株式会社伊予銀行(金融)いよぎんきっずらんど/愛媛県松山市

パートII 株式会社伊予銀行(金融) (PDF形式:843KB)別ウインドウで開きます

立ち上げ時のポイント
  • 開設準備の過程から自治体の保育所管課等の関係機関との連携を密にし、申請手続きや運営にあたっての不明点等を解消した。
  • 銀行として店舗や社宅などの自前の建物の建築実績も多く、安全面や衛生面などを考慮する際にも、社内の建築士等のノウハウを活用した。
  • 汚れた衣類の洗濯や紙おむつ提供サービスなど、利用者目線で利便性の高いサービスを導入し、「選ばれる施設」とするための工夫を行っている。
設置者の概要
○企業概要 ■事業所 本店(愛媛県松山市)、拠点数154
■設立年 昭和16年9月
■資本金 209億円
○業種 金融(地方銀行)
○従業員規模

・グループ全体 3,082人(うち女性) 1,327人

・単独     2,756人(うち女性) 1,284人
臨時従業員を含めたグループ8社の従業員は約4,000人。
全体の5割程度が松山市内の本店・支店等に勤務。

○企業の特色

・明治11年の創業以来、地元の愛媛県を中心に第一地方銀行として法人および個人向け金融サービスを展開。

・瀬戸内圏域を中心に、13都府県にまたがる広域ネットワークを有し、海外にも支店等の拠点を置く。

保育施設の概要
○所在地 愛媛県松山市(人口:約52万人)
○地域の特色

・商業および地方文化の拠点として発展し、四国で最大規模の人口を擁する。

・松山市の平成29年度4月の待機児童数は88人。市内でも地域によって局所的に待機児童が集中。

○設置方式 単独設置・共同利用型(企業グループ内)
○設置場所

・事業所内設置

・業務用車両の駐車場として使用していた土地の一部を転用。

○運営方式 外部委託方式(株式会社マミーズファミリー)
○開設日 平成29年4月
○利用定員と利用者数

・定員:30人
従業員枠および地域枠(0歳児~小学校就学前まで30人)

・利用者数:10人(うち地域枠0人) ※平成30年1月時点
従業員枠(0歳児5人、1~2歳児5人) 地域枠(0歳児0人、1~2歳児0人)

○開所時間 通常保育 平日・土曜7:30~18:30(延長保育7:00~7:30、18:30~20:00)
○保育施設の特色

・将来的な定員増加にも対応可能な鉄筋づくり3階建ての施設を新築。

・空いているスペースは説明会や打合せ時などに活用。

設立までの流れ

時期 内容
開設4年前
平成25年頃
従業員が育児をしながら働きやすい環境整備の一環として、経営レベルで保育施設の設置案が浮上 ⇒社内での設置検討
開設3~4前
平成25~26年頃
人事部女性活躍推進室の担当者が職場を回り、保育施設設置に対する従業員の意見を収集
自治体への協議を経て、認可施設を想定し正式に保育施設設置を決定
⇒ニーズの把握、自治体との調整、社内での設置検討
開設2年前
平成27年
他企業が運営する保育施設の視察、外部委託業者の選定、設置場所の選定等、保育施設開設に向けた準備作業を開始 ⇒参考情報の収集、外部委託業者の選定、設置場所の決定
開設11ヶ月前
平成28年5月頃
内閣府の企業主導型保育事業の開始を受け、同事業による保育施設設置に方針を転換
開設10ヶ月前
平成28年6月頃
認可施設開設に向けて進めていた準備を見直し、企業主導型保育施設としての申請手続きを実施 ⇒申請手続き
開設8ヶ月前
平成28年8月頃
施設整備を開始(~平成29年2月) ⇒施設整備
開設4ヶ月前
平成28年12月頃
保育施設の利用希望者等を対象に説明会を開催 ⇒社内向け説明会開催、利用者の募集
平成29年4月 保育施設開設 ⇒開設

設置の検討

保育施設の設置の経緯とニーズ把握の実施

愛媛県では、20歳代前半の年齢別女性労働力率が上昇する一方、30歳代前半の労働力率は横ばいにとどまる(2015年国勢調査より)など、四国島内の他地域と比較して結婚や出産を機に職場を退職する女性の割合が多いという地域特性があり、伊予銀行でも、十数年前までは、結婚や出産などを機に退職を選択している女性従業員も多く見られていた。このような中で、社内では、女性の更なる活躍の推進を経営課題と認識し、平成27年度には女性活躍推進宣言を策定し、同時に女性従業員の平均勤続年数の伸長などの数値目標を設けた。これらの流れと並行し、女性従業員の就業継続やキャリア形成支援の観点から育児をしながら安心して働くことができる環境整備を目指し、経営レベルの主導で平成25年頃から保育施設の設置検討を始めた。

企業が保育施設の設置を行うことは、育児休業を取得した女性が復職しやすい環境を整えることに加え、女性の活躍推進を進めていくという企業風土の醸成や従業員の意識改革、また、地域の住民や企業とつながりの深い地方銀行としては、子育てを行いやすい地域づくりに貢献できるという効果も得られた。

設置検討の具体的なプロセスは、女性活躍推進室とプロジェクトチームが中心となって進めた。社内のニーズを把握するため、女性活躍推進室の担当者が、各職場を訪問し、実際に子育て中の従業員から、「社内に保育施設が設置されたら利用したいか」、「どのような保育施設なら利用したいか」、「利用者負担はどの程度が望ましいか」などの意見を細かく収集した。また、当初は認可型の事業所内保育施設の設置を目指していたため、平成25年頃より自治体の保育所管課と連絡を取り、必要な設備や基準等の情報収集を行いながら開設に向けた準備を進めた。それらの結果をもとに社内の決議を経て、平成26年12月に保育施設の設置を正式に決定した。これを受け、平成27年より外部の運営委託事業者の選定などの開設に向けた具体的な準備作業を開始した。他企業の設置事例を参考にするため、社内外で形成しているネットワークも活用し、すでに事業所内保育施設を設置していた企業に依頼し、施設の視察や立ち上げ担当者へのヒアリングも行った。

上記のように、認可施設としての保育施設設置に向けて準備を進めている中、平成28年5月、新たに企業主導型保育事業が立ち上がるという情報を入手した。社内検討の結果、同事業の方が児童の受け入れを柔軟に行うことができることや、就学前の児童まで対象にできることが決め手となり、企業主導型保育事業としての設置に方針を切り替えた。なお、設置形態については、グループ企業の従業員も保育施設を利用できるようにするため、「共同利用型」を採用した。

設置場所の確保

銀行は松山市外にも支店が点在しているため、設置場所の選定段階では従業員間の公平性に問題が生じないかという心配はあった。しかし、最終的には、松山市内に勤務している従業員が全体の半数程度を占めていることや、待機児童が発生している地域への貢献という観点から、現在の場所を選定した。

保育施設の整備にあたっては、松山市内の商業エリアにある銀行本店に近く、以前は業務用車両の駐車場となっていた敷地の一部を転用し、3階建ての建物を新築した。検討を開始した当初より遊休地の活用を想定しており、具体的には松山市内にある3ヶ所の候補地を検討したが、最終的には敷地の広さや周辺の待機児童の状況、公共交通機関で通園する場合の利便性などを考慮し、現在の場所に決定した。

施設の設計は保育施設建設の実績がある設計会社を選定し、設計会社の意見や運営委託会社から受けた保育面でのアドバイスを参考にしながら検討した。一度施設整備を行った後の改修は大変であるため、将来的な定員増なども想定し、ゆとりのある広さや構造にすることを心がけた。現在保育施設として使用していないスペース(3階)は会議室とし、利用者向けの説明会などを行う時に活用している。

保育施設の入口

保育施設の入口

厨房につながるカウンターから食事を提供

ゆとりのある保育室内

午睡準備の様子

午睡準備の様子

昼食の一場面

3階建ての施設内

運営方法の検討

企業として保育施設の運営ノウハウを持っていないため、検討当初より保育施設の運営は外部の専門事業者に委託する方針であった。自主運営の場合よりもコストはかかるが、従業員の子どもを預かることの責任の重さ、何よりも子どもの安全を守ることを優先し、保育事業者のノウハウが必要であると考えた。保育施設の開所時間や日数等、自社の状況や目的に合わせて検討が必要な部分は自社で決定し、具体的な保育方針や運営方法に関する部分は外部委託業者が中心となって策定した。

認可施設を想定した段階から保育施設の設置目的の一つとして地域貢献も考えていたため、企業主導型保育施設としても地域枠を設定した。

企業内に向けた対応

福利厚生としての側面と利用者負担の検討

社内には、福利厚生制度として保育料の補助制度があるが、従業員が保育施設の利用か保育料の補助のどちらを利用するかを選択できるようにした。

また、保育施設の利用者負担の設定についても、従業員間の公平性を考え、高すぎず、安すぎない水準になるように検討し、従業員が市内の認可施設を利用した場合の平均的な利用料の水準から保育料の補助額程度安くなるよう利用料を設定した。

企業内での説明

保育施設の紹介や利用者募集等の情報を行内のイントラネットに掲示し、グループ企業全体に対して情報発信を行った。また、対象となりそうな従業員には個別に声掛けを行い、開設3ヶ月前の平成28年12月に社内向けの説明会を開催した。説明会では、運営委託業者からの運営方針の説明のほか、施設見学も実施し、最後に参加者の利用の意向を確認するためのアンケートを行った。同様の説明会は毎年1回行うこととしており、平成28年度は12組、平成29年度は15組の参加があった。

地域とのかかわり

自治体との連携

もともと認可施設としての設置を想定して動き出したため、自治体の保育所管課とは密に連絡を取っており、企業主導型保育事業に方針転換した後も、認可施設と認可外保育施設の違いから、設置時の注意事項や衛生面、保険法等様々な指導を得ることができた。自治体にも企業主導型保育事業の利用を検討する企業からの問い合わせが増加していたため、自治体も同事業の内容等について情報収集しており、同事業の制度面においても様々な情報交換を行った。自治体が作成している保育施設案内の冊子やホームページでも企業主導型保育施設のページが設けられており、その中でも自施設が紹介されている。

地域枠の取扱い

地域枠については、自治体の保育認定を受けている人を対象とし、ホームページ上に案内を掲載して利用希望者を募集している。ホームページや自治体の冊子を見て施設のことを知り、営業店や直接保育施設に問い合わせがきている。

近隣住民とのかかわり

保育施設は銀行本店近隣の商業地域に立地している。

施設整備前には保育施設が隣接する店舗等に事前に工事に関する説明を行い、開設後も、近隣住民からの理解・協力を得ながら運営している。

開設に向けた具体的な準備

施設整備に関する法令の遵守と施設運営に関する法令の遵守

自治体に問い合わせを行い確認するとともに、保育施設設計の経験がある設計会社の経験、運営委託業者のノウハウを活用し、対応した。また、銀行として店舗や社宅などの自前の建物の建築実績も多く、社内にいる建築士等も消防法や衛生面などの対応を経験しており、スムーズに進めることができた。

自治体等への手続き

認可施設開設のための準備がほぼ整っていた段階で企業主導型保育事業に方針を転換した。そのため、準備していたものを当事業の基準等に合わせて整理し直す必要があったが、疑問に感じる点を児童育成協会や自治体に問い合わせを行いながら情報を集め、助成金申請の準備を行った。

外部委託時の業者選定

委託を決めた運営事業者は、認可施設・認可外施設を含め運営実績があり、また、以前から自社の女性活躍推進施策検討の際にも情報交換を行うなどつながりを持っていたため、特にコンペ等は実施せずに同事業者を運営委託先として選定した。

運営費に関する事項と利用定員枠の運用

開設後1年程度経過し徐々に利用者は増加しており、出産しても働き続ける女性従業員が増えていることもあり、今後定員枠は順調に埋まっていくことを見込んでいる。ただし、保育施設の設置が従業員の復職支援の一環であることを踏まえると、一度に定員が埋まると、その後の新たなニーズに応えられなくなってしまうことが想定されるため、その点が課題であると認識している。

設立後の運営

受け入れ時間や体制の工夫と関係機関や近隣保育施設などとの連携

保育施設は、休日も営業している店舗の従業員も利用できるよう土曜日も開所としている。平成29年度は利用者の中に該当する者がいなかったため実施していないが、平成30年度は実施予定である。また、開所時間については、保育施設から離れた支店に勤務している従業員も8時半からの勤務開始に間に合うよう、7時からの開所とした。延長保育の利用時間帯についても、繁忙期を想定し、20時まで利用できるようにした。延長保育の利用は前月の申し込みが基本であるが、突発的な業務や従業員の事情を踏まえて当日の急な依頼にもできるだけ対応できるよう調整を行っている。

企業主導型保育事業は、利用者の目線でみると認可施設に比べれば通いやすさなどの点で弱点があるので、「選ばれる施設」にするための工夫も必要だと考えている。そのため、園児が汚した着衣の洗濯を行ったり、オムツを持参しなくてもいいように「紙オムツ提供サービス(有料)」を行うなど、通園時の保護者の負担を軽減する工夫を行っている。

企業担当者・利用者の声

企業担当者の声

育児休業を延長せずに年度途中で職場に復帰できた人などから感謝の声をもらっており、自社の女性活躍推進のために少しずつでも寄与できているのではないかと感じています。いよぎんきっずらんどの定員に限界はあるので、すべての従業員のニーズに応えることができるわけではありませんが、子育て支援に本気で取り組むという経営トップをはじめとした企業としてのメッセージを内外に発信する、象徴的なアクションになったのではないかと思います。

従業員枠利用者の声

自分たちの会社が運営している保育園なので、行員の働き方や繁忙期などの事情をある程度理解してもらえるという安心感があります。延長保育の融通をきかせていただいたり、保育園で夕食を出すなどの対応もしていただき、助かっています。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)