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第1編 > 第3章 > 第2節 > 2 総合的な支援施策の推進

2 総合的な支援施策の推進


(1)保健福祉,教育との連携を重視した職業リハビリテーションの推進

ア 公共職業安定所におけるきめ細かな職業相談,職業紹介
 障害のある人の職業紹介については,公共職業安定所において,就職を希望する障害のある人に対して求職の登録(就職後のアフターケアまで一貫して利用)を行い,求職者の技能,職業適性,知識,希望職種,身体能力等の状況に基づき,ケースワーク方式による職業指導を実施し,安定した職場への就職あっせんに努めている。このため,主要な公共職業安定所に障害のある人の就職問題を専門に担当する就職促進指導官を配置するとともに,きめ細かな就職指導等を円滑かつ効果的に推進するため職業相談員(身体に障害のある人,知的障害障害のある人及び精神に障害のある人担当),精神障害者ジョブカウンセラー及びろうあ者の職業相談を円滑に実施するための手話協力員を配置している(平成15年度は全国で身体障害者職業相談員143名,知的障害者職業相談員201名,精神障害者相談員117名,ジョブカウンセラー47名,手話協力員296名を配置)。
 平成16年3月現在の求職登録状況をみると,登録者総数は48万9,802人で,前年同期に比べて1万1,490人の増加となっている。このうち,「障害者の雇用の促進等に関する法律」別表に掲げる身体障害を有する人は33万579人で登録者総数の67.4%を占めている。身体に障害のある人である登録者のうち,有効求職者数は10万7,113人,就業中の者は19万5,905人となっている。身体障害以外の障害のある人は,15万9,223人で,有効求職者数は4万6,431人,就業中の者は9万9,736人となっている。
 平成15年度における障害のある人の新規求職申込みは8万8,272件,就職件数は3万2,885件となっている。


図表1-15 障害種類別求職登録状況
図表1-15 障害種類別求職登録状況



図表1-16 公共職業安定所における障害者の職業紹介件数(平成15年度)
図表1-16 公共職業安定所における障害者の職業紹介件数(平成15年度)



イ 障害者職業センターにおける職業リハビリテーション
 障害者職業センターには,独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が運営する3種類の施設機関があり,それぞれ次のような業務を行っている。

1 障害者職業総合センター
 全国の障害者職業センターの中核となる施設として,高度の職業リハビリテーション技術の研究・開発及びその成果の普及,先駆的な職業リハビリテーションサービスの提供,職業リハビリテーションに従事する専門職員の養成・研修の実施等を目的として,千葉市美浜区に設置されている。

2 広域障害者職業センター
 広範囲の地域にわたり,障害者職業能力開発校や医療施設等との密接な連携の下に,系統的な職業リハビリテーションサービスを提供する施設として,現在次の3施設が運営されている。
(ア)中央広域障害者職業センター
 中央障害者職業能力開発校と併設し,両者を総称して「国立職業リハビリテーションセンター」(埼玉県所沢市)としている。
(イ)吉備高原広域障害者職業センター
 吉備高原障害者職業能力開発校と併設し,両者を総称して「国立吉備高原職業リハビリテーションセンター」(岡山県上房郡)としている。
(ウ)せき髄損傷者職業センター
 せき髄損傷者に一貫した職業リハビリテーションを行う施設として,福岡県飯塚市に設置されている。

3 地域障害者職業センター
 公共職業安定所との密接な連携の下に,障害のある人に対する職業相談からアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施する施設として,各都道府県に1か所設置されている。主要な都道府県においては,支所が設置されている。
 地域障害者職業センターは,専門的な職業評価,職業指導を行うほか,職業リハビリテーションとして次のような業務を行っている。
(ア)障害のある人の就労の可能性を高めるための支援
  就職や職業生活を可能としていくための職場のルール,作業遂行能力,適切な態度等基本的な労働習慣の体得及び職業に関する知識の習得のために,地域障害者職業センター内や事業所内での作業支援,事業所見学や職業講話等による支援(職業準備支援事業ワークトレーニングコース)をすべての地域障害者職業センターにおいて実施している。
  また,精神に障害のある人を対象に,作業支援や職業講話のほか対人技能訓練等を通じて,障害特性に配慮して段階的に基本的な労働習慣の体得,対人技能等の習得のための支援(職業準備支援事業自立支援コース)を全国16か所(平成15年度現在)の地域障害者職業センターで実施している。
  このほか,視覚障害,脳性まひ等の身体障害者を対象に,外部機関(社会福祉法人,学校法人等)に技術指導の協力を得て,OA機器の操作技能(パソコン基本操作,ワープロ・表計算ソフト基本操作等)の習得のための職業講習(OA講習)をすべての地域障害者職業センターにおいて実施している。
(イ)障害のある人の職場適応に関する支援
  就職又は職場適応に課題を有する知的障害のある人,精神に障害のある人等の雇用の促進及び職業の安定を図るため,地域障害者職業センターが実際の事業所に職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣し,障害のある人及び事業主に対して,雇用の前後を通じて障害特性を踏まえた直接的・専門的な援助を行うジョブコーチによる人的支援事業をすべての地域障害者職業センターで実施している。
  なお,地域障害者職業センターに所属するジョブコーチのほか,協力機関として登録された社会福祉法人等に所属するジョブコーチによる支援も行っている。
ジョブコーチ


図表1-17 職場適応援助者(ジョブコーチ)事業
図表1-17 職場適応援助者(ジョブコーチ)事業



ウ 障害者就業・生活支援センター及び障害者雇用支援センターによる障害のある人の職業的自立の促進
 障害者就業・生活支援センターは,身近な地域で,雇用,福祉,教育等の関係機関との連携の拠点として連絡調整等を積極的に行いながら,就業及びこれに伴う日常生活,社会生活上の支援を一体的に行うことを目的としており,全国に45か所(平成15年度)設置・運営されている。また,障害者雇用支援センターにおいては,相談,援助や職業準備訓練の実施などの職業リハビリテーションを実施しており,全国に14か所(平成15年度)設置・運営されている。


図表1-18 障害者就業・生活支援センター
図表1-18 障害者就業・生活支援センター



エ 専門職員の養成・確保
 職業リハビリテーションに従事する専門職員については,障害者職業総合センターにおいて,障害者職業カウンセラーを養成するための「厚生労働大臣指定講習」及びその後の資質向上を図るための研修等を実施している。
 障害のある人への雇用支援が,医療・福祉等の分野から連続して効果的に行われるよう,職業リハビリテーションに携わる人材の育成を図るための各種研修を実施している。具体的には,「職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成研修」,「障害者雇用支援センター及び障害者就業・生活支援センター職員に対する研修」,「職業リハビリテーション実践セミナー」など,多様な研修を実施している。

(2)雇用への移行を進める支援策の充実

ア トライアル雇用の活用による障害者雇用のきっかけづくり
 障害のある人の雇用の経験が乏しいために,障害のある人に合った職域開発,雇用管理等のノウハウがない事業主においては,障害のある人を雇い入れることにちゅうちょする面もある。こうした事業主に対し,短期間の試行雇用(トライアル雇用)を通じて今後の障害者雇用のきっかけづくりを与えるとともに,試行雇用(トライアル雇用)期間終了後に常用雇用への移行を進めることを目的とした,トライアル雇用事業(障害者試行雇用事業)を実施している。
 トライアル雇用を実施する事業主に対しては,対象障害者1人1月当たり5万円の試行雇用奨励金を支給している。

イ 職場での適応訓練

1職場適応訓練
 障害のある人に対し,作業環境への適応を容易にし,訓練修了後は引き続き雇用してもらうことを期待して,都道府県知事が民間事業主に委託して実施する訓練で,訓練生には訓練手当が,事業主には職場適応訓練費(2万4,000円/月)が支給される(原則,期間6か月以内)。また,重度の障害のある人に対しては,一般の障害のある人の場合よりも訓練期間,支給期間を長くし(1年以内),職場適応訓練費を上積み支給(2万5,000円/月)している。

2短期職場適応訓練
 障害のある人に対し,実際に従事することとなる仕事を経験させることにより,就業への自信を持たせ,事業主に対しては対象者の技能程度,適応性の有無等を把握させるため,都道府県知事が民間事業主に委託して実施する訓練で,訓練生には訓練手当が,事業主には,職場適応訓練費(960円/日)が支給される(期間2週間以内)。また,重度障害者に対しては,一般の障害のある人の場合よりも訓練期間,支給期間を長くし,職場適応訓練費を上積み支給(1,000円/日)。

ウ 高等教育機関等の試験における配慮
 司法書士試験及び土地家屋調査士試験においては,その有する知識及び能力を答案等に表すことについて健常者と比較してハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には,弱視者に対する拡大鏡の使用や記述式試験の解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用を認め,また,試験時間の延長を認める等の措置を講じている。

(3)職業能力開発の充実

ア 一般の公共職業能力開発施設における受入れの促進
 障害のある人の雇用を促進し,職業の安定を図るためには,障害のある人及び労働市場のニーズに対応した職業能力開発の実施が不可欠である。
 障害のある人に対する職業訓練については,ノーマライゼーションの観点から,自動ドア,スロープ,手すり,トイレ等の整備等,施設のバリアフリー化を推進すること等により,可能な限り一般の公共職業能力開発施設に受け入れて実施している。
 また,平成16年度からは,近年の知的障害のある人に対する新たな職域における職業訓練の成果をもとに,県立の一般公共職業能力開発施設において知的障害のある人等を対象とした訓練コースを設置して,障害のある人の受入れを一層促進することとしている。

イ 障害者職業能力開発校における職業訓練の推進
 一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については,障害者職業能力開発校を設置し,職業訓練を実施している。
 現在,障害者職業能力開発校は国立が13校,都道府県立が6校で,全国に19校が設置されている。運営については,国立13校のうち2校は独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に,他の11校は都道府県に委託している。
 障害者職業能力開発校においては,入校者の障害の重度化,多様化が進んでいることを踏まえ,個々の訓練生の障害の程度等を十分に考慮するとともに,サービス経済化,IT化の進展等の下で,雇用ニーズに対応した職業訓練内容の充実を図っている。
 特に,知的障害のある人に対する職業訓練については,雇用・就業を希望する人の増加を踏まえて訓練コースを計画的に設けてきたところであり,平成15年度は青森県立障害者職業訓練校で訓練コースを新設するとともに,神奈川県障害者職業能力開発校においては,環境,流通,外食のサービス分野の訓練を中心に実施するようカリキュラムを見直した。
 中央及び吉備高原障害者職業能力開発校では,平成14年度から事務・販売実務コース,介護サービス実務コース等の新たな職域について,知的障害のある人に対する職業訓練を実施している。
 今後とも,地域のニーズに応じた訓練内容の見直し等を図り,障害のある人の雇用の促進に資する職業訓練を実施することとしている。

ウ 障害者職業能力開発センターにおける能力開発
 障害のある人の能力開発を図り,その雇用の促進と安定に資するため,納付金による助成金を財源として障害者能力開発センターの設置促進を図っており,平成15年度までに全国で18か所設置されている。なお,これらの能力開発施設における訓練職種は園芸,パン・菓子製造,機械工作,情報処理,ホテル科等様々な職種が設けられ,訓練期間3か月〜2年程度となっている。また,訓練施設については,身体に障害のある人を対象とするもの10施設(うち視覚に障害のある人対象2施設),知的障害のある人を対象とするもの9施設,精神に障害のある人を対象とするもの2施設となっている(複数の障害を対象としている施設あり)。

エ 民間の教育訓練機関等に委託して行う職業訓練
 平成10年度から,離職を余儀なくされた人に対して,早期の再就職を図る観点から,再就職に必要な職業訓練を実施するため,また,障害のある人の能力,適性等に対応した多様な職業訓練を機動的に実施するため,国立・県営の障害者職業能力開発校から民間の教育訓練機関等に委託して職業訓練を実施している。
 平成16年度から,この委託訓練については,委託元,委託先,内容等を見直して大幅に拡充を図ることとしている。

オ 在職中の障害のある人に対する職業訓練
 近年の技術革新等の急速な進展に伴い,多様な職務内容の変化への対応が,雇用労働者として働く障害のある人にも求められており,在職中も職業訓練を行うことが雇用の安定のために重要である。そこで,国立の障害者職業能力開発校において,その施設・設備等を活用し,在職中の障害のある人に対する職業訓練を実施している。

カ 精神障害のある人に対する職業訓練
 統合失調症,そううつ病又はてんかんにかかっている人若しくは精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人で,症状が安定し就労が可能な状態にある人のうち,公共職業訓練を受けることが適当であると認定された人に対して,各都道府県の公共職業能力開発施設において職業訓練を実施している。

(コラム:障害のある人に対する職業能力開発支援の拡充(平成16年度))

キ 障害のある人の職業能力開発に関する啓発

1全国障害者技能競技大会(愛称:アビリンピック)の実施
 全国障害者技能競技大会は,障害のある人の職業能力開発を促進し,技能労働者として社会に参加する自信と誇りを与えるとともに,障害のある人に対する社会の理解と認識を高め,障害のある人の雇用の促進を図ることを目的として,アビリンピックの愛称の下,昭和47年から平成14年までに26回実施している。
 平成15年度は,国際アビリンピックの開催により,国内大会は開催されなかったが,平成16年度には,宮城県で第27回大会が開催される予定である。

2国際アビリンピックへの日本選手団の派遣
 国際アビリンピックは,昭和56年(1981年)の国際障害者年を記念して,障害のある人の職業的自立の意識を喚起するとともに,事業主及び社会一般の理解と認識を深め,更に国際親善を図ることを目的として,昭和56年10月に第1回大会が東京で開催され,以降ほぼ4年に1度開催されている。
 平成15年11月には,第6回国際アビリンピックがインド共和国の首都ニューデリーで開催され,我が国からは25名の選手が参加した。
 平成19年11月には,第1回大会より26年ぶりに,日本(静岡県)で第7回大会が開催されることが決定している。第7回大会は,「2007年ユニバーサル技能五輪国際大会」として,「個性輝く技能の祭典−見せよう,伝えよう,技能で輝く個と社会−」をキャッチフレーズに,ユニバーサル社会の実現に向けて,大会史上初めて技能五輪国際大会と同時開催し,障害のある人の職域拡大と障害の有無にかかわりのない貢献をアピールすることとしている。

(コラム:第6回国際アビリンピック(インド大会))

(4)雇用の場における障害者の人権の確保
 法務省の人権擁護機関では,障害を理由とした人権侵犯との疑いのある事案について,調査の結果,人権侵犯の事実を認めた場合には,当該状態を排除し,人権を侵害した本人やその者を指導・監督している者に対し,文書や口頭で反省を促して必要に応じて関係官庁に通知を行うなど事案に応じた適切な処置を講じるとともに,関係者に人権思想を啓発するなどして,人権侵害による被害の救済及び予防を図っている。また,障害のある人に対する偏見や差別を解消するため,昭和56年度から「障害のある人の完全参加と平等を実現しよう」を人権週間の強調事項として掲げ,人権週間を始め年間を通じて全国各地で,講演会や座談会の開催,ポスター・パンフレット等の作成・配布などの啓発活動を実施している。
 労働関係(公共職業安定所,労働基準監督署,地域障害者職業センター等)機関と福祉関係(福祉事務所,更生相談所,保健所等),教育機関(盲・聾〔ろう〕・養護学校等),人権擁護関係(都道府県人権擁護委員連合会)機関とが連携し,就職希望のある障害のある人の把握に努め,障害のある人の就職の促進及び社会復帰の促進に関する諸対策について協議するとともに,障害のある人が職業生活を送る上で抱える問題点について情報を交換し,特に,当該機関が障害のある人等から個別の相談を受ける等により問題が明らかになった場合には的確かつ迅速に対応すること等により,障害のある人の雇用の促進等職業の安定を図ることを目的として,障害者雇用連絡会議を開催している。

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