目次]  [前へ]  [次へ

第3編 障害者施策の実施状況 第4章

第4章 住みよい環境の基盤づくり

1.障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策

【主な施策等】

<住宅のバリアフリー化の推進>
  1. (1) 設計、設備の面で障害のある人に配慮した住宅の供給
     新設されるすべての公営住宅、都市再生機構賃貸住宅、改良住宅及び公社賃貸住宅について、原則として障害のある人の心身の特性に応じた設備等の設置に配慮し、バリアフリーを標準仕様としている。
<ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進>
  1. (2) 「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえた、バリアフリー法に基づき、施設等(旅客施設、車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等)の新設等の際の「移動等円滑化基準」への適合義務、既存の施設等に対する適合努力義務を定めるとともに、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、平成32年度末までの整備目標を定めている。交通政策基本法(平成25年法律第92号)に基づく交通政策基本計画(平成27年2月閣議決定)においても、バリアフリーをより一層身近なものにすることを目標の1つとして掲げており、これらを踏まえながらバリアフリー化の推進を図っている。
<バリアフリー化を進める上での国及び国民の責務>
  1. (3) バリアフリー法では、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め、バリアフリー化の実施に関する国民の協力を求めるよう努めることを国の責務として定めるとともに、高齢者や障害のある人などが円滑に移動し施設を利用できるようにすることへの協力だけではなく、高齢者や障害のある人などの自立した日常生活や社会生活を確保することの重要性についての理解を深めることが、国民の責務として定められている。
<建築物のバリアフリー化の推進>
  1. (4) 建築物のバリアフリー化を推進するため、バリアフリー法においては、出入口、通路、トイレ等に関する基準(建築物移動等円滑化基準)を定め、不特定多数の者が利用し、又は主として障害のある人等が利用する建築物(特別特定建築物)で一定の規模以上のものに対して基準適合を義務付けるとともに、多数の者が利用する建築物(特定建築物)に対しては基準適合の努力義務を課している。
<表示方法の統一>
  1. (5) 点字表示
     多くの公共施設等で、点字による情報提供において、表示方法の混乱を避けつつ更なる普及を図るため、「高齢者・障害者配慮設計指針─点字の表示原則及び点字表示方法─公共施設・設備(JIST0921)」を平成18年に制定した。また、平成21年には、消費生活製品に関して、「高齢者・障害者配慮設計指針─点字の表示原則及び点字表示方法─消費生活製品の操作部(JIST0923)」を制定したが、規格を利用する際の利便性を向上させるため、平成28年度にJIS T0923をJIS T0921に統合し、JIS T0921を「アクセシブルデザイン─標識、設備及び機器への点字の適用方法」へと改正した。
  2. (6) 案内用図記号
     不特定多数の人々が利用する交通施設、観光施設、スポーツ文化施設、商業施設などの公共施設や企業内の施設において、文字や言語によらず対象物、概念又は状態に関する情報を提供する図形(案内用図記号JISZ8210)は、一見してその表現内容を理解できる、遠方からの視認性に優れており、また、言語の知識を要しないといった利点があり、一般の人だけでなく、視力の低下した高齢者や障害のある人、さらに外国人等でも容易に理解することができ、文字や言語に比べて優れた情報提供手段である。
     案内用図記号については、平成28年3月に改正し、「土石流注意」等、2つの注意図記号及び「洪水/内水氾濫」等、5つの災害種別一般図記号を追加した。
     平成26年9月に制定された、「津波避難誘導標識システム」のJISZ9097を基に、洪水、内水氾濫、高潮、土石流、崖崩れ・地滑り及び大規模な火事にも素早く安全な場所に避難することが可能になるように、避難場所までの道順や距離についての情報を含んだ標識を、避難場所に至るまでの道のりに一連のものとして設置する場合に考慮すべき事項について規定した、「災害種別避難誘導標識システム」のJISZ9098を平成28年3月に制定した。また、平成28年10月にこれらをISOに提案した。
<公共交通機関のバリアフリー化の推進>
  1. (7) 公共交通機関のバリアフリー化については、「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号)に基づく取組が行われてきたが、バリアフリー法においても、公共交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設、大改良及び車両等の新規導入に際しての移動等円滑化基準(「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準」(平成18年国土交通省令第111号))への適合を義務付けている。既設の旅客施設・車両等についても移動等円滑化基準に適合させるよう努めなければならないこととしている。
  2. (8) 都市鉄道整備事業及び地域公共交通確保維持改善事業において、鉄軌道駅等のバリアフリー化に要する経費の一部補助を実施している。
     また、地方公営企業の交通事業のうち、地下鉄事業のバリアフリー化を含む建設改良事業に対する財政融資及び地方公共団体金融機構の融資制度が設けられている。
  3. (9) ノンステップバス、リフト付きバス、福祉タクシー、低床式路面電車(LRV)等の導入に対して、地域公共交通確保維持改善事業などにおいて経費の一部補助を行っている。
<歩行空間等のバリアフリー化の推進>
  1. (10) 福祉のまちづくりの推進
     障害のある人が自立して生活し、積極的に社会参加していく上で、まち全体を障害のある人にとって利用しやすいものへと変えていくことの重要性が、近年、広く認識されるようになっている。このため、幅の広い歩道の整備や建築物の出入口の段差の解消、鉄道駅舎のエレベーターの設置、音響式信号機等の整備等による障害のある人の円滑な移動の確保、公園整備等による憩いと交流の場の確保等、福祉の観点も踏まえた総合的なまちづくりが各地で進められている。
  2. (11) バリアフリー法に基づく基本方針では、重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路に設置されている信号機等については、平成32年度までに、原則としてすべての当該道路において、バリアフリー対応型信号機等の設置等の移動等円滑化を実施することを目標としており、音響により信号表示の状況を知らせる音響式信号機や、歩行者・自転車と車両が通行する時間を分離して交通事故を防止する歩車分離式信号等の整備を推進している。
<移動支援>
  1. (12) 障害のある人に対する運賃・料金割引
     鉄道、バス、タクシー、旅客船、航空等の各公共交通機関では、身体障害者手帳の交付を受けた身体に障害のある人・療育手帳の交付を受けた知的障害のある人及び常時介護を要するこれらの人の介護者に対して運賃・料金の割引を実施している。
     有料道路では、身体障害者手帳の交付を受けた身体に障害のある人が自ら運転する場合や、身体に重度の障害のある人又は重度の知的障害のある人の移動のために介護者が運転する場合において、通行料金の割引を実施している。
  2. (13) ICTを活用した歩行者移動支援の推進
     国土交通省では、高齢者や障害者、訪日外国人旅行者等も含め、誰もが屋内外をストレス無く自由に活動できるユニバーサル社会の構築に向け、ICTを活用した歩行者移動支援の取組を推進している。
     「ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進検討委員会」(委員長:坂村健東洋大学情報連携学部INIAD学部長)の提言を踏まえ、国土交通省では、多様な主体によるサービス創出に向けたオープンデータ推進等の環境整備を行っており、平成29年3月にサービス構築に必要となる施設や経路のバリアフリー情報に関するデータの仕様を改訂した。また、東京駅周辺・新宿駅周辺・成田空港・横浜国際総合競技場(日産スタジアム)をモデルケースとして、屋内電子地図や測位環境を整備し、平成28年11月から平成29年2月まで、車いす使用者等に対応した移動支援サービスの実証実験を実施した。
<ユニバーサルツーリズムの促進とバリアフリー情報の提供>
  1. (14) 観光庁では、平成24年3月に閣議決定した「観光立国推進基本計画」に基づき、平成28年度には、既存の観光案内所にバリアフリー旅行相談窓口機能を付加する手法の構築に取組んだ。全国5つの地域においてモデル事業を展開し、観光案内所職員の教育や対応マニュアルの検討、地域のバリアフリー情報を収集し広域的な情報発信を強化するなど、地域の受入体制強化に取り組んだ。
<公園、水辺空間等のバリアフリー化>
  1. (15) バリアフリー法では、一定の要件を満たした園路及び広場、休憩所、並びに便所等の特定公園施設について、新設等の際の「移動等円滑化基準」への適合義務、既存の施設等に対する適合努力義務を定めている。
     都市公園のバリアフリー化については、障害のある人を含むすべての人の利用に配慮した公園施設とするため、園路の幅の確保や段差・勾配の改善、車いす使用者を始め、多くの人にとって利用可能な駐車場やトイレの設置など、公園施設のバリアフリー化を行ってきており、都市公園移動等円滑化基準の運用等により、今後一層推進していくこととしている(平成27年度末現在の公園施設のバリアフリー率【園路及び広場:約49%、駐車場:約46%、便所:約35%】)。
<安全な交通の確保>
  1. (16) 障害のある人等の利用に配慮した信号機等の設置
     音響により信号表示の状況を知らせる音響式信号機、信号表示面に青時間までの待ち時間及び青時間の残り時間を表示する経過時間表示機能付き歩行者用灯器、歩行者・自転車と車両が通行する時間を分離して交通事故を防止する歩車分離式信号等のバリアフリー対応型信号機等の整備を推進している。
  2. (17) 障害のある人等が運転しやすい道路交通環境の整備
     障害のある人を含むすべての人が安心して運転できるよう、ゆとりある道路構造の確保や視環境の向上、疲労運転の防止等を図ることとし、道の駅等の休憩施設の整備、付加車線(ゆずり車線)の整備、道路照明の増設を行うとともに、高速自動車国道等のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、自動車駐車場等において障害者用トイレや障害者用駐車スペース等の設置を実施しているほか、信号灯器のLED化、道路標識の大型化・高輝度化、道路標示の高輝度化、交通情報提供装置の整備、道路情報板、情報ターミナル等の道路情報提供装置やそれを支える光ファイバ網等の情報通信基盤の整備を推進している。
  3. (18) 「道路交通法」(昭和35年法律第105号)においては、肢体不自由を理由として免許に条件を付された者が、身体障害者標識を表示して普通自動車を運転している場合には、他の運転者は、危険防止のためやむを得ない場合を除いて、その普通自動車に対して幅寄せや割込みをすることが禁止されている。
     さらに、同法においては、身体に障害のある歩行者等その通行に支障がある歩行者が道路を横断し、又は横断しようとしている場合において、当該歩行者から申出があったときその他必要があると認められるときは、警察官等その他その場所に居合わせた者は、当該歩行者が安全に道路を横断することができるように努めなければならないこととし、車両等の運転者は、身体に障害のある歩行者等その通行に支障のある者が通行しているときは、その通行を妨げないようにしなければならないこととされている。
  4. (19) 走行音の静かなハイブリッド車等への対策
     ハイブリッド車や電気自動車は、「音がしなくて危険と感じる」との意見が寄せられていることを受け、国土交通省においては、平成22年1月に「ハイブリッド車等の静音性に関する車両接近通報装置のガイドライン」を定め、本ガイドラインを基に、国連において日本が策定を主導してきた国際基準が平成28年3月に成立し、同年10月に発効したことに合わせ、ハイブリッド車等に車両接近通報装置を義務付ける法令を公布した。
<電動車いすの型式認定>
  1. (20) 「道路交通法」上、一定の基準に該当する原動機を用いる身体障害者用の車いすを通行させている者は歩行者とされるが、平成28年度において、その基準に該当する5型式が型式認定された。
<防災、防犯対策の推進>
防災対策

平成23年3月11日に発生した東日本大震災の教訓を踏まえ、防災対策における高齢者、障害者、乳幼児等の「要配慮者」に対する措置は一層重要になってきている。

平成25年6月の災害対策基本法の改正を受け、避難行動要支援者名簿の作成・活用に係る具体的手順等を盛り込んだ「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」を平成25年8月に策定・公表した。

同法改正においては、避難所における生活環境の整備等に関する努力義務規定も設けられ、この取組を進める上で参考となるよう、主に、避難所運営に当たって避難者の支援における留意点等を盛り込んだ、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を策定・公表した。平成28年度においては、市町村におけるより一層の取組を促進するため、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を改定するとともに、「避難所運営ガイドライン」、「トイレの確保・管理ガイドライン」、「福祉避難所の管理・運営ガイドライン」を作成して公表した。しかしながら、平成28年4月14日に発生した熊本地震においては、必ずしも適切な避難所運営が行われなかった側面も指摘された。そのため、より円滑な避難所の運営に資するため、避難所運営ガイドライン等を補完する事例集等を作成することとし、平成29年1月から2月に関係団体、被災住民へのアンケート調査等を実施した。

要配慮者関連施設等への対策

要配慮者対策を推進するには、まず、地域における要配慮者の状況を的確に把握した上で、社会福祉施設など要配慮者が入所している施設自らの対策を促進するための情報提供等を行う必要がある。

また、「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(平成25年8月内閣府)及び「避難勧告等に関するガイドライン」(平成29年1月内閣府)を参考に、要配慮者や要配慮者関連施設への防災情報の伝達体制を整備し、入所者等の避難・救出・安否確認などの警戒避難体制の具体化を促進するとともに、被災した場合の防災関係機関への迅速な通報体制の整備及び避難先における入所者等の生活確保体制の整備を促進する必要がある。同時に、要配慮者施設の職員や消防職団員、自主防災組織等が中心となって、地域の実情に応じた支援体制をつくることが必要である。

震災における障害のある人たちへの主な支援

東日本大震災及び熊本地震に伴い、被災地、被災者に対して講じられた施策のうち、障害のある人への支援の一環として実施されているものとして、主に次のような施策がある(平成29年3月現在)。

  1. ①利用負担減免等
     厚生労働省は、障害のある人や障害福祉サービスの提供を行う事業者に対し、利用者負担の減免や障害福祉サービスに係る措置を弾力的に行うよう通知等を行った。
  2. ②心のケア
     東日本大震災における心のケアについては、災害救助法(昭和22年法律第118号)に基づき、精神科医、看護師、精神保健福祉士等4、5人程度で構成される「心のケアチーム」が、市町村の保健師と連携を取りながら避難所の巡回等を行った。
     被災者の生活の場が災害公営住宅や自宅に移った後も、継続的に心のケアを行う看護師、精神保健福祉士、臨床心理士等の専門職が、保健所及び市町村と連携しながら、心のケアが必要な方への相談支援等を実施している。
     また、熊本地震における心のケアについては、精神医療チームの派遣として、厚生労働省が、発災直後からDMHISS(災害精神保健医療情報支援システム)を活用してDPAT (災害派遣精神医療チーム)の情報集約、派遣調整を行い、熊本県からの派遣要請に基づき、震災発生当日にDPATを派遣した。現地では、精神科医療機関への支援として、被災した精神科医療機関から県内及び県外の医療機関に患者搬送を行った。また、避難所内の巡回活動が行われ、被災者の精神面に関する相談や健康調査、不眠に係るリーフレットの配布等の活動が実施された。更に、平成28年10月17日に、被災者の精神的健康の保持及び増進を図るため「熊本こころのケアセンター」を設置し、精神疾患に関する相談支援、仮設住宅入居者等への訪問支援等を実施している。
  3. ③発達障害
     全国の発達障害者支援センターの中核として、国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている発達障害情報・支援センターでは、震災直後から、発達障害のある人に対する円滑な支援を図るため、被災地で対応する方々に向けて、支援の際の留意点等の情報提供を行った。また、災害時に必要な対応をまとめた冊子を作成し、ホームページに掲載するとともにその周知を行った。
  4. ④教育機会確保・就学支援等
     文部科学省では、東日本大震災に際し、障害のある幼児児童生徒も含め、幼児児童生徒の教育機会確保のため、就学援助等を実施するとともに、各都道府県教育委員会等に対し、被災幼児児童生徒の学校への受入れを実施している。なお、熊本地震においても同様の対応を行った。
  5. ⑤幼児児童生徒の状況把握等
     文部科学省及び厚生労働省では、東日本大震災に際し、被災した障害のある幼児児童生徒の状況把握及び支援、教育委員会、学校等が支援を必要とする幼児児童生徒を把握した場合に保護者の意向を確認した上で市町村障害児福祉主管課に連絡するなどの教育と福祉との連携、障害児支援に関する相談窓口等の周知について、各都道府県教育委員会、障害児福祉主管課に対し要請している。
<防犯対策>
警察へのアクセス

障害のある人が警察へアクセスする際の困難を取り除くための対策としては、全都道府県警察において、FAX及びEメールでの緊急通報の受理を行っていること(FAX 110番及びメール110番)、巡回連絡、ミニ広報紙の配布等による情報提供に努めていること、交番等へのスロープ設置等を行っていることなどが挙げられる。

犯罪・事故被害の防止

障害のある人が犯罪や事故の被害に遭うことの不安感を除くための対策としては、巡回連絡等を通じて、障害のある人の相談や警察に対する要望に応じるとともに、身近な犯罪や事故の発生状況、防犯上のノウハウ等の安全確保に必要な情報の提供に努めていることなどが挙げられる。

2.障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策

【主な施策等】

<総合的な支援>
  1. (1) 地域生活支援事業においては、障害のある人の情報通信技術の利用・活用の機会の拡大を図るため、IT関連施策の総合サービス拠点となる障害者ITサポートセンターの運営(26都府県:平成27年度末時点)や、パソコンボランティア養成・派遣等が実施されている。
<障害のある人に配慮した機器・システムの研究開発>
  1. (2) 情報通信の活用によるメリットを十分に享受するためには、障害のある人を含めだれもが、自由に情報の発信やアクセスができる社会を構築していく必要がある。
     家電メーカーや通信機器メーカーにおいては、障害者・高齢者に配慮した家電製品の開発・製造に努めているところであり、平成28年度より国際標準化団体のISO/IEC JTC1にてスマートフォンのアクセシビリティ向上を目的とした議論が開始され、我が国製造メーカーも参加している。
<障害のある人の利用に配慮したシステムの普及>
  1. (3) JIS及び国際標準化の推進
     情報アクセシビリティに関する日本工業規格(JIS)として「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス」(JIS X8341シリーズ)を制定している。(具体的には「共通指針」、「情報処理装置(パーソナルコンピュータ)」、「ウェブコンテンツ」、「電気通信機器」、「事務機器」、「アクセシビリティ設定」、「対話ソフトウェア」について制定。)
     平成28年においては、国際規格との整合性を高めるため「ウェブコンテンツ」のJIS規格を改正した。
<ホームページ等のバリアフリー化の推進>
  1. (4) 総務省では、平成28年4月に公的機関がホームページ等のバリアフリー化に取り組むためのガイドラインである「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」を公開し、公的機関に対し、遅くとも2017年度(平成29年度)末までにJIS X 8341-3:2016の適合レベルAAに準拠することを求めている。また、平成28年度に全国11地域で国の機関、地方公共団体、独立行政法人等の公的機関の職員を対象に、ホームページ等のバリアフリー化に関する講習会を開催した。
<社会参加を支援する情報通信システムの開発・普及>
  1. (5) 電子投票の実施の促進
     我が国における電子投票は、平成14年2月より、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において導入することが認められおり、平成29年3月末現在、電子投票条例を制定している市町村は6団体である。
<情報提供の充実>
  1. (6) 情報提供に係る研究開発の推進
     総務省では、高齢者や障害のある人向けの通信・放送サービスの開発を行うための通信・放送技術の研究開発を行う者に対し、支援を行っているほか、国立研究開発法人情報通信研究機構を通じて、身体に障害のある人のための通信・放送サービスの提供又は開発を行う者に対する助成、情報提供を実施している。
  2. (7) 使いやすい電話機の開発
     通信サービスの中でも特に電話は、障害のある人にとって日常生活に欠かせない重要な通信手段となっており、こうした状況を踏まえ、電気通信事業者においても、音量調節機能付電話等福祉用電話機器の開発や車いす用公衆電話ボックスの設置など障害のある人が円滑に電話を利用できるよう種々の措置を講じている。
<情報提供体制の整備>
  1. (8) 法務省刑事局では、犯罪被害者やその家族、さらに一般の人々に対し、検察庁における犯罪被害者の保護・支援のための制度について分かりやすく説明したDVD「もしも…あなたが犯罪被害に遭遇したら」を全国の検察庁に配布している。また、犯罪被害者等向けパンフレットの点字版及び同パンフレットの内容を音声で録音したCDを作成し、全国の検察庁及び点字図書館等へ配布を行い、視覚障害者の方々に情報提供している。
  2. (9) 法務省の人権擁護機関では、各種人権課題に関する啓発広報ビデオを作成する際に、字幕付ビデオも併せて作成するとともに、啓発冊子等に、音声コード(専用の機械に読み取らせることにより、本文の音声読み上げを行うことができるコード)を導入し、視覚障害のある人も利用できるようにしている。
  3. (10) 国政選挙における配慮
     国政選挙においては、平成15年の公職選挙法(昭和25年法律第100号)改正により、郵便等投票の対象者が拡大されるとともに、代理記載制度が創設されているほか、障害のある人が投票を行うための必要な配慮として、点字による「候補者名簿及び名簿届出政党等名簿」の投票所等への備付け、投票用紙に点字で選挙の種類を示す取組、点字版やカセットテープ、コンパクトディスク等の音声版による候補者情報の提供、投票所における車いす用スロープの設置や点字器の備え付け等を行っている。
<字幕放送等の推進>
  1. (11) 視聴覚障害のある人が、テレビジョン放送を通じて情報を取得し、社会参加していく上で、字幕放送、解説放送、手話放送の普及は重要な課題であり、平成9年の放送法(昭和25年法律第132号)改正により、字幕番組、解説番組をできる限り多く放送しなければならないとする努力義務規定が設けられた。
     平成19年10月に策定された「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」においては、平成29年度までに、字幕放送については対象放送番組のすべてに字幕付与、大規模災害等緊急時放送についてはできる限りすべてに字幕付与、解説放送については対象放送番組の10%に解説を付与、手話放送については実施時間をできる限り増加させる等の普及目標を定めており、その達成に向けて、放送事業者の取組を促している。また、国立研究開発法人情報通信研究機構を通じて字幕番組の制作費等の一部助成も行っている。
<日本銀行券の券種の識別性向上に向けた取組>
  1. (12) 日本銀行券(いわゆる、お札)について、財務省は、国立印刷局、日本銀行とともに、現行の日本銀行券がより使いやすいものとなるよう、平成25年4月26日に「日本銀行券の券種の識別性向上に向けた取組み」を公表した。平成28年度においても、具体的な3つの取組として、①改良五千円券の発行(平成26年5月12日発行開始)や、②日本銀行券にカメラをかざすことで音声等により券種をお知らせするスマートフォン用の券種識別アプリ(言う吉くん)の提供(平成25年12月3日配信開始)、③券種を識別して音声等により通知する専用機器の開発に資する技術情報の提供を行った(平成26年度中に民間企業2社が製品化)。
<コミュニケーション支援体制の充実>
  1. (13) 手話や点訳等によるコミュニケーション支援
     地域生活支援事業においては、聴覚、言語機能、音声機能、視覚その他の障害のため、意思疎通を図ることに支障がある人に、手話通訳者等の派遣や設置、点訳や音声訳等による支援などを行う意思疎通支援事業や、点訳奉仕員、朗読奉仕員、要約筆記者、手話奉仕員及び手話通訳者等の養成研修が実施されている。平成25年4月に施行された障害者総合支援法における地域生活支援事業では、手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員の養成研修を都道府県の必須事業とするとともに、派遣を行う事業についても市町村で実施できない場合などは都道府県が実施する仕組みとし、意思疎通支援の強化を図っている。
目次]  [前へ]  [次へ