平成8年度障害者のために講じた施策の概況に関する年次報告について
(平成9年版「障害者白書」の概要)

 この白書は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第9条の規定に基づく、「障害者のために講じた施策の概況に関する報告書」であり、平成5年度を中心とする施策の概況の報告から国会に提出し、いわゆる「障害者白書」として公表しているものである。
 本年度の年次報告は、昨年8月、アメリカ合衆国でアトランタパラリンピック競技大会が開催されたこと、また、明年3月には、長野パラリンピック冬季競技大会が開催されることから、これを契機に、障害のある人々の積極的な社会参加を進めることを主要テーマ(副題「生活の質的向上をめざして」)として、広く国民に障害のある人々が行うスポーツ・レクリエーション等に対する理解を深めてもらうため、第1部では障害のある人々が行うスポーツ・レクリエーションとパラリンピック競技大会について歴史的経緯を踏まえて取りまとめており、第2部では平成8年度を中心とした障害者施策の取り組み状況について、各施策分野別に明らかにしている。

第1編
第1部 障害のある人々の生活を豊かにするスポーツ・レクリエーション - 生活の質的向上をめざして -

第2部 平成8年度を中心とした障害者施策の取り組み


第1編

第1部 障害のある人々の生活を豊かにするスポーツ・レクリエーション

- 生活の質的向上をめざして -

第1章 障害のある人とスポーツ・レクリエーション

第1節 障害者スポーツ

ア 障害者スポーツの歴史
 障害者スポーツの発展には、障害別に設立されたスポーツの組織が果たしてきた役割が大きい。世界で初めて設立された障害者スポーツの組織は、1888年のドイツにおける聴覚障害者のスポーツクラブであるが、国際的な組織としては、1924年に設立された「国際ろう者スポーツ委員会」であり、この委員会により「世界ろう者競技大会」が、4年ごとに開催されるようになった。
 その後、第二次世界大戦により多くの戦傷者が出たが、その人たちへのリハビリテーション訓練の一つとして、積極的にスポーツが取り入れられた。これにより、スポーツが障害のある人たちの中で急速に広がっていった。その中で、1952年には車いすを使用する人を対象とする国際ストークマンデビル競技連盟(現在は,「国際ストークマンデビル車いす競技連盟」となっている。)が設立され、以降、毎年「国際ストークマンデビル競技大会」が開催されることになった。この競技大会は、パラリンピック競技大会の前身といえるものであり、その後の障害者スポーツの発展に大きな役割を果たすこととなった。
 その他の障害者を対象とする組織は、1962年に切断や四肢体幹機能障害等の障害者を対象とする「国際身体障害者スポーツ組織」、1978年に脳性マヒ者を対象とする「国際脳性マヒ者スポーツ・レクリエーション協会」、1980年に視覚障害者を対象とする「国際視覚障害者スポーツ協会」、1986年に精神薄弱等の知的障害者を対象とする「国際知的障害者スポーツ協会」がそれぞれ設された。
 現在では、第二次世界大戦後に設立された、これらの障害別スポーツ組織が参加するパラリンピック競技大会が、1989年に設立された「国際パラリンピック委員会」により、4年ごとに開催されている。
 なお、1974年に東アジアや南太平洋諸国・地域の身体障害者を対象とした「極東・南太平洋身体障害者競技連盟」が設立され、「極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会」が概ね4年ごとに開催されるようになった。
 競技別の国際大会としては、1978年よりボストン(アメリカ合衆国)において「アメリカ車いす選手権大会」が毎年開催されるようになり、また1981年の国際障害者年より大分市において、「大分国際車いすマラソン大会」が毎年開催されるようになった。1975年からは、世界車いすバスケットボール選手権大会が、概ね4年ごとに開催されるようになった。
 障害のある選手の活躍は、オリンピック競技大会においてもみられ、第23回ロサンゼルス大会(1984年)でニュージーランドの女子選手が、第26回アトランタ大会(1996年)でイタリアの女子選手が、どちらも車いすを使用してアーチェリーに参加し活躍している。

イ 障害者スポーツの現状と役割
 障害者スポーツの組織は、障害別競技団体が中心となって発展してきたが、最近では、「車いすバスケットボール連盟」や「国際ボッチャ連盟」など種目別の組織も設立されており、各組織はその種目の競技規則やパラリンピック競技大会への出場要件などを規定しているほか、定期的に国際大会を開催している。
 障害者スポーツの役割は、当初より、障害のある人の体力の維持、増進、残存能力の向上や、障害のある人に対する理解を促すものとされてきたが、最近では、個々人がそれぞれの価値観をもって、その人の生活を豊かにするものとして捉えられるようになってきている。
 なお、我が国においては、障害者スポーツの振興等を重要な施策の一つとして、各種スポーツ大会の開催、スポーツ・レクリエーション教室の開催、スポーツのできる施設の整備等が図られてきている。さらに、障害者スポーツ指導者の養成研修が強化され、また、スポーツ大会へのボランティアの参加や、障害者スポーツに対する国民の理解と関心の高揚を推進している。


第2節 我が国におけるスポーツ・レクリエーション

ア 身体障害者とスポーツ
 身体障害者を対象としたスポーツは、昭和39年(1964年)に開催されたパリンピック東京大会を契機に発展してきている。
 なかでも、パラリンピック東京大会の翌年(昭和40年)から全国身体障害スポーツ大会が、毎年、国民体育大会秋季大会の後、同じ施設を使用して開催されてきたことが大きな牽引力となった。
 また、各都道府県・指定都市における障害者スポーツ大会や各競技団体等により競技別の大会が開催されるようになり、さらに、平成3年からは、標準記録により参加可能なレベルを示し、より競技性の高い大会と位置付けたジャパンパラリンピック競技大会が開催されるなど、現在では全国各地で様々スポーツ大会が開催されている。
 地域における障害者スポーツの普及には、都道府県・指定都市を中心とし設置されている障害者スポーツ協会(42か所)と、スポーツを行うための設備や指導員が配置されている障害者スポーツセンターなどが大きな役割を果たしている。

イ 精神薄弱者とスポーツ
 精神薄弱者を対象としたスポーツは、昭和30年代中頃より一部の地方公共団体で、施設間の交流大会として開催され始めた。
 平成4年からは、精神薄弱者に対する理解を深め、精神薄弱者の自立と社参加の促進に寄与することを目的に、「全国精神薄弱者スポーツ大会(ゆうあいピック)」が開催されている。
 また、現在では、全ての都道府県・指定都市において精神薄弱者を対象としたスポーツ大会が開催されるまでに至っている。

ウ 精神障害者とスポーツ
 精神障害者を対象としたスポーツは、精神病院を中心にして行われてきたが、昭和40年代頃から、地方公共団体が主催する大会が開催されるようになり、現在では、保健所、精神保健福祉センター、家族会連絡会、共同作業所連絡会なども、単独もしくは他の組織等との共催により開催している。

エ 障害のある人とレクリエーション
 レクリエーションとは、休養や娯楽によって精神的・肉体的に回復することにはじまり、新たなもの、より高度なものに挑戦して、自己実現を果たし自己開発・再創造へと発展していく種々の活動のこととされており、障害のある人にとってその効果はきわめて大きい。しかし、そのためには、障害のない人の関心が高まることも重要であり、世界の中には、障害のある人々のレクリエーションに積極的に取り組んでいるところが数多くある。我が国においても、ゴルフ、スクーバダイビング、乗馬、パラグライダー、車いすダンス等に取り組んでいる。
 また、障害のある人のレクリエーションを支援する施設には、身体障害者福祉センター(A型)や勤労身体障害者教養文化体育施設等があり、各種の講習会や教室などを開催している。
 なお、全国身体障害者技能競技大会(アビリンピック)が、昭和47年から身体に障害のある人々の職業能力の開発等を目的に開催されているが、平成8年度からは、レクリエーションに関連した技術種目などの生活余暇技能種目をデモンストレーションとして取り入れており、平成9年度からは正式種目とすることとしている。


第2章 パラリンピック競技大会

第1節 パラリンピク競技大会の発祥と経緯

ア パラリンピックの発祥
 1948年(昭和23年)、イギリスのストークマンデビル病院脊髄損傷センターにおいて、脊髄損傷により車いすを使用している障害者(以下、「対麻痺者」という。)の競技会が開催され、以降、毎年同地でこの競技会が行われるよになった。
 そして、1952年(昭和27年)には、オランダからの参加を得て国際的な競技会(国際ストークマンデビル競技大会)に発展し、さらに、1960年(昭和35年)には、第17回オリンピック競技大会(ローマ)後に、同じ競技施設を使用して開催された。このローマで開催された大会が、第1回パラリンピック競技大会とされている。
 なお、「パラリンピック」という名称は、第2回の東京大会の際に、脊髄損傷者を意味するパラプレジア(Paraplegia)とオリンピック(Olympic)を組み合わせた愛称として使用されたが、正式名称として使用されるようになった第8回ソウル大会(韓国)からは、(Parallel=並行する、同等の)とオリンピックを組み合わせた言葉として、オリンピックと並行する「もう一つのオリンピック」という意味で使用され始めた。

イ パラリンピック東京大会
 パラリンピック東京大会は、ローマで行われた第1回パラリンピック競技大会に続く、第2回大会であり、昭和39年に東京で開催された第18回オリンピック競技大会の直後に同地で開催された。同大会は、昭和39年(1964年)11月8日から12日の4日間にわたる第1部国際大会(第13回国際ストークマンデビル競技大会)と、それに続く11月13日から14日の第2部国内大会の2部編成で開催された。この第2部の国内大会が、現在の「全国身体障害者スポーツ大会」のもととなった。

ウ パラリンピック競技大会の開催経緯
 パラリンピック競技大会への参加者は、第4回ハイデルベルグ(旧西ドイツ)までは対麻痺者に限られていたが、第5回トロント大会(カナダ)からは、対麻痺者に加え視覚障害者と切断者が参加できるようになり、また、第6回アーヘン大会(オランダ)からは脳性マヒ者が、第7回ニューヨーク大会(アメリカ合衆国)からはその他の運動機能に障害のある者も参加できるようになった。
 知的障害者の種目が正式に行われたのは、第10回アトランタ大会(アメリカ合衆国)からである。
 パラリンピック冬季競技大会は、1976年(昭和51年)にスウェーデンのエーンシェルズヴィークで第1回大会が開催された。なお、第7回大会は、1998年(平成10年)3月に我が国の長野で開催される予定である。


第2節 アトランタパラリンピック競技大会における活躍

 平成8年(1996年)8月にアトランタパラリンピック競技大会が開催された。
 我が国からは、アーチェリー、陸上競技、バスケットボール、自転車、視覚障害者柔道、パワーリフティング、水泳、卓球、車いすテニス、ヨットの10競技に81名の選手が出場し、金メダル14個、銀メダル10個、銅メダル13個を獲得した。また、金メダリストには天皇陛下より初めて銀杯を賜った。


第3節 長野パラリンピック冬季競技大会に向けて

ア 大会の概要
 長野パラリンピック冬季競技大会は、平成10年(1998年)3月5日(木)から3月14日(土)までの10日間で、長野オリンピック冬季競技大会の直後に、同じ競技会場等を使用して開催される。
 我が国でパラリンピック競技大会が開催されるのは、昭和39年(1964年)に開催されたパラリンピク東京大会に次いで2回目となるが、冬季の大会としては、我が国はもとよりアジア地域で初めての開催となる。
 大会で行われる競技種目は、アルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロン、アイススレッジスピードレース、アイススレッジホッケーであり、冬季パラリンピック史上初めて、知的障害者の競技(クロスカントリースキー)が正式種目として実施される。

イ 国際競技大会の開催
 長野パラリンピック冬季競技大会での円滑な大会運営、競技運営を期するため、大会の一年前となる平成9年(1997年)2月に「国際障害者クロスカントリースキー・バイアスロン競技大会」、3月に「国際アイススレッジ競技大会」を開催した。
 両大会ではリフト付きバスの運行や車いすの人でも使用できるトイレの増設など、障害のある人が支障なく大会へ参加・観戦ができるよう様々な配慮がなされた。
 また、この国際大会が開催されたことにより、世界レベルの選手達のスピードと技術を多くの人々が観戦し、障害者スポーツのレベルの高さが再確認され、長野パラリンピック冬季競技大会の開催気運の盛り上げが図られた。

ウ 日本人選手の育成・強化等
 パラリンピック冬季競技大会への我が国選手団の正式な派遣は、1980年(昭和55年)の第2回ヤイロ大会(ノルウェー)から行っているが、第5回アルベールビル大会(フランス)までの参加競技は、全てアルペンスキー競技であり、その競技レベルも世界のトップレベルに比べるとまだ差があるという状況であった。
 そのため、平成7年度から(財)日本身体障害者スポーツ協会において、長野パラリンピック冬季競技大会に向けた選手育成・強化を実施している。さらに、平成8年度からは、 (社福) 全日本手をつなぐ育成会において、知的障害のある選手の育成・強化を実施している。
 なお、長野パラリンピック冬季競技大会日本選手団のユニホームについては、(財)日本オリンピック委員会及び関係競技団体の協力を得て、長野オリンピック冬季競技大会日本選手団と同一の仕様を用いることとなっている。


第2部 平成8年度を中心とした障害者施策の取り組み

 平成8年度に障害者のために講じた施策を、「相互の理解と交流」「社会へ向けた自立の基盤づくり」「日々の暮らしの基盤づくり」「住みよい環境の基盤づくり」の4つの視点に立ってまとめている。

第1章 相互の理解と交流(施策を推進する上で前提となる「心の壁」の除去のための啓発広報等)

第1節 障害のある人に対する理解を深めるための啓発広報

ア 啓発広報
 「障害者の日」「人権週間」「障害者雇用促進月間」「障害者週間」等を設定し、各種の行事を実施するとともに、障害者の日を中心とするテレビ、新聞等マスメディアを活用した啓発広報等を行っている。障害者の日の記念行事としては、「障害者の日・記念の集い」を東京で開催した。また、政府が実施している施策の進捗状況について広報することも重要であることから、各種計画の実施状況等について公表してきている。

イ 福祉に関する教育
 都道府県における市民会議や福祉展の開催、児童を対象とした福祉教育等の実施のほか、平成6年度に創設した「障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業」において、啓発普及事業等の取り組みへの支援を行った。学校教育においては、障害のある子供に対する理解と認識を深めるため、指定校による実践研究、教員等を対象とした講習会の開催、指導資料の作成・配布を行った。

ウ 地域住民等のボランティア活動

(ア) 生涯学習振興の観点から人々のボランティア活動を推進するため、都道府県教育委員会や生涯学習推進センターを拠点に、生涯学習ボランティアセンターの開設、ボランティア団体やその活動の情報収集・提供と相談事業、「活動の場」の開発等、ボランティア活動の支援・推進を図った。

(イ) 学校におけるボランティア教育としては、ボランティア体験活動等様々な体験活動・学習機会を与えるための実践研究として、「ボランティア体験モデル推進事業」等を実施した。また、ボランティア教育の在り方について、小・中・高等学校の教員等で構成する研究協議会の開催等を行った。

(ウ) 平成6年度から「市区町村ボランティアセンター活動事業」として、ボランティア情報誌の発行、ボランティア活動入門講座の開催、相談、登録・あっせん等の事業を行っているほか、「都道府県・指定都市ボランティアセンター活動事業」として、学童・生徒のボランティア活動普及事業、企業やボランティアグループ等でボランティア活動を推進するリーダーやコーディネーターの養成等を実施し、地域において活動したい人がボランティア活動をできるような枠組みづくりに努めた。
 また、国民のボランティア活動に対する理解と参加を促進し、全国的な啓発広報を行うため、全国からボランティア活動に関心のある人々等が集まり、情報交換や交流を図る「全国ボランティアフェスティバル」を実施した。


第2節 我が国の国際的地位にふさわしい国際協力

 我が国は、国際社会の一員として、障害のある人に対する各施策分野において、我が国の国際的地位にふさわしい国際協力に努める必要がある。我が国がこれらの分野で蓄積してきた技術、経験などを、政府開発援助(ODA)や民間援助団体(NGO)などを通じ開発途上国の障害者施策に役立たせることの意義は大きく、「政府開発援助大綱」においても、政府開発援助を効果的に実現するための方策として、「子供、障害者、高齢者等社会的弱者に十分配慮する。」ことを掲げている。
 障害者施策の各分野においては、援助を行うに当たり、援助対象国の実態や要請内容を十分把握し、その国の文化を尊重しながら要請に柔軟に対応することが大切であり、我が国は、援助対象国との密接な政策対話等を通じ様々な援助ニーズにきめ細かく対応するよう努めている。
 平成8年度においては、インドネシアにおいて無償資金協力として、障害者職業リハビリテーションセンター建設等の協力を行っているほか、草の根無償資金協力として、ソロモンに対する身体障害者のための車いす供与等64件の援助を行った。また、障害者関連分野において、国際協力事業団(JICA)を通じての研修員受入れや青年海外協力隊員及び専門家の派遣等を行っている。その他、NGO等を通じての協力を行っており、NGOに関しては、平成8年度に9か国において12団体、14事業の障害者関連事業に対し補助金を交付した。
 さらに、我が国は、援助対象国への直接的な援助のほか国連等国際機関を通じた協力も行っている。例えば、国連障害者基金、日本・エスカップ協力基金、オンコセルカ症(河川盲目症)基金、ユネスコへの拠出を通じ、これら機関の活動を支援している。


第2章 社会へ向けた自立の基盤づくり(障害のある人が社会的に自立するために必要な教育・育成、雇用・就業等)

第1節 障害の特性に応じた教育・育成施策

ア 障害のある子供に対する教育施策

(ア) 近年の児童生徒における障害の重度・重複化、多様化に伴い、これまで以上に一人一人に応じた教育を進めることが求められていることから、特殊教育に関する様々な課題を検討するため、協力者会議を設けて検討を重ね、高等部の拡充整備と訪問教育の実施、交流教育及び早期教育相談の充実について報告をまとめた。このほか、学習障害児への指導方法、病気療養児の教育の充実について調査研究を行った。

(イ) 身体に障害のある大学入学志願者のその能力・適性等に応じた学部等への受験機会の確保への配慮を行ったほか、大学入試センターでは、点字・拡大文字による出題、筆跡を触って確認できるレーズライターによる解答、チェック解答、試験時間の延長、代筆解答などの措置を講じた。

(ウ) 国立学校施設においては、障害のある人がその障害の程度に応じた十分な教育が受けられるようスロープ、エレベーター、手すり、身体障害者用トイレ等の整備を行った。

(エ) 学校教育終了後及び学校外における学習機会を提供するため、公民館、図書館等の社会教育施設にスロープ、エレベーター等の整備を行うとともに、点字図書、拡大読書機、字幕入りビデオ等の整備や、社会教育施設における学級・講座等において、障害のある人の問題に関する学習機会を提供し、理解の促進を図った。

イ 障害のある児童に対する育成施策

(ア) 障害のある児童に対する児童福祉施設での指導訓練のほか、心身障害児通園事業(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)事業、訪問介護(ホームヘルプ)サービス事業を充実し、障害のある児童の療育について児童相談所、保健所等における相談・指導を実施した。

(イ) 障害の重度化、重複化に対応するため、心身障害児総合通園センターの整備や心身障害児通園施設機能充実試行的事業、重症心身障害児通園試行的事業、強度行動障害特別処遇事業等を実施した。

(ウ) 障害の予防に関する研究13課題、療育に関する研究7課題の心身障害研究を実施した。


第2節 障害者の職業的自立を図るための雇用・就業施策

ア 身体障害者及び精神薄弱者の雇用状況
 我が国においては、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、民間企業、国、地方公共団体は、一定の割合以上、身体障害者を雇用しなければならないこととされている。また、雇用されている精神薄弱者については、実際の雇用率を算定するに当たり、身体障害者と同様にカウントできることとされている。

「障害者の雇用の促進等に関する法律」において定められた雇用率
○ 民間企業一般の民間企業1.6 %
特殊法人1.9 %
○ 国、地方公共団体非現業的機関2.0 %
現業的機関1.9 %

 民間企業のうち、身体障害者雇用率1.6 %が適用される一般の民間企業(常用労働者数63人以上の規模の企業)における雇用者数(平成8年6月1日現在)は24万7,982 人(前年24万7,077 人)、実雇用率1.47%(前年1.45%)となっている。また、1.9 %の雇用率が適用される公団、事業団等の特殊法人(常用労働者53人以上規模の法人)については、実雇用率は前年から0.01ポイント上昇して1.96%となっている。
 国、地方公共団体のうち、雇用率2.0 %が適用される非現業的機関(各省庁、都道府県、市町村の行政機関等)の雇用者数は4万2,009 人(前年4万1,735 人)、実雇用率2.01%(前年2.00%)であり、1.9 %の雇用率が適用される現業的機関(郵政省、大蔵省印刷局、林野庁、地方公営企業等)の雇用者数は6,068 人(前年6,125 人)、実雇用率2.21%(前年2.20%)となっている。

イ 障害者の雇用促進に関する施策
 法定雇用率未達成の企業等に対する雇用率達成指導、適正実施の勧告を行い、改善のみられなかった企業7社に対する特別指導を実施するとともに、大企業が集中する東京をはじめ全国の主要都市の13公共職業安定所に設けられている「障害者雇用指導コーナー」において、雇用率達成指導、相談援助を実施した。
 また、法定雇用率を超えて身体障害者を雇用している企業に対し、調整金、報奨金を支給するとともに、障害者を雇用する事業主に対する支援措置として、作業設備の改善等に対する各種助成金の支給、雇用促進融資、税制上の優遇措置等を講じている。

ウ 障害の重度化に対応した施策
 雇用されている重度身体障害者については、雇用率制度上の特例(ダブルカウント)措置を講じているほか、第3セクター方式による重度障害者雇用企業の育成や重度障害者雇用促進プロジェクト事業、地域障害者雇用推進総合モデル事業などの雇用促進を図るための対策を講ずるとともに、一般雇用が困難な者に関する授産施設等の整備を行った。

エ 職業リハビリテーション施策
 公共職業安定所におけるきめ細かな職業相談、職業紹介や障害者職業センター等における職業リハビリテーション技術の開発及び普及、職業リハビリテーションサービスの提供等を行った。また、公共職業能力開発施設において、障害者を受入れやすくするために校舎の入口のスロープや手すり、トイレ等の整備を行った。


第3節 障害のある人の生活を豊かにするためのスポーツ・レクリエーション及び文化活動の振興

ア スポーツの振興
 障害のある人の自立と社会参加を促進し、生活を豊かにする上で、障害のある人が障害のない人と同じようにスポーツや文化活動を楽しむことができる機会を提供することは重要なことである。我が国の身体障害者スポーツの牽引役を担ってきた全国身体障害者スポーツ大会も平成8年度で第32回を迎え、広島県において全国から約1,300 人の選手が参加した。このほか、ジャパンパラリンピック競技大会、全国ろうあ者体育大会、大分国際車いすマラソン大会等が開催された。
 一方、グラウンド・ゴルフやインディアカ等のニュースポーツ普及等を行うスポーツ団体の法人化をはじめとする育成支援のほか、スポーツ振興基金において、スポーツ団体のスポーツ事業に対する支援を行っている。

イ 長野パラリンピック冬季競技大会への対応
 冬季障害者スポーツ大会の祭典である「長野パラリンピック冬季競技大会」が、平成10年3月に開催される予定である。現在、開催のための準備を (財) 長野パラリンピック冬季競技大会組織委員会で進めている。また、平成7年度から (財) 日本身体障害者スポーツ協会が行っている選手の育成強化のための事業に対し支援を行った。
 さらに、今大会から知的障害者の正式種目としてクロスカントリースキーが実施されることに伴い、 (社福) 全日本手をつなぐ育成会に対して、この競技で活躍できる選手の育成強化のための支援を行っている。

ウ レクリエーション及び文化活動の振興
 障害のある人にとってのレクリエーションや文化活動は、全国各地で様々な活動が行われており、障害のある人によるコンサートや、聴覚障害、視覚障害のある人でも楽しめる演劇等も盛んに行われるようになってきている。また、国民文化祭や全国高等学校総合文化祭においても、障害のある人々生徒も共に参加している。


第3章 日々の暮らしの基盤づくり(障害のある人が日常生活の質を確保するために必要な保健・医療、福祉等)

第1節 障害の予防・早期発見・早期治療等のための保健・医療施策

ア 障害の予防、早期発見及び研究
 障害の原因、予防・早期発見・治療及び療育に関する研究を実施するとともに、妊産婦に対する健康診査、先天性代謝異常等検査、乳幼児健康診査等を実施した。また、周産期医療の確保のため、新生児集中治療管理室、周産期集中治療管理室の整備や国立病院の新生児医療の実施、国立大学附属病院の周産母子センターの設置等を行った。さらに、妊産婦や新生児・未熟児等に対する障害の予防や健康の保持増進のための母親(両親)学級等による保健指導を行った。

イ 医療・リハビリテーション医療
 障害のある人のための医療・リハビリテーション医療の充実は、障害の軽減を図り、障害のある人の自立を促進するために不可欠である。このため、国立大学附属病院においてはリハビリテーション部等の整備、国立療養所では進行性筋萎縮症及び重症心身障害児の入浴治療を行った。また、身体障害を軽減もしくは除去するための更生医療及び育成医療を行った。
 さらに、歩行困難等の重度身体障害者に対するリハビリテーション器具等の利用に関する助言や各種医療制度に関する指導、補装具の給付等を行った。
 平成6年の医療保険制度の改正により、かかりつけ医師による往診や在宅人工呼吸器指導管理等在宅医療に係る診療報酬の改善を図ったほか、訪問看護ステーションによる訪問看護事業の対象を重度障害者等に拡大した。

ウ 精神保健福祉施策
 精神病院の措置入院患者(約5千4百人)については、公費による医療費負担制度が設けられ、また、外来医療については、約47万人を対象として通院医療費の公費負担制度が設けられており、在宅の精神障害者の生活指導等を行う精神科デイケア事業及び精神科ナイトケア事業を実施した。
 保健所においては、精神保健福祉センターや医療機関、社会復帰施設等との連携の下に、精神保健福祉相談員による精神保健福祉相談、保健婦による訪問指導を実施した。
 また、精神保健福祉センターでは、精神保健福祉に関する相談指導や技術援助、知識の普及等の業務を行ったほか、心の健康づくり等の事業を実施した。
 平成7年度には、精神障害者の社会復帰施策の充実、より良い精神医療の確保等を図るため、「精神保健法」を改正し、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」とした。
 さらに、夜間や土日曜でも安心して精神科の救急医療が受けられるよう精神科救急医療体制整備事業を実施した。

エ 専門従事者の確保
 医師については、卒前、卒後の教育の中でリハビリテーション関係の充実を図り、看護婦については、「精神看護学」や「在宅看護論」を教育課程に加え、資質の高い看護職員の養成に努めることとし、また、理学療法士及び作業療法士の養成施設については、養成力の確保について目標を達成している。さらに、精神保健福祉士(PSW)法案、言語聴覚士(ST)法案を国会に提出することとしている。


第2節 障害のある人の生活の質の向上のための福祉施策

ア 生活安定のための施策
 障害のある人に対する所得保障として、障害基礎年金、障害厚生(共済)年金の制度と、障害による特別の負担に着目し、その負担の軽減を図るために支給される各種手当制度がある。我が国の年金制度は、国民皆年金体制が確立され、原則として全ての国民がいずれかの年金制度に加入することとされているので、被保険者期間中の障害については障害基礎年金や障害厚生(共済)年金が支給されるほか、国民年金に加入する20歳より前に発した障害についても障害基礎年金が支給されることから、原則として全ての成人障害者が年金を受給できることとなっている。また、特に重度の障害のある人を対象とする特別障害者手当等も支給されている。これらの年金及び手当については、毎年物価の上昇に合わせて支給額の改定を行う(物価スライド)ほか、少なくとも5年に1度行われる財政再計算の時に、生活水準の向上や賃金の上昇に応じて支給額の改善を行っている。

イ 福祉サービス

(ア) 在宅サービス
 障害児(者)ができる限り住み慣れた家庭や地域で生活ができるようにするためには、その介護に当たる家族の介護負担を軽減するとともに、障害のある人の自立した生活を支援することが重要である。このため、訪問介護員の派遣及び短期入所生活介護(ショートステイ)事業を実施している。訪問介護サービス事業については、高齢者に対する訪問介護サービスと一体的な運営が行われ、訪問介護員数等は新ゴールドプランに基づきその充実を図ってきたが、平成8年度以降は障害者プランに基づいて、さらに上乗せして整備しているところである。短期入所生活介護事業については、平成6年度から、障害児及び精神薄弱者の短期入所生活介護事業の利用対象を拡大し、一層の利用の促進を図った。
 また、重度の身体障害者が、地域の中で日常生活を自主的に営むことができるように、身体障害者の利用に配慮した身体障害者福祉ホームの整備や公営住宅や福祉ホーム等に住む身体障害者を対象に、専任介護グループによる安定的な介護サービスを提供する身体障害者自立支援事業を行った。
 さらに、精神薄弱者のための地域における自立生活の場の確保、食事の準備や金銭管理等について世話人を派遣して援助する世話人付き共同生活住宅(グループホーム)の増設を図った。
 日帰り介護事業については、平成6年度からは、身体障害者療護施設等併設する適当な施設のない地域においても事業が実施できるよう単独型施設に対する加算制度を導入し、また、精神薄弱者を対象とする日帰り介護については、重度精神薄弱者を対象とする重介護型日帰り介護センターの運営を開始しており、平成8年度からは1日の利用定員を8人以上に引き下げた。
 在宅の身体障害者の社会参加を促進するために都道府県・指定都市が実施する「障害者の明るいくらし」促進事業の拡充を図ったほか、平成8年度には、在宅の障害のある人に対し、在宅福祉サービスの利用援助、社会資源の活用、障害当事者同士の相談支援であるピアカウンセリング等を総合的に実施するため、新たに「市町村障害者生活支援事業」を創設した。
 また、精神障害者が一定期間事業所に通い、対人能力や仕事に対する能力を養うための精神障害者社会適応訓練事業等を実施し、さらに平成8年度には地域で生活する精神障害者の日常生活の支援や、相談への対応、地域交流活動を実施するため、精神障害者地域生活支援事業を創設した。

(イ) 施設サービス
 今日の施設は、入所させるだけではなく、施設が蓄えてきた処遇の知識及び経験あるいは施設の持っている様々な機能を地域で生活している障害のある人が利用できるように支援することが必要であり、そのための事業を行った。また、入所者の社会復帰を目的とした施設では、地域生活への移行を促進する措置を講じている。

(ウ) 専門職員等の養成
 社会福祉士や介護福祉士等の養成、各種リハビリテーション専門職員の養成訓練等福祉分野における人材確保を図った。

(エ) 精神障害者福祉の法制の整備等
 障害者基本法の成立により、精神障害者が、身体障害者や精神薄弱者と並んで基本法の対象として位置付けられたこと等を踏まえ、平成7年5月に、「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改めた。
 この改正では、法律の目的や責務規定に、精神障害者の自立と社会参加の促進のために必要な援助を行うという福祉施策の理念を加えた。また、精神障害者保健福祉手帳制度を創設したほか、精神障害者社会復帰施設や各種の社会復帰促進事業等の充実を図り、今後の施策推進の法的枠組みを確立した。

ウ 福祉機器の研究開発・普及、産業界の取組の推進

(ア) 研究開発の促進
 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所では、平成7年度に引き続き、福祉用具の試験評価と規格化に関する基礎的研究及び情報伝達機器介護者支援用機器等の研究開発等を行い、通商産業省工業技術院傘下の各研究所では平成8年度末現在すでに38テーマの研究が終了し、平成9年度においては、医療分野7テーマ、福祉分野6テーマの研究開発を実施することとしている。
 また、 (財) テクノエイド協会の民間事業者等が行う研究開発に対する助成は、平成7年度末までに64テーマが終了し、平成8年度は新たに9の研究開発テーマについて行った。

(イ) 標準化の推進
 福祉機器の標準化(JIS化)のため、平成5年度から標準基盤研究を実施している。また、平成7年度に建設された「くらしとJISセンター」においては、標準基盤研究を実施する中核的施設として活動が開始された。

(ウ) 評価基盤の整備等
 より優れた福祉用具の普及を推進するには、福祉用具産業の振興を図ることが必要であるため、平成7年度から「福祉用具センター」構想を軸として、福祉用具評価基盤の整備を進めている。

(エ) 専門職員の養成及び確保
 福祉用具の普及に携わる専門職員の養成及び確保については、国立身体障害者リハビリテーションセンターにおいて、義肢装具、補聴器、視覚障害者用補装具等の適合判定医師研修会や義肢装具士研修会を実施するとともに、関係行政機関、社会福祉施設、病院等で福祉用具の相談等を担当している専門職員を対象とする福祉機器専門職員研修会を実施した。

(オ) 需要に応じた給付
 福祉用具の公的給付として、補装具と日常生活用具の給付等を行っており、平成8年度は対象品目として、新たにレバー駆動型車いす及び移動用リフト並びに歩行支援用具を取り入れた。
 また、 (財) テクノエイド協会では福祉用具の製造・販売企業の情報等のデータベースを構築し、社会福祉・医療事業団の保健・福祉情報サービスを通じて情報提供を行った。

エ 情報通信機器・システムの研究開発・普及等

(ア) 障害者の利用に配慮した情報通信システム等の研究開発等
 情報通信を積極的に利活用することにより、障害のある人の社会活動への参加を促進し、高度な情報通信基盤を活用した豊かで自立した暮らしが可能となるようにしていくことが必要である。障害者の利用に配慮した情報通信・機器・システムの研究開発の推進に当たっては、国立研究機関等における研究開発体制の整備及び研究開発の推進を図るとともに、民間事業者等が行う研究開発に対する支援を行うことが重要である。
 国における研究開発では、障害者を含め誰にでも使いやすい情報端末技術を開発するため、障害者・高齢者のための情報通信機器・システムに係る基礎的・汎用的な技術の開発(「手話認識・生成技術」など:平成7年度から)や情報通信システムの実用化に資する研究開発(「障害者・高齢者対応通信入力自動設定技術」など:平成7年度から)等を行っている。
 また、民間による研究開発に対する支援としては、平成8年度から、高齢者・障害者又はそれらの者の介護をする者の利便を増進する通信・放送・サービスを開発する者に対する低利による融資を行っており、平成9年度より新たに高齢者・障害者向け通信・放送サービスに対する助成制度を創設し、民間による研究開発の支援を行うこととしている。

(イ) 調査研究、普及等
 平成8年度には「高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会」を開催し、インターネットの普及がもたらす格差の是正、障害者・高齢者のネットワーク参加促進などに向けた様々な提言がなされた。今後はその実現に向けて種々の施策を推進することとしている。
 また、障害のある人が障害のない人と同様に電気通信を利用できるようにするため、その利用に配慮した電気通信システムを設置する者に対する低利による融資制度等が設けられており、これにより障害者向けの情報通信機器・システム等のより一層の普及が期待されている。
 さらに、平成7年に公表された「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」の普及と指針に準拠した機器の普及啓発を目的とし、障害のある人や地方行政機関の担当者等を対象とした説明会等を行った。


第4章 住みよい環境の基盤づくり(障害のある人が仕事や日常の外出等を自由にできるようにするために必要なまちづくり、住宅確保、移動・交通、情報提供、防犯・防災対策等)

第1節 障害のある人の住みよいまちづくりのための施策

ア 福祉のまちづくりの推進

(ア) 平成6年度から従来の「住みよい福祉のまちづくり事業」を拡充し、「障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業」を創設し、地域社会の合意に基づいた計画的な福祉のまちづくりを推進した。

(イ) 平成6年度から「福祉の街づくりモデル事業」を改組、拡充し、障害のある人や高齢者に配慮した活動空間の形成を図り、障害のある人や高齢者が積極的に社会参加できるようにするために、快適かつ安全な移動を確保するための動く通路、エレベーター等の施設整備、障害のある人等の利用に配慮した建築物の整備、幅の広い歩道の整備等を行う「人にやさしいまちづくり事業」を実施してきた。また、障害のある人を含む全ての人々の利用に配慮した住宅・社会資本整備を推進するため、中長期的な方向、整備の目標などを総合的に取りまとめた「生活福祉空間づくり大綱」(平成6年6月28日)を策定している。

(ウ) 建設省及び厚生省では平成8年3月に、市町村が土木、住宅、福祉等関係部局の相互連携の下、福祉のまちづくりに主体的に取り組むことを支援するため、高齢者・障害者団体等の幅広い意見を反映しつつ、計画策定に当たっての視点、配慮事項等を総合的に盛り込んだ手引きを取りまとめ、通知した。

(エ) 平成8年度から従来の「農村総合整備事業」を拡充し、農村地域において高齢者・障害のある人が安心して快適に暮らせる生活環境基盤の整備を積極的に進める「農村総合整備事業(高福祉型)」を創設した。

(オ) 地方公共団体における福祉のまちづくりを効果的に進めるため、地域福祉推進特別対策事業等による地方単独事業に対する支援を行った。

イ 都市計画制度、都市計画事業等による取り組み
 障害のある人に配慮した道路、公園等の都市施設の整備を行うとともに、歩行支援施設や障害者誘導施設等の整備を補助メニューに含んだ「街並みまちづくり総合支援事業」を北九州市戸畑駅南口地区等で実施した。
 また、平成7年度から障害のある人等の社会参加を促すため、市街地再開発事業に福祉空間形成型プロジェクトを創設し、一定の要件を満たして施設建築物に社会福祉施設等を導入するものに対し、通常の補助対象に補償費、共用通行部分整備費等を加えた。

ウ 公園、水辺空間等のオープンスペースの整備

(ア)公園整備における配慮
 都市公園等の整備に当たっては、公園の園路の幅員と勾配の工夫、縁石の切下げ、手すりの設置、ゆったりトイレの整備等障害のある人の利用に配慮した公園施設の整備を行ったほか、全国6か所の有料国営公園の身体障害者等に対する入園料金等の免除を行った。また、平成6年には、公園・緑化技術五箇年計画を定め、都市公園のバリアフリー化(物理的障壁等の除去)のための設計基準の策定や身体障害者等が運動できる公園施設の開発等を行っている。

(イ)水辺空間の整備における配慮
 河川、海岸等の水辺空間は、公園同様に障害のある人にとって、憩いと交流の場を確保するための重要な要素となっているため、河川改修及び砂防事業等を通じて、障害のある人や高齢者に配慮した堤防護岸の緩傾斜化、堤防坂路及び親水広場におけるスロープ化等の河川整備等を行った。

(ウ)港湾緑地における配慮
 高齢者や障害のある人等の利用に配慮して、手すりの設置や護岸の段差解消等を行うほか、利用しやすい港湾緑地の調査研究を平成9年度に実施することとしている。

(エ)下水道施設の上部利用等の活用
 下水道施設の上部空間を障害のある人にとって親しみやすい公園や下水処理水を利用したせせらぎ等として整備した。

エ 建築物の構造の改善

(ア)官庁施設のバリアフリー化
 官庁施設の整備においては、特に障害者の利用が見込まれる公共職業安定所等について、車いす使用者の利用等を考慮した出入口、廊下、便所の整備等に所要の措置を講じてきた。今後は、21世紀初頭までに窓口業務を行う官庁施設の全てについて、障害者等に配慮した改修等を実施することとしている。

(イ)人に優しい建築物整備促進事業
 身体障害者等の利用に配慮したデパート、ホテル等の建築物の整備を促進するため、日本開発銀行等の政府系金融機関による低利融資(ハートフルビルディング整備促進事業) を行った。

(ウ)ハートビル法の施行に伴う助成措置
 ハートビル法に基づき、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の廊下、階段等に関する基準を定め、特定建築物の建築主への指導助言を行うほか、本法に基づき都道府県知事等により認定された優良な建築物(認定建築物)に対して、平成6年度からエレベーター、幅の広い廊下等の整備に対する補助制度や税制上の特例措置が設けられた。さらに、認定建築物に対する融資制度として、「人に優しい建築物(ハートフルビルディング)整備促進事業」が拡充された。

オ 住宅整備

(ア) 公営住宅等への優遇措置及び障害者向け住宅の建設
 公営住宅及び公団賃貸住宅の入居者の募集・選考においては、障害者世帯について、住宅困窮度が高いものとして倍率優遇等の措置を講ずるとともに、障害者向け公営住宅の建設に当たっては、特別の設計の実施や特別の設備の設置に対する補助を行うほか、エレベーター設置への補助(通常5階以上を3階以上)などの措置を講じた。

(イ) 特定目的借上公共賃貸住宅制度
 平成6年度から従来の「福祉型借上公共賃貸住宅制度」に加え、特定目的借上公共賃貸住宅制度を創設した。平成7年度には、特定借上・買取賃貸住宅制度を創設し、これに伴い、特定目的借上公共賃貸住宅制度のうち、民間の土地所有者等が、建設又は改築する住宅を地方公共団体、地方住宅供給公社等が借り上げ等行い、障害のある人等に供給する方式については、特定借上・買取賃貸住宅制度に統合した。

(ウ) 公共住宅における長寿社会対応仕様の標準化
 公営住宅においては、障害や身体機能の低下などに対する配慮を行っており、新たに建設する全ての公営住宅においては、長寿社会対応仕様を標準化している。なお、改善を行う際は、可能な限り長寿社会対応仕様設計を行うこととしており、既存ストックの改善に努めた。また、公団住宅においても、平成8年度より、新たに建設される全ての公団住宅について、長寿社会対応仕様を適用することとした。

(エ) 住宅の建設、購入等における融資制度
 住宅金融公庫では、障害のある人と同居する世帯の住宅建設・購入に対する割増貸付けを行うとともに、身体障害者用の浴室整備、段差の解消等の住宅リフォームに対する割増貸付けを実施した。また、平成8年度においては、新築住宅融資について従来の規模別の金利区分を廃止し、高齢者・身体障害者等に配慮した住宅等一定の良質な住宅に対して最優遇金利である基準金利を適用した。

カ 移動・交通対策等

(ア) 公共交通機関における各種ガイドライン等に基づく事業者の指導
 公共交通ターミナルや車両の整備・改良等について、各種ガイドライン等に基づき事業者への指導を行った。

(イ) 高齢者・障害のある人等の視点に立った連続性のある交通体系の計画的構築及び新しい交通システムの検討
 「高齢者・障害者等のためのモデル交通計画策定調査報告書」を平成8年3月に作成し、これを全国的な高齢者・障害者等のための連続性のある交通体系の具体的なモデルケースにしていくこととしている。また、我が国に適したライトレールトランジットの在り方について検討を行うこととしている。

(ウ) 施設整備に対する支援体制の整備
 鉄道駅等におけるエレベーター・エスカレーター等の高齢者・障害のある人等のための施設整備を対象とした日本開発銀行による低利融資を行った。
 また、 (財) 交通アメニティ推進機構は民間からの出捐を原資にして、鉄道駅、バス・空港・旅客船等におけるエレベーター・エスカレーター設置事業等への助成等を行ったほか、特に整備が急がれているJR及び民間鉄道の障害者対応型エレベーター・エスカレーター設置事業については、平成6年度から「交通施設利用円滑化対策費補助金」が創設され、 (財) 交通アメニティ推進機構を通じ、国からも補助を行った。

(エ) 道路交通環境の改善
 車いす利用者や高齢者など様々な人が安心して通行できるよう、幅の広い歩道等を整備するとともに、既設の歩道等の段差・勾配・傾斜の改善や立体横断施設へのスロープの設置等によりバリアフリー化を進め、良好な歩行空間をネットワークとして確保するよう努力している。更に、住宅系地区等におけるコミュニティ・ゾーンの整備、サービスエリア等への障害者用トイレの設置、わかりやすい案内標識の整備等を行っている。
 また、整備するに当たっては、利用者の視点に立って道路交通環境の改善が行われるよう、地域の人々や道路利用者が参加する「交通安全総点検」等も実施している。

(オ) 公共交通機関周辺環境の利便性の向上
 駅等の交通結節点である駅前広場、ペデストリアンデッキ等の整備やエレベーター・エスカレーター等の歩行支援施設等の整備を行った。

(カ) 障害のある人に対する運賃・料金割引等
 鉄道、バス、タクシー、旅客船、航空等の公共交通機関における身体障害者割引等の措置を講ずるとともに、身体障害者の使用する車両に対し、駐車禁止除外指定車標章を交付した。

(キ) 運転免許取得希望者への配慮
 運転免許試験場にスロープ、エレベーター等を整備したほか、身体障害者用試験車両の整備や身体障害者の運転適性について豊富な知識を有する試験官の配置を行った。

(ク) 高齢者・障害のある人の旅行促進のための環境整備
 平成8年3月「高齢者・障害者の利用に対応する宿泊施設のモデルガイドライン」を策定し、関係団体を通じて、宿泊施設に周知した。

(ケ) 「オムニバスタウン構想」の推進
 平成9年度から、バスを中心とした安全で快適なまちづくりを目指す市町村を警察庁、運輸省及び建設省が連携して支援する「オムニバスタウン構想」を推進し、障害者等の交通弱者に配慮したノンステップバス、リフト付きバス等の導入の促進等バスの利便性の向上を図ることとしている。


第2節 障害のある人が安心して生活を送るための施策

ア 情報提供

(ア)障害のある人の食生活環境の改善について、購買、調理、食事等の各場面における障害のある人への支援体制に関する検討、テープ・点字書籍等による食生活関連情報の提供を行った。

(イ)都道府県の行う点訳奉仕員、朗読奉仕員、手話奉仕員及び要約筆記奉仕員に対する講習会や手話奉仕員等の派遣事業を支援したほか、新聞情報等を即時に全国の点字図書館で受信できる「点字情報ネットワーク事業」や全国の点字図書目録の検索等ができる「点字図書館情報検索体制」を整備している。
 さらに、平成7年度には、障害のある人の社会参加に役立つ各種情報を収集・提供するとともに、障害のある人に情報交換の場を提供する「障害者情報ネットワーク」(ノーマネット)を構築し、平成8年度には、インターネットで提供するデータベースシステムである「障害者保健福祉研究情報システム」を構築した。

(ウ)放送事業者が行う字幕放送、解説番組等の番組制作等に対する助成金の交付等の財政支援を行っており、平成8年度には 150本の字幕番組に助成した。
 平成8年度から平成12年度までの5か年計画で、通信・放送機構の渋谷上原リサーチセンターにおいて字幕番組等視聴覚障害者向け放送ソフトの効果的な制作を可能とする技術の研究開発をたちあげており、平成8年度にはその基本的設計・試作を行った。

(エ)電気通信事業者においても、音量調節機能付電話等福祉用電話機器の開発や車いす用公衆電話ボックスの設置など障害のある人が円滑に電話を利用できるよう種々の措置を講じた。また、電気通信事業として、福祉用電話機器の使用料等の減額や番号案内料の免除等の措置を講じたほか、クレジット通信機能について、聴覚や言語に障害がある者などを対象にその月額使用料を免除する措置を講じた。

(オ)郵便局においては、点字による各種通知書の送付、点字表示をしたキャッシュカード等の発行、ATM等の操作に配慮した点字表示や音声誘導装置付き各種機器の設置等を行った。また、郵便局の窓口で耳の不自由なお客様と手話による会話ができる職員を養成するための講習会を実施した。

(カ)国民生活センターでは、商品テストの結果や悪質商法などの生活を取り巻く諸問題についての知識や情報を、消費者の立場に立った5分間の生活教養テレビ「ご存じですか-消費者ミニ情報-」(水曜日、11時25分~11時30分)として全国31ネットで提供し、この番組において手話放送を行った。

イ 防犯対策

(ア)障害のある人が警察へアクセスする際の困難を除去するため、交番等の玄関前のスロープの設置やファックス 110番の導入、ファックスネットワークの構築、手話のできる警察官の交番等への配置を行った。また、 (財) 全日本ろうあ連盟が作成した「手話バッジ」を、手話のできる警察官等に装着させ、聴覚障害者等の利便を図っている。

(イ)障害のある人が犯罪や事故の被害に遭うことの不安感を除くため、パトロール等を通じた困りごと相談や障害者の身近な危険に関するニーズ把握、地域安全ニュースの発行等を行った。

(ウ)警察部内では、手話講習会や障害のある人に対する応接、介護に関する講習会を開催するなど、職員の研修やボランティア活動への参加を支援した。

ウ 防災対策

(ア)阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年12月に災害対策基本法を改正し、高齢者、障害者、乳幼児等特に配慮を要する者に対する防災上必要な措置に関する事項の実施努力義務を規定した。

(イ)地方公共団体が、障害のある人等の災害弱者対策に配慮した施策が行えるように、防災まちづくり事業や緊急防災基盤整備事業により起債を認め、元利償還金の一部について交付税措置を行っている。

(ウ)各都道府県警察では、障害のある人が入所する施設等への巡回連絡、ミニ情報紙の配布や自主防災組織等の育成による障害のある人に対する支援体制の整備促進に努めた。

(エ)緊急通報システムによる災害弱者から消防機関への緊急通信体制の一層の充実を図るための調査研究を進めたほか、災害弱者が入所する施設の避難対策の強化等防火管理の充実について消防機関を指導した。

(オ)被災後通常生活への復旧に多大な労力を要するなど、障害のある人の日常生活に著しい負担をもたらす床上浸水被害が頻発している地域について、2000年までに慢性的な床上浸水被害を解消するため、緊急的かつ総合的に治水対策を推進する床上浸水対策特別緊急事業等により、河川改修等を重点的に実施した。

(カ)社会福祉施設等の災害弱者に関連した施設を保全対象に含む危険箇所に係る砂防、地すべり、急傾斜地崩壊対策事業を重点的に推進した。また、激甚な災害を受けた地域における再度災害の防止を図るため、河川事業、砂防事業、地すべり対策事業及び急傾斜地崩壊対策事業を強力に推進した。

(キ)避難地、避難路等の都市防災施設の整備を都市公園事業、街路事業、土地区画整理事業等により推進するとともに、避難施設及び延焼遮断帯の周辺等市街地の枢要な地域の耐震不燃化を市街地再開発事業、都市防災不燃化促進事業等により実施した。

(ク)医療、福祉等の機能を有する公共・公益施設を集中整備し、相互の連携により、地域の防災活動拠点となる防災安全街区等の整備をした。

(ケ)大規模な地震発生の可能性の高い地域内の都市では、都市の防災構造化を計画的に推進するため、都市防災構造化対策事業計画の策定について関係地方公共団体を指導した。

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