株式会社東急百貨店(小売)さっぽろ駅前保育園/北海道札幌市

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立ち上げ時のポイント
  • 保育施設運営時の安心・安全面を重視し、外部委託業者を比較検討した。選定は実績等を重視した。
  • 本社との資金面での調整においては、福利厚生の一環として施設の運営に収益を求めないことの理解を得た。また弁護士と相談の上、子どもの補償等に配慮した。
  • 設置場所は、店舗の建物内において営業時間外に店舗エリア等に立ち入ることができないよう区画を分けられること、駅直結の地下階や地上階からの動線を確保でき利便性が高いことを重視した。
  • 共同利用企業を年度単位で募集し、従業員枠の利用者を確保している。
設置者の概要
○企業概要 ■事業所 本社(東京都渋谷区)、全国15店舗
■設立年 大正8年3月
■資本金 1億円
○業種 小売(百貨店)
○従業員規模

・グループ全体 約2,200人(うち女性) 1,500人

・単独 約 440人(うち女性) 330人
グループ全体で2,000人を超える従業員数を持つ大企業。
さっぽろ店では女性従業員が全体の7割以上を占め、販売業務等を実施。

○企業の特色

・東京急行電鉄株式会社(東急電鉄)の百貨店部として創業し、全国15店舗で百貨店業を営む東急グループの中核企業。

・元旦を除き、年間を通して休業日を設けずに店舗を営業している。

保育施設の概要
○所在地 北海道札幌市(人口:約195万人)
○地域の特色

・北海道全体の約3割を占める人口を擁し、全国の市区町村の中でも5番目の大都市。

・市全体の待機児童数は平成29年4月時点で7人であるものの、地域によって事実上の待機児童が顕在化。

○設置方式 単独設置・共同利用型
○設置場所

・事業所内設置

JR札幌駅から徒歩2分の駅前立地。店舗5階の西側エレベーター近くのスペースを改修して活用。

○運営方式 外部委託方式(社会福祉法人水の会)
○開設日 平成29年4月
○利用定員と利用者数

・定員:19人(うち地域枠9人)
従業員枠(0~2歳児10人)
地域枠(0~2歳児9人)

・利用者数:19人(うち地域枠9人) ※平成30年2月時点
従業員枠(0歳児0人、1歳児3人、2歳児7人)
地域枠(0歳児0人、1歳児4人、2歳児5人)

○開所時間 通常保育 平日・土曜・日曜・祝日7:30~18:30(延長保育18:30~20:30)
一時預かり 平日・土曜・日曜・祝日10:00~18:00
○保育施設の特色

・店舗の建物内で、営業時間外に他エリアと区画を分けることができ、駅直結の地下階や地上階からの動線を確保することができる場所を選定した。

○費用の状況

・初期費用約10,000万円(うち助成分約8,100万円)※1 ※1 設計費、開設準備費を含む

・年間運営費用約4,200万円(うち助成分4,200万円)

設立までの流れ

時期 内容
開設2年前
平成27年頃
従業員の声や地域の待機児童問題を受けて、店舗への保育施設の設置構想が浮上 ⇒ニーズの把握、社内での設置検討
開設1年前
平成28年4月
店舗の経営層へ説明を行い、保育施設の設置に向けて始動外部委託業者の候補を検討し、設置に向けた情報収集を行う中で、企業主導型保育事業の情報を入手 ⇒社内での設置検討、運営方式の決定、外部委託業者の選定、参考情報の収集
開設11ヶ月前
平成28年5月
同事業の利用を決定し、東京本社への説明を実施
札幌市に相談し情報収集を行った上で、店舗内の設置場所を検討
⇒設置方式の決定、自治体との連携、設置場所の選定
開設10ヶ月前
平成28年6月
児童育成協会へ助成申請を実施 ⇒申請手続き
開設4ヶ月前
平成28年12月
保育施設の改修工事を着工(~3月) ⇒施設整備
開設2ヶ月前
平成29年2月
従業員への開設案内、利用希望者向けの説明会の開催、地域枠の利用者選考等を実施
共同利用企業を募集開設に向けた具体的な準備を実施
⇒社内向け説明会の開催、地域向け説明会開催、利用者の募集、共同利用企業の調整、開設準備
平成29年4月 保育施設開設 ⇒開設

設置の検討

保育施設の設置の経緯とニーズ把握の実施

さっぽろ東急百貨店は、昭和48年にJR札幌駅前に開業し、以来40年以上にわたり地域の百貨店として市民に親しまれてきた。業種の特性上、全従業員の7割以上を女性が占めるなど、従前より女性従業員が活躍している職場である。子育て中の女性従業員から「保育園が見つからない」などの声が以前から出ており、育児休業後の女性従業員の職場復帰や新卒採用等の人材確保の観点から、自社としての保育施設の設置を検討するようになった。平成27年頃、札幌市長が公約として待機児童対策を掲げるなど地域で待機児童問題が顕在化しつつあったことを受け、保育施設設置構想の具体化の検討を開始した。また子育て中の従業員へのヒアリングも行った。

平成28年には、従業員のニーズや地域に根ざした企業としてのミッションという観点から保育施設設置の意義を訴え、経営層の理解を得て保育施設の設置に向けて動き出した。

設置検討や開設準備のプロセスはプロジェクトの担当が中心となって行った。保育施設の立ち上げや運営のノウハウはほとんどなく、百貨店が月極保育を行う保育施設を設置すること自体が全国で初めての試みだったため、担当者が手探りで準備を進めていった。まず、始めに運営委託を行う外部委託業者の検討を行った。東急グループは鉄道業を母体とする企業グループであり、安心・安全という価値観を特に大切にしているため、安心して運営を委託できる事業者を探すことに注力し、現在の社会福祉法人を選定した。

委託先の事業者の見通しが立ち、同保育事業者と協働して保育施設の設置に向けた検討を始めた中で、企業主導型保育事業の存在を知った。当初は「認可外」の保育施設であるということが気にかかったが、委託先の事業者が認可施設を含む多数の運営実績を持っていたことや、東急グループとしての認知度で利用者の先入観を払拭できると考えた。参考情報を収集するため、企業主導型保育事業として開設した静岡市の保育施設の視察も行った。また、一時預かりサービスを提供している同業他社の視察も行った。

これらの検討を進め、企業主導型保育施設としての保育施設設置の方針を固めた段階で、東京の本社への説明を行った。本社からは、設置そのものというより、安心・安全面や資金面の懸念があったため、弁護士にも相談しながら補償や保険の対応を検討した。また、資金面については、定員が埋まらなかった場合のリスクも考慮しつつ、従業員の福利厚生の一環と位置づけ、保育施設の運営に収益は求めないことなどについて理解を得た。最終的には、整備費の助成申請を行い、決定通知を受領した後に正式な決裁に至った。

店舗5階の一角にある保育施設の入口

見通しのよい保育室内

設置場所の確保

保育施設の設置にあたり、最も苦労したことが設置場所の確保であった。従業員の利便性を考え店舗内の設置を想定していたが、近隣の企業や地域枠利用者の利便性を考慮すると、百貨店としての営業時間である10時~20時(レストラン街を除く)以外の時間帯にも利用者が保育施設にアクセスできるようにする必要があった。一方、施設の利用者が営業時間外に他エリアに入ってしまうことがないよう、区画を分ける必要があった。そこで、専用運転の制御が可能な店舗西側のエレベーターの近くで、シャッターなどで専用区画を設けることが可能な、現在の店舗5階に保育施設を設置することにした。現在の場所は、JR・地下鉄札幌駅から地下道で連絡していることや、地下入口や地上階の入口からアクセスしやすく、利用者の利便性が高いことも決め手の一つだった。

施設整備には認可保育施設と同等の基準が求められ、建物の5階という立地は、通常の1~2階への設置時よりも厳しい基準を満たす必要があった。そのため、室内の採光のために窓の開口を大きくしたり、特別避難階段の設置要件を細かく確認して、整備するなどの配慮を行った。また、施設の内装は、利用者や一般の買い物客にも「東急百貨店らしさ」を感じてもらえるように、施設内のデザインや建材の材質などにもこだわった。保育施設の入口横の壁面には、札幌市立大学に協力を依頼して学生に絵を描いてもらった。

また、同施設では年齢別の定員数を明確に定めておらず、保育ニーズに応じて柔軟な受入れができるようにしているため、空間の区切りをパーテーションでゆるやかに設けるように工夫も行った。

施設内のデザインにもこだわり

子ども用トイレの様子

運営方法の検討と外部委託時の業者選定

運営委託先の候補として、地域のネットワークを通じて紹介してもらった民間企業2社、社会福祉法人2社の合計4社を検討した。上述のように、運営を安心して任せることができ、元旦以外の年間を通じた開園や店舗内の設置に、理解と協力を得られる事業者を求めていた。その結果、全国で認可施設等を運営している現在の事業者を選定した。同事業者は、札幌市内で複数の保育園を運営しているため、利用者数が定員を下回った場合でも保育士の調整を行ってもらいやすいという点も選定理由の一つだった。

企業内に向けた対応

福利厚生としての側面と企業内での説明

保育施設は福利厚生の一環と位置づけているため、自社の従業員は優先的に施設を利用できるようにしている。

保育施設の開設にあたり、店内の情報発信ルートで、従業員に案内を行った。平成29年度の募集は施設整備の完了前の告知だったため、施設の魅力が充分に伝わらなかった印象はあるが、最終的には5~6人の従業員が利用を検討し、開設時点で4人の利用者を確保することができた。なお、うち3人は年度途中で認可保育施設に転園したため、現時点の従業員枠利用者は1人となっている。

一時預かり専用の保育室

地域とのかかわり

自治体との連携と施設整備に関する法令の遵守

保育施設の整備にあたり、まず札幌市の保育所管課や建築所管課に相談し、情報収集を行った。市から認可外保育施設指導監督基準の内容を教えてもらい、整備時の不明点や疑問点を確認した上で、児童育成協会への問い合わせを行った。

地域枠の取扱いと近隣住民とのかかわり

さっぽろ東急百貨店が立地している札幌駅前付近は、市内でも通勤で往来する人が大変多いものの、保育施設は少なく、保育ニーズが高い地域である。そのため、当初から地域に根ざしている企業として地元地域へ貢献することも保育施設設置の目的の一つとしており、地域枠を設ける前提で準備を進めていた。地域枠利用者の募集時には、店舗のホームページ上で案内を行ったほか、開設2ヶ月前の平成29年2月に利用希望者向けの説明会を開催した。説明会は計12回開催し、それぞれ8~10人程度の参加があった。平成29年度は地域枠の定員9人に対し、60~70人の応募があった。応募者全員と面接を行い、要件等の確認を行った上で、抽選により入所者を決定した。

また、地域に向けたサービスとして一時預かりを行っている。原則として利用希望者と事前の面談を実施し、食物アレルギーなどの留意事項を確認した上で、事前の電話予約により利用申込を受けているが、空き状況によっては当日の受入れも行っている。店舗に買い物に訪れた人のほか、駅前の医療機関を受診する人、遠方から来た人など、様々なケースで活用されている。また平日に利用している保育園が利用できない週末に、出勤しなければならない人などのリピーターもいる。

施設外側の壁面の絵は地元の大学生が製作

開設に向けた具体的な準備

利用者負担の検討

保育施設の利用者を確保するためにも、従業員枠の利用者負担は認可保育施設を利用した場合と同程度の水準にしたいと考えた。要綱で示された目安や、市内の保育施設の相場も調べて考慮したほか、運営委託先への委託費の見込みも考慮し、検討を行った。なお、従業員枠と地域枠で利用者負担の違いはなく、同一料金としている。

設立後の運営

利用定員枠の運用と運営費に関する事項

従業員枠の利用者を安定的に確保するため、他企業との共同利用の契約を1年単位で行っている。平成29年度に契約を行っている企業は近隣の8社で、業種も様々である。

その他

保育施設がある店舗屋上の専用スペースのほかに、店舗内にある一般客向けのキッズスペースを営業時間外に活用し、雨の日の児童の遊び場にしたり、運動会を開催したりしている。

関係機関や近隣保育施設などとの連携

市内ではもともと小児科が少ないこともあり、施設まで出向いて健診などに対応してもらえる小児科や歯科の医療機関を探すことに苦労した。地域のネットワークを駆使して医療機関を探し、最終的には提携先を確保することができた。

受け入れ時間や体制の工夫

一般企業に勤める地域枠の利用者を想定し、保育施設の開所時間を7:30~20:30(延長保育を含む)と広めに設定している。

企業担当者・利用者の声

企業担当者の声

保育施設の対象年齢が0~2歳ということもあり、現時点では従業員の利用者数が限られていますが、開設後まもなく入社した女性従業員から「保育施設を立ち上げるような企業ならと入社を決めた」という声を聞くなど、企業としての姿勢が従業員に伝わりつつあると感じています。また、平成30年度の地域枠の利用者募集では、目立った告知を行わなかったにもかかわらず、口コミなどで施設の評判を聞いた人から多数の申し込みいただくなど、地域の人に喜ばれているという実感を持っています。

従業員枠利用者の声

さっぽろ駅前保育園は、職場の近くにあり、またアクセスがよい場所なので、送迎をする時にとても便利です。また、平日だけでなく、勤務がある土曜・日曜・祝日も開園してくれているので、助かっています。

地域枠利用者の声

保育園の立地がよく送迎に便利な場所にあることに加えて、土曜・日曜・祝日も開園しているので、とても助かっています。保育園の利用料が割安なところも、うれしいポイントです。

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