子ども・子育て支援新制度

パネルディスカッション(利用者支援)

<利用者支援>

無藤

それでは、最後の3番目のテーマですけれども、利用者支援です。ここにお示ししましたけれども、事前のご意見として「利用者支援についてはなにをしていいのか」「どう取り組んでいいかよく分からない」ということや「この事業実施にあたってのよりどころとなるようなモデルはないか」「モデルにしても自治体による状況が違いすぎて難しいのであるが」というようなものがありました。ここにつきましては橋本さんがご専門ですので、まず、事業の基本的なところからご説明をお願いします。

橋本 パネルディスカッション中の橋本 真紀さんの写真

ご紹介いただきました関西学院大学の橋本真紀です。利用者支援事業が実際どうなのかというお話は、後ほど大豆生田先生が4分間でお話してくださると伺っていますので、私は今から10分間で利用者支援事業の概要についてお話をさせていただきたいと思います。内容は事業の目的と機能、事業の対象、そして各類型の連携の意義ということになります。

最初に利用者支援の目的と機能についてお話をしますが、利用者支援事業は子ども・子育て支援法の第59条に位置づく、この新制度において新たに創設された事業です。一人一人の子どもが健やかに成長することができる地域社会の実現を目指しつつ、子どもおよびその保護者または妊娠している方がその選択に基づき多用な教育、保育施設や地域の子育て支援事業を円滑に利用できるよう必要な支援を行うとされています。具体的な役割としては、個々の家庭のニーズを把握して必要な地域の資源につなぐ利用者支援と、地域の資源側に働きかけたり、必要な資源を作る地域連携の働きが求められています。

この事業の目的に示される利用者支援事業の機能をこのように図にしてみました。利用者支援事業の専任職員は利用者支援専門員と言いますが、この専門員は事前に地域資源と緩やかな関係を持っていきます。家庭と地域資源がつながりやすい状態を作っておくということです。

これが地域連携と呼ばれる働きです。そして、支援を必要とする子育て家庭が相談に来たり、あるいは専門員が地域の中でそのような家庭と出会ったら、利用者支援専門員はそのニーズに応じてオーダーメイドでその家庭と地域資源をつなぎサポート体制を作っていきます。これが利用者支援と呼ばれる働きです。この働きによって地域の資源間のつながりが変化したり、強化したり、資源間の関係が深まったりします。すると、その関係性が次の子育て家庭のサポートネットワークになります。この利用者支援の働きが、実は地域連携としても機能していくことになります。このような利用者支援と地域連携の一体的な展開を繰り返しながら、地域の中にミルフィーユのように人の関係の層を厚く重ねていく。そして、その関係は子どもが育つ環境になります。つまり、ニーズに応じて個々の家庭のサポート体制を作っていく利用者支援の取り組みは、その家庭を核として地域に新たなつながりを作る取り組みであり、やがて次の子育て家庭を支える地域社会を作ることになるとも考えられます。そのような機能からもこの利用者支援事業は予防支援型の取り組みであると言えます。

このような利用者支援事業の対象はガイドラインでは妊娠期から主に就学前までとされています。家庭の状態としては、情報を自ら活用して子育てができる家庭から要支援家庭になります。利用者支援事業の累計は先ほど西山さんや塚本さんのお話にもあったように基本型、特定型、母子保健型の3つがあり、類型によって少し対象が異なります。母子保健型は専門職を配置して特定妊婦等を対象に含めることから、この図では要支援家庭からが母子保健型の対象になっていますが、実際には要保護家庭も対象にしていくことが予想されます。一方、特定型は窓口を訪れる子育て家庭の保育サービスの利用調整を主な機能としていることから、資源の紹介があれば子育てをしていける家庭が主な対象となります。基本型は、その間の要支援家庭から少し心配な家庭が主たる対象になるとされています。利用者支援事業が創設されるまで日本の妊娠期から養育期の家庭を対象とした資源のコーディネート機能は、児童相談所や要保護児童対策地域協議会が行う要保護家庭を対象とした取り組みが中心でした。

一方、1990年代から地域子育て支援拠点事業など地域の子育て家庭を対象とした支援事業が実施されるようになっていました。そのような事業を利用する家庭の中に要保護家庭の範疇ではないけれども、支援を必要としている家庭や心配な家庭が把握されるようになってきました。こちらに事例を4つ上げています。例えば、転勤が多くてなかなか転居先の地域になじめず6カ月間親子だけで過ごしていた。母親は友達も多くて親子でよく遊んでいるけれども、実は、子どもがかわいくないと職員につぶやく。日本で出産したが日本語が全く話せず、夫が仕事から帰宅してから2人で毎晩11時ごろ乳児を連れてコンビニに買い物に来る。乳児期から連日習い事の教室に通いスケジュールが埋まっていることで安心しているというような家庭です。このような家庭は少しのサポートがあれば子どもの育ちを家族で支えていけると考えられます。一方で、このような家庭に中には漠然とした不安を感じつつも支援を受けられることに気付いていない。支援を受けたくない。自分がなにを必要としているのか分からないなど、相談窓口を訪ねることを思いつかない家庭が含まれています。このような家庭の支援においては、その親子が生活を営む地域の中のなじみのある場所に出向いて、話を聞きながら、ともにその家庭がなにに困っているのか状況を解きほぐし、子どもを育てるためになにが必要かを確認していきます。その上でインフォーマルな資源を含む地域の資源につなぐ働きが必要と考えられます。

特に、子ども家庭福祉領域においては、家族が抱える課題が小さい間ならば十分とはいえないまでも、まだ使える資源、サービスがあります。例えば、送迎さえできれば、一時預かり、ファミリーサポート、先ほど稲見先生のところで病児保育の話もありましたが、保育サービスもいろいろと利用できます。ですが、なんらかの理由で親に送迎する力がなくなったり、コミュニケーション能力が低下して利用の手続きができないなどという場合、使用できるサービスがほとんどなくなります。つまり、資源を活用するにも意欲や体力が必要であるということです。子育て家庭が資源につながる余力がある間に適切な資源につなぐことが状況の深刻化を防ぎます。また、基本型は子育て家庭が身近と感じる場所で行うとされており、専門員が子育て家庭の生活の場や日常生活場面にいることで子育て家庭の生活に触れることが可能となり、課題のみならず生活の中でその家庭が発揮している力や工夫に気付けることもあります。その家庭が発揮する力や工夫を支えることで、その家庭が力を蓄積して、やがて地域の中の他の家庭を支えるという可能性も生じてきます。このような利用者支援事業は基本型と母子保健型が連携することで妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を確保することが期待されています。類型の形態は内閣府等のホームページで確認いただけます。

最後に各類型が連携する意義についてお話をさせていただきます。意義の1点目は、子育て家庭を専門機関や公的資源との関連に留めずインフォーマルな資源と言われる近隣住民や当事者の関係の中にまでつないでいくことができるということがあります。例えば、親子が特定型や母子保健型に相談に来た場合、特定型や母子保健型は公的なサービス、専門機関につなぐということを得意としていますが、なかなか地域住民の活動や当事者同士の交流にまでつなげることができません。地域連携の役割を母子保健型も有していますが、母子保健型は対象が抱える課題の深刻さや母子保健が有する専門的なサービスの豊富さから活用する資源が母子保健サービスや公的な保育サービスに偏りやすい傾向があります。特に都市部において保健師の業務の多さから、地域に出向いて地域の人々や活動と関係を作ることは難しいと言えます。

そのような中で、どうしても対象者が専門職や専門機関、公的サービスとの関係の中に留まりやすくなってしまいます。一方、基本型は関係機関や専門機関とも連携しますが、特に地域子育て支援拠点事業などに付設された場合、利用者支援事業などでは地域子育て拠点事業に集う当事者同士の関係や近隣住民とのつながりがあり、そのつながりをたどりながら、その家族が地域の中に位置づくことを支えることができます。このような形です(PPTで図式)。

母子保健型、また特定型が地域連携の機能を有していなくても、あるいは、地域のインフォーマルな資源まで連携できなくても、基本型と連携することでそのつながりを活用することができます。1990年代から2000年代初期までは、地域の中に子育て家庭が集う物理的な場を作ってきました。2015年度からは場に集う親子を再び地域につなげていく。利用者支援事業はそういう機能を発揮しようとしています。形や効果が見えにくい事業ですが、利用者支援事業は家庭が地域に中に子育ての体制を作っていくことを支える事業であり、その体制は子どもが育つ環境にもなるというこの事業の意義に着目して、ぜひ、多くの市町村で事業をはじめてもらいたいと思います。

無藤

ありがとうございました。ただ今の基本的な説明に加えて少し大豆生田さんに補足をお願いしたいと思います。

大豆生田

もう橋本先生がおっしゃったとおりですけれども、「利用者支援なんて具体的にどうするの」となったとき「役所に窓口に誰か相談できる人を置けばいいんでしょ」という話をされることがあります。先ほどの西宮市が1つの重要なモデルかと思いますけれども、特定型の保育コンシェルジュのようなものはそれでいいとは思うのですけれども、そうでなく基本型の充実がこれからポイントになってくると思っています。基本なのですから基本としておきたいところです。これは、西宮市もそうでしたけれども、地域子育て支援拠点のようなところに置いていると思います。私は横浜市の拠点のことに関わってきましたけれども、横浜市は各区に大きな拠点を置きそこに相談員を置いています。「今までだって広場に来ればそこで別に相談なんか受けられたんだから、特にそんな窓口の人はいらないんじゃないか」とおっしゃるかもしれませんが、全く違います。「広場に来れている人は大丈夫」とおっしゃる方もいますけれども、これは違うと思います。広場に来れている人たちがいろいろな悩みを話せない。話すのにどれだけ気使いしているか。気兼ねしているか。実際に、話さないまま課題解決をせずにいなくなるという方はたくさんいます。

そう考えると、そこに来た人たちから気軽な当事者目線で話が聞ける人は、すごく重要になってきます。しかも、さらにその人たちがさらにつないでいくというお仕事もありますから、実際に、ここには軽い悩みだけではなく、ものすごく深刻な悩みまで持ってきます。そのときに、そのことが深刻な悩みにつながりそうだという感度を持って、相談を聞けないとするならば、これはその後につなげていくことができません。そうすると、当事者的な人でありながら、相談の奥深いところまで「あ、あるかな」という感度のある人が必要になってきます。そう考えると、この利用者支援という窓口を作ったことで以前よりも声がかけやすくなった、相談しやすくなったということがあると思います。親子がたくさん集う気軽に話せる場所の中にその担当者が置かれるということは、ものすごく重要な役割だと思っています。そういう意味でいうと、横浜市も西宮市もそんなふうな取り組みがさらにこれから続いていくだろうと思います。

さらに発展していくだろうと思いますけれども、そのときにもう1つの課題が協働ということになってくると思います。例えば、NPOがそれを行っているとするならば、役所や保健師たちをどう連携していくかということがものすごい鍵になってきます。その拠点の担当者も重要な役割を担うことになります。保健師などともきちんと話ができる、お互いの足りないところも含め補い合うような連携体制がこれからますます重要になってくると思います。

無藤

ありがとうございます。事前に、この事業についてのご質問・ご要望の中に母子保健型、基本型の住み分けや特定型と母子保健型、さらには基本型などの連携ということについて、もう少し詳しく知りたいということがありましたが、そのあたりについて橋本さんのほうからもう少しお話をいただけますでしょうか。

橋本

先ほども、母子保健型、特定型が基本型と連携する意味をお話しましたが、まず、各類型が得意とする対象分野が違うということです。母子保健型は、妊娠期から関われるというところがすごく強みだと思います。それと専門職配置が規定されていますので、かなり深刻な問題を抱えていらっしゃる家庭にしっかりと関わっていける。だけど、たくさんの家庭に関わることは難しい。保健師さんの業務量から言っても難しくなるということです。一方で、基本型は地域子育て支援拠点事業などに置くことが言われていますので、かなり地域の中に入り込んだ支援ができる。ただし、専門職配置ということではなく、いろいろな研修を受けてその力を高めていきましょうという状態になっていますので、得意とするところは、やはり、拠点事業をしながら、地域の中でさまざまなつながりを持っている。事前にさまざまな地域の資源とつながっているというところで、困り感を抱えている家庭を迎え入れていく方法で、地域の中にその家庭が位置付いていくことをサポートできるということなのです。

なので、この2つの機能が連携することによって、まさに切れ目のないという、とてもよく使われる言葉ですけれども、そういう支援が可能になるのではないかなと思います。特定型のよさは、市役所の窓口に多くありますので分かりやすい。先ほど、母子手帳の配布ということがありましたけれども、皆さんが関わるところを入り口に、次の必要な専門機関なり、専門職なりにつないでいける強みがありますので、その3つが連携することで、まさに切れ目のない支援が可能になると考えています。

無藤

ありがとうございました。あらためて、この利用者支援をいろいろ教えていただいたわけですけれども、この利用者支援の重要性が私などもよく分かりました。しかしながら、これまで幼稚園、保育園、認定こども園、それに子育て支援センターなどを加えてもなかなか十分にはやれてこなかった、全く新しい分野でもあると思います。そこには多種多様な仕事があるかと思いますが、先ほどの説明の中で、おそらく、その中心となる部分として保護者、家庭と、地域のさまざまな資源といいますが、地域のさまざまな助けてもらえる人たち、場、そしてまた行政のサービス、それらをどうつないでいくかだと思います。そういう意味で今後、幼稚園、保育園、認定こども園等の新しい分野、仕事がそこにあり、それは単にこれまで園の中でやっていた子どもに対する保育ということのプラスの、余分なことというよりは乳幼児をしっかり育てるということのもう一方に、保護者に対する支援、それを通じて子どもを一緒に育てていくという仕組み作りがあるのかというふうに思いました。

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