子ども・子育て支援新制度

パネルディスカッション

パネルディスカッションの会場風景の写真

<コーディネーター>
無藤 隆(白梅学園大学子ども学部 教授)
<パネリスト>
稲見 誠 氏(一般社団法人全国病児保育協議会会長/子ども・子育て会議委員)
大豆生田 啓友 氏(玉川大学教育学部乳幼児発達学科教授/墨田区子ども・子育て会議会長)
橋本 真紀 氏
(関西学院大学教育学部教授/厚生省子育て支援員研修制度検討会地域子育て支援コース座長)
正本 秀崇 氏(大分県認定こども園連合会会長/むさしこども園園長(国東市))

無藤 パネルディスカッション中の無藤 隆さんの写真

本日は、たくさんの方にご来場いただいたことをあらためて御礼申し上げます。私が司会を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。フォーラムということで前半は4つの自治体からのご報告をいただきました。後半は、それを受けまして、3つの話題を中心にそれぞれ4人のパネリストの方から情報をいただきながら議論を進めたいと思います。

まず、主旨ですけれども、新制度が始まって、今年度27年度も終わりということで1年経ちました。その間に内閣府の子ども・子育て会議やその他さまざまな場所でいろいろな課題を見定めているわけです。特に、この制度については、自治体ごとにかなり裁量の余地が大きいものであるわけで、その自治体の事情が、おそらく、全国それぞれの地域で相当異なっているかと思います。そういう意味でも、国としてもつかみきれないさまざまな課題があるわけで、それをいろいろな形で受けて、今、調整をしています。その中でも、特に大きな課題がいくつか残っていて改善を要する、あるいは、実現に工夫を求められる部分があると思います。

本日は特に、その中の3つを取り上げます。1番目が、私立幼稚園がこの新制度に対してどう関わっていけばよいのかという問題です。2番目は、病児保育をどのように進めるかということです。そして、3番目が利用者支援の拡大をどう図るかということです。それぞれのテーマについて前もって会場の皆さまから参加申し込みの際に、さまざまな意見、質問、要望をいただいています。その全部に答えるわけにはいきませんが、できる限り主旨に沿いながら、然るべき情報をお伝えし、それぞれの地域における子育て支援を進めるためのヒントとして使っていただけるよう配慮していきたいと思いますので、よろしくお願いします。それでは、早速、中身に入りたいと思います。

<私立幼稚園と新制度>

無藤

まず、最初の話題ですけれども、私立幼稚園とこの新しい制度についてです。前半の自治体からの報告にもありましたが、私立幼稚園がこの制度に入っていくにあたって、さまざまな不安があるのは当然です。これまで私立幼稚園は、基本的には都道府県の私学助成の元にあったわけですが、この新しい制度では、私学助成の場の中に維持されるという選択肢もありながら新しい制度に入ることもでき、さらに、その新しい制度に入った中でも、いわゆる幼稚園のままか、認定こども園に転換するかといったこと。また、子育て支援事業をどの程度拡大するかなど、いろいろな問題があると思います。逆に市町村から見れば、これまで直接的な対応をしていなかった私立幼稚園が管轄に入ってくるわけですので、さまざまな戸惑いがあったかと思います。そういうわけで、私立幼稚園と新制度、とりわけ私立幼稚園と市町村との関係の構築というあたりに焦点をあてながら考えていきたいと思っています。

それでは、早速、パネリストの方にそれぞれの経験、ご意見を開陳していただこうと思います。最初に長年私立幼稚園・保育園を運営してきた大分県の正本さんにお願いします。現在は幼保連携型認定こども園の運営に関わっていますが、そのご苦労を少しお話しいただきます。よろしくお願いします。

正本 パネルディスカッション中の正本 秀崇さんの写真

皆さま、あらためましてこんにちは。大分県より参りました。大分県認定こども園連合会で会長をしています、むさしこども園園長の正本秀崇と申します。どうぞよろしくお願いします。

まずは、自己紹介も兼ね、お手元の資料35ページの「むさしこども園の取り組み」を紹介しながら、過疎の私立幼稚園が、やはり新しい制度が必要だったという話をさせていただきます。むさしこども園ですが、今、法人種別は社会福祉法人です。この後で話をしますが、学校法人の私立幼稚園でもあり、社会福祉法人の認可の保育園でもあるということです。所在地は大分県国東市です。国東と書いて「くにさき」市と読みます。大分空港がある街で、国東市の武蔵町というところに私が住んでいますので、「むさしこども園」と言っています。武蔵と聞くと関東のイメージがあると思いますが、昔からこの地域を武蔵と呼んでいまして、このことから武蔵という言葉を使っています。今、人口は約2万8000人です。27年度の国勢調査の結果で2万8000人ですが、5年前は3万2000人でした。この前、集計が出て、大分合同新聞という地元の新聞に「5年間で一番人口が減ったところが国東市」というタイトルが出ました。日本創成会議でも消滅可能性都市で大分県の中では国東市が危ないですよと言われているところです。そういうところで保育園と幼稚園を運営しています。

利用定員を130名と書いています。1号が70名、2号15名、3号45名としていますが、簡単にイメージしていただければ、認可の保育園が全60名定員の保育園で、認可の幼稚園が105名の定員でした。50名から60名ぐらいの園児がいましたというところで、実際だいたいこのぐらいだろうという感じで、今では利用定員をこのように設定をしています。職員数は31名。職員数が多いと思われるかもしれませんが、0歳から子供がいますから保育園側から見るとだいたいこのぐらいだろうとイメージをしてください。

沿革は、昭和25年9月に「武蔵町保育園」を県の認可をいただいて始めました。そこに写真があると思いますが、お寺があるのが分かると思います。昭和25年9月は、このお寺の中で保育園をしていました。戦後、昭和20年、私のおじいさんとおばあさんがお寺を開いて、農繁期の託児所や地域に開放するということで保育園をはじめたのが始まりです。それとともに、女子文化学園という裁縫学校を開いて取り組みをしてきました。もう私のおじいさんもおばあさんも亡くなって、今年7回忌ですけれども、生前に話を聞いたところによると、昭和30年代ぐらいまでは保育園でも働いていない方を見ることはできていたということです。もともとお寺の寺子屋でしたから誰が来てもよかったのですが、一応、制度的には30年の後半から40年にかけて、監査で、働いていない家庭の子どもを保育園で見てはいけないということをかなり強く言われたそうです。ですから、今まで来ている子どもたちや保護者に「来年から来れませんよ」と言えなかったために、昭和46年に学校法人の「むさし幼稚園」を設立して、場所はちょっと変わりましたが、むさしの地域の子どもたちを全て受け入れようということで保育園と幼稚園を一緒に運営をしてきました。

私は大学を卒業して平成11年から働くようになりました。平成11年になりますと昔と違ってだんだん人口が減ってきて、幼稚園の運営が厳しくなってきました。

平成15年から保育園と幼稚園を1つにしたいという話し合いを理事会で持つようにしてきました。平成20年から幼保一体の施設の認定こども園を始めたわけですが、平成15、16と2年間、理事会でもんで、17、18、19と現場の先生方で話をしてきました。5年の時間をかけて平成20年からスタートし、今、7年が経ち8年目を迎えました。8年も経ってくると、やっぱり1つにしてよかったと感じています。ですが、1つにするまで5年もかかってけっこう大変でした。今回の新制度がスタートするにあたって、タイトな日程と感じられた方も多いのではないかと思います。いろいろなことを決断もしないといけない、準備もしないといけない、本当に大変だろうと思っています。しかし、私としては保育園と幼稚園が1つになって、うちの地域としてはよかったと思っているところです。

地域の特色もいろいろありますが、目指してきたものとしては、子どもと保護者と保育者という3つのテーマを掲げて保育園と幼稚園を1つにしよう、認定こども園として頑張ろうということです。やはり、子ども集団の拡大を図りたかったというところです。過疎の町なので、だんだん子どもの集団が小さくなってきます。小さくなったらいけないというわけではありませんが、幼稚園の4歳児が10人と保育園の4歳児が10人と別れているのですが、20人で遊んだほうが楽しいじゃないかということです。みんなで遊んだほうが楽しいよねということで、そういう取り組みをしようということでした。

保育園と幼稚園を1つにして、本当に見えてきたことは、子どもの育ちってすごいなということでした。特色のところにちょっと書いていますが、うちの保育園は4歳児までで5歳になったら向かいの幼稚園に行ってくださいねという取り組みをしていたわけです。つまり、保育園の先生は5歳の子どもの育ちを知りませんでした。当然ですが、幼稚園の先生は0、1、2歳の子の育ちを知らないわけです。平成18年、19年の2年間は先生の人事交流をして、今まで知らないところを見ようということで準備を進めてきました。保育園の先生としては、5歳児の子どもの育ちは本当にすばらしいということが見えてきました。友達同士で取り組んだり協力するというところが「ああ、子どもの育ちはたくましいな」と本当に感じる事例が出てきました。

保護者にとっては、就労によって園を替えずに済むことはとても大切なことでした。うちの小さな町であっても、仕事がなくなったら保育園で預かることができなくなってしまいますので、園をやめなければいけません。うちの園は5歳になったら幼稚園に行く仕組みを取っていましたので「園長先生、保育園のほうで5歳は預かってくれませんか」ととても強く言われてきました。幼稚園の経営も苦しかったところがありましたから、私は保育園に取り込んでしまえばいいのではないかと思っていたのですが、「保育に欠ける」条文があり、保育園では働いていないおかあさんの子どもを見ることができないという現状がありました。大分空港がある町ですので転勤族が存在しています。幼稚園の人数は少ないのですけれども、幼稚園がなくなると子どもの行き先がなくなるのでとても困るということでしたので、私も「来年からもう来ないでください」と言えなくなりました。なんとか保育園と幼稚園を1つにして子どもの現場を維持できないかと模索してきたのが、平成15年からの実情でした。

そして保護者にとっても子育て支援が大切だということが見えてきました。うちみたいな田舎でも核家族が進んでおり、おじいさん、おばあさんと一緒に住んでいません。子育て経験がない旦那さんとおかあさんで子育てをするのは、とても大変な状況になってきました。そこに現場のプロの先生方が子育て支援として、子どもはこう育ちますよと言っていくことがとても大切だということが、だんだん見えてきました。幼稚園は0、1、2歳をみたこともありませんし、いかに在宅で子育てをしている方々が大変かということがなかなか見えてこなかったところがあります。保育園もそうです。そういうことを1つにすることで、うちも田舎ですけれども、在宅で子育てをするのはけっこう大変なんだなということが見えてきたところです。そういう子どもと保護者の状況がだんだん見えてきて、先生方の考え方がちょっと変わってきたと言いますか、先生方の考え方を整えるのにちょっと時間がかかりました。

経験のある方もいるかとは思いますが、保育園の先生と幼稚園の先生の仲がちょっと悪く、ことがなかなかうまく進みませんでした。私は平成11年から一緒に働いていますが、幼稚園に行けば保育園の悪口を聞きますし、保育園に行ったら幼稚園の悪口を聞くという状況でした。話を聞いていると人が悪いわけではなく、幼稚園の先生は「もっと子どものために準備をすればいいのに」という話をして、保育園の先生は「もっと保護者のためにちょっと考えればいいのに」と、ちょっとした観点が違っていました。これはもう、制度が2つに分かれているからこうなっているのだろうということが徐々に見えてきました。しかし、子どもの育ちでやはり楽しく過ごすのはいいねと思うのと、保護者もその子どもの姿を見て変わってくるという状況で、その姿を見た先生方が保育園、幼稚園は関係なく、子どものためにどう保育をしたらいいのかという、保育の原点が見えてきたような気がします。

そのときに、やはり難しくなるのが子どもの発達段階であって、おむつを外すにはどう伝えていったらいいのかであったり、午睡はどうあるべきかなど、今まで、当たり前に保育をしてきたことを考えるきっかけになったと思っています。こういうことを振り返ることができた中でも、保育の連続性や幼児教育が大切だなと感じてきました。うちももう50人を切って、いつやめようかという話になったときもありましたが、それでもやめることができない中で続けていく、やはり永続性を図られるためには、今の制度ではなくちょっと違う制度があるといいなと思いました。うちの場合は、目の前に認可の保育園がありましたので、この認可の保育園と一緒に手が組めないかなということを常に思っていました。保育園は0、1、2歳がいるからではありますけれども、定員が40であれば給食が出せるだけの十分な財源がいただけます。そういうことで幼稚園も取り組みができないかなということを模索してきました。今回の新制度は、この定員の設定で運営ができるということは、こちらとしてはとてもよかったと思っています。新たな展開として、0歳から12歳までの子どもの育ちをサポートできたらなということで今年から児童クラブを設けました。今回の制度を、田舎の者としてはとてもよかったと捉えています。

無藤

ありがとうございました。今、さまざまな形で幼稚園、保育園、最後は学童の話まで出していただきました。それを受けて、大豆生田さん、全国の幼稚園、保育園の状況について詳しいと思いますので、どのように感じたかを少しお話しいただけますか。

大豆生田

パネルディスカッション中の大豆生田 啓友さんの写真 大豆生田です。よろしくお願いします。私は自由枠のようですので、時間内で好きにお話をしたいと思います。

まさに今、都市部などの私立幼稚園ではけっこう迷われていることが大きいと思っています。そのとき認定こども園になられた方々の中に、今、正本さんが言ったようなことを言っている方がすごく多く、嬉しく思っています。というのは、認定こども園になることで今まで3歳から全て発達を考えてきたけれども、やはり0、1、2からみると全く見方が変わる。例えば、おむつに関しても「3歳までおむつを取ってきてね」と言ったけれども、親子の実態を見るとずいぶん違うということが分かってくる。そこからものを考えるようになってくるので、子どもたちの見方が変わってくる。それから、0、1、2の親子の見方が変わってくる。先ほど話もあったように、幼稚園と保育園に溝があるというのだけれども、きちんと子どものことや親のことで話を始めると、そこが乗り越えられるという話がたくさんあちこちで出てきていて、「ああ、すばらしいな」と思っています。

私は認定こども園になるかならないかではなく、まずは認定こども園ということが今の時代の中で、考え方としてすごく大事だと思っています。それは、どの子どもに対しても質の高い教育・保育が受けられるということ。親の働き方に関係なく同じところで生活するということ。それから、地域の在宅までを含めた子育て支援がすごく大事だということは、今のままの幼稚園、保育園であろうがすごく大事な視点だと思っています。そういう意味で言うと、今回、新制度が動き出したということは、全ての園がこのことを考え始めるようになったという意味で、ものすごい前進だと思っています。

そうすると、今回の課題の中で市町村との関係の構築という問題があります。特に幼稚園は、これまでの区や市という枠とは別に動いてきたところがあったので、どういうふうに関係を構築するかという課題があります。私は墨田区の子ども・子育て会議の会長をしていますが、そこで面白かったのが、最初に量の整備だけでなく保育の質をよくしていきたいという話になりました。そのときにいろいろな議論がありましたが、この1年でやったことがあります。それは、公立幼稚園、私立幼稚園、公立保育園、私立保育園が1つのテーブルに載って、この1年間で協働的な学び、つまり、プロジェクトアプローチのようなものですが、5歳児を中心にそんなふうな保育をいろいろな園でやってみました。それぞれ4つの団体から1つずつ園の代表として出ていただいて、この1年間実践をしてきました。それぞれの園ですごく手ごたえがあって、今までと違った視点から見ることができました。しかも、公開保育を義務付けていますので、それぞれを見合うということも初めて起こりました。そのときに、それぞれが動き出したということが明らかです。これまでと違った観点から、それぞれが見直しをはじめました。その合同発表会がちょうど1週間後の2月29日に墨田区で夜6時からありますので、よろしければどうぞ墨田区にお申し込みください。

そういう意味で言うと、これから行政がそこをどういうふうにコーディネートするかが重要になってきます。同じ土俵に乗って、この地域の保育をどうしようかということを考えることが大事だと思います。それを市区町村から言い出すのか、場合によってはそれぞれの団体からそのことを発信するのか。それは、どこから始まってもかまわないと思うのですが、やはり、この新制度の大きな特徴は、それぞれの自治体の中で子どもたちを育てていくことに一歩進められる制度だということをいかに生かすかが重要だと思います。

無藤

今、おっしゃっていただいたように、最初のテーマは私立幼稚園ですけれども、私立幼稚園も含め全ての保育所、公立、私立、いずれにしても、市町村と互いに連携、協力しながら、いい意味でのお互いの活用をどう図るかが大事なのだろうと思います。そこで、また正本さんですけれども、大分で私立幼稚園というスタートを持ちながら、さまざまな信頼性を得て市町村と相互に活用するということについて工夫されていったと思います。実は、そういう事例はどうなのかという質問もいただいております。お聞きするところでは、市町村キャラバンという形で市町村とのパイプ作りに力を入れたそうですが、そのことについても少し経験を話していただきたいと思います。

正本

不慣れなところがありますが、思いだけは伝えたいと思っています。認可の保育園と幼稚園でしたので、当然、大分県私立幼稚園連合会に加盟をしています。また、大分県認可私立保育園協議会にも加盟しています。私はご縁をいただいて、平成18年から大分県私立幼稚園連合会の理事として活動をしています。今回、大分県私立幼稚園協会の市町村キャラバンをここで発表してくれと言われたときに、土居孝信現会長と、ちょっと嬉しく感じました。大分県私立幼稚園連合会の市町村キャラバンについて少しお話をしたいと思います。大分県私立幼稚園連合会は、早い段階から保育制度改革の動向に気をかけてきました。平成16年から研修会を始めてきましたが、このときには私は本当に若かったので、この研修会に行ったときに「保育園と幼稚園は1つになるんですよ」という話を聞いて目が飛び出るぐらいびっくりしたのを覚えています。うちもちょうど悩んでいたときでしたので、いい研修会だなと思っていました。

当初、ずっと連合会の中で研修会をしていましたが、どうもこの保育制度の改革を見ていくと、市町村が中心になるみたいですよということになってきたので、私たちがやっている研修会を市町村の担当の方にも声をかけたほうがいいのではないかということになりました。市町村の方も情報が欲しかったようで、そのような研修会があるのなら参加をしたいということでしたので、平成21年から大分県内を巡って、その地区の行政の方を呼んで研修することを始めました。このあたりから行政の担当課と仲がよくなり、私立幼稚園の情報を発信することができたと思っています。仲がよくなった当初は「よかったら私たちの団体で市長とか教育長に説明にあがりますけどね」という乗りでした。そこから、平成23年に市町村キャラバンが始まったわけです。平成18年に認定こども園法ができて、平成24年に子ども・子育ての関連3法が制定されるわけですが、めまぐるしい中で制度議論がされたのが事実です。

皆さん方もその当時を思い出すのではないかと思いますが、大分県私立幼稚園連合会でも正しい情報を会員に出すことと、市町村も巻き込んでいかなければいけないのではないかと考えました。私も過疎の私立幼稚園です。大分県の私立幼稚園は半分以上が定員を割っています。「このままでは、いつかは」という話になる中で、法律上、保育園が取って代って幼児教育はできないんだという中で、なんとか私立幼稚園も地域に残るという話で市町村キャラバンを実施していったわけです。

今、振り返ると本当に大変なことをしたんだなと思いますが、土居会長から「こっちから行こう」ということでした。平成18年に次世代育成法ができて、そのときに私立幼稚園が入らなかったことを会長が懸念をしておりましたので、「じゃあ理解してもらえないのではなくて、こちらから理解してもらいましょうよ」ということで市町村キャラバンをはじめました。市長、教育長と同席して、私立幼稚園を理解していただきたいというところで取り組みをしたわけです。

キャラバンの内容は、1に幼児教育の振興、2に市町村との関連構築を掲げてきました。平成23年から、24、25と取り組みをしてきたわけですが、23年に心がけたことは陳情文ではない要望書をもっていこうという話でした。意外と私立幼稚園は理解されていなかったところがあります。他の地区は分かりませんが、大分県では「やっぱり私学は好き勝手なことをして、お金儲けしている」というイメージがどこかにありました。ですから、「行きます」と言ったときに「なにしにこられるんですか」「なんの要望でしょうか」という反応でした。「要望じゃないんです。私立幼稚園がやっている取り組みをちょっと理解してほしいんです」と話しました。教育基本法にのっとって、私たちは子どもの育ちを大切にしています。生きる力を育むために一生懸命頑張っています。小1プロブレム、保幼小連携にも取り組んでいますと、日頃の保育の話を伝えてきました。24、25とつながるうちにだんだん理解をしてもらえ、今年も来たんだねという形になってきました。

当初は、要望はしないので日々の取組みの話をさせてほしいということでしたが、25年に子ども・子育て会議のメンバーの話が出てきました。ここでなんとか私立幼稚園の方を市町村の会議に入れてもらわないとということで、気付いたら平成25年から要望文を持ってあがっていました。お手元の資料で見ていただくと26年度は日出町だけに行っているのではありますが、もうこのときには全ての市町村で私立幼稚園関係者が入っていましたので、会議の場で情報を発信しようということでした。メンバーに入ったからといって、そこで終わりではなく、私立幼稚園連合会としては、そのメンバーを対象に対応勉強会もしました。

平成25年には日出町だけに行ったわけですけれども、ここは大分県ではキーポイントの町でした。その前の年に大分県で3つの市町村だけ人口が増えた町があります。大分市、中津市、日出町です。この日出町は町なのですけれども、人口が増えたところで、乗りに乗っている市町村でした。この制度も先端を行くんだという気合いの入った市町村でした。ここになんとか1号認定の保育料の試算を、保育園と同等にしてくれというお願いにあがったところ、日出町の方もとてもよく理解をしていただいて、いい金額を出していただきました。大分県内の市町村もやはりそこを見ていましたので、それを検討して取り組みの額を設定してくれたという状況がありました。このような市町村キャラバンを行って、気付いてみれば幼児教育を発信する場にきちんと入ることもできましたし、1号認定の2万5700円という国基準も下回ることができました。あと、よりよく市町村の方に理解をしていただいたなと思っています。幼児教育の振興のためと幼稚園の存続のために、大分県私立幼稚園連合会は活動をさせていただいたという流れです。以上です。

無藤

ありがとうございました。2人の意見や経験をお話しいただきました。2人の意見から全国的な状況は分かりませんけれども、推察するに、やはり私立幼稚園はこれまで幼稚園教育として大いなる実績を上げてきたわけです。幼稚園教育を含めても、広く幼児教育、さらに園の役割として子育て支援ということに拡大してきました。そういう意味で私立幼稚園がこの新しい制度の下でどういう形を取るかについては、さまざまな選択肢が許されていますけれども、そういう中でそれぞれの園それぞれの地域の事情に合わせながら、その選択はあるのだろうと思います。しかしながら、どういう形、どういう位置づけであれ、私立幼稚園が、私立幼稚園として、あるいは認定こども園としてであれ、果たすべき役割というものはあらためて確認できたと思っています。

<病児保育>

無藤

それでは、時間の関係もありますので、次のテーマに移りたいと思います。2番目のテーマはがらりと変わって病児保育という問題です。病児保育については、保護者のニーズ調査をすると常にトップランクに上がる非常に重要なものです。しかしながら、その実状を調べてみると、事業者側から言えば、なかなか採算が合わない。市町村から言えば、引き受けてくれるところがない。また、その中身としても、看護師、保育士不足で運営が非常に難しいというなかなか厳しい状況があるように思います。その一方で、最初に内閣府側から説明がありましたように、28年度の予算でのさまざまな補助が増えたということもあります。そういう意味で、事前の要望の中にも「病児保育、病後児保育の現状と課題を知りたい」「実際にどう取り組んだらいいのかを教えてほしい」ということがありました。ということで、今回は特にご専門である稲見先生においでいただきましたので、稲見さんからまずお話をいただきたいと思います。

稲見 パネルディスカッション中の稲見 誠さんの写真

こんにちは。全国病児保育協議会会長の稲見と申します。まず、病児保育のことをあまり知らない、現場を見たことがないという方もいると思いますので、簡単に説明します。病児保育事業についてと書いてありますけれども、(1)病児対応型・病後児対応型、(2)体調不良型、(3)非施設型とあります。これは国庫補助を受けている病児保育事業の分類です。一般的に私たちが病児保育と言っているものは、(1)の病児対応型と病後児対応型になります。病児対応型は一般的に医療機関に併設されています。インフルエンザで熱がばーっと出たばかりの急性期のお子さんから回復期のお子さんまで、全てお預かりします。病後児対応型は、保育園併設が多いのですけれども、病気の回復期のお子さまだけ預かるという施設です。これらは全国で1271カ所あり、延べ利用人数が26年度実績で57万人です。

(2)の体調不良型は、保育園の中に併設されていて自園の子どもが保育中に具合が悪くなった時に、別室で保護者が迎えにくるまで預かるということです。本来これは病児保育ではなく保育園自身の業務の中に入りますけれども、これは各保育園に看護師を配置しましょうという施策です。こういうことをやっても、全国の保育園で看護師が配置されている保育園はまだ二十何%しかありません。3番目の非施設型は病気の子どものお宅にお伺いして預かるというものですけれども、安全性の確保がなかなか難しいということで、まだ全国で5カ所しかありません。

次に病児保育はどういうところでやっているかということです。これは私の小児科ですが、この3階でやっています。これが平面図です。大きく分けて3ブロックに分かれています。これが第1プレイルームで、第1プレイルームに続く安静室です。こちらが第2プレイルーム。こちらが第2プレイルームに続く安静室です。ここに隔離室があります。普通の病児保育室よりも広い贅沢な作りになっていますけれども、2つのプレイルームに分けることによって、乳児と幼児の保育を別にできます。つまり、乳児と幼児では遊びも動きも違います。今まで0歳から6歳まで混在で預かっていたわけですけれども、2つに分けることによって、とても保育がしやすくなってきました。それから、定員10名のうち9名がインフルエンザといった場合は、インフルエンザ部屋として使うこともあります。隔離室は、水ぼうそう、おたふくなど、インフルエンザも少数のときはこちらに入れます。保育室の中央にシャワールームやトイレなどがあります。このような環境で今、病児保育をやっています。私のところは定員10名ですが最大12名まで預かりまして、年間利用がだいたい2000人ぐらいです。

次に病児保育の問題点とあります。これは、なかなか病児保育事業が広がらないということの原因でもあります。おおまかに分けて3つ、まず経営が困難である。保育士、看護師がなかなか集まらない。施設間の連携が悪い。このようなことになります。経営が困難という中には、利用者の変動があります。小児科の病気はご存じのように、今の時期は小児科がすごくはやっていますが、4月、5月になると暇になる。7月になると夏風邪がはやって、8月後半、9月、10月ぐらいはまた暇になる。忙しくなったり暇になったりします。それと同じように病児保育室の利用者もそうなります。そうしますと、安定的な職員の雇用が大変難しくなります。私のところはできるだけ全て常勤で対応をしたいという考えから、暇になったときは小児科の外来に来て外来保育をやってもらっています。ただ、これが無駄な人件費を払っているということにもなります。

それから、キャンセルの問題があります。キャンセルの問題とは当日キャンセルされることです。一般的には前日に予約するわけです。私のところの場合は前日予約でもって10人の枠が埋まって、さらにキャンセル待ちが毎日10人ぐらい出ます。ですから、私のところは2対1保育をやっているので前日に5人の職員の配置予定をすると、翌日キャンセルが多く出て、実際には5人の利用者しかいなかったということもあります。そうすると1対1保育になってしまいます。これもやはり赤字の原因になっています。またこの2対1保育は、昔は2対1保育でやりなさいといった厚生労働省の実施要項がありましたが、平成22年に急に3対1にしましょうということが決まりました。3対1というと、普通の保育園の0歳児の3対1保育と同じになるわけですが、0歳、1歳児で吐いたり下痢をしたり高い熱が出ているお子さんを3対1でみるのはとても危険です。ですから、私たちは厚生労働省の実施要綱では3対1だけれども、2対1で保育しています。多くの施設でこのようなことが行われています。もともと職員の配置数も違う、利用者の変動、キャンセルなども含めた補助金の設定が必要になるのですが、現在それがなされていないというところが問題です。

それから、設備費、施設費も全部自分たちの負担で、家賃も負担です。これは両方とも補助がありませんでした。例えば、東京で50平米ぐらいの部屋を借りて病児保育をしようとした場合には月20万ぐらいかかります。そうすると1年間で240万が即、施設側の赤字になります。これも補助金はありません。

それから、問題点の2つ目、看護師、保育士の不足です。これは、もうどこでもそうだと思います。皆さんの保育園でもそうだと思いますけれども、いくら募集をしても来てくれない。仕方がなく近所で今、保育士を辞めて家庭にいる人たちを掘り起こしてパートで来てもらうなどということをやっています。これに関しては、行政が保育士、看護師の確保についてお手伝いしてもらえるといいなと思っています。私は世田谷区ですが、世田谷区は病児保育の保育士に対しても待遇改善費を出してもらっています。これは大変ありがたいことだと思います。

それから、施設間の連携がうまくできていない問題があります。先ほど病児保育と病後児保育という話をしましたけれども、病児保育はどんなお子さんでも預かるのですが、病後児保育は回復期のお子さんだけしか預からないということで利用率がたいへん悪くなっています。病児保育室が今の時期インフルエンザで満床でも、病後児保育室はうつる病気は預かりませんとか、38度以上あるお子さんは預かりませんということなので、そちらは空いている。大変アンバランスな状態です。それをうまく連携を取って、多くの施設の利用率を高めることができれば、今よりももっと利用者数を増やすことができると思っています。

最近になって医療機関併設でない施設で病児保育を行っています。病後児保育は医師がいない中で看護師が責任を持って対応するわけですけれども、大変不安だと思います。子どもの病気は急変が多いですし、不安なのでどうしても消極的になります。この「練馬区病児保育センターぱるむ」は練馬区と練馬区医師会が契約を結んだ独立型の病児保育センターです。これは医療機関に併設されていません。ネットワークカメラなどを利用して、周りの小児科で中を見ることができる。それから、周りの小児科医4軒ぐらいと契約を結んで交代で毎日回診に行ってもらえるということで、看護師も安心して病児を預かることができます。区は回診に対して300万程度の補助金を国庫補助とは別に練馬区単独で出しています。これと同様なものも世田谷区でもできました。保育園に併設された病児保育室ですけれども、周りの小児科医が4軒で交代で回診しています。今後、こういう形の病児保育が増えてくると考えられます。

無藤

ありがとうございました。病児保育のひととおりのところと問題点、困難をお話いただいたわけですが、そういった病児保育の現状については、また大豆生田さんから少しコメントをお願いします。

大豆生田

病児保育のことについてこれまで、子どもが病気のときぐらいは親が休んで子どもと一緒にいるべきだという考え方は根強くありましたし、今もあるのだろうと思います。それも大事な視点でもあると思っています。休んでみられるということをどうするのかということもあると思います。その一方で、現実はなかなかそうはいかずに、親たちからすればこれはもう必死の問題です。ですから、今、国もこうやって一気に数を増やしたいということなのだろうと思っています。

私は先ほど墨田区のと言いましたが、墨田区では都立の病院が1つ併設で病児の保育をやるところがあります。これは、親たちからすれば画期的なことです。これはものすごく喜ばしいことであり、しかも手厚いということが本当にありがたいことだと思います。もう1つの問題はなにかというと、区に1カ所作ったからといって実際に行けるかと言ったらなかなか行けない。そうすると、やはり数をどうするのかということが大きな課題になると思っています。そうしたときに墨田区の場合は、医師会というか小児科の先生たちの理解ということがすごくあったのではないかと思います。墨田区の場合も小児科の先生が子ども・子育て会議の中に入って重要なメンバーとして入っていますけれども、それぞれの自治体の中でもそういう医師たちとのチームの協力を得るということが1つ課題として上げられます。

それから、私自身のことに関して言いますと、玉川大学で教えていますけれども、養成の中でも病児保育への魅力というものは科目としてはありません。そういうふうなことも大きな1つのテーマです。もう1つは、いわゆる訪問型というか、実際に株式会社がやっているようなところもすごくニーズがあるということとの兼ね合いを今後どうしていくのか。今、稲見先生がおっしゃったこととどういうふうにかみ合っていくのかということは、課題として上げられるかと思いました。

無藤

ありがとうございます。最後の点も含めて病児保育の今後ということですけれども、最初に申し上げましたが、国の病児保育についての補助メニューはまだまだ足りないことは明らかですが、拡大を図ってきたわけです。稲見先生に今後の病児保育をより充実をさせる方向について少しお話をいただけますでしょうか。

稲見

病児保育事業の充実に向けてということですが、先ほど言いましたように、平成26年度は57万人が利用できました。子ども・子育て会議において病児保育事業の量的、質的充実が検討されています。それに伴って、平成32年には述べ150万人の利用までもっていきましょうということになっています。まず、補助金は基本単価と出来高がありますが、平成27年度からは基本単価が高くなりました。ただ、これは地域の保育に貢献するという条件があり、国は高くしましたと言ってくれましたが、自治体レベルでそれを理解してもらえないということで、実際に高くなっているところは残念ながらほとんどありません。これは、自治体主体の事業ですから、自治体が「はい」と言わないとなかなか補助単価の改善もできません。

それから、病児保育の促進事業として、平成28年度から次のようなものが始まります。まず、病児保育施設整備。これは先ほど施設や整備に対して補助がないということを言いましたが、28年度からこういうものに対して補助を出してもらえるということです。それからもう1つは、保育園や家庭で熱が出たときにお迎えに行って病児保育施設に連れてくるという制度です。これは、まだ中身が確定していないのですが、ある意味リスクな事業で、どういう施設だったら受託していいのか、距離はどの辺までいいのか、移動はなにを使うのか。まだまだ今後決めていかなければいけないことがあります。4月に間に合うかどうかちょっと分かりません。東京都では4、5年前から、この制度を独自にやっています。東京都では移動はタクシーを使います。板橋医師会病院の病児保育室でやっているのですが、保育士と看護師の2名でお迎えに行って、連れてきたら必ず小児科医の診察を受けて病児保育室に入ります。どのような病気が来るか分からないわけですから、かなり厳密な条件を付けた上でやらなければいけないと思います。タクシー代に関しては保護者の負担となっています。

次に、病児保育と病後児保育の連携です。これは、昔からなんとかしたほうがいいと考えていました。先ほど言ったように、病児保育室は比較的に利用率が高く、特に風邪がはやるときなどは満員になります。インフルエンザがはやるときに、おたふくと水ぼうそうが1人ずつ来たら、1人は隔離室に入れ、1人は第2プレイルームに入れる。そうするとインフルエンザの預けられる人数がぐっと減ってしまいます。水ぼうそうもおたふくも1回入ると1週間ぐらいそこを独占されてしまいます。おたふくも水ぼうそうもそんなに怖い病気ではありません。ですから、もし、そういう患者さんが病児保育室に来た場合、安定していると考えたら近隣の病後児保育室に行っていただく。病後児保育室は医者がいませんが、看護師はいますので、そういう安定した病気の場合は病後児保育室で十分みられるわけです。そうすると、私どもの病児保育室の隔離室が、また、自由に使えるようになる。つまり、このようなことをコーディネートするシステムを作らなくてはいけません。例えば、世田谷区は10軒の病児、病後児保育室がありますけれども、これを私のところ1軒でやるとなるとたいへんな労力になります。これは、やはり自治体にやっていただきたい。オンタイムで空き情報を流して、そこにすぐ連絡をする。今のPCなどそういうものを利用すれば、そんなに難しいことではないと思います。こういうことをやっていけば、もっと有効的に各施設を使うことができます。

最後に、きょう自治体の方も多くいらっしゃっていると思います。病児保育事業は地域子育て支援事業に分類されます。つまり、自治体が主体にならなければいけない事業です。いくら施設側がやる気があっても、自治体に熱意がなければたいしたものはできません。1つ面白い例があります。岩手県に西和賀町という山間部の寂れた農村があります。8000人ぐらいいた人口が6000人まで減ってきました。このときに、どうして人口が減ってしまうのか。つまり、暮らしにくいのではないかということで、そこの医療機関の先生がお母さんたちにとって暮らしいい町を作るにはなにができるかをかんがえ、病児保育をやろうということで自治体と話し合いをもちました。当初、自治体から「こんな6000人の町に病児保育なんて無理です」と一蹴されたそうです。それが、3・11の大震災の後に町長や保育担当者が代わったら、すごい熱意を持ってそれを一緒にやりましょうということになりました。人口6000人の町に立派な病児保育室があります。人口が少ないところでは、育児支援のセーフティネットである病児保育はなく、人口が多いところではあるということは不公平であって、どんなに人口が少ない地域でも子どもを助けるようなセーフティネットは必要です。考え方によっては、暮らしをよくすることによって人口の流出も止められるということであります。

無藤

ありがとうございました。病児保育のさまざまな難しさとともに、今後の可能性もお話しいただきました。あらためて、病児保育の重要性といくつかの困難、それに対する国の補助の拡大を教えていただきました。ぜひ、今後、自治体や事業者の皆さまが積極的に取り組む中で、国にも知恵を出していただきたいと思います。

<利用者支援>

無藤

それでは、最後の3番目のテーマですけれども、利用者支援です。ここにお示ししましたけれども、事前のご意見として「利用者支援についてはなにをしていいのか」「どう取り組んでいいかよく分からない」ということや「この事業実施にあたってのよりどころとなるようなモデルはないか」「モデルにしても自治体による状況が違いすぎて難しいのであるが」というようなものがありました。ここにつきましては橋本さんがご専門ですので、まず、事業の基本的なところからご説明をお願いします。

橋本 パネルディスカッション中の橋本 真紀さんの写真

ご紹介いただきました関西学院大学の橋本真紀です。利用者支援事業が実際どうなのかというお話は、後ほど大豆生田先生が4分間でお話してくださると伺っていますので、私は今から10分間で利用者支援事業の概要についてお話をさせていただきたいと思います。内容は事業の目的と機能、事業の対象、そして各類型の連携の意義ということになります。

最初に利用者支援の目的と機能についてお話をしますが、利用者支援事業は子ども・子育て支援法の第59条に位置づく、この新制度において新たに創設された事業です。一人一人の子どもが健やかに成長することができる地域社会の実現を目指しつつ、子どもおよびその保護者または妊娠している方がその選択に基づき多用な教育、保育施設や地域の子育て支援事業を円滑に利用できるよう必要な支援を行うとされています。具体的な役割としては、個々の家庭のニーズを把握して必要な地域の資源につなぐ利用者支援と、地域の資源側に働きかけたり、必要な資源を作る地域連携の働きが求められています。

この事業の目的に示される利用者支援事業の機能をこのように図にしてみました。利用者支援事業の専任職員は利用者支援専門員と言いますが、この専門員は事前に地域資源と緩やかな関係を持っていきます。家庭と地域資源がつながりやすい状態を作っておくということです。

これが地域連携と呼ばれる働きです。そして、支援を必要とする子育て家庭が相談に来たり、あるいは専門員が地域の中でそのような家庭と出会ったら、利用者支援専門員はそのニーズに応じてオーダーメイドでその家庭と地域資源をつなぎサポート体制を作っていきます。これが利用者支援と呼ばれる働きです。この働きによって地域の資源間のつながりが変化したり、強化したり、資源間の関係が深まったりします。すると、その関係性が次の子育て家庭のサポートネットワークになります。この利用者支援の働きが、実は地域連携としても機能していくことになります。このような利用者支援と地域連携の一体的な展開を繰り返しながら、地域の中にミルフィーユのように人の関係の層を厚く重ねていく。そして、その関係は子どもが育つ環境になります。つまり、ニーズに応じて個々の家庭のサポート体制を作っていく利用者支援の取り組みは、その家庭を核として地域に新たなつながりを作る取り組みであり、やがて次の子育て家庭を支える地域社会を作ることになるとも考えられます。そのような機能からもこの利用者支援事業は予防支援型の取り組みであると言えます。

このような利用者支援事業の対象はガイドラインでは妊娠期から主に就学前までとされています。家庭の状態としては、情報を自ら活用して子育てができる家庭から要支援家庭になります。利用者支援事業の累計は先ほど西山さんや塚本さんのお話にもあったように基本型、特定型、母子保健型の3つがあり、類型によって少し対象が異なります。母子保健型は専門職を配置して特定妊婦等を対象に含めることから、この図では要支援家庭からが母子保健型の対象になっていますが、実際には要保護家庭も対象にしていくことが予想されます。一方、特定型は窓口を訪れる子育て家庭の保育サービスの利用調整を主な機能としていることから、資源の紹介があれば子育てをしていける家庭が主な対象となります。基本型は、その間の要支援家庭から少し心配な家庭が主たる対象になるとされています。利用者支援事業が創設されるまで日本の妊娠期から養育期の家庭を対象とした資源のコーディネート機能は、児童相談所や要保護児童対策地域協議会が行う要保護家庭を対象とした取り組みが中心でした。

一方、1990年代から地域子育て支援拠点事業など地域の子育て家庭を対象とした支援事業が実施されるようになっていました。そのような事業を利用する家庭の中に要保護家庭の範疇ではないけれども、支援を必要としている家庭や心配な家庭が把握されるようになってきました。こちらに事例を4つ上げています。例えば、転勤が多くてなかなか転居先の地域になじめず6カ月間親子だけで過ごしていた。母親は友達も多くて親子でよく遊んでいるけれども、実は、子どもがかわいくないと職員につぶやく。日本で出産したが日本語が全く話せず、夫が仕事から帰宅してから2人で毎晩11時ごろ乳児を連れてコンビニに買い物に来る。乳児期から連日習い事の教室に通いスケジュールが埋まっていることで安心しているというような家庭です。このような家庭は少しのサポートがあれば子どもの育ちを家族で支えていけると考えられます。一方で、このような家庭に中には漠然とした不安を感じつつも支援を受けられることに気付いていない。支援を受けたくない。自分がなにを必要としているのか分からないなど、相談窓口を訪ねることを思いつかない家庭が含まれています。このような家庭の支援においては、その親子が生活を営む地域の中のなじみのある場所に出向いて、話を聞きながら、ともにその家庭がなにに困っているのか状況を解きほぐし、子どもを育てるためになにが必要かを確認していきます。その上でインフォーマルな資源を含む地域の資源につなぐ働きが必要と考えられます。

特に、子ども家庭福祉領域においては、家族が抱える課題が小さい間ならば十分とはいえないまでも、まだ使える資源、サービスがあります。例えば、送迎さえできれば、一時預かり、ファミリーサポート、先ほど稲見先生のところで病児保育の話もありましたが、保育サービスもいろいろと利用できます。ですが、なんらかの理由で親に送迎する力がなくなったり、コミュニケーション能力が低下して利用の手続きができないなどという場合、使用できるサービスがほとんどなくなります。つまり、資源を活用するにも意欲や体力が必要であるということです。子育て家庭が資源につながる余力がある間に適切な資源につなぐことが状況の深刻化を防ぎます。また、基本型は子育て家庭が身近と感じる場所で行うとされており、専門員が子育て家庭の生活の場や日常生活場面にいることで子育て家庭の生活に触れることが可能となり、課題のみならず生活の中でその家庭が発揮している力や工夫に気付けることもあります。その家庭が発揮する力や工夫を支えることで、その家庭が力を蓄積して、やがて地域の中の他の家庭を支えるという可能性も生じてきます。このような利用者支援事業は基本型と母子保健型が連携することで妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を確保することが期待されています。類型の形態は内閣府等のホームページで確認いただけます。

最後に各類型が連携する意義についてお話をさせていただきます。意義の1点目は、子育て家庭を専門機関や公的資源との関連に留めずインフォーマルな資源と言われる近隣住民や当事者の関係の中にまでつないでいくことができるということがあります。例えば、親子が特定型や母子保健型に相談に来た場合、特定型や母子保健型は公的なサービス、専門機関につなぐということを得意としていますが、なかなか地域住民の活動や当事者同士の交流にまでつなげることができません。地域連携の役割を母子保健型も有していますが、母子保健型は対象が抱える課題の深刻さや母子保健が有する専門的なサービスの豊富さから活用する資源が母子保健サービスや公的な保育サービスに偏りやすい傾向があります。特に都市部において保健師の業務の多さから、地域に出向いて地域の人々や活動と関係を作ることは難しいと言えます。

そのような中で、どうしても対象者が専門職や専門機関、公的サービスとの関係の中に留まりやすくなってしまいます。一方、基本型は関係機関や専門機関とも連携しますが、特に地域子育て支援拠点事業などに付設された場合、利用者支援事業などでは地域子育て拠点事業に集う当事者同士の関係や近隣住民とのつながりがあり、そのつながりをたどりながら、その家族が地域の中に位置づくことを支えることができます。このような形です(PPTで図式)。

母子保健型、また特定型が地域連携の機能を有していなくても、あるいは、地域のインフォーマルな資源まで連携できなくても、基本型と連携することでそのつながりを活用することができます。1990年代から2000年代初期までは、地域の中に子育て家庭が集う物理的な場を作ってきました。2015年度からは場に集う親子を再び地域につなげていく。利用者支援事業はそういう機能を発揮しようとしています。形や効果が見えにくい事業ですが、利用者支援事業は家庭が地域に中に子育ての体制を作っていくことを支える事業であり、その体制は子どもが育つ環境にもなるというこの事業の意義に着目して、ぜひ、多くの市町村で事業をはじめてもらいたいと思います。

無藤

ありがとうございました。ただ今の基本的な説明に加えて少し大豆生田さんに補足をお願いしたいと思います。

大豆生田

もう橋本先生がおっしゃったとおりですけれども、「利用者支援なんて具体的にどうするの」となったとき「役所に窓口に誰か相談できる人を置けばいいんでしょ」という話をされることがあります。先ほどの西宮市が1つの重要なモデルかと思いますけれども、特定型の保育コンシェルジュのようなものはそれでいいとは思うのですけれども、そうでなく基本型の充実がこれからポイントになってくると思っています。基本なのですから基本としておきたいところです。これは、西宮市もそうでしたけれども、地域子育て支援拠点のようなところに置いていると思います。私は横浜市の拠点のことに関わってきましたけれども、横浜市は各区に大きな拠点を置きそこに相談員を置いています。「今までだって広場に来ればそこで別に相談なんか受けられたんだから、特にそんな窓口の人はいらないんじゃないか」とおっしゃるかもしれませんが、全く違います。「広場に来れている人は大丈夫」とおっしゃる方もいますけれども、これは違うと思います。広場に来れている人たちがいろいろな悩みを話せない。話すのにどれだけ気使いしているか。気兼ねしているか。実際に、話さないまま課題解決をせずにいなくなるという方はたくさんいます。

そう考えると、そこに来た人たちから気軽な当事者目線で話が聞ける人は、すごく重要になってきます。しかも、さらにその人たちがさらにつないでいくというお仕事もありますから、実際に、ここには軽い悩みだけではなく、ものすごく深刻な悩みまで持ってきます。そのときに、そのことが深刻な悩みにつながりそうだという感度を持って、相談を聞けないとするならば、これはその後につなげていくことができません。そうすると、当事者的な人でありながら、相談の奥深いところまで「あ、あるかな」という感度のある人が必要になってきます。そう考えると、この利用者支援という窓口を作ったことで以前よりも声がかけやすくなった、相談しやすくなったということがあると思います。親子がたくさん集う気軽に話せる場所の中にその担当者が置かれるということは、ものすごく重要な役割だと思っています。そういう意味でいうと、横浜市も西宮市もそんなふうな取り組みがさらにこれから続いていくだろうと思います。

さらに発展していくだろうと思いますけれども、そのときにもう1つの課題が協働ということになってくると思います。例えば、NPOがそれを行っているとするならば、役所や保健師たちをどう連携していくかということがものすごい鍵になってきます。その拠点の担当者も重要な役割を担うことになります。保健師などともきちんと話ができる、お互いの足りないところも含め補い合うような連携体制がこれからますます重要になってくると思います。

無藤

ありがとうございます。事前に、この事業についてのご質問・ご要望の中に母子保健型、基本型の住み分けや特定型と母子保健型、さらには基本型などの連携ということについて、もう少し詳しく知りたいということがありましたが、そのあたりについて橋本さんのほうからもう少しお話をいただけますでしょうか。

橋本

先ほども、母子保健型、特定型が基本型と連携する意味をお話しましたが、まず、各類型が得意とする対象分野が違うということです。母子保健型は、妊娠期から関われるというところがすごく強みだと思います。それと専門職配置が規定されていますので、かなり深刻な問題を抱えていらっしゃる家庭にしっかりと関わっていける。だけど、たくさんの家庭に関わることは難しい。保健師さんの業務量から言っても難しくなるということです。一方で、基本型は地域子育て支援拠点事業などに置くことが言われていますので、かなり地域の中に入り込んだ支援ができる。ただし、専門職配置ということではなく、いろいろな研修を受けてその力を高めていきましょうという状態になっていますので、得意とするところは、やはり、拠点事業をしながら、地域の中でさまざまなつながりを持っている。事前にさまざまな地域の資源とつながっているというところで、困り感を抱えている家庭を迎え入れていく方法で、地域の中にその家庭が位置付いていくことをサポートできるということなのです。

なので、この2つの機能が連携することによって、まさに切れ目のないという、とてもよく使われる言葉ですけれども、そういう支援が可能になるのではないかなと思います。特定型のよさは、市役所の窓口に多くありますので分かりやすい。先ほど、母子手帳の配布ということがありましたけれども、皆さんが関わるところを入り口に、次の必要な専門機関なり、専門職なりにつないでいける強みがありますので、その3つが連携することで、まさに切れ目のない支援が可能になると考えています。

無藤

ありがとうございました。あらためて、この利用者支援をいろいろ教えていただいたわけですけれども、この利用者支援の重要性が私などもよく分かりました。しかしながら、これまで幼稚園、保育園、認定こども園、それに子育て支援センターなどを加えてもなかなか十分にはやれてこなかった、全く新しい分野でもあると思います。そこには多種多様な仕事があるかと思いますが、先ほどの説明の中で、おそらく、その中心となる部分として保護者、家庭と、地域のさまざまな資源といいますが、地域のさまざまな助けてもらえる人たち、場、そしてまた行政のサービス、それらをどうつないでいくかだと思います。そういう意味で今後、幼稚園、保育園、認定こども園等の新しい分野、仕事がそこにあり、それは単にこれまで園の中でやっていた子どもに対する保育ということのプラスの、余分なことというよりは乳幼児をしっかり育てるということのもう一方に、保護者に対する支援、それを通じて子どもを一緒に育てていくという仕組み作りがあるのかというふうに思いました。

それでは、時間が迫ってきましたので、あらためて全体のところに戻しまして、4人の先生方にそれぞれテーマを巡ってお話をいただいたわけであります。きょうは、3つのテーマ、それぞれ別々のテーマではありましたけれども、最初に私立幼稚園のあり方の問題。そして、2番目に病児保育の問題。3番目にただ今の利用者支援の問題でありました。それぞれのご専門の先生方から要点をお話しいただき、また、大豆生田さんからそこで最も重要になる点についてのコメントをいただきました。

それでは、皆さま方からあらためて補足、また、他の先生方のお話を受けてということで一言、二言。2、3分は取れると思いますので、お話をお願いできますでしょうか。それでは、正本さんからよろしいでしょうか。

正本

私立幼稚園と新制度というところでお話をさせていただきました。大分県私立幼稚園連合会としましては、平成18年から認定こども園ができてからのこの10年は、よりよい活動ができたと思っています。今回の新制度に移行したからよかったということではなく、移行するかしないかを設置者の先生方に考えてもらう情報を確実に提供できたと思っています。また、それを通して市町村とのつながりも作ることができたことを、大分県私立幼稚園連合会政策委員長として、この10年間よりよい取り組みができたというふうに振り返りをさせてもらっています。

大分県私立幼稚園連合会は64園の加盟園があり、そのうちの33園が新制度へ移行しました。31園が私学助成です。ちょうど半分半分とイメージしていただければと思いますが、同じ幼児教育をしているのではありますが、2つの制度に分かれたというところが、今後の政策委員会としての政策振興をどうするか。土居会長とも話をしていますが、幼稚園の振興と幼児教育の振興、この2つの柱になろうかというふうに思っているところです。今年度、市町村キャラバンも行っています。そういうところで各市町村の方々に「隣の町とちょっと違いますよ」という話をさせてもらっています。今回のこの制度は違うということはもう当然のことです。それが、町の子育て施策ですので、それをちょっとまとめさせていただいて、私たちとしては、どうか今後とも健やかな子どもの育ちを、幼児教育の振興をお願いしたいというのを、やはりあらためて力強く言っていきたいと思っています。

最後に私は言わないといけないこと、大切なことを1つ忘れていまして、大分県認定こども園連合会という団体でありますが、この団体は保育所団体、幼稚園団体にも属していない独立の団体です。認定こども園から見えてきた取り組みを情報発信しようとして平成25年5月に大分県の子ども・子育て県民会議が始まる前に立ち上げた団体です。やはり、認定こども園についてよい、悪い、いろいろなことが議論されてきました。今でも幼稚園由来とか保育所由来というような表現をされますが、やはり地域によっては、認定こども園の機能を持つことで、よりよい効果を挙げてきたということを丁寧に発信しないと、というところで、大分県認定こども園連合会を立ち上げたわけです。幼稚園団体と認定こども園団体がイコールではやはり角が立ちますし、保育所団体と認定こども園団体が一緒だとどうしても角が立ってきます。やはり子ども施策のバランス取るためにもこの団体が必要だと思って取り組みをしました。

やはり新制度がスタートして、認定こども園に注目がとても集まって、幼児教育が受けられることが利用者、保護者にはメリットのように聞こえています。では、幼児教育とはなにかということを、連合会は今年度の研修のテーマにさせてもらっています。これからも進めていきたいのは子育て支援です。認定こども園の子育て支援とはなんでしょうかということを、やはり認定こども園の方々にも情報発信をしたいと思っています。きょうの話にあった、病児、病後児、利用者支援、そういうところまで認定こども園としては考えていきたいとは思いますが、多分、そこまではまだ行かない。今の段階では幼児期の教育、保育とはなんだろうかということをうまく提案をしていって、これから子育て支援、また地域のネットワークに認定こども園がどうなるかという話を、この大分県認定こども園連合会というところで、大分県で展開をしていきたいと思っています。

無藤

ありがとうございました。それでは、稲見さん、お願いします。

稲見

私ごとですが、私は小児科医になって三十数年経ちますけれども、小児科医になってなにが分かったか。今の小児科医に求められているのは、子育て支援なんです。病気を治すことは、もちろん大切ですけれども、これは多少勉強をしたら誰にでもできます。今はもう均一な治療法がいろいろな病気で決められていますし、診断技術も上がっています。それよりも私たちに必要なのは子育て支援であるというのは、もう身をもって経験します。よくお母さんたちが私たちの前で急に泣き出したりします。私はこの子に愛情を感じられないんだというような話もよく聞きます。また、本当に汚い格好でネグレクトされているようなお子さんたちも来ます。

実は、全国病児保育協議会という病児保育施設を運営している施設の団体があります。この団体で、子育て支援センターを病児保育を行っている施設ができるのではないかと考えています。つまり、病児保育を行っている施設は、まず医師がいる、看護師がいる、専門の保育士がいる、それから臨床心理士がいる、栄養士がいるということで、すごく人材があるんです。ですから、私たち病児保育をやっている者は、もっと積極的にいろいろな子育て支援事業に参加していかなくてはいけないのだというように感じています。以上です。

無藤

ありがとうございました。それでは橋本さん、お願いします。

橋本

今、先生方がお話くださった認定こども園、そして病児保育、それから利用者支援事業が1つの地域の中で、これだけではなく保育サービスであったり、認定こども園であったり、病後児保育であったり、病児保育であったりというものが関連しあいながら、子育てを支えたり、あるいは、子どもの成長を支えていけるように、それぞれの事業をやっている者が、自分の地域の中で他の事業にも関心をもちながら、事業に関わっていけたらいいかなというふうに、きょう先生方のお話を伺って思いました。

無藤

ありがとうございます。では、大豆生田さん、お願いします。

大豆生田

私は昨年、内閣府の研究で、この新制度で各自治体でどんなふうに取り組まれているかということを30カ所調査をしました。これはものすごく面白くて、もしよろしければ見ていただけたら幸いなのですが、自治体によっていろいろな工夫が行われている。また、それがいろいろ違って「ああ、ここすごいな」というところがあちこちにありました。というように、実は、この子育てや保育の問題は多様で、そのことをこんなに自治体の中でみんなが話をして「こうしようよ」ということが起こると、こんなふうに新たなアクションができるんだということを、すごく知ることができました。

私は、幸い墨田区に関わらせていただいて、いろいろな方々と話をしましたが、知らないことだらけでした。そういう意味で言うと、みんなで話し出すとそれぞれ公立、私立、幼稚園、保育園、こども園、児童館の方、子育て支援に携わっている方、その他いろいろな方々が同じ席に着くわけですけれども、もちろん保護者、当事者も含めてです。そうすると、こんなにみんなが違うんだけれども、やはり大事なことになってくると必ず1つの方向が見えてくる。「それやろうよ」と言って動き出す。地方版子ども・子育て会議は計画を作ったからもう終わりと思われがちなのですけれども、実は、まだまだこれは続くというか、ここからでも、今度どうしようかということをすごくアクションをしていける場でもあるのだと思います。

子育て支援のことを1つ取っても、実は、墨田区で話したときも私立幼稚園、公立幼稚園、公立保育園、私立保育園、みんなそれぞれやっているのですが、それぞれのことを誰も知らないということもありました。そちらでそんなことをやっているなら、ということが実はたくさんあって、そうするとこれからその地域の中で、どんなふうに自分たちが共通の場について新たなアクションを起こすのか。そのときに市民力がすごく重要で、やはりその面白い自治体はみんな声をあげている。市民をどう巻き込んでいくのかということでは、自治体の方が「やろうよ」と一緒に言ってくださらないと、なかなか動かないところもある。そういう意味で言うと、市民力や自治体の方の力だとか、そこに関わる現場の人たちが声をあげていくことの重要性をあらためて今思わされているところです。

きょうここに出てきた課題などもそれぞれ大きな重要なテーマです。先ほどの正本さんの話ではありませんが、その地方の中で、それぞれの中でこのことをどう語ってアクションしていくかが大事ですし、それぞれの幼稚園、保育園、認定こども園にとっても、この新制度を機会に、もっと子どものために新たに歩み出すすごく重要な一歩なのかなというふうに思っています。そういう意味では、きょうの先生方のお話も伺わせていただきながら、自由枠として勝手にお話しさせていただきましたけれども、あらためてすごく学ばせていただきました。ありがとうございます。

無藤

ありがとうございました。4人のパネリストの方にそれぞれまとめをいただきました。最後に私は司会の立場ですけれども、全体的なまとめと言いますか、感想程度ですけれども、お話しさせていただいて終わりにしたいと思います。

きょうのテーマは3つでした、私立幼稚園のあり方、病児保育、利用者支援です。最初にも申し上げましたけれども、この3つのテーマは平成27年度から新しい子ども・子育て支援制度が始まった中で、それぞれ非常に難しい部分というふうに認識もされましたし、さまざまな自治体や全体をとおしての調査でも上がってきたポイントでした。私立幼稚園のあり方というのは言うまでもなく私立幼稚園にはこの制度、新しい制度の外にある私学補助の中の幼稚園という選択肢もありつつ、同時にこの制度の中の幼稚園、また認定こども園という選択肢も開かれるということが1つ。

もう1つは、この制度に入った場合に、その幼稚園が都道府県管轄から市町村管轄に移るということ。それに伴って市町村と私立幼稚園の新たな関係構築が課題となったということなのかと思います。それについて、さまざまな事情をお話しいただいたわけですけれども、やはり新たな関係を作っていくこと。そして、その私立幼稚園がこの制度の中のいわゆる幼稚園か、制度の外の私学補助における幼稚園かはともあれ、その地域に幼稚園があることは同じことですので、そのお金がどこから来るかは別にしても、その市町村の中にある幼児教育を担うパートナーという意味で、互いに協力しながら一緒に子どもを育てていくんだということが確認できたと思います。

2番目の病児保育についても、稲見先生から特にいろいろな問題点とともに今後の可能性を教えていただきました。そのときにも申し上げましたが、病児保育は常に保護者の保育に対するニーズ、希望としてトップに上がるものであるわけですが、素人的に考えても、なかなか採算ベースを取りながらそれを実行していくのは非常に難しいだろうということは想像が付くわけです。しかしながら、少しずつ改善が進んできていることも確かですし、現実にお子さんが病気になった場合の対応について、家庭としておおいに困惑する事態であることも確かだと思いますし、それぞれの親御さんが働く場合に、お子さんが病気になったことがおそらく危機的な状況を作り出すであろうということも想像に難しくありません。そういう意味で、事業者や市町村のさまざまな難しさは分かりますけれども、今後ぜひ開拓を進めていただきたいと願うわけです。

そして、3番目の利用者支援ですが、これは全く新しい事業になります。もちろん、これまでも保護者支援という形でいろいろな試みがあったわけですけれども、あらためてそれを拡大しながら、地域全体における家庭への支援、そして、単に個別の保護者を助けるだけではなく、それを地域全体、行政のサービス全体にどうつないでいくか、その働き自体をきちんと位置付けるべきであるという中で、いくつかの市町村で動き出したことをきょう教わったわけです。

そういったいくつかのポイントを見てみると、3つのテーマは全くばらばらではあるのですけれども、非常に大きく言えば共通の部分があるように思います。1つは、それぞれが自治体の中で子どもたちを育てていく、家庭を支援していくという営みの一環であるという当然のことです。つまりこの新しい制度においては単位となる部分が基礎自治体、いわゆる市町村であるわけですけれども、逆に言えば、その市町村に存在するところの全ての園、幼稚園、保育園、認定こども園、なんであれ、それが行政と協力しながら、その地域にいる子どもたち、家庭を助けていく、子どもたちを育てていくことにおいて連携し協力するんだという考えだと思います。子ども・子育て支援制度はいろいろな意味で画期的な新しい仕組みであるわけですけれども、そういった大きな意味での変化として考えれば国や都道府県がいわばサポート役であって、主体は地域なんだ、自治体である、基礎自治体であるということだと思います。基礎自治体というのは、別にその行政の文書にあるものでもないし、基礎自治体が主役だというのは、役所がなんとかしなさいではないはずです。最も住民に近い自治体として基礎自治体が重要であるということですから、そこに住んで活動をされている全ての方々、全ての園が行政とともに子どもたちを助けるという方向が打ち出された。そのためにこそ、子ども・子育て会議も各自治体において設置し、機能していくようにお願いしたいと思います。

その際に私の視点から、もう1つ大事だと思うことをあらためて感じました。それは、私は専門が幼稚園、保育園の保育の細かいことなので、つい幼稚園、保育園、認定こども園の中の保育のやり方にばかり気が行きますけれども、小さい子どもたちをしっかり育てるという意味では家庭への支援、また、地域のあり方も含めて、乳幼児を囲む全ての環境、もちろんその中で、園が中心であっても、家庭も大事であり、地域の間の、その地域のあり方や地域に住むさまざまな人との関係を作ることも重要なのだということを、きょう確認できたと思います。そういう意味で子ども・子育て支援制度の基本的な考え方、基礎自治体を中核とすること。そこで暮らす全ての人がそこで協力し合うということ。その一環として幼稚園、保育園、認定こども園の幼児教育と、いわゆる子育て支援が表裏一体なのだということを確認して、きょうのフォーラムを終わりとさせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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