社会福祉法人慶成会(福祉)てんとうむし東山保育園/静岡県浜松市

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立ち上げ時のポイント
  • 同一法人が既に運営していた地域型保育事業(事業所内保育事業)であるキッズホームてんとうむしの保育士の1人をてんとうむし東山保育園の園長にし、開設準備を進めた。
  • 共同利用企業の募集のために、開設前に説明会を実施、契約企業でも従業員に対しても保育施設設置について告知し、利用希望の有無について把握するよう依頼した。
  • キッズホームの利用者と格差が生じないように保育料は認可保育施設と同水準にし、年2回収入に応じた利用料の算定を行っている。
  • 介護施設との管理栄養士とは別に、保育施設専任の栄養士を雇用してはいるが、介護施設の施設設備を活用して調理している。
  • 感染症対策には細心の注意を払い、汚物処理の手順は介護事業でのノウハウを活かしている。
設置者の概要
○企業概要 ■事務所 浜松市他
■設立年 平成6年11月
○業種 福祉(社会福祉事業、公益事業等)
○従業員規模

・グループ全体 320人(うち女性) 240人

○企業の特色 「福祉の村づくり」を目指し、法人本部敷地内に特別養護老人ホーム、デイサービスを含め計17の介護・保育施設が集積、その他、近隣地域でも複数のデイサービス等を運営。
保育施設の概要
○所在地 静岡県浜松市(人口:約81万人)
○地域の特色

・市の待機児童数は平成29年4月1日時点で168人。

・同施設の所在地は浜松市郊外で、新興住宅地があり、近くに工場や企業も密集。

○設置方式 単独設置・共同利用型(資本関係のない6社と共同利用契約)
○設置場所 法人本部が位置する敷地内の介護施設の1階ピロティ部分(駐車場として利用していたスペース)を改築。
○運営方式 自主運営方式
○開設日 平成29年4月
○利用定員と利用者数

・定員:60人(うち地域枠30人)
従業員枠(0歳児3人、1歳児3人、2歳児3人、3歳児7人、4歳児7人・5歳児7人)
地域枠(0歳児3人、1歳児3人、2歳児3人、3歳児7人、4歳児7人・5歳児7人)

・利用者数:27人 ※平成30年1月時点
従業員枠(0歳児2人、1歳児4人、2歳児5人、3歳児2人、4歳児1人・5歳児0人)
地域枠(0歳児2人、1歳児4人、2歳児3人、3歳児3人、4歳児1人・5歳児0人)

○開所時間 通常保育 平日・土曜・祝日7:00~18:00
延長保育18:00~19:00(一時預かり・病児保育は平成30年度より実施予定)
○保育施設の特色

・行事の際には3つの保育室を1つのホールとして利用できるよう保育室の壁に移動式の間仕切りを採用。

・4・5歳児のために腕の筋力をつける遊具が必要と考え、園庭設置を予定。

○費用の状況

・初期費用約1億3,300万円(うち助成分約7,500万円)

・年間運営費用約3,600万円(うち助成分2,400万円)
※ 年間運営費用のうち、助成分を除いた内訳は保育料約360万円、法人負担約840万円。

設立までの流れ

時期 内容
開設1年3ヶ月前
平成28年1月頃
法人理事長が企業主導型保育事業の情報を入手し、同法人が既に運営していた地域型保育事業(事業所内保育事業)のキッズホームてんとうむしに加え、企業主導型保育事業としての事業運営を決定 ⇒社内での設置検討
開設1年3ヶ月前
平成28年1月頃
設置場所や運営方式の検討、既存保育施設の園長の意見を取り入れながら施設整備を開始 ⇒設置場所の選定、運営方式の決定、施設整備
開設1年前
平成28年4月頃
浜松市に企業主導型保育事業としての保育施設設置の相談開始
東京での児童育成協会の説明会への参加
⇒自治体との調整
開設7ヶ月前
平成28年9月頃
児童育成協会への助成申請手続きを開始(実際の申請は12月) ⇒申請手続き
開設6ヶ月前
平成28年10月頃
園長以外の保育人材確保開始(~12月)
共同利用企業の調整のために、取引先企業への声掛けや説明会などを実施(~翌1月)
⇒人材確保、共同利用企業の調整
開設5ヶ月前
平成28年11月頃
地域向け説明会開催(~翌2月) ⇒地域向け説明会開催
開設4ヶ月前
平成28年12月頃
職員に向け法人内の電子掲示板にて保育施設開設の案内及び利用者募集(~翌1月)
給食業者との調整(~翌1月)
⇒利用者の募集、外部委託業者の選定
開設3ヶ月前
平成29年1月頃
給食内容、安全管理等具体的な開設準備
職員、共同利用企業、地域住民に向けての内覧会実施
近隣住民に利用者募集のチラシの配布(~4月)
⇒開設準備、利用者の募集
平成29年4月 保育施設開設 ⇒開設

設置検討の段階

保育施設の設置の経緯

社会福祉法人慶成会は、てんとうむし東山保育園(以下「東山保育園」という)を含め、敷地内に17の介護・福祉施設を運営している。全職員の約4分の3が女性であり、多くのスタッフが結婚・出産を機に退職してしまうことに悩んでいた。長く勤めてもらえる介護人材確保のために保育施設の設置をすることは、理事長の長年の想いであった。

この想いを実現するために、平成28年4月に地域型保育事業(事業所内保育事業)としてキッズホームてんとうむし(以下「キッズホーム」という)を開設した。しかし、制度上対象は3歳未満児であった。そのため、同法人では3歳以上の子どもに対応できるようキッズホームを拡張することも含め、保育事業の拡充について検討をはじめた。

そうした中、理事長が企業主導型保育事業の情報を入手した。理事長が自ら東京で開催された児童育成協会の説明会に出席し、制度について情報収集した。その結果、既に認可を受けて運営しているキッズホームの拡張ではなく、企業主導型保育事業を利用して新たな保育施設を設置することを決定した。

共同利用として地域の企業や取引先企業などに声掛け、6社と契約を結んだ。

開設時期は、既存の保育施設からの転入や職員の入職時期を考え、年度始まりの4月とした。

ニーズ把握の実施

キッズホームで、職員のニーズ把握のためにアンケート調査を実施したところ、3歳以上の子どもの預け先について不安の声が挙がっていた。東山保育園の設置に際しても新たに全職員に対してアンケートとヒアリングを実施した。その結果、新たな保育施設設置への反対意見はなく、3歳以上の子どもの受け入れ先を求める切実な要望が明らかになった。

共同利用での運営を決定した後は、契約企業の従業員に対しても社内で貼り紙をしてもらう等により保育施設設置について告知するとともに、利用希望の有無について把握するよう依頼した。

設置場所の確保

一時は園舎を新設することも考えたが、法人本部が位置する敷地内の介護施設1階のピロティ部分(駐車場として利用していた場所)を改築することとした。一帯が法人の施設であり、周辺を歩いているのはほぼ法人関係者であることから安全性も高く、保護者の利便性も高い場所となっている。共同利用企業の従業員も含め、利用者はほとんど車通勤であるが、敷地が広いため駐車スペースにはゆとりがあり、施設玄関前まで車で乗り入れることもできる。

施設設計の際には保育室の壁に移動式の間仕切りを採用し、行事の際には3つの保育室を1つのホールとして利用できるよう、敷地の有効利用を考えた。3歳未満児の保育室には裸足で歩いても寒くないようコルクの床暖房を設置した。

用地の確保が難しかったことや、園庭という限られた空間ではなく、自然の中でのびのびと遊んでほしいという園の方針から、園庭は設けていなかった。しかし、今後4・5歳児が増えてくると腕の筋力をつけるためにも遊具が必要と考え、平成30年4月に法人敷地に隣接する土地を地権者より借り受け、園庭設置を予定している。

普段は独立した保育室だが、移動式の間仕切りをすべて開けることでホールをして利用可能

普段は独立した保育室

普段は独立した保育室(左)だが、移動式の間仕切りをすべて開けることでホールとして利用可能

運営方法の検討

キッズホームを運営するにあたっては、法人理事長が、かつて自身の孫が通っていた認可保育施設の元園長に声を掛け、園長として迎え入れた。キッズホームでは、この園長のほか、複数の保育士が従事していたので、そのうちの1人を東山保育園の園長とし、開設準備を進めた。園長をはじめとした人材を確保できたため自主運営とした。

企業内に向けた対応

企業内での説明

東山保育園は法人理事長が率先して情報収集を行い、開設に向けて動いたこともあり、理事会でも問題なく承認された。それを踏まえ、同法人の職員に向けては法人内の電子掲示板にて開設の案内や利用者の募集を行った。

また、共同利用の契約を予定している企業に対しては、合同で説明会を開催し、利用料金やその他具体的な利用方法に関する説明を行った。

このほか、開設前には、利用申し込み者だけでなく、利用を検討中の保護者や近隣住民も参加可能な内覧会を開催した。

地域とのかかわり

自治体との連携

平成28年4月に地域型保育事業としてキッズホームを開設していたため、浜松市の保育担当部署とは以前から連絡を取りあっていた。東山保育園開設にあたっては、市の担当者に企業主導型保育事業の助成金を利用したい旨を伝え、施設設備面(建築基準法、消防法など)や職員配置基準等について事前に市に確認し、児童育成協会に申請を行った。

なお、浜松市は待機児童が多いこともあり、市の担当者から保育施設をつくるのであれば、ある程度規模の大きい施設にしてほしいとの希望が寄せられた。また、法人としても運動会のイベントを実施したり、年齢別保育を行うにはある程度の人数がいた方が良いと考え、定員を60人と設定した。

地域枠の取扱い

0~2歳児を対象としたキッズホームで地域枠を設けており、東山保育園でも定員の50%を地域枠とした。

地域枠が埋まると今後利用希望があっても受け入れられないこともある。そのため、地域枠での利用希望者が求職者である場合には、同法人への就職を促し、従業員枠で受け入れた人もいる。

近隣住民とのかかわり

開設決定後、近隣住民に園児募集のチラシを配ったり、挨拶まわりをした。

地域に開かれた施設であることを目指しており、夏休み期間中には近隣の小中高校生を保育体験で受け入れている。

東山保育園で保護者向けの発表会の後に、法人内の介護施設の入居者を招いてのミニ発表会を行うなど、法人内の利用者との交流は頻繁に行っている。

開設に向けた具体的な準備段階

施設整備に関する法令の遵守・施設運営に関する法令の遵守・自治体等への手続き

浜松市の担当者等に建築基準法や消防法、人員配置基準等を確認しながらではあったものの、開設に向けた準備は、法人理事長、園長、法人事務部門を中心に進めた。多くの福祉施設を運営している同法人には、各種法令を遵守しての施設運営、並びに申請等のノウハウがあった。また、キッズホームの園長が認可保育施設に長年勤務し、保育施設運営の知識・経験があったため、外部の専門家の手を借りることなく、法人独自で設置に向けた準備や申請等を行うことができた。

利用者負担の検討

同法人が運営するキッズホームは市の認可を受けているため、浜松市の認可保育施設の保育料が適用される。キッズホームの利用者が3歳児となり東山保育園に移行する際に格差が生じないように保育料は認可保育施設と同水準にした。認可保育施設は年2回収入に応じた利用料の算定を行っているため、保育料の見直しの回数についても、認可保育施設と同様に年2回収入に応じて見直すこととした。

福利厚生の観点から保育料は安く設定したかったが、実際の運営費と児童育成協会から得られる助成金について試算した結果、市の認可保育施設と同等の金額設定とした。

保育士等の必要人材の確保

認可保育施設であっても確保が難しい保育士は、知人経由やハローワークを通じて募集した。開所している間は、規定の保育士数が必要であるため、パートタイムでの保育士の活用もしているが、その分数多くの保育士が必要となり、シフト調整が難しいという問題も抱えている。

事故等への備えと安全管理

子どもの飛び出し防止や不審者侵入防止のため、ベランダのフェンスを二重にしている。そのほか、防犯カメラを5台設置する、家具や設備のコーナーにはクッション材を設置するなど、主に園長の意見を取り入れ、設備面で事故を防ぐためにできることを行っている。

乳幼児突然死症候群(SIDS)防止のために昼寝には布団ではなくメッシュ地のベッドにバスタオルをかけたものを使用する、頑丈で通常保育園などで使われているビニール製などよりも燃えにくい籐製の乳母車を使用するなど、道具面でも事故防止・万一の際の安全を考えたものを厳選して使用している。

また、不審者侵入など不測の事態が起こった際には、ベランダから直接隣接する介護施設へ逃げられる施設設計になっており、保育士だけでなく介護職員の助けを借りることもできる。

籐製の乳母車。介護施設の入居者からは昔を思い出す、という声も多い

二重フェンスのベランダ。手前側には介護施設へ抜けるドアがある

初期費用に関する事項

企業主導型保育事業の助成金があったことは大きいが、諸経費に関しては予想以上にかかり、約6000万円が法人の持ち出しとなった。

運営費に関する事項

キッズホームの利用者が3歳児となり転入を希望した際必ず受け入れられるよう、開設後すぐには定員を埋めなかったため、法人の持ち出しが発生している。現状、月の運営費約300万円のうち、助成金分が200万円、保育料が30万円、法人負担が70万円となっている。定員が埋まれば助成金と保育料で賄えるようになるので、数年かけてそのような状態にしていきたい。

設立後の運営

食事の提供

給食は、同法人の介護施設が委託している業者に委託した。介護施設の食事と保育施設の食事・おやつでは提供時間帯が異なるため、運搬や配膳、後片付け、食器の洗浄などについて、委託先の給食業者と協議を重ねた。また、アレルギー対応食の用意のため、介護施設の管理栄養士とは別に、子どもの給食専任の栄養士を雇用した。介護施設を運営している同法人では既存の施設設備を活用して調理ができている。

衛生管理と健康管理

高齢者の入所施設と隣接しているため、感染症対策には細心の注意を払い、保育施設内で感染症の発生が判明すると、子どもも保育士も介護施設関係者と接する機会をできるだけ減らすよう行動エリアを制限している。また、汚物処理の手順は介護事業でのノウハウを生かし、子どもの嘔吐処理等を適切に行い、感染症の拡大防止に努めている。

その他、夏場の熱中症対策として、ベランダの窓にはUVカットシートを貼っている。

衛生管理、健康管理の意識とノウハウは、保育士として入職した職員にも法人共通の初期研修の受講により身につけてもらうようにしている。

受け入れ時間や体制の工夫

入居を伴う介護施設は、24時間365日交代で職員が稼働しているため、保育施設は土曜・祝日も開所し、朝は7時からの受け入れ、延長保育も実施するなど保護者が就労しやすいようにしている。職員がより働きやすくするため、一時預かりについても実施を予定している。祝日も開所したことにより、これまでシフトから外れていた職員が祝日も勤務してくれるようになった。ただし、職員の子どもを受け入れる保育士も大切な職員であるため、過度な負担とならないよう、年間110日の公休を取れるようなシフト体制にしている。

企業担当者・利用者の声

企業担当者の声

企業主導型保育事業は、企業が自らの従業員の個々の事情や勤務状況を考慮して柔軟に対応できることが最大のメリットであり、大変良い制度だと思います。

介護施設の入居者や保育施設の子どもたちの様子を見ると、介護と保育の両事業の相乗効果を実感しています。高齢者は昔を思い出して笑顔が増え、子どもが身近にいることで元気が出ているように感じます。また、子どもは高齢者への接し方、優しさや思いやりが育まれる効果も見られます。ここで育った子どもが、いつか「介護の仕事をしたい」と感じ、当法人に働き手として戻ってきてくれることを夢見ています。

従業員枠利用者の声

子どもたちへの目のかけ方がとても丁寧で、感謝しています。預け先が職場のすぐ近くにあるというのは、何かあった時にすぐに迎えに来られる、という安心感がとても大きいです。

仕事中に子どもたちのお散歩風景を見ることもあり、そんな時はとてもうれしくて思わず手を振っています。

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