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第6章 日々の暮らしの基盤づくり

1 生活安定のための施策

障害保健福祉施策については、障害のある人の地域における自立した生活を支援する「地域生活支援」を主題に身体障害、知的障害及び精神障害それぞれについて、住民に最も身近な市町村を中心にサービスを提供する体制の構築に向けて必要な改正を行ってきた。「障害者自立支援法」によって、身体障害者及び知的障害者に加え、「支援費制度」の対象となっていなかった精神障害者も含めた一元的な制度を確立するとともに、地域生活への移行や就労支援といった課題に対応し、また、障害のある人が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスや相談支援等が受けられるよう福祉施設や事業体系の抜本的な見直しを行った。その後、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を図るための検討がなされ、平成23年8月には、当該制度改革に係るいわゆる「骨格提言」が取りまとめられた。この骨格提言等を踏まえ、「障害者自立支援法」を「障害者総合支援法」とする内容を含む「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」が成立し、平成25年4月1日から施行(一部、平成26年4月1日施行)された。

なお、「障害者総合支援法」が施行されるまでの間においても、障害のある人の地域生活の支援の充実を図るために、平成22年12月の障害者自立支援法・児童福祉法の一部改正により、利用者負担について応能負担を原則とするとともに、障害児支援の強化や相談支援の充実等が図られてきたところである。

【主な施策等】

  • ○ 平成25年度の「障害者総合支援法」の施行により、障害福祉サービス等の対象となる障害者の範囲に難病患者等が含まれることとなった。制度の対象となる対象疾患については、当面の措置として、難病患者等居宅生活支援事業の対象となっていた疾患を対象としており、今後、医療費助成の対象範囲に係る検討等を踏まえて、見直しを行うこととしている。
  • ○ 平成22年12月の「障害者自立支援法」の一部改正により、平成24年4月1日から、地域移行支援及び地域定着支援を個別給付化し、障害者の地域移行を一層推し進めている。地域生活への移行のために支援を必要とする者を広く地域移行支援の対象とする観点から、「障害者総合支援法」により、平成26年4月1日から、障害者支援施設等に入所している障害者又は精神科病院に入院している精神障害者に加えて、保護施設、矯正施設等に入所している障害者を地域移行支援の対象とすることとしている。
  • ○ 平成23年度に終了した工賃倍増5か年計画について、平成24年度から新たに、工賃向上のための3か年の計画を策定し、コンサルタントによる企業経営手法の活用や共同受注の促進など、これまでの計画でも比較的効果のあった取組に重点を置いて取り組むとともに、個々の事業所ごとに「工賃向上計画」を作成することを原則とし、共同受注を進める観点から都道府県と関係団体の間の連携を強化するなど、取組の強化を図っている。
  • ○ 「障害者総合支援法」では、障害のある人に必要なサービスが提供されるよう、将来に向けた計画的なサービス提供体制の整備を進める観点から、国の定めた基本的な指針に即して、市町村及び都道府県に、数値目標と必要なサービス量の見込み等を記載した障害福祉計画を策定することとしている。「障害者の地域生活の推進に関する議論の整理」(平成25年10月11日障害者の地域生活の推進に関する検討会取りまとめ)を踏まえ、地域における障害者の生活支援のために求められる機能を集約した拠点の整備の方向性を定めるなど、規定を整備した。
  • ○ 「障害者総合支援法」では、平成25年度から、後見、補佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るための研修を行う事業について、成年後見制度法人後見支援事業を地域生活支援事業として市町村の必須事業として位置づけたほか、指定障害福祉サービス事業者等の責務として、障害者等の意思決定の支援に配慮し、常に障害者の立場に立ってサービス等の提供を行うことを義務づけている。
  • ○ 高齢者及び障害者の消費者トラブルの防止等を目的とし、障害者団体のほか高齢者団体・行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」を平成19年1月から開催し、消費者トラブルに関しての情報を共有するとともに、各回会合での申合せの取りまとめを通じた悪質商法の新たな手口や対処の方法などの情報提供等を行う仕組みの構築を図ってきた。平成25年6月に開催した「第8回高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」では、「高齢者、障害者の消費者トラブル防止のため積極的な情報発信を行う」、「多様な主体が緊密に連携して、消費者トラブルの防止や「見守り」に取り組む」等を申し合わせた。その後、同年12月に開催した第9回同連絡協議会において、申し合わせ事項についてフォローアップ状況を報告した。同取りまとめに基づき、国民生活センターでは、障害のある人やその周りの人々に悪質商法の手口等をメールマガジンや同センターホームページで伝える等、障害者の見守り支援を行っている。加えて、「地方消費者行政の体制整備の推進に関する建議(平成25年8月6日)(消費者委員会)」を踏まえ、消費者の安全・安心確保のための「地域体制の在り方」に関する意見交換会を開催し、報告書を取りまとめた。
  • ○ 厚生労働省においては、障害者虐待の防止に向けた取組として、地域生活支援事業において、地域における関係機関等の協力体制の整備・充実を図るとともに、過去に虐待のあった障害のある人の家庭訪問、障害者虐待防止に関する研修、虐待事例の分析を行う都道府県や市町村を支援している。
  • ○ 今後、障害者の高齢化・重度化が進展し、介護が必要な障害者のグループホームの新規入居や、グループホーム入居後に介護が必要となるケースが増加することが見込まれることから、「障害者総合支援法」により、平成26年4月1日から、それまでのケアホームをグループホームに一元化し、グループホームとして介護を提供する「介護サービス包括型」と外部の受託居宅介護サービス事業者を活用した「外部サービス利用型」の2類型とした。また、一定条件下で一般のアパート等の一室を活用する「サテライト型住居」の創設等によってより柔軟なサービス提供を可能とした。
  • ○ 「発達障害者支援法」の施行を踏まえ、厚生労働省においては、平成17年度から、発達障害のある人の乳幼児期より成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援体制の整備を図るため、「発達障害者支援体制整備事業」を実施しており、平成25年度から、地域生活支援事業に「発達障害者支援体制整備」として位置付けている。
  • ○ 平成25年度4月から施行された「障害者総合支援法」においては、地域生活支援事業において、盲ろう者の自立と社会参加を図るため、コミュニケーションや移動の支援を行う「盲ろう者通訳・介助員養成研修事業」及び「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」について、都道府県の必須事業とした。また、障害者の定義に難病患者等を追加して障害福祉サービス等の対象とし、新たに対象となる難病患者等は、身体障害者手帳の所持の有無にかかわらず、必要に応じて障害程度区分の認定などの手続きを経た上で、市区町村において必要と認められた障害福祉サービス等(障害児にあっては、児童福祉法に基づく障害児支援)が利用できることとなった。
  • ○ 障害のある人に対する所得保障は、障害のある人の経済的自立を図る上で極めて重要な役割を果たしており、障害基礎年金や障害厚生(共済)年金の制度と、障害による特別の負担に着目し、その負担の軽減を図るために支給される各種手当制度がある。特別障害者扶養信託制度は制度創設以来、重度の障害のある人のみを対象にしてきたが、上述のような障害のある人を取り巻く状況の変化や、中軽度の障害のある人であっても一定の日常生活・社会生活に係る制限を有していること等を踏まえ、平成25年度から、特定障害者扶養信託制度として、中軽度の知的障害や精神障害のある人も新たに対象とすることとなった(非課税限度額は3千万円)。
  • ○ 障害のある人のスポーツに対する国民各層の理解と関心は年々高まりをみせている。平成25年度においては、ロシアのソチで「ソチ2014パラリンピック冬季競技大会」が開催され、世界から547人の選手が参加し、日本からは20名のアスリートと35名のコーチ・役員が参加した。
  • ○ 最近では、障害のある人による芸術活動や、障害のある人も楽しめる舞台芸術公演、展覧会等も各地で開催されるようになってきている。障害のある人の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害のある人の自立と社会参加の促進に寄与することを目的として、「第13回全国障害者芸術・文化祭やまなし大会」(平成25年度)が山梨県において開催された。
  • ○ 福祉用具の公的給付としては、補装具費の支給と日常生活用具の給付(貸与)がある。平成25年度から、「障害者総合支援法」の対象となる難病患者等も、補装具費や日常生活用具給付等事業の対象となった。なお、身体に障害のある人の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の物品については、消費税は非課税とされている。
  • ○ より優れた福祉用具の開発・普及を推進するためには、安全性を含めた品質向上、互換性の確保による生産の合理化、購入者への適切な情報提供に資する観点から、客観的な評価方法・基準の策定と標準化が不可欠である。このため、平成16年度から平成24年度までに日本工業規格(JIS)を活用した福祉用具の標準化を推進し、介護保険対象の主要な品目については概ね標準化してきている。平成25年度は、最近の製品の実情、国際整合性等の観点から規格の見直しが必要となったものについて検討を行い、介護用ベッド、車いす等について改正原案の検討を進めている。

2 保健・医療施策

障害の原因となる疾病等の早期発見による発生予防として健康診査等を実施するとともに、学校においては、児童生徒等が自他の生命を尊重し、日常生活全般における安全に必要な事柄を実践的に理解し、安全な生活ができるような態度や能力を養うよう、教育活動全体を通じて安全教育を行っている。

また、障害のある人のための医療・リハビリテーション医療の充実は、障害の軽減を図り、障害のある人の自立を促進するために不可欠である。「障害者総合支援法」に基づき、身体障害を軽減又は除去するための医療(更生医療及び育成医療)及び精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置づけ、その医療費の自己負担の一部又は全部を公費負担している。

【主な施策等】

  • ○ 国立障害者リハビリテーションセンター病院では、早期退院・社会復帰に向けて、各障害に対応した機能回復訓練を行うとともに、医療相談及び心理支援を行っている。また、障害者の健康増進についても必要なサービス及び情報の提供を行っている。
  • ○ 政府においては、自殺対策基本法(平成18年法律第85号)及び同法に基づく「自殺総合対策大綱」(平成19年6月閣議決定)の下、自殺対策を総合的に推進しており、平成24年8月に大綱の見直しを行った。また、地域における自殺対策については、平成21年度より各都道府県に平成23年度までの3年間の対策に係る「地域自殺対策緊急強化基金」が造成されたことにより、地域の実情に沿ったきめ細かな対策を実施することが可能となったが、さらに、地域における自殺対策の強化を図るため、平成23年度以降も補正予算が組まれ、平成25年度についても第1次補正予算において16.3億円が同基金に積み増しされ、平成26年度まで期限が延長されている。
  • ○ 平成22年6月に閣議決定された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」を踏まえ、精神科医療の提供の確保に関する精神障害者の医療の提供を確保するための指針(厚生労働大臣告示)の策定、保護者に関する規定の削除、医療保護入院の見直し等を盛り込んだ精神保健福祉法改正法が平成25年6月13日に成立し、同月19日に公布された。同法の平成26年4月の施行を見据え、平成25年7月より「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」を開催し、この検討会でとりまとめた指針案をもとに、平成26年3月に「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」を策定した。
  • ○ 障害の原因となる疾病等の予防や根本的治療法等を確立するため、これまで障害の原因、予防、早期発見、治療及び療育に関する研究が行われてきた。これは、障害児施策の基本である障害の予防や早期治療を確立し、有機的かつ総合的に施策を推進させるための基礎となるものである。この研究の成果を踏まえ、1歳6か月児健康診査、3歳児健康診査、先天性代謝異常等検査等が実施されている。
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