子ども・子育て支援新制度

パネルディスカッション(病児保育)

<病児保育>

無藤

それでは、時間の関係もありますので、次のテーマに移りたいと思います。2番目のテーマはがらりと変わって病児保育という問題です。病児保育については、保護者のニーズ調査をすると常にトップランクに上がる非常に重要なものです。しかしながら、その実状を調べてみると、事業者側から言えば、なかなか採算が合わない。市町村から言えば、引き受けてくれるところがない。また、その中身としても、看護師、保育士不足で運営が非常に難しいというなかなか厳しい状況があるように思います。その一方で、最初に内閣府側から説明がありましたように、28年度の予算でのさまざまな補助が増えたということもあります。そういう意味で、事前の要望の中にも「病児保育、病後児保育の現状と課題を知りたい」「実際にどう取り組んだらいいのかを教えてほしい」ということがありました。ということで、今回は特にご専門である稲見先生においでいただきましたので、稲見さんからまずお話をいただきたいと思います。

稲見 パネルディスカッション中の稲見 誠さんの写真

こんにちは。全国病児保育協議会会長の稲見と申します。まず、病児保育のことをあまり知らない、現場を見たことがないという方もいると思いますので、簡単に説明します。病児保育事業についてと書いてありますけれども、(2)病児対応型・病後児対応型、(2)体調不良型、(3)非施設型とあります。これは国庫補助を受けている病児保育事業の分類です。一般的に私たちが病児保育と言っているものは、(1)の病児対応型と病後児対応型になります。病児対応型は一般的に医療機関に併設されています。インフルエンザで熱がばーっと出たばかりの急性期のお子さんから回復期のお子さんまで、全てお預かりします。病後児対応型は、保育園併設が多いのですけれども、病気の回復期のお子さまだけ預かるという施設です。これらは全国で1271カ所あり、延べ利用人数が26年度実績で57万人です。

(2)の体調不良型は、保育園の中に併設されていて自園の子どもが保育中に具合が悪くなった時に、別室で保護者が迎えにくるまで預かるということです。本来これは病児保育ではなく保育園自身の業務の中に入りますけれども、これは各保育園に看護師を配置しましょうという施策です。こういうことをやっても、全国の保育園で看護師が配置されている保育園はまだ二十何%しかありません。3番目の非施設型は病気の子どものお宅にお伺いして預かるというものですけれども、安全性の確保がなかなか難しいということで、まだ全国で5カ所しかありません。

次に病児保育はどういうところでやっているかということです。これは私の小児科ですが、この3階でやっています。これが平面図です。大きく分けて3ブロックに分かれています。これが第1プレイルームで、第1プレイルームに続く安静室です。こちらが第2プレイルーム。こちらが第2プレイルームに続く安静室です。ここに隔離室があります。普通の病児保育室よりも広い贅沢な作りになっていますけれども、2つのプレイルームに分けることによって、乳児と幼児の保育を別にできます。つまり、乳児と幼児では遊びも動きも違います。今まで0歳から6歳まで混在で預かっていたわけですけれども、2つに分けることによって、とても保育がしやすくなってきました。それから、定員10名のうち9名がインフルエンザといった場合は、インフルエンザ部屋として使うこともあります。隔離室は、水ぼうそう、おたふくなど、インフルエンザも少数のときはこちらに入れます。保育室の中央にシャワールームやトイレなどがあります。このような環境で今、病児保育をやっています。私のところは定員10名ですが最大12名まで預かりまして、年間利用がだいたい2000人ぐらいです。

次に病児保育の問題点とあります。これは、なかなか病児保育事業が広がらないということの原因でもあります。おおまかに分けて3つ、まず経営が困難である。保育士、看護師がなかなか集まらない。施設間の連携が悪い。このようなことになります。経営が困難という中には、利用者の変動があります。小児科の病気はご存じのように、今の時期は小児科がすごくはやっていますが、4月、5月になると暇になる。7月になると夏風邪がはやって、8月後半、9月、10月ぐらいはまた暇になる。忙しくなったり暇になったりします。それと同じように病児保育室の利用者もそうなります。そうしますと、安定的な職員の雇用が大変難しくなります。私のところはできるだけ全て常勤で対応をしたいという考えから、暇になったときは小児科の外来に来て外来保育をやってもらっています。ただ、これが無駄な人件費を払っているということにもなります。

それから、キャンセルの問題があります。キャンセルの問題とは当日キャンセルされることです。一般的には前日に予約するわけです。私のところの場合は前日予約でもって10人の枠が埋まって、さらにキャンセル待ちが毎日10人ぐらい出ます。ですから、私のところは2対1保育をやっているので前日に5人の職員の配置予定をすると、翌日キャンセルが多く出て、実際には5人の利用者しかいなかったということもあります。そうすると1対1保育になってしまいます。これもやはり赤字の原因になっています。またこの2対1保育は、昔は2対1保育でやりなさいといった厚生労働省の実施要項がありましたが、平成22年に急に3対1にしましょうということが決まりました。3対1というと、普通の保育園の0歳児の3対1保育と同じになるわけですが、0歳、1歳児で吐いたり下痢をしたり高い熱が出ているお子さんを3対1でみるのはとても危険です。ですから、私たちは厚生労働省の実施要綱では3対1だけれども、2対1で保育しています。多くの施設でこのようなことが行われています。もともと職員の配置数も違う、利用者の変動、キャンセルなども含めた補助金の設定が必要になるのですが、現在それがなされていないというところが問題です。

それから、設備費、施設費も全部自分たちの負担で、家賃も負担です。これは両方とも補助がありませんでした。例えば、東京で50平米ぐらいの部屋を借りて病児保育をしようとした場合には月20万ぐらいかかります。そうすると1年間で240万が即、施設側の赤字になります。これも補助金はありません。

それから、問題点の2つ目、看護師、保育士の不足です。これは、もうどこでもそうだと思います。皆さんの保育園でもそうだと思いますけれども、いくら募集をしても来てくれない。仕方がなく近所で今、保育士を辞めて家庭にいる人たちを掘り起こしてパートで来てもらうなどということをやっています。これに関しては、行政が保育士、看護師の確保についてお手伝いしてもらえるといいなと思っています。私は世田谷区ですが、世田谷区は病児保育の保育士に対しても待遇改善費を出してもらっています。これは大変ありがたいことだと思います。

それから、施設間の連携がうまくできていない問題があります。先ほど病児保育と病後児保育という話をしましたけれども、病児保育はどんなお子さんでも預かるのですが、病後児保育は回復期のお子さんだけしか預からないということで利用率がたいへん悪くなっています。病児保育室が今の時期インフルエンザで満床でも、病後児保育室はうつる病気は預かりませんとか、38度以上あるお子さんは預かりませんということなので、そちらは空いている。大変アンバランスな状態です。それをうまく連携を取って、多くの施設の利用率を高めることができれば、今よりももっと利用者数を増やすことができると思っています。

最近になって医療機関併設でない施設で病児保育を行っています。病後児保育は医師がいない中で看護師が責任を持って対応するわけですけれども、大変不安だと思います。子どもの病気は急変が多いですし、不安なのでどうしても消極的になります。この「練馬区病児保育センターぱるむ」は練馬区と練馬区医師会が契約を結んだ独立型の病児保育センターです。これは医療機関に併設されていません。ネットワークカメラなどを利用して、周りの小児科で中を見ることができる。それから、周りの小児科医4軒ぐらいと契約を結んで交代で毎日回診に行ってもらえるということで、看護師も安心して病児を預かることができます。区は回診に対して300万程度の補助金を国庫補助とは別に練馬区単独で出しています。これと同様なものも世田谷区でもできました。保育園に併設された病児保育室ですけれども、周りの小児科医が4軒で交代で回診しています。今後、こういう形の病児保育が増えてくると考えられます。

無藤

ありがとうございました。病児保育のひととおりのところと問題点、困難をお話いただいたわけですが、そういった病児保育の現状については、また大豆生田さんから少しコメントをお願いします。

大豆生田

病児保育のことについてこれまで、子どもが病気のときぐらいは親が休んで子どもと一緒にいるべきだという考え方は根強くありましたし、今もあるのだろうと思います。それも大事な視点でもあると思っています。休んでみられるということをどうするのかということもあると思います。その一方で、現実はなかなかそうはいかずに、親たちからすればこれはもう必死の問題です。ですから、今、国もこうやって一気に数を増やしたいということなのだろうと思っています。

私は先ほど墨田区のと言いましたが、墨田区では都立の病院が1つ併設で病児の保育をやるところがあります。これは、親たちからすれば画期的なことです。これはものすごく喜ばしいことであり、しかも手厚いということが本当にありがたいことだと思います。もう1つの問題はなにかというと、区に1カ所作ったからといって実際に行けるかと言ったらなかなか行けない。そうすると、やはり数をどうするのかということが大きな課題になると思っています。そうしたときに墨田区の場合は、医師会というか小児科の先生たちの理解ということがすごくあったのではないかと思います。墨田区の場合も小児科の先生が子ども・子育て会議の中に入って重要なメンバーとして入っていますけれども、それぞれの自治体の中でもそういう医師たちとのチームの協力を得るということが1つ課題として上げられます。

それから、私自身のことに関して言いますと、玉川大学で教えていますけれども、養成の中でも病児保育への魅力というものは科目としてはありません。そういうふうなことも大きな1つのテーマです。もう1つは、いわゆる訪問型というか、実際に株式会社がやっているようなところもすごくニーズがあるということとの兼ね合いを今後どうしていくのか。今、稲見先生がおっしゃったこととどういうふうにかみ合っていくのかということは、課題として上げられるかと思いました。

無藤

ありがとうございます。最後の点も含めて病児保育の今後ということですけれども、最初に申し上げましたが、国の病児保育についての補助メニューはまだまだ足りないことは明らかですが、拡大を図ってきたわけです。稲見先生に今後の病児保育をより充実をさせる方向について少しお話をいただけますでしょうか。

稲見

病児保育事業の充実に向けてということですが、先ほど言いましたように、平成26年度は57万人が利用できました。子ども・子育て会議において病児保育事業の量的、質的充実が検討されています。それに伴って、平成32年には述べ150万人の利用までもっていきましょうということになっています。まず、補助金は基本単価と出来高がありますが、平成27年度からは基本単価が高くなりました。ただ、これは地域の保育に貢献するという条件があり、国は高くしましたと言ってくれましたが、自治体レベルでそれを理解してもらえないということで、実際に高くなっているところは残念ながらほとんどありません。これは、自治体主体の事業ですから、自治体が「はい」と言わないとなかなか補助単価の改善もできません。

それから、病児保育の促進事業として、平成28年度から次のようなものが始まります。まず、病児保育施設整備。これは先ほど施設や整備に対して補助がないということを言いましたが、28年度からこういうものに対して補助を出してもらえるということです。それからもう1つは、保育園や家庭で熱が出たときにお迎えに行って病児保育施設に連れてくるという制度です。これは、まだ中身が確定していないのですが、ある意味リスクな事業で、どういう施設だったら受託していいのか、距離はどの辺までいいのか、移動はなにを使うのか。まだまだ今後決めていかなければいけないことがあります。4月に間に合うかどうかちょっと分かりません。東京都では4、5年前から、この制度を独自にやっています。東京都では移動はタクシーを使います。板橋医師会病院の病児保育室でやっているのですが、保育士と看護師の2名でお迎えに行って、連れてきたら必ず小児科医の診察を受けて病児保育室に入ります。どのような病気が来るか分からないわけですから、かなり厳密な条件を付けた上でやらなければいけないと思います。タクシー代に関しては保護者の負担となっています。

次に、病児保育と病後児保育の連携です。これは、昔からなんとかしたほうがいいと考えていました。先ほど言ったように、病児保育室は比較的に利用率が高く、特に風邪がはやるときなどは満員になります。インフルエンザがはやるときに、おたふくと水ぼうそうが1人ずつ来たら、1人は隔離室に入れ、1人は第2プレイルームに入れる。そうするとインフルエンザの預けられる人数がぐっと減ってしまいます。水ぼうそうもおたふくも1回入ると1週間ぐらいそこを独占されてしまいます。おたふくも水ぼうそうもそんなに怖い病気ではありません。ですから、もし、そういう患者さんが病児保育室に来た場合、安定していると考えたら近隣の病後児保育室に行っていただく。病後児保育室は医者がいませんが、看護師はいますので、そういう安定した病気の場合は病後児保育室で十分みられるわけです。そうすると、私どもの病児保育室の隔離室が、また、自由に使えるようになる。つまり、このようなことをコーディネートするシステムを作らなくてはいけません。例えば、世田谷区は10軒の病児、病後児保育室がありますけれども、これを私のところ1軒でやるとなるとたいへんな労力になります。これは、やはり自治体にやっていただきたい。オンタイムで空き情報を流して、そこにすぐ連絡をする。今のPCなどそういうものを利用すれば、そんなに難しいことではないと思います。こういうことをやっていけば、もっと有効的に各施設を使うことができます。

最後に、きょう自治体の方も多くいらっしゃっていると思います。病児保育事業は地域子育て支援事業に分類されます。つまり、自治体が主体にならなければいけない事業です。いくら施設側がやる気があっても、自治体に熱意がなければたいしたものはできません。1つ面白い例があります。岩手県に西和賀町という山間部の寂れた農村があります。8000人ぐらいいた人口が6000人まで減ってきました。このときに、どうして人口が減ってしまうのか。つまり、暮らしにくいのではないかということで、そこの医療機関の先生がお母さんたちにとって暮らしいい町を作るにはなにができるかをかんがえ、病児保育をやろうということで自治体と話し合いをもちました。当初、自治体から「こんな6000人の町に病児保育なんて無理です」と一蹴されたそうです。それが、3・11の大震災の後に町長や保育担当者が代わったら、すごい熱意を持ってそれを一緒にやりましょうということになりました。人口6000人の町に立派な病児保育室があります。人口が少ないところでは、育児支援のセーフティネットである病児保育はなく、人口が多いところではあるということは不公平であって、どんなに人口が少ない地域でも子どもを助けるようなセーフティネットは必要です。考え方によっては、暮らしをよくすることによって人口の流出も止められるということであります。

無藤

ありがとうございました。病児保育のさまざまな難しさとともに、今後の可能性もお話しいただきました。あらためて、病児保育の重要性といくつかの困難、それに対する国の補助の拡大を教えていただきました。ぜひ、今後、自治体や事業者の皆さまが積極的に取り組む中で、国にも知恵を出していただきたいと思います。

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