基づく差別なしに到達可能な最高水準の健康を享受する権利を有することを認める。締約国は、障害者が性別に配慮した保健サービス(保健に関連するリハビリテーションを含む。)を利用する機会を有することを確保するための全ての適当な措置をとる。締約国は、特に、次のことを行う。 (a)障害者に対して他の者に提供されるものと同一の範囲、質及び水準の無償の又は負担しやすい費用の保健及び保健計画(性及び生殖に係る健康並びに住民のための公衆衛生計画の分野のものを含む。)を提供すること。 (b)障害者が特にその障害のために必要とする保健サービス(早期発見及び適当な場合には早期関与並びに特に児童及び高齢者の新たな障害を最小限にし、及び防止するためのサービスを含む。)を提供すること。 (c)これらの保健サービスを、障害者自身が属する地域社会(農村を含む。)の可能な限り近くにおいて提供すること。 (d)保健に従事する者に対し、特に、研修を通じて及び公私の保健に関する倫理基準を広く知らせることによって障害者の人権、尊厳、自律及びニーズに関する意識を高めることにより、他の者と同一の質の医療(例えば、事情を知らされた上での自由な同意を基礎とした医療)を障害者に提供するよう要請すること。 p27 (e)健康保険及び国内法により認められている場合には生命保険の提供に当たり、公正かつ妥当な方法で行い、及び障害者に対する差別を禁止すること。 (f)保健若しくは保健サービス又は食糧及び飲料の提供に関し、障害に基づく差別的な拒否を防止すること。 第二十六条 ハビリテーション(適応のための技能の習得)及びリハビリテーション 1 締約国は、障害者が、最大限の自立並びに十分な身体的、精神的、社会的及び職業的な能力を達成し、及び維持し、並びに生活のあらゆる側面への完全な包容及び参加を達成し、及び維持することを可能とするための効果的かつ適当な措置(障害者相互による支援を通じたものを含む。)をとる。このため、締約国は、特に、保健、雇用、教育及び社会に係るサービスの分野において、ハビリテーション及びリハビリテーションについての包括的なサービス及びプログラムを企画し、強化し、及び拡張する。この場合において、これらのサービス及びプログラムは、次のようなものとする。 (a)可能な限り初期の段階において開始し、並びに個人のニーズ及び長所に関する学際的な評価を基礎とするものであること。 (b)地域社会及び社会のあらゆる側面への参加及び包容を支援し、自発的なものであり、並びに障害者自身が属する地域社会(農村を含む。)の可能な限り近くにおいて利用可能なものであること。 2 締約国は、ハビリテーション及びリハビリテーションのサービスに従事する専門家及び職員に対する初期研修及び継続的な研修の充実を促進する。 3 締約国は、障害者のために設計された補装具及び支援機器であって、ハビリテーション及びリハビリテーションに関連するものの利用可能性、知識及び使用を促進する。 第二十七条 労働及び雇用 1 締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認める。この権利には、障害者に対して開放され、障害者を包容し、及び障害者にとって利用しやすい労働市場及び労働環境において、障害者が自由に選択し、又は承諾する労働によって生計を立てる機会を有する権利を含む。締約国は、特に次のことのための適当な措置(立法によるものを含む。)をとることにより、労働についての障害者(雇用の過程で障害を有することとなった者を含む。)の権利が実現されることを保障し、及び促進する。 (a)あらゆる形態の雇用に係る全ての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全かつ健康的な作業条件を含む。)に関し、障害に基づく差別を禁止すること。 (b)他の者との平等を基礎として、公正かつ良好な労働条件(均等な機会及び同一価値の労働についての同一報酬を含む。)、安全かつ健康的な作業条件(嫌がらせからの保護を含む。)及び苦情に対する救済についての障害者の権利を保護すること。 p28 (c)障害者が他の者との平等を基礎として労働及び労働組合についての権利を行使することができることを確保すること。 (d)障害者が技術及び職業の指導に関する一般的な計画、職業紹介サービス並びに職業訓練及び継続的な訓練を利用する効果的な機会を有することを可能とすること。 (e)労働市場において障害者の雇用機会の増大を図り、及びその昇進を促進すること並びに職業を求め、これに就き、これを継続し、及びこれに復帰する際の支援を促進すること。 (f)自営活動の機会、起業家精神、協同組合の発展及び自己の事業の開始を促進すること。 (g)公的部門において障害者を雇用すること。 (h)適当な政策及び措置(積極的差別是正措置、奨励措置その他の措置を含めることができる。)を通じて、民間部門における障害者の雇用を促進すること。 (i)職場において合理的配慮が障害者に提供されることを確保すること。 (j)開かれた労働市場において障害者が職業経験を得ることを促進すること。 (k)障害者の職業リハビリテーション、職業の保持及び職場復帰計画を促進すること。 2 締約国は、障害者が、奴隷の状態又は隷属状態に置かれないこと及び他の者との平等を基礎として強制労働から保護されることを確保する。 第二十八条 相当な生活水準及び社会的な保障 1 締約国は、障害者が、自己及びその家族の相当な生活水準(相当な食糧、衣類及び住居を含む。)についての権利並びに生活条件の不断の改善についての権利を有することを認めるものとし、障害に基づく差別なしにこの権利を実現することを保障し、及び促進するための適当な措置をとる。 2 締約国は、社会的な保障についての障害者の権利及び障害に基づく差別なしにこの権利を享受することについての障害者の権利を認めるものとし、この権利の実現を保障し、及び促進するための適当な措置をとる。この措置には、次のことを確保するための措置を含む。 (a)障害者が清浄な水のサービスを利用する均等な機会を有し、及び障害者が障害に関連するニーズに係る適当なかつ費用の負担しやすいサービス、補装具その他の援助を利用する機会を有すること。 (b)障害者(特に、障害のある女子及び高齢者)が社会的な保障及び貧困削減に関する計画を利用する機会を有すること。 (c)貧困の状況において生活している障害者及びその家族が障害に関連する費用についての国の援助(適当な研修、カウンセリング、財政的援助及び介護者の休息のための一時的な介護を含む。)を利用する機会を有すること。 (d)障害者が公営住宅計画を利用する機会を有すること。 (e)障害者が退職に伴う給付及び計画を利用する均等な機会を有すること。 p29 第二十九条 政治的及び公的活動への参加 締約国は、障害者に対して政治的権利を保障し、及び他の者との平等を基礎としてこの権利を享受する機会を保障するものとし、次のことを約束する。 (a)特に次のことを行うことにより、障害者が、直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、他の者との平等を基礎として、政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができること(障害者が投票し、及び選挙される権利及び機会を含む。)を確保すること。 (i)投票の手続、設備及び資料が適当な及び利用しやすいものであり、並びにその理解及び使用が容易であることを確保すること。 (ii)障害者が、選挙及び国民投票において脅迫を受けることなく秘密投票によって投票し、選挙に立候補し、並びに政府のあらゆる段階において実質的に在職し、及びあらゆる公務を遂行する権利を保護すること。この場合において、適当なときは支援機器及び新たな機器の使用を容易にするものとする。 (iii)選挙人としての障害者の意思の自由な表明を保障すること。このため、必要な場合には、障害者の要請に応じて、当該障害者により選択される者が投票の際に援助することを認めること。 (b)障害者が、差別なしに、かつ、他の者との平等を基礎として、政治に効果的かつ完全に参加することができる環境を積極的に促進し、及び政治への障害者の参加を奨励すること。政治への参加には、次のことを含む。 (i)国の公的及び政治的活動に関係のある非政府機関及び非政府団体に参加し、並びに政党の活動及び運営に参加すること。 (ii)国際、国内、地域及び地方の各段階において障害者を代表するための障害者の組織を結成し、並びにこれに参加すること。 第三十条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加 1 締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として文化的な生活に参加する権利を認めるものとし、次のことを確保するための全ての適当な措置をとる。 (a)障害者が、利用しやすい様式を通じて、文化的な作品を享受する機会を有すること。 (b)障害者が、利用しやすい様式を通じて、テレビジョン番組、映画、演劇その他の文化的な活動を享受する機会を有すること。 (c)障害者が、文化的な公演又はサービスが行われる場所(例えば、劇場、博物館、映画館、図書館、観光サービス)を利用する機会を有し、並びに自国の文化的に重要な記念物及び場所を享受する機会をできる限り有すること。 2 締約国は、障害者が、自己の利益のためのみでなく、社会を豊かにするためにも、自己の創造的、芸術的及び知的な潜在能力を開発し、及び活用する機会を有することを可能とするための適当な措置をとる。 3 締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するための全ての適当な措置をとる。 p30 4 障害者は、他の者との平等を基礎として、その独自の文化的及び言語的な同一性(手話及び聾文化を含む。)の承認及び支持を受ける権利を有する。 5 締約国は、障害者が他の者との平等を基礎としてレクリエーション、余暇及びスポーツの活動に参加することを可能とすることを目的として、次のことのための適当な措置をとる。 (a)障害者があらゆる水準の一般のスポーツ活動に可能な限り参加することを奨励し、及び促進すること。 (b)障害者が障害に応じたスポーツ及びレクリエーションの活動を組織し、及び発展させ、並びにこれらに参加する機会を有することを確保すること。このため、適当な指導、研修及び資源が他の者との平等を基礎として提供されるよう奨励すること。 (c)障害者がスポーツ、レクリエーション及び観光の場所を利用する機会を有することを確保すること。 (d)障害のある児童が遊び、レクリエーション、余暇及びスポーツの活動(学校制度におけるこれらの活動を含む。)への参加について他の児童と均等な機会を有することを確保すること。 (e)障害者がレクリエーション、観光、余暇及びスポーツの活動の企画に関与する者によるサービスを利用する機会を有することを確保すること。 第三十一条 統計及び資料の収集 1 締約国は、この条約を実効的なものとするための政策を立案し、及び実施することを可能とするための適当な情報(統計資料及び研究資料を含む。)を収集することを約束する。この情報を収集し、及び保持する過程においては、次のことを満たさなければならない。 (a)障害者の秘密の保持及びプライバシーの尊重を確保するため、法令に定める保障措置(資料の保護に関する法令を含む。)を遵守すること。 (b)人権及び基本的自由を保護するための国際的に受け入れられた規範並びに統計の収集及び利用に関する倫理上の原則を遵守すること。 2 この条の規定に従って収集された情報は、適宜分類されるものとし、この条約に基づく締約国の義務の履行の評価に役立てるために、並びに障害者がその権利を行使する際に直面する障壁を特定し、及び当該障壁に対処するために利用される。 3 締約国は、これらの統計の普及について責任を負うものとし、これらの統計が障害者及び他の者にとって利用しやすいことを確保する。 第三十二条 国際協力 1 締約国は、この条約の目的及び趣旨を実現するための自国の努力を支援するために国際協力及びその促進が重要であることを認識し、この点に関し、国家間において並びに適当な場合には関連のある国際的及び地域的機関並びに市民社会(特に障害者の組織)と連携して、適当かつ効果的な措置をとる。これらの措置には、特に次のことを含むことができる。 (a)国際協力(国際的な開発計画を含む。)が、障害者を包容し、かつ、障害者にとって利用しやすいものであることを確保すること。 p31 (b)能力の開発(情報、経験、研修計画及び最良の実例の交換及び共有を通じたものを含む。)を容易にし、及び支援すること。 (c)研究における協力を容易にし、並びに科学及び技術に関する知識を利用する機会を得やすくすること。 (d)適当な場合には、技術援助及び経済援助(利用しやすい支援機器を利用する機会を得やすくし、及びこれらの機器の共有を容易にすることによる援助並びに技術移転を通じた援助を含む。)を提供すること。 2 この条の規定は、この条約に基づく義務を履行する各締約国の義務に影響を及ぼすものではない。 第三十三条 国内における実施及び監視 1 締約国は、自国の制度に従い、この条約の実施に関連する事項を取り扱う一又は二以上の中央連絡先を政府内に指定する。また、締約国は、異なる部門及び段階における関連のある活動を容易にするため、政府内における調整のための仕組みの設置又は指定に十分な考慮を払う。 2 締約国は、自国の法律上及び行政上の制度に従い、この条約の実施を促進し、保護し、及び監視するための枠組み(適当な場合には、一又は二以上の独立した仕組みを含む。)を自国内において維持し、強化し、指定し、又は設置する。締約国は、このような仕組みを指定し、又は設置する場合には、人権の保護及び促進のための国内機構の地位及び役割に関する原則を考慮に入れる。 3 市民社会(特に、障害者及び障害者を代表する団体)は、監視の過程に十分に関与し、かつ、参加する。 第三十四条 障害者の権利に関する委員会 1 障害者の権利に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、以下に定める任務を遂行する。 2 委員会は、この条約の効力発生の時は十二人の専門家で構成する。効力発生の時の締約国に加え更に六十の国がこの条約を批准し、又はこれに加入した後は、委員会の委員の数を六人増加させ、上限である十八人とする。 3 委員会の委員は、個人の資格で職務を遂行するものとし、徳望が高く、かつ、この条約が対象とする分野において能力及び経験を認められた者とする。締約国は、委員の候補者を指名するに当たり、第四条3の規定に十分な考慮を払うよう要請される。 4 委員会の委員については、締約国が、委員の配分が地理的に衡平に行われること、異なる文明形態及び主要な法体系が代表されること、男女が衡平に代表されること並びに障害のある専門家が参加することを考慮に入れて選出する。 5 委員会の委員は、締約国会議の会合において、締約国により当該締約国の国民の中から指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。締約国会議の会合は、締約国の三分の二をもって定足数とする。これらの会合においては、出席し、かつ、投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た者をもって委員会に選出された委員とする。 p32 6 委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力発生の日の後六箇月以内に行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも四箇月前までに、締約国に対し、自国が指名する者の氏名を二箇月以内に提出するよう書簡で要請する。その後、同事務総長は、指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、この条約の締約国に送付する。 7 委員会の委員は、四年の任期で選出される。委員は、一回のみ再選される資格を有する。ただし、最初の選挙において選出された委員のうち六人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの六人の委員は、最初の選挙の後直ちに、5に規定する会合の議長によりくじ引で選ばれる。 8 委員会の六人の追加的な委員の選挙は、この条の関連規定に従って定期選挙の際に行われる。 9 委員会の委員が死亡し、辞任し、又は他の理由のためにその職務を遂行することができなくなったことを宣言した場合には、当該委員を指名した締約国は、残余の期間その職務を遂行する他の専門家であって、資格を有し、かつ、この条の関連規定に定める条件を満たすものを任命する。 10 委員会は、その手続規則を定める。 11 国際連合事務総長は、委員会がこの条約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供するものとし、委員会の最初の会合を招集する。 12 この条約に基づいて設置される委員会の委員は、国際連合総会が委員会の任務の重要性を考慮して決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。 13 委員会の委員は、国際連合の特権及び免除に関する条約の関連規定に規定する国際連合のための職務を遂行する専門家の便益、特権及び免除を享受する。 第三十五条 締約国による報告 1 各締約国は、この条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告を、この条約が自国について効力を生じた後二年以内に国際連合事務総長を通じて委員会に提出する。 2 その後、締約国は、少なくとも四年ごとに、更に委員会が要請するときはいつでも、その後の報告を提出する。 3 委員会は、報告の内容について適用される指針を決定する。 4 委員会に対して包括的な最初の報告を提出した締約国は、その後の報告においては、既に提供した情報を繰り返す必要はない。締約国は、委員会に対する報告を作成するに当たり、公開され、かつ、透明性のある過程において作成することを検討し、及び第四条3の規定に十分な考慮を払うよう要請される。 5 報告には、この条約に基づく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び困難を記載することができる。 p33 第三十六条 報告の検討 1 委員会は、各報告を検討する。委員会は、当該報告について、適当と認める提案及び一般的な性格を有する勧告を行うものとし、これらの提案及び一般的な性格を有する勧告を関係締約国に送付する。当該関係締約国は、委員会に対し、自国が選択する情報を提供することにより回答することができる。委員会は、この条約の実施に関連する追加の情報を当該関係締約国に要請することができる。 2 いずれかの締約国による報告の提出が著しく遅延している場合には、委員会は、委員会にとって利用可能な信頼し得る情報を基礎として当該締約国におけるこの条約の実施状況を審査することが必要であることについて当該締約国に通報(当該通報には、関連する報告が当該通報の後三箇月以内に行われない場合には審査する旨を含む。)を行うことができる。委員会は、当該締約国がその審査に参加するよう要請する。当該締約国が関連する報告を提出することにより回答する場合には、1の規定を適用する。 3 国際連合事務総長は、1の報告を全ての締約国が利用することができるようにする。 4 締約国は、1の報告を自国において公衆が広く利用することができるようにし、これらの報告に関連する提案及び一般的な性格を有する勧告を利用する機会を得やすくする。 5 委員会は、適当と認める場合には、締約国からの報告に記載されている技術的な助言若しくは援助の要請又はこれらの必要性の記載に対処するため、これらの要請又は必要性の記載に関する委員会の見解及び勧告がある場合には当該見解及び勧告とともに、国際連合の専門機関、基金及び計画その他の権限のある機関に当該報告を送付する。 第三十七条 締約国と委員会との間の協力 1 各締約国は、委員会と協力するものとし、委員の任務の遂行を支援する。 2 委員会は、締約国との関係において、この条約の実施のための当該締約国の能力を向上させる方法及び手段(国際協力を通じたものを含む。)に十分な考慮を払う。 第三十八条 委員会と他の機関との関係 この条約の効果的な実施を促進し、及びこの条約が対象とする分野における国際協力を奨励するため、 (a)専門機関その他の国際連合の機関は、その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の規定の実施についての検討に際し、代表を出す権利を有する。委員会は、適当と認める場合には、専門機関その他の権限のある機関に対し、これらの機関の任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について専門家の助言を提供するよう要請することができる。委員会は、専門機関その他の国際連合の機関に対し、これらの機関の任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について報告を提出するよう要請することができる。 (b)委員会は、その任務を遂行するに当たり、それぞれの報告に係る指針、提案及び一般的な性格を有する勧告の整合性を確保し、並びにその任務の遂行における重複を避けるため、適当な場合には、人権に関する国際条約によって設置された他の関連する組織と協議する。 p34 第三十九条 委員会の報告 委員会は、その活動につき二年ごとに国際連合総会及び経済社会理事会に報告するものとし、また、締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は、締約国から 意見がある場合にはその意見とともに、委員会の報告に記載する。 第四十条 締約国会議 1 締約国は、この条約の実施に関する事項を検討するため、定期的に締約国会議を開催する。 2 締約国会議は、この条約が効力を生じた後六箇月以内に国際連合事務総長が招集する。その後の締約国会議は、二年ごとに又は締約国会議の決定に基づき同事務総長が招集する。 第四十一条 寄託者 この条約の寄託者は、国際連合事務総長とする。 第四十二条 署名 この条約は、二千七年三月三十日から、ニューヨークにある国際連合本部において、全ての国及び地域的な統合のための機関による署名のために開放しておく。 第四十三条 拘束されることについての同意 この条約は、署名国によって批准されなければならず、また、署名した地域的な統合のための機関によって正式確認されなければならない。この条約は、これに署名していない国及び地域的な統合のための機関による加入のために開放しておく。 第四十四条 地域的な統合のための機関 1 「地域的な統合のための機関」とは、特定の地域の主権国家によって構成される機関であって、この条約が規律する事項に関してその構成国から権限の委譲を受けたものをいう。地域的な統合のための機関は、この条約の規律する事項に関するその権限の範囲をこの条約の正式確認書又は加入書において宣言する。その後、当該機関は、その権限の範囲の実質的な変更を寄託者に通報する。 2 この条約において「締約国」についての規定は、地域的な統合のための機関の権限の範囲内で当該機関について適用する。 3 次条1並びに第四十七条2及び3の規定の適用上、地域的な統合のための機関が寄託する文書は、これを数に加えてはならない。 4 地域的な統合のための機関は、その権限の範囲内の事項について、この条約の締約国であるその構成国の数と同数の票を締約国会議において投ずる権利を行使することができる。当該機関は、その構成国が自国の投票権を行使する場合には、投票権を行使してはならない。その逆の場合も、同様とする。 第四十五条 効力発生 1 この条約は、二十番目の批准書又は加入書が寄託された後三十日目の日に効力を生ずる。 p35 2 この条約は、二十番目の批准書又は加入書が寄託された後にこれを批准し、若しくは正式確認し、又はこれに加入する国又は地域的な統合のための機関については、その批准書、正式確認書又は加入書の寄託の後三十日目の日に効力を生ずる。 第四十六条 留保 1 この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。 2 留保は、いつでも撤回することができる。 第四十七条 改正 1 いずれの締約国も、この条約の改正を提案し、及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、締約国に対し、改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び決定のための締約国の会議の開催についての賛否を通報するよう要請する。その送付の日から四箇月以内に締約国の三分の一以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席し、かつ、投票する締約国の三分の二以上の多数によって採択された改正案は、同事務総長により、承認のために国際連合総会に送付され、その後受諾のために全ての締約国に送付される。 2 1の規定により採択され、かつ、承認された改正は、当該改正の採択の日における締約国の三分の二以上が受諾書を寄託した後三十日目の日に効力を生ずる。その後は、当該改正は、いずれの締約国についても、その受諾書の寄託の後三十日目の日に効力を生ずる。改正は、それを受諾した締約国のみを拘束する。 3 締約国会議がコンセンサス方式によって決定する場合には、1の規定により採択され、かつ、承認された改正であって、第三十四条及び第三十八条から第四十条までの規定にのみ関連するものは、当該改正の採択の日における締約国の三分の二以上が受諾書を寄託した後三十日目の日に全ての締約国について効力を生ずる。 第四十八条 廃棄 締約国は、国際連合事務総長に対して書面による通告を行うことにより、この条約を廃棄することができる。廃棄は、同事務総長がその通告を受領した日の後一年で効力を生ずる。 第四十九条 利用しやすい様式 この条約の本文は、利用しやすい様式で提供される。 第五十条 正文 この条約は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とする。 以上の証拠として、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。 p36 表紙(p1)の絵:内閣府「障害者週間のポスター」入賞作品 (横浜市/やまもと あやかさん、さいたま市/あらまき かなのさん、岡山県/いけだ かおるさん、浜松市/はっとり りゅうやさん、千葉県/おおの げんきさん、北海道/もりや まなみさん、埼玉県/いしわたり ともきさん、茨城県/こが ゆいかさん) 裏表紙(p36)の絵:内閣府「障害者週間のポスター」入賞作品 (栃木県/さいとう かんさん、愛媛県/ひろせ りんかさん、栃木県/かねだ ちなみさん、熊本市/ますなが えみさん、熊本県/すぎもと ちゆりさん、愛知県/こうむら ゆうきさん、京都府/みやもと しゅうさん、さいたま市/かわつ ももこさん) 権利条約についての詳細は以下。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html 元資料 写真提供元(五十音順):株式会社FVP、株式会社ハートフル松本FVP、厚生労働省、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団、国際協力機構、住友商事株式会社、一般財団法人全日本ろうあ連盟、千葉県立千葉盲学校、筑波大学附属大塚特別支援学校、内閣府、日本障害フォーラム、日本身体障害者団体連合会、公益財団法人日本盲導犬協会、福津市役所、横浜市交通局 外務省 郵便番号:100-8919 住所:東京都千代田区霞が関2-2-1 TEL:03-3580-3311(代表) 外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/ 編集:外務省総合外交政策局人権人道課 発行:国内広報室 2015年2月