杉並交通株式会社(運輸)すぎこっこ保育園/東京都杉並区

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立ち上げ時のポイント
  • 従業員のための施設として企業独自の認可外保育施設を平成28年10月に運営を開始していたところ、企業主導型保育事業のことを知り、助成申請した。
  • 交流のある企業に声を掛け、近隣の訪問看護事業所と食品会社と共同利用契約を締結した。
  • 本社から目の届く場所で運営できるよう、本社に併設した社員寮の一戸を改装した。
  • 災害時等の避難路の確保のために、建物の外側からも出入りができるよう外階段を設置した。
設置者の概要
○企業概要 ■事業所 本社・事業所等東京都杉並区
■設立年 昭和36年9月
■資本金 2,500万円
○業種 ハイヤー、タクシー、福祉
○従業員規模

・グループ全体 700人(うち女性) 150人
グループ全体の700人のうち500人がタクシー会社である杉並交通株式会社に所属し、女性ドライバーは数人。200人が福祉部門のスギコー株式会社に所属で、うち約150人が女性。

○企業の特色

・タクシー会社としてスタートし、福祉部門にも事業拡大。平成28年10月に福祉部門をスギコー株式会社として分社化。

・地域に根ざした企業であり、グループ会社も含め中核機能が近隣に集積。従業員も近隣在住者を優先的に採用している。

保育施設の概要
○所在地 東京都杉並区(人口:約56万人)
○地域の特色

・平成28年4月時点で待機児童は560人を超えていたが、区が平成28年度に待機児童解消に向けた緊急対策として認可保育施設19ヶ所の整備等を行い、平成29年4月の待機児童数は29人に減少。

○設置方式 単独設置・共同利用型
(設置企業の子会社であるスギコー株式会社ならびに資本提携のない近隣の企業2社と共同利用)
○設置場所

・本社建物内(2階)

・社員寮のうちの一戸(3DK)を転用し、スペースを確保。

○運営方式 外部委託方式(杉交グループの福祉部門であるスギコー株式会社に運営委託)
○開設日 平成28年10月
○利用定員と利用者数

・定員:10人(うち地域枠5人)年齢別定員なし

・利用者数:10人(うち地域枠5人)※平成30年1月時点
従業員枠(0歳児2人、1歳児2人、2歳児0人、3歳児0人、4歳児0人、5歳児1人)
地域枠(0歳児3人、1歳児1人、2歳児1人、3歳児0人、4歳児0人、5歳児0人)

○開所時間 通常保育 平日8:00~19:00(土・日曜、祝日休園)
一時預かり 平日9:00~18:00
○保育施設の特色

・本社従業員の目が行き届き、応援が必要な際にすぐに人が移動できるよう、本社隣の2階に設置。

・保育室のある真下に、外部からは目隠しした簡単な遊戯スペースを用意した。

○費用の状況

・初期費用約2,600万円(うち助成分約1,500万円)※1
※1 開園準備費、外階段整備費を含む

・年間運営費用約2,400万円(うち助成分1,900万円)※2
※2 毎月の運営費1,500万円、連携推進費400万円を含む

設立までの流れ

時期 内容
開設4年前
平成25年頃
杉並交通株式会社取締役会長より経営幹部の一人(現スギコー株式会社社長)に事業所内保育施設設置について提案、検討についての指示、杉並区からも事業所内保育施設の設置についての打診あり ⇒社内での設置検討
開設3~4年前
平成25~26年
厚生労働省による事業所内保育施設の助成金について情報収集、東京都による説明会にも複数回参加 ⇒参考情報の収集
開設1年半前
平成27年頃
保育施設設置に向けた候補場所の検討、本社最寄り駅周辺等複数物件見学
従業員にも面談の際等に保育施設のニーズを聴取
⇒設置場所の選定、ニーズの把握
開設7ヶ月前
平成28年3月
企業独自の認可外保育施設として自社の福祉部門での運営を決定 ⇒設置方式の決定、運営方式の決定
開設4ヶ月前
平成28年6月
敷地内にある寮の一戸を保育施設に改装(~10月) ⇒施設整備
開設2ヶ月前
平成28年8月
児童育成協会への助成申請
園長をはじめ、職員の募集
⇒申請手続き、人材確保
開設1ヶ月前
平成28年9月
地域向けに見学や説明会開催(約30回)
社内勉強会等で社内向け説明開始
利用者募集開始
杉並区に認可外保育施設開設の案内実施
⇒地域・社内向け説明会の開催、利用者の募集、自治体との調整
平成28年10月
福祉部門をスギコー株式会社として分社化し、認可外保育施設開設 ⇒開設
開設6ヶ月後
平成29年4月
児童育成協会からの助成決定をうけ、認可外保育施設から企業主導型保育施設に切り替えて(面積基準に合わせて定員を削減)運営開始 ⇒運営方式の変更

設置検討の段階

保育施設の設置の経緯

杉並交通株式会社は、タクシー、ハイヤーの運送業と並んで、平成5年より、福祉部門を設け、本社周辺で通所介護事業等を展開している。検討開始当時、福祉部門の従業員には結婚・妊娠・出産を控えた者が多かった。しかし、同社が所在する杉並区は待機児童が非常に多く、復職への不安の声が多く挙がっていた。従業員に安心して働いてもらうため、杉並交通株式会社取締役会長より経営幹部の一人(現スギコー株式会社社長)に事業所内保育施設設置について提案、検討についての指示があり、保育施設設置について検討を始めた。

待機児童の中心である0~2歳児を想定しつつも、ニーズがあれば受け入れられるようにと、就学前までの児童も対応できる保育施設を設置することにした。

検討開始当時は内閣府の企業主導型保育事業の制度はなかったため、厚生労働省による事業所内保育施設について情報収集をし、東京都による説明会にも複数回参加した。しかし、最終的に、企業独自の認可外保育施設とすることを決定した。

その後、同社を担当する社会保険労務士より、企業主導型保育事業で助成金が得られるかもしれないと情報提供をうけた。開設後ではあったが、同社会保険労務士が児童育成協会に助成要件を満たしているかを確認し、企業主導型保育施設として申請し、助成が認められた。

認可外保育施設の開設と同時に、福祉部門をスギコー株式会社として分社化した。スギコー株式会社に運営委託をし、同時に共同利用先にした。そのほか、従業員枠での利用を増やすために、スギコー株式会社幹部が交流のある企業に声を掛けた。企業主導型保育施設としての開設の1ヶ月前には近隣の訪問看護事業所と、また開設半年してから食品会社と共同利用の契約を締結した。

保育施設の外観

設置場所の確保と施設設備に関する法令の遵守

同社(グループ企業も含む)は近隣在住の従業員が多かったため、本社付近での設置を考えていた。最寄り駅に近い物件も5、6ヶ所見学したが、目の届く場所での運営を目指して本社敷地内での開設に決定した。2階で日当たりの良い社員寮の一戸(3DK)を改装した。改装にあたっては、施設設備面での法令の確認も含め、認可外保育施設の設計経験のある建築士に依頼した。

建物内に入り口があり、そこを通って出入りすることも可能であったが、災害時への備えも考慮して500万円かけて外階段を設置した。

住宅の一角を改装しての使用であったため、もともと水回りもあり、そこを改修して調理スペースとした。園庭のための広いスペースは確保できないが、保育室のある真下に、外部からは目隠しした簡単な遊戯スペースを用意した。

保育施設入口

施設内は延べ床面積60.43平方メートル(うち保育室33.00平方メートル)で、保育室のある真下に遊戯スペースを用意

遊戯スペース

施設内は延べ床面積60.43m2(うち保育室33.00m2)で、保育室のある真下に遊戯スペースを用意

運営方法の検討

保育事業を専門で行う事業者への委託も検討したものの、同じマインドを持った人に従業員として一緒に運営に携わってもらいたいという思いが強かったため、運営は福祉部門で行うこととした。認可外保育施設の開設と同時に福祉部門はスギコー株式会社として分社化したため、現在はスギコー株式会社に外部委託する形をとり、保育士等もスギコー株式会社の従業員として雇用することにした。

企業内に向けた対応

企業内での説明

保育ニーズが想定される人には、人事面談や日々の雑談の中で保育施設の開設について直接話をした。また、会議や社内の勉強会など多くの従業員が集まる場で定期的に保育事業を行う旨を説明した。

地域とのかかわり

自治体との連携

設置を検討し始めた時期に、待機児童に悩む杉並区からも、地元の有力企業である同社に、事業所内保育施設の設置について打診があった。

開設へと動き出してからは、保育施設に近い区民センター等にチラシをおいてもらうように依頼した。

地域枠の取扱い

待機児童が多い地域であるため、定員の5割を地域枠に割り当てた。地域枠があることで年度当初4月の利用者は少ないものの、徐々に利用者が増え、施設の安定的な運営につなげることができている。

開設時は1ヶ月前から30回ほど、個別の見学を受け付けたり、少人数での相談会を開催した。平成30年度の利用希望者向けへの説明会も複数回開催したが、平成29年度末での退園予定者は少なく、4月からの新規受け入れは僅かにとどまる予定である。

近隣住民とのかかわり

近隣住民には改修工事前に挨拶に回った。その際、ベランダでは遊ばせないようにしてほしいとの声もあったが、べランダで遊ぶ際には、シャボン玉遊びのようなできるだけ声を出さない工夫をしているため、住民からの苦情はあがっていない。開設後には散歩等で顔をあわす際に挨拶や声掛けを行い、良好な関係を築けるように努力している。

開設に向けた具体的な準備段階

利用者負担の検討と福利厚生としての側面

月額利用料は基本保育料、延長保育料で構成されており、その他の延長保育時の補食を実費徴収している。利用負担額は、児童育成協会の要綱で示されたモデル保育料と同額に設定した。地域の認可保育施設の水準よりは低めの料金設定となっている。育児休業から復帰するのに際し、預け先がないから復帰できないという従業員に向けて保育環境を提供することを第一に考えているため、従業員の保育料は地域枠より月10,000円安く設定している。

保育人材の確保

保育士の確保に際しては、人材紹介会社に声を掛けたほか、自社でも独自に募集をしたところ、近隣在住で認可外保育施設の立ち上げ経験もある人が園長候補として応募してきた。複数人と面談したが、最初に面談した候補者が、これまでの保育士としての経験と明るい性格から、自社の従業員として保育施設の運営を任せるのにふさわしいと考え採用した。その他の人材については、採用した園長の紹介等で確保することができた。

各種研修等への対応

研修等で保育士等が現場を離れなければならず、人手が足りない場合は、保育補助を臨時で依頼したり、本社より看護師資格を有する者が応援で入る等により対応している。

事故等への備え

子どもの安全確保のためには避難経路としても自社の判断で外階段を設置し、現在児童の出入り口はすべてそちらに集約した。また建築士や現園長の考えに基づき、地震などに備え、棚などの什器はすべて作り付けで設置した。

運営費用に関する事項

年度前半の利用者数が少なかったため、助成分の割合が少なくなっているが、定員が埋まると助成金と保育料で運営費用はまかなえる。

設立後の運営

保育計画の作成

小規模保育のため、異年齢保育とならざるを得ず、かつ10月開設という点でバランスの取れた計画を作成することが難しかった。低年齢児中心だが、5歳児も1人おり、外遊びの際に物足りなさを感じることもあるという難しさも感じている。

食事の提供

低年齢児中心で、食べる量も少ないため、食材費がかかる点が悩みである。

なお、帰宅後に子どもの夕食をすぐに準備できるよう、衛生面に配慮しつつ、事前予約制で希望者には保育施設で調理した惣菜を提供するサービスを実施している。

安全管理

日常生活では、うつぶせ寝はさせない配慮等を行っている。

関係機関や近隣保育施設等との連携

スギコー株式会社が運営している同じ地域の介護施設とは交流を行っており、子どもが介護施設を訪問するほか、施設側から高齢者も保育施設側に訪問し、ダンスやクッキングなどを一緒に行っている。年配の方からも、保護者からも喜ばれている。

利用定員枠の運用

当初企業独自の認可外保育施設としてスタートしたため、認可外の基準に応じ、定員を17人と設定していた。しかし、企業主導型保育事業では、子ども一人あたりの面積基準が異なるため、児童育成協会からの助成決定をうけ、認可外保育施設から企業主導型保育施設に切り替える際に、定員を10人に削減した。

受け入れ時間や体制の工夫

タクシー業務も介護業務もともに深夜や早朝、土日にも業務の発生する職種だが、保育士の確保を優先するため、保育施設の夜の延長や土日の運営は行わないことにした。育児中の従業員は深夜や土日の業務に携わらなくても良いような人員配備としている。

保育士の他に、地域住民に補助者として協力を得て、小規模ながらも手厚い体制をとり、どの子どもにもきめ細やかに目がゆき届くようにしている。

企業担当者・利用者の声

企業担当者の声

安心して働きたい従業員と、優れた人材を確保したい会社側の双方にとってよい成果を生んでいます。就職活動中の利用希望者に、従業員枠にのみ空きがあることを説明したところ、当社に入社してくれることになる等人材確保につながった例もあります。従業員のための施設なので、ニーズがあれば子どもだけではなく、孫であっても積極的に受け入れていきたいです。

従業員枠利用者の声

会社敷地内の保育施設は、災害など、何かあってもすぐに駆けつけられることから、働いている最中でも安心感があります。家・会社・保育施設が近い場所にあることで生活の質を向上させることができています。

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