学校法人井之頭学園(教育・学習支援)fujimuraナーサリー/東京都武蔵野市

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立ち上げ時のポイント
  • 創設以来80年以上にわたる学校運営を通じて地域で築いてきた地域住民や地元企業、自治体等とのネットワークや信頼関係をベースとし、理事長自らが主導して保育施設の立ち上げに向け各所との調整を実施した。
  • 運営の柔軟性を重視し、自主運営方式を採用。保育施設の立ち上げや運営にかかるノウハウ面では、保育関連事業の経験が豊富な現園長に準備段階からサポートを依頼した。
  • 従業員枠の利用確保にあたっては地元の中小企業とのネットワークを活かして共同利用の仕組みを活用した。
設置者の概要
○企業概要 ■事業所 東京都武蔵野市
■設立年 昭和7年
○業種 教育・学習支援 (私立中学・高等学校、水泳教室等の運営)
○従業員規模

・単独 76人(うち女性) 40人
職員の4割弱が20~30歳代前半で構成されている。

○企業の特色

・昭和7年の設立以来、地域で80年以上にわたり私立藤村女子中学・高等学校を運営。中学・高等学校のほか、一般向けの水泳教室や新体操教室も運営しており、地域住民との関係性が強い。

・スポーツ強豪校である中学・高等学校では卒業生等のアスリートによる在校生のクラブ活動指導も実施。

保育施設の概要
○所在地 東京都武蔵野市(人口:約14万人)
○地域の特色

JRと京王井の頭線の吉祥寺駅から徒歩7分ほどの住宅地と商業施設が混在しているエリアに位置。

・武蔵野市の待機児童数は平成29年4月時点で120人。都内では62自治体のうち24位。

○設置方式 単独設置・共同利用型
○設置場所

・学校敷地内

・在校生のクラブ活動や水泳教室の合宿所として使用していたスペースを一部改修して転用。

○運営方式 自主運営方式
○開設日 平成29年4月
○利用定員と利用者数

・定員:8人(うち地域枠4人)
※定員に各年齢別の枠は設けず、空きがあれば受け入れる体制。
※平成30年度より定員14人、受入年齢を就学前までに拡大予定。
従業員枠(0~2歳児4人)
地域枠(0~2歳児4人)

・利用者数:8人(うち地域枠4人)※平成30年1月時点
従業員枠(0歳児4人、1歳児0人、2歳児0人)
地域枠(0歳児0人、1歳児3人、2歳児1人)

○開所時間 通常保育 平日・土曜・日曜・祝日7:30~20:30
一時預かり 平日・土曜・日曜・祝日9:00~20:00
病後児保育 平日8:00~18:00
○保育施設の特色

・専用の園庭はないが、学校の敷地内にあるテニスコート、体育館、柔道場などを学校の空き時間に活用。

○費用の状況

・初期費用約4,775万円(うち助成分約3,178万円)※1
※1 建物支出、製氷機や食洗機などの備品支出、人件費等を含む

・年間運営費用約5,600万円(うち助成分約5,114万円)※2
※2 人件費、経費支出、修繕費、法定福利費等を含む

設立までの流れ

時期 内容
開設8年前頃
平成21年頃より
理事会の報告会において、理事長から保育事業に関する議題を提案
実現には至らないものの、以降課題のひとつとして意識
⇒社内での設置検討
開設1年前
平成28年3~4月
職員が直面した待機児童問題を受けて、保育施設の立ち上げ実行を決意
理事への根回しを経て理事会、評議委員会にて校内での保育施設事業案が承認され、設置に向けた準備を開始
⇒ニーズの把握、社内での設置検討、設置場所の選定
開設10カ月前
平成28年6月頃
理事長から現園長に協力を打診、以降は理事長と園長が中心となって開設準備を推進
並行して自治体の認可施設としての申請も準備(~8月)管理職会議、職員会議で意見を聴取後、再度、最終案を理事会と評議員会で諮る
申請書準備の為、建築業者にも相談
⇒社内での設置検討、自治体との調整、設置方式の決定
開設9カ月前
平成28年7月頃
運営計画案を検討の末、外部委託は赤字になりかねないと考え、自主運営を選択 ⇒運営方式の決定
開設8カ月前
平成28年8月下旬
児童育成協会へ助成申請(助成決定は12月) ⇒申請手続き
開設6カ月前
平成28年10月頃
施工会社との打ち合わせ(~3月)
開設4か月前
平成28年12月
助成が正式に決定
開設3カ月前
平成29年1月
着工、及び施設整備開始(~3月) ⇒施設整備
開設1~2カ月前
平成29年2~3月
職員の募集、職員向けの説明会の開催、利用者の募集等、開設に向けた準備を開始 ⇒人材確保、社内向け説明会開催、利用者の募集、開設準備(給食, 安全管理等)
平成29年4月 保育施設開設 ⇒開設

設置検討の段階

保育施設の設置の経緯とニーズ把握の実施

井之頭学園では職員の半数以上を女性が占めているが、以前より女性の職員は結婚を理由に職場を離れることが多く、経営層では7~8年前より、職員が子育てをしながら働く環境が整っていないことが原因なのではないか、女子校を運営する法人として女性が仕事と家庭を両立するためにできることがないかという問題意識を持っていた。また、在校生の中には進路希望として将来保育士を目指したいという生徒も一定数いたため、学校内に保育施設があれば良い教育の機会になるのではないかという考えもあった。しかし、当時一度理事会で提案を行ったものの具体化には至っていなかった。

その後、平成28年になって、約17年ぶりに現役の職員が出産し、育児休業を取得後に復帰を目指すことになった。しかし、その職員が待機児童問題に直面して大変苦労し、最終的に3月半ばに預け先を確保することができたものの、学校側では既に産休代替の臨時職員を確保してしまっており、直前に断らざるを得なくなるなどの混乱があった。

この経験から、学校が保育施設を持っていれば職員が不安な思いをせずに安心して働くことができ、結婚や出産を機に退職する女性職員を減らすことができるのではないかと考えた。また、今後、子育てに積極的に関わる男性職員が出てくる可能性も視野に、職員が安心して働き続けることができる環境づくりと待機児童問題を抱える地域への貢献を目指し、校内での保育施設の設置検討が本格的に始まった。

設置検討にあたり、まずは認可・認証保育施設等の保育施設の種類や保育認定制度、補助の仕組みや補助額等について情報収集を行った。当初は自治体単独事業の補助事業への申請も視野に入れていたため、自治体の保育所管課を訪問したり問い合わせを行うなど何度もやりとりをして比較検討を行った。最終的には、学校の職員を優先的に受け入れできること、自治体からも企業主導型保育事業の利用を勧められたことから同事業の助成を申請した。

法人の理事会、評議委員会の承認を経て保育施設の設置に向けて動き出した段階で、学校の卒業生の保護者であり、以前から理事長が「保育施設を立ち上げたい」という想いを相談していた現園長にサポートを依頼し、以降は理事長と現園長が中心となって開設準備を進めた。具体的には、理事長が主導して自治体や地域、児童育成協会等の各所との調整を行い、現園長が各種法令等への対応や保育のための環境づくりなどを行った。現園長は複数の保育施設で保育士や園長として長くキャリアを積み、新規施設の立ち上げも経験していたことから、保育のノウハウ面で強力なバックアップとなった。保育施設の設置や運営の方針を検討する際には、インターネットや自治体が配布している冊子より近隣の保育施設の実態や地域のニーズを調べ、設置することの賛否、開所時間、地域枠の有無、運営方式、利用者負担などについて情報収集を行った。加えて、理事長が約10年間の運営を通じて見てきた校内の現状も検討材料として活かした。

学校正門に各サービスの案内パンフレットを設置

建物の入口

設置場所の確保と安全管理

保育施設の設置場所については、近隣の賃貸マンションを探す手間や家賃の高さを考慮し、在校生のクラブ活動や水泳教室の合宿所として使用していたものの稼働率が低かったクラブハウスのスペースを転用し、校内に設置することを決めた。同建物は拡張ができないという制約があったため、スペースに合わせて小規模保育施設とすることとした。施設整備にあたっては、現園長をはじめとする保育経験者の視点を参考に、職員の体への負担軽減と園児が年間を通して靴下を履かず安全に歩き回ることができる環境づくりのために床暖房を入れたり、コンセントの位置や手はさみ防止等の配慮、乾床式のトイレや給食調理室、壁紙シートのデザインに至るまで、保育施設としての快適性、安全性を考えて工夫を行った。

また、専用の遊戯場ではないものの、学校の敷地内にあるテニスコートや体育館、柔道場などを空き時間に活用することで、園児が屋外で十分に遊ぶことができるようにしている。

元合宿所を改修した二階建ての建物

校内のテニスコートを遊び場として活用

床暖房が設置された保育室内

日当たりのよい2階の保育室

運営方法の検討

当初は外部業者への委託も検討したが、経営が赤字になりかねないことや児童の受け入れの自由度が下がることを考え、自主運営方式を採用した。

法人が直接、柔軟な運営を行うことで、日曜日のクラブ活動指導や行事等の際にも学校の職員が利用しやすく、また利用児童の体調不良時にもできる限りの対応を行いやすいと考えた。

自主運営を行う上で、認可保育施設で約10年間園長を経験した現園長の存在はとても大きく、保育の視点から見た安心安全のための助言など随所に活かしながら、運営体制を築いてきた。開設準備においても、理事長と園長が中心となって設備整備時の配慮や職員の採用面接などを実施した。

地域枠の設定にあたっては、出産予定の職員の状況等から開設後3~4人程度の利用は見込んでいたため、まず従業員枠を4人と設定し、定員全体の50%までというルールに則り、地域枠を4人とした。

企業内に向けた対応

福利厚生としての側面

仕事と子育てを両立する職員のための環境づくりが保育施設開設の一番の目的であるため、職員や学校関係者に対して利用時間を地域枠利用者より広げたり、一時預かりや病後児保育の利用料を下げるなどの対応を行っている。

学校法人という性質上、日曜日でもクラブ活動指導や行事等のために保育が必要な場合があるため、平日だけでなく、土曜・日曜・祝日も利用できるように対応している。

企業内での説明

まず、理事長から理事に根回しを行った上で理事会と評議委員会の議題に挙げ、承認を得た。その後、管理職会議、職員会議で説明を行い、開所時間や運営方針への意見を聴取した後、再度、最終案を理事会、評議員会で諮った。

地域とのかかわり

自治体との連携と地域枠の取扱い

保育施設の開設にあたり、理事長自らが自治体の保育所管課を訪問して相談を行ったり、関連事業の内容や法規制等について問い合わせを行うなど、密に連絡をとって情報交換を行った。

相談時には「武蔵野市の子どもたちのために」という思いを伝えて法人と地域の双方にメリットがあると共感を得られたこと、地域の学校法人としてこれまでも自治体(教育委員会等)との関係を築き信頼を得てきていたこと、法人のトップが自ら動いて本気で取り組む姿勢を伝えたことなどから、連携をしやすい関係性を築くことができた。

市長にも保育施設の見学をオファーし、実際に現地を視察してもらった。

また、自治体が作成している保育施設案内の冊子では平成29年当初から施設の紹介をしてもらっており、そのための情報収集として開設前の段階で自治体が保育施設の視察に訪れた。

自治体の保育コンシェルジュからの紹介がきっかけで、地域枠で入所に至った児童もいる。地域枠の入所選考の際には、自治体の基準を参考にしつつ、保育施設で決定を行っている。

近隣住民とのかかわり

法人では中学・高等学校に加えて登録会員数2,000人規模の水泳教室を運営しており、以前より幼児を含む児童の出入りがある場所だったため、保育施設設置にあたっての町内会や地域住民の理解は得やすかった。

それでも特に近隣の住民(個人宅や店等)には、理事長が園の規模や開園予定時期などの挨拶に回ったり、工事の着工前に事業者が挨拶に回ったりした。

地域の企業等との関係性については、法人の理事長が過去に商店街役員を務めるなどの地域活動を通じて幅広いネットワークを築いていたため、そのようなつながりを通じて、地域の人が集まる会議の場で保育施設の立ち上げのアナウンスを行ったり、地元の商店等から相談を受けて共同利用を開始するなどの取組を行った。

また、学校関係者と地域の双方に向けたサービスとして、一時預かりと病後児保育を実施している。藤村女子中学・高等学校はスポーツの強豪校としてクラブ活動に力を入れているため、放課後や週末にクラブ活動を行う在校生が多く、その指導者として卒業生が在校生の部活指導をすることも多い。

その際に卒業生が自身の子どもを預けるケースを中心に一時預かりがよく活用されており、利用実績は月に30~40件ほどである。登録者30人(うち5人が卒業生)の中では卒業生の利用頻度が高いが、その他に兄妹の習い事のために一時預かりを活用するなどの地域の利用者もいる。

一方、病後児保育については、開設から1月時点までの利用実績が10人程度(うちほとんどが通常保育を利用している児童)と予想外に低調だった。そのため、平成30年度からは病後児保育サービスを廃止し、その分通常保育の定員を増やすことを予定している。

開設に向けた具体的な準備段階

施設整備に関する法令の遵守

設置場所である建物が昭和58年に「簡易耐火建築物」と分類されていたため、「イ準耐火建築物」として証明を行うための対応に苦慮した。児童育成協会へ相談し、証明を行うための助言を受けて担当の建築士に行政や検査機関に出向いてもらい、修繕前の確認事項を再確認した。

保育士等の必要人材の確保

学校法人として卒業生やその家族・知人等との縁を大切にしてきた強みを活かし、フルタイムで勤務する職員の3/4を学校の卒業生の家族や関係者、知人経由の紹介等で確保することができた。

30年度には新たに卒業生2人が新卒および中途採用の常勤職員として加わる予定である。ただ、栄養士、看護師の確保についてはなかなか人材が見つからず、開設までの期間が短かったこともあり、苦労した。

人材紹介サービスや無料求人サイトを利用したり、学園近くへの人材募集の掲示、卒業生のネットワークへの呼びかけ、学園職員の協力などを行い、人材を確保することができた。

初期費用に関する事項と運営費に関する事項

運営費の見込みを立てる上で必要な情報を入手できるまでに時間がかかったり、問い合わせ対応がスムーズに進まないことがあったりするため、外部との調整で対応に苦労することがある。

少しでも早く情報を入手できるように、日頃からこまめに児童育成協会のポータルサイトを確認したり、変更等が生じた場合には誠実に対応して解決していくことを心がけている。

設立後の運営

衛生管理・健康管理・安全管理

平成29年度中にノロウィルス対策に関する規制が変わった際の経験を踏まえ、児童の命を預かる保育の現場として日頃の情報収集の重要性を改めて認識し、保健所や市役所等の関係機関と密に連絡を取ったり、報告を行うことなどを心がけている。

人材育成、専門性の向上

平成30年度より改訂される保育所保育指針について学ぶための機会や、人材育成計画を立てるにあたり、保育の専門誌の情報を園内に共有するなどの工夫を行った。現在は、東京しごと財団のプロジェクトや関係団体の研修プロジェクトに参加するなどにより、情報の収集に努めている。

利用定員枠の運用と運営費に関する事項

小規模な法人では従業員枠の利用者を法人内のみで安定的に確保することは難しいが、そのような場合には地元の企業等とのネットワークを活かし共同利用の仕組みを活用することで対応可能と考えている。また、地域枠のニーズは高いため、定員枠の拡充とあわせて地域枠も拡大したいと考えている。

関係機関や近隣保育施設等との連携

運営開始後も自治体の保育所管課と日頃から連絡を取り合っており、現在、自治体より近隣の保育施設との顔合わせや交流が持てるような機会を作ってほしいとの要望を受け、その準備を始めている。

受け入れ時間や体制の工夫

利用者が安心して保育を利用できるように、職員の労働時間と休暇の取り方を工夫して勤務体制を組み、週7日保育を安定的に運営できるようにしている。

また、開設前よりいずれは現行の2歳児までではなく就学前までの児童を受け入れたいという考えがあったこと、また、開設後に利用者から対象年齢を就学前まで拡充してほしいという声が多くあったことから、平成30年度より対象年齢を就学前まで、定員数を14人までに拡充することを予定している。

企業担当者・利用者の声

企業担当者の声

本校の保育施設は、職員をはじめ、クラブ活動の指導にあたってくれている卒業生や地域の皆さんなど、本校に関わる様々な人の幸せに貢献したいという思いで立ち上げました。教育機関としての面でも、在校生が放課後に園児の遊び相手になってくれたり、中学三年生の職場体験や中学二年生・高校一年生の職場インタビューの機会に活用するなど、生徒達にとっても大事なふれあいの場になっています。

従業員枠利用者の声

最初は子どもを預けることに多少の不安もありましたが、子育て面での安心できるフォローや仕事面でのフォローも存分にして頂き、先生方には感謝しかありません。今では安心してお任せしています。おかげさまで子どもも保育園が楽しい場所になっているようです。急な仕事の時も土日も柔軟に対応して下さり、とても助かっています。普段の対応などから、子どもに寄り添ってくれているなあと感じています。

地域枠利用者の声

仕事の都合で申告していた時間を過ぎる時なども、家庭の事情に合わせて臨機応変に対応して下さるのでとても安心です。いつも親身になって対応していただき感謝しています。

小規模な園ですが、保育者は沢山いらっしゃるので、子どもにしっかりと寄り添って伸び伸びと過ごさせてくれているように感じます。園のブログで写真を見たりすると、子どもがとても嬉しそうに指をさして、うーうーと伝える姿をみると、毎日を楽しく過ごせている様子が伝わってきます。

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